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特別編2
第9話『流れゆくもの』
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それから、俺達はウォータースライダーをさらに2回滑った。3回目は俺が、4回目は愛実が前に座って。
ビキニのトップスを脱げてしまうハプニングもあったけど、愛実は3回目も4回目も滑り終わった後はとても楽しそうにしていた。ちなみに、愛実の水着が再び脱げてしまうことはなかった。
4回目を滑り終わったとき、愛実も俺もウォータースライダーに満足して。なので、ウォータースライダーを滑るのはここで一旦終わりにすることに。
4回乗った浮き輪を、入口の近くにいた男性スタッフさんに返却した。
「ウォータースライダー楽しかった! いっぱい滑ったね」
浮き輪を返却した直後、愛実は満足そうな笑顔でそう言った。
「滑ったなぁ。愛実と一緒に4回連続で滑るのは初めてだったし。俺も楽しかった」
「良かった。楽しいからどんどん滑りたくなって。気付けば4回も滑ったね。ただ、そうなるのは、リョウ君と一緒に滑ったからだよ」
「嬉しいことを言ってくれるな。ありがとう、愛実」
愛実の頭をポンポンと軽く叩くと、愛実の笑顔はニッコリとした可愛らしいものに変わる。
これまで愛実とは4回連続でウォータースライダーを滑ったことはなかった。愛実はあおいほどの絶叫系好きではない。だから、あおいとのデートのときと同じく4回も滑ることになるとは思わなかったな。
今までで一番、愛実と一緒にウォータースライダーを楽しめた。あと、恋人になってから滑るのは初めてだし、愛実がポロリしてしまったのもあって、とても思い出深いものにもなった。
「愛実。他のプールに行くか? それとも、一旦休憩するか?」
「そうだね……流れるプールに行きたいな。浮き輪に乗ってゆったりするのが気持ちいいし。ウォータースライダーで何回も勢い良く滑った後だから」
「そうか。流れるプール……いいな。あと、愛実はこのプールに遊びに来ると、流れるプールで浮き輪に乗ることが多かったよな」
「そうだね。リョウ君が浮き輪に掴まって」
「そうだったな。じゃあ、レンタルコーナーで浮き輪を借りて、流れるプールに行くか」
「うんっ、そうしよう!」
愛実はニッコリとした笑顔で言った。
俺達はレンタルコーナーに向かって歩き始める。
流れるプールの方をチラッと見ると……普通のプールと同じくらいに入っている人が多い。さすがはメインプールの一つだ。また、浮き輪の穴に腰を下ろして流れに身を任せている人が何人もいる。そういう人は皆まったりとしていて。
そういえば、あおいとプールデートしたときも、ウォータースライダーの後には流れるプールに行ったっけ。今回の愛実のように、あおいがゆったりしたいと言ったから。
レンタルコーナーに到着し、ピンク色の浮き輪を一つレンタルした。浮き輪だけでなく、ビーチボールや水鉄砲など、プールでの定番の遊具を無料でレンタルできるのは有り難いサービスだと毎度思う。
俺達は流れるプールへ行く。
「ウォータースライダーを4回滑った後だからか、このプールの流れがゆったりしているように見えるよ」
「ははっ、確かに。スライダーはかなり勢いがあるもんな。じゃあ、俺が浮き輪を押さえているから、愛実はその間に座ってくれ」
「分かった」
人があまり来ないタイミングを見計らって、俺は流れるプールの水面に浮き輪を置く。流れてしまわないように押さえながら。
「愛実、どうぞ」
「うんっ」
愛実は浮き輪の上に乗る。穴の部分に腰を下ろして、腕と脚を浮き輪に乗せて体を支える。その姿を見ると、付き合う前にプールデートをしたあおいの姿を思い出した。
「リョウ君、乗れたよ。手を離して大丈夫だよ」
「分かった。離すぞ」
そっと手を離すと、愛実が座るピンクの浮き輪が水の流れに乗っていく。
さすがにこれまでに何度も経験しているだけあり、俺が手を離しても愛実はバランスを崩すことなく座っている。
俺は流れるプールに入り、愛実の座っている浮き輪に向かって泳いでいく。流れもあるおかげでスイスイ進み、すぐに追いつくことができた。愛実が落ちてしまわないように、浮き輪をそっと掴んだ。
浮き輪を掴んだ直後、体の力を抜く。すると、体が水面に浮き、何もしないで前に進む状態に。
「あぁ、水の流れが気持ちいい」
「気持ちいいよね。私も腰や背中中心に気持ちいい。ウォータースライダーを何度も滑ったから、今は物凄くゆったりとした時間を過ごしている感じがするよ」
「そうだな。こうしてゆったりするのもいいな」
「そうだね」
ふふっ、と愛実は優しい笑顔を俺に向けてくれる。可愛いな。
それにしても、浮き輪に腰を下ろしている愛実……凄く綺麗だな。これまでに何度も水着姿の愛実を至近距離から見ているけど、今が一番大人っぽくて艶っぽい。高校生になって、俺の恋人にもなったからかな。愛実が笑顔でいるのもあって見惚れる。
「どうしたの? 私のことをじっと見て」
「……浮き輪に座っている今の愛実の姿が凄くいいなって思ってさ。綺麗で大人っぽくて」
「ありがとう。私も浮き輪に掴まってまったりしているリョウ君がいいなって思うよ」
「そうか。ありがとう」
これまでに何度もやってきていることを「いいな」って言ってもらえると、嬉しい気持ちになるな。プールの冷たい水に浸かっているけど、体の奥から温もりが生まれていくのが分かった。
「あと、リョウ君が側にいてくれると安心もするんだ」
「そうか」
「うん。……ねえ、リョウ君、覚えてる? 小学2年生のときの夏休みに、一緒に旅行に行ったじゃない。泊まったホテルに立派なプールがあって」
「あったな。ここみたいな屋内のプールだったな」
「そうそう。そのホテルにも流れるプールがあって。浮き輪にくぐって入ってみたら、思ったよりも速くて。足が付かないからかなり怖く感じて。そのことに泣いちゃったんだよね。流れが速いから思うようにプールサイドの方へ行けないし。あのときは本当に怖かった」
「……覚えてるよ。あのとき、俺は父さんと宏明さんと男3人でビーチボールで遊んでて。流れるプールから愛実の泣いている声が聞こえたから、俺が助けに行ったんだよな」
愛実の泣き声を頼りに、無我夢中になって愛実を助けに行ったのを覚えている。当時の俺にとって、ホテルの流れるプールの水深はかなり深かった。ただ、泳げたのもあって浮き輪なしでプールに入ったっけ。
「リョウ君がプールに飛び込んで、すぐに私のところに来てくれて。『怖い怖い』って泣く私に『俺が来たから大丈夫だ』って笑顔で言ってくれて、プールサイドまで連れて行ってくれて。そのときのリョウ君、凄くかっこよくて。より好きになったなぁ」
当時のことを思い出しているからか、愛実は恍惚とした笑顔になっていて。あのときは怖い思いをしたけど、笑顔で話せるような思い出になって良かったよ。
助けて、プールから出た後も愛実は涙を流し続けていた。それでも、愛実は笑顔で「ありがとう」って言ってくれたっけ。
「そうだったんだな」
「うん。今は高校生になったし、脚も付くけど……あのときのことがあったから、流れるプールでリョウ君が側にいると安心した気持ちになれるの」
「そういうことか」
「もちろん、流れるプール以外でも、普段からリョウ君が側にいると安心できるよ。いいなって思うし、幸せだとも思える。だから、これからもずっと側にいてね」
愛実は持ち前の可愛い笑顔で俺にそう言ってくる。そのことにキュンとなって。体の熱がさらに上がっていって。
「もちろんさ。俺だって愛実と一緒にいるといいなって思うし、幸せに感じるよ。愛実と出会ってからずっと一緒にいたし、これからもずっと一緒だ。それに、付き合い始めた日の夜に、愛実を俺のお嫁さんにするって約束したし」
そう言い、右手で愛実の左手をそっと掴む。愛実の手から伝わる温もりはとても優しくて心地いい。
「そうだね。ありがとう、リョウ君」
愛実はとても嬉しそうに言った。
この流れるプールのように、時間は常に流れ続ける。流れ方はプールとは違って、元のところに戻ることはないけど。時にはウォータースライダーのように激しく感じるときもあるかもしれない。ただ、どんなときでも愛実と一緒にいられるように、俺のできることを精一杯にしていきたい。
それからも、愛実の座る浮き輪に掴まりながら、流れるプールに身を任せていく。愛実と話しているからとても楽しくて。また、愛実も楽しそうにしているのを見て幸せに感じるのであった。
ビキニのトップスを脱げてしまうハプニングもあったけど、愛実は3回目も4回目も滑り終わった後はとても楽しそうにしていた。ちなみに、愛実の水着が再び脱げてしまうことはなかった。
4回目を滑り終わったとき、愛実も俺もウォータースライダーに満足して。なので、ウォータースライダーを滑るのはここで一旦終わりにすることに。
4回乗った浮き輪を、入口の近くにいた男性スタッフさんに返却した。
「ウォータースライダー楽しかった! いっぱい滑ったね」
浮き輪を返却した直後、愛実は満足そうな笑顔でそう言った。
「滑ったなぁ。愛実と一緒に4回連続で滑るのは初めてだったし。俺も楽しかった」
「良かった。楽しいからどんどん滑りたくなって。気付けば4回も滑ったね。ただ、そうなるのは、リョウ君と一緒に滑ったからだよ」
「嬉しいことを言ってくれるな。ありがとう、愛実」
愛実の頭をポンポンと軽く叩くと、愛実の笑顔はニッコリとした可愛らしいものに変わる。
これまで愛実とは4回連続でウォータースライダーを滑ったことはなかった。愛実はあおいほどの絶叫系好きではない。だから、あおいとのデートのときと同じく4回も滑ることになるとは思わなかったな。
今までで一番、愛実と一緒にウォータースライダーを楽しめた。あと、恋人になってから滑るのは初めてだし、愛実がポロリしてしまったのもあって、とても思い出深いものにもなった。
「愛実。他のプールに行くか? それとも、一旦休憩するか?」
「そうだね……流れるプールに行きたいな。浮き輪に乗ってゆったりするのが気持ちいいし。ウォータースライダーで何回も勢い良く滑った後だから」
「そうか。流れるプール……いいな。あと、愛実はこのプールに遊びに来ると、流れるプールで浮き輪に乗ることが多かったよな」
「そうだね。リョウ君が浮き輪に掴まって」
「そうだったな。じゃあ、レンタルコーナーで浮き輪を借りて、流れるプールに行くか」
「うんっ、そうしよう!」
愛実はニッコリとした笑顔で言った。
俺達はレンタルコーナーに向かって歩き始める。
流れるプールの方をチラッと見ると……普通のプールと同じくらいに入っている人が多い。さすがはメインプールの一つだ。また、浮き輪の穴に腰を下ろして流れに身を任せている人が何人もいる。そういう人は皆まったりとしていて。
そういえば、あおいとプールデートしたときも、ウォータースライダーの後には流れるプールに行ったっけ。今回の愛実のように、あおいがゆったりしたいと言ったから。
レンタルコーナーに到着し、ピンク色の浮き輪を一つレンタルした。浮き輪だけでなく、ビーチボールや水鉄砲など、プールでの定番の遊具を無料でレンタルできるのは有り難いサービスだと毎度思う。
俺達は流れるプールへ行く。
「ウォータースライダーを4回滑った後だからか、このプールの流れがゆったりしているように見えるよ」
「ははっ、確かに。スライダーはかなり勢いがあるもんな。じゃあ、俺が浮き輪を押さえているから、愛実はその間に座ってくれ」
「分かった」
人があまり来ないタイミングを見計らって、俺は流れるプールの水面に浮き輪を置く。流れてしまわないように押さえながら。
「愛実、どうぞ」
「うんっ」
愛実は浮き輪の上に乗る。穴の部分に腰を下ろして、腕と脚を浮き輪に乗せて体を支える。その姿を見ると、付き合う前にプールデートをしたあおいの姿を思い出した。
「リョウ君、乗れたよ。手を離して大丈夫だよ」
「分かった。離すぞ」
そっと手を離すと、愛実が座るピンクの浮き輪が水の流れに乗っていく。
さすがにこれまでに何度も経験しているだけあり、俺が手を離しても愛実はバランスを崩すことなく座っている。
俺は流れるプールに入り、愛実の座っている浮き輪に向かって泳いでいく。流れもあるおかげでスイスイ進み、すぐに追いつくことができた。愛実が落ちてしまわないように、浮き輪をそっと掴んだ。
浮き輪を掴んだ直後、体の力を抜く。すると、体が水面に浮き、何もしないで前に進む状態に。
「あぁ、水の流れが気持ちいい」
「気持ちいいよね。私も腰や背中中心に気持ちいい。ウォータースライダーを何度も滑ったから、今は物凄くゆったりとした時間を過ごしている感じがするよ」
「そうだな。こうしてゆったりするのもいいな」
「そうだね」
ふふっ、と愛実は優しい笑顔を俺に向けてくれる。可愛いな。
それにしても、浮き輪に腰を下ろしている愛実……凄く綺麗だな。これまでに何度も水着姿の愛実を至近距離から見ているけど、今が一番大人っぽくて艶っぽい。高校生になって、俺の恋人にもなったからかな。愛実が笑顔でいるのもあって見惚れる。
「どうしたの? 私のことをじっと見て」
「……浮き輪に座っている今の愛実の姿が凄くいいなって思ってさ。綺麗で大人っぽくて」
「ありがとう。私も浮き輪に掴まってまったりしているリョウ君がいいなって思うよ」
「そうか。ありがとう」
これまでに何度もやってきていることを「いいな」って言ってもらえると、嬉しい気持ちになるな。プールの冷たい水に浸かっているけど、体の奥から温もりが生まれていくのが分かった。
「あと、リョウ君が側にいてくれると安心もするんだ」
「そうか」
「うん。……ねえ、リョウ君、覚えてる? 小学2年生のときの夏休みに、一緒に旅行に行ったじゃない。泊まったホテルに立派なプールがあって」
「あったな。ここみたいな屋内のプールだったな」
「そうそう。そのホテルにも流れるプールがあって。浮き輪にくぐって入ってみたら、思ったよりも速くて。足が付かないからかなり怖く感じて。そのことに泣いちゃったんだよね。流れが速いから思うようにプールサイドの方へ行けないし。あのときは本当に怖かった」
「……覚えてるよ。あのとき、俺は父さんと宏明さんと男3人でビーチボールで遊んでて。流れるプールから愛実の泣いている声が聞こえたから、俺が助けに行ったんだよな」
愛実の泣き声を頼りに、無我夢中になって愛実を助けに行ったのを覚えている。当時の俺にとって、ホテルの流れるプールの水深はかなり深かった。ただ、泳げたのもあって浮き輪なしでプールに入ったっけ。
「リョウ君がプールに飛び込んで、すぐに私のところに来てくれて。『怖い怖い』って泣く私に『俺が来たから大丈夫だ』って笑顔で言ってくれて、プールサイドまで連れて行ってくれて。そのときのリョウ君、凄くかっこよくて。より好きになったなぁ」
当時のことを思い出しているからか、愛実は恍惚とした笑顔になっていて。あのときは怖い思いをしたけど、笑顔で話せるような思い出になって良かったよ。
助けて、プールから出た後も愛実は涙を流し続けていた。それでも、愛実は笑顔で「ありがとう」って言ってくれたっけ。
「そうだったんだな」
「うん。今は高校生になったし、脚も付くけど……あのときのことがあったから、流れるプールでリョウ君が側にいると安心した気持ちになれるの」
「そういうことか」
「もちろん、流れるプール以外でも、普段からリョウ君が側にいると安心できるよ。いいなって思うし、幸せだとも思える。だから、これからもずっと側にいてね」
愛実は持ち前の可愛い笑顔で俺にそう言ってくる。そのことにキュンとなって。体の熱がさらに上がっていって。
「もちろんさ。俺だって愛実と一緒にいるといいなって思うし、幸せに感じるよ。愛実と出会ってからずっと一緒にいたし、これからもずっと一緒だ。それに、付き合い始めた日の夜に、愛実を俺のお嫁さんにするって約束したし」
そう言い、右手で愛実の左手をそっと掴む。愛実の手から伝わる温もりはとても優しくて心地いい。
「そうだね。ありがとう、リョウ君」
愛実はとても嬉しそうに言った。
この流れるプールのように、時間は常に流れ続ける。流れ方はプールとは違って、元のところに戻ることはないけど。時にはウォータースライダーのように激しく感じるときもあるかもしれない。ただ、どんなときでも愛実と一緒にいられるように、俺のできることを精一杯にしていきたい。
それからも、愛実の座る浮き輪に掴まりながら、流れるプールに身を任せていく。愛実と話しているからとても楽しくて。また、愛実も楽しそうにしているのを見て幸せに感じるのであった。
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