10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ

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特別編

第5話『キスマークを付け合いたい。』

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 壁ドンをした後も、昨晩録画した別のアニメを観ていく。そのアニメも2人とも観ているから話が弾んで。だから本当に楽しくて、あっという間に時間が過ぎる。
 また、今日は火曜日。なので、愛実も俺も観ているファンタジーアニメが午後10時半から放送される。それをリアルタイムで観た。今までも、時間がそこまで遅くなければ、どちらかの家に行ってリアルタイムでアニメを観ることは何度もある。でも、今はお泊まりなので特別感があった。

「今週の話も面白かったねっ」
「面白かったな! このアニメも気付けばエンディングが流れてたな」
「そうだね。楽しいと本当にあっという間だよね」
「そうだな」

 俺はアイスコーヒーを一口飲む。愛実が淹れてくれたアイスコーヒーは美味しいけど、面白いアニメを観た後に飲むとより一層美味しく感じられる。

「今は……11時か」
「もうそんな時間なんだね」
「ああ。アニメをいくつも観たし、愛実に壁ドンしたからかな」
「きっとそうだよ。ずっと楽しいし」

 その言葉が本音であると示すように、愛実は楽しそうな笑顔になる。愛実にとってお風呂を出てからの時間が楽しいものになって嬉しい。俺もアニメを観たり、壁ドンをしたりするのが楽しかったし。愛実の笑顔を見ていると心がポカポカしてくる。

「ただ、アニメをいくつか一緒に観たから、そろそろ……えっちしたい気分です」

 愛実は俺を見つめながら、甘い声でそう言った。俺をそういう気分にさせたいのか、右手で俺の太ももを優しく擦ってくる。
 付き合い始めた日のお泊まりでは、愛実と初めて肌を重ねた。とても気持ち良くなれて、幸せな気持ちにもなれて。愛実も気持ち良さそうにしていて。だから、今回のお泊まりでもする流れになるだろうと思っていた。

「ああ、しようか。俺も……今回のお泊まりでもしたいと思っていたから。必要なものは持ってきた」
「良かった。リョウ君も同じ気持ちで、準備もしてくれて嬉しいです」

 愛実はニコッと笑う。

「あと、している最中でも、その前後でもいいけど……リョウ君とキスマークを付けて合いたいなって」
「キスマークか」
「うん。この前のえっちでも、さっきのお風呂でも、リョウ君は私の体に優しくキスしてくれるよね。だから、私の体には何も痕がなくて」
「大切な愛実の体だから、痕や傷を付けたくないと思ってさ。あとは、友達とかに見つかって、色々と訊かれたら愛実が嫌な気持ちになるかもしれないと思って」
「なるほど、そういうこと。キスのように優しいね、リョウ君は」

 愛実は優しくて柔らかな笑顔でそう言う。

「愛実も俺の体にキスマークを付けてないよな」
「うん。私も友達とかに訊かれるのが嫌かもしれないと思って。それに、リョウ君の場合は喫茶店でバイトしているから、バイトに何か影響が出るかもしれないと思って」
「なるほどな」

 まあ、キスマークを見て、いい印象を持つお客様は少ないだろうな。バイトの同僚に色々と訊かれる可能性もありそうだ。場所によっては絆創膏を貼っても、キスマークを隠しているかもしれないと思われそうだし。

「ただ、自分の口で、大好きなリョウ君の体に痕を付けてみたい欲求もあって。そういう痕があるとどんな感じなのか気になって」
「そうか。……俺も気になるな。あと、好きな人の体に自分で痕を付ける……そう考えると、結構そそられるものがあるよ。どこに付けても愛実は俺のものって感じがしそうだ」
「それは言えてるかも。一度、キスマークを付け合ってみませんか?」

 愛実は俺を見つめながらそう訊いてくる。敬語なのがとても可愛くて。やりたい内容が内容なだけに結構ドキッとする。

「分かった。じゃあ、さっそく付けてみようか」
「うんっ! ありがとう!」

 お礼を言う愛実はとても嬉しそうで。キスマークを付け合いたい気持ちが強いことが窺える。
 キスマークを付けるのは初めてだから、今からちょっと緊張して、ドキドキしてくる。

「リョウ君。どこにキスマークを付けようか」
「そうだな……俺のバイトのことを考えると、服で隠しやすい場所がいいな。あと、せっかくキスマークを付けるんだから、同じ場所がいいな」
「お揃いって感じがしていいね!」

 ニッコリと笑ってそう言う愛実。あぁ、早く愛実にキスマークを付けたい。

「だよな。付ける場所は……どこがいいだろう。恋愛系の漫画やアニメだと、首や胸のあたりにキスマークを付けているシーンがあるけど」
「首は服じゃ隠しづらいから、胸元がいいんじゃないかな。そこなら服で隠しやすいし、自分で見たいときには見やすいし」
「見やすさも重要だな。じゃあ、胸元に付け合うか」
「うんっ。まずはリョウ君に付けるよ。キスマークを付け合おうって提案したのは私だし」
「分かった」

 愛実がキスマークを付けやすいように、俺は上の寝間着とインナーシャツを脱ぐ。そのことで上半身裸になるけど、この後に肌を重ねるしいいだろう。
 愛実はうっとりとした様子で俺のことを見つめている。

「改めて見ると、リョウ君の上半身……本当にいいね。筋肉がついてて」
「4ヶ月くらいジョギングをしているからな」
「素敵な体になってるね。好きだよ。じゃあ、さっそく……付けてみるね」
「ああ、お願いします」

 愛実は俺のすぐ目の前までやってきて、俺のことを軽く抱きしめる。愛実は俺の右の胸元に唇を触れさせた。
 ――ちゅーっ。
 愛実は唇を触れさせた部分を吸っていく。これが吸われる感覚なのか。特に痛みとかは感じないな。それに愛実が吸っていると思うと、段々といいなと思えるようになってきて。
 キスマークをはっきりと付けるためなのか。それとも、キスマークがなかなか付かないのか。理由は定かではないけど、何度も吸っているのが可愛くて。思わず愛実の頭を優しく撫でてしまった。
 数回吸われたところで、

「うん、付いたよ」

 と言い、愛実は胸元から顔を離した。
 右の胸元を見てみると……さっきまではなかった赤い痕ができていた。これが愛実の付けてくれたキスマークかな。唾液で湿っているし。

「綺麗に付いたな、愛実」
「うんっ。はっきり付いたね」
「ああ。愛実が付けてくれたから、凄くいいなって思うよ」

 愛実によって刻まれた痕が自分の体にあるっていうのは気分がいいな。虫刺されやちょっとしたケガでも赤くなるけど、それらとは印象が全く異なる。

「愛実、ありがとう」
「いえいえ。じゃあ、今度は私が付けてもらう番だね」
「ああ」 

 愛実は上の寝間着を脱ぐ。そのことで愛実の上半身は下着姿に。オープンキャンパスの帰りに俺が選んで購入した桃色のブラジャーを付けている。

「改めて見ると、そのブラジャー似合ってるな。可愛い。それを選んで良かったって思うよ」
「ふふっ。あのときは選んでくれてありがとう。気に入ってるよ」
「いえいえ。……愛実が付けてくれた場所なら、ブラジャーを付けた状態でも付けられそうだな。せっかくだから、下着姿の愛実に付けたい」
「分かった、いいよ」
「じゃあ、キスマークを付けるよ」
「うん、お願いします」

 さっきの愛実に倣って、俺は愛実を軽く抱きしめ、愛実の右の胸元に唇を当てる。胸が膨らみ始めているあたりに当てているので、感触が柔らかくてとてもいい。ボディーソープと愛実そのものの匂いが混ざった甘い匂いもしてくるし。
 ――ちゅーっ。
 愛実の胸元を吸って、キスマークを付け始める。
 キスマークを付けるのは初めてだから、吸う強さはこのくらいで大丈夫だろうか。痛かったりしないだろうか。

「んっ」

 と、愛実は甘い声を漏らし、体をピクッと震わせる。その反応を受けて、俺は一旦、キスマークを付けるのを中断する。

「愛実、大丈夫か? 痛くないか?」
「うん、大丈夫だよ。痛くない。こういう感覚は初めてだから、声が漏れて体がピクってなっちゃったの」
「そうだったのか。じゃあ、今の強さで付けていくよ」
「うん」

 俺は愛実にキスマークを付けるのを再開する。吸う強さに気をつけて。
 胸元を吸われる感覚がいいのだろうか。たまに、愛実は「んっ」とか「あっ」とか甘い声を漏らして。そんな反応にドキドキする。
 一度吸うだけでははっきりとキスマークが付かなかったので、何度も同じ箇所を吸った。

「ちゃんと付いた」

 数回吸って、愛実の右の胸元に、赤くはっきりとしたキスマークが付いた。愛実の肌は白くて綺麗だから、キスマークの赤さが映える。
 俺が顔を離すと、愛実はさっそく自分の右の胸元を確認する。

「……赤く付いてる。リョウ君に付けてもらったから凄くいいって思う。リョウ君の気持ちが分かったよ」
「そうか」
「キスマークが愛おしく思えるよ。自分で見やすい胸元に付けてもらって良かった。ありがとう、リョウ君!」
「いえいえ」

 こんなにも愛実に嬉しい反応をされると、キスマークを付けて良かったなって思う。あと、キスマークが愛おしいと言うところが愛実らしい。
 自分の胸元にあるキスマークを見ると……確かに愛おしく思えてくるな。愛実が俺の体に触れた証拠にもなるから嬉しさも抱く。

「ねえ、リョウ君。いつでもキスマークを見たいし、初キスマーク記念ってことで一緒に写真を撮ってもいい? LIMEで送るから」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう!」

 初キスマーク記念で写真を撮りたいとは。愛実も可愛いことを考える。
 その後、愛実のスマホで愛実とのツーショット写真を撮った。また、愛実はキスマークが付いた右の胸元が映るように自撮り写真も撮って。約束通り、それらの写真はLIMEで送ってもらった。
 送ってもらった写真を見てみると……俺は上半身裸で、愛実は上半身が下着姿だからセクシーな雰囲気だ。お揃いで右の胸元に付いた赤いキスマークがその雰囲気をより引き立たせている。

「写真で見るキスマークもいいもんだな」
「そうだね。リョウ君とのツーショット写真を見ると、お揃いって付けたって分かって凄く嬉しくなる」
「そうだな。写真、ありがとな」
「いえいえ。じゃあ、キスマークも付け合ったし、そろそろしようか。上半身裸のリョウ君を見たり、キスマークを付けたりしたら、さっき以上にしたい気持ちが膨らんでて」
「俺もだよ。愛実の下着姿が可愛いし、キスマークを付けたから」
「ふふっ、そっか。……今夜も一緒に気持ち良くなろうね。リョウ君もいっぱい気持ち良くさせたい」
「俺もだよ、愛実」

 俺はそう言って、愛実のことを優しく抱きしめ、唇にキスをした。



 それからは、主に愛実のベッドの中で、愛実と肌を重ねた。
 付き合い始めた日のお泊まりの夜に肌を重ねたからだろうか。あれから数日しか経っていないけど、あの日よりも愛実が大人っぽく見えて。右の胸元にキスマークがあるから、愛おしさが増して、愛実を独り占めできているとより実感して。
 俺をいっぱい気持ち良くさせたいと言ったからだろうか。この前よりも愛実がリードして、積極的に動くときがあって。そのおかげで凄く気持ち良く感じられて。
 肌を重ねる中でも愛実は笑顔を見せて、俺に好きだといっぱい言ってくれて、唇中心に全身にキスしてくれて。そんな愛実がとても可愛くて、愛おしくて。俺も愛実にたくさん好きだと言ったり、キスをしたりした。



「今夜も気持ち良かったね、リョウ君」
「気持ち良かったな。愛実も積極的に動いてくれたから、いっぱい気持ち良くなった」
「リョウ君も気持ち良くなって良かったよ」

 えへへっ、と愛実は嬉しそうに笑いながら、俺の右腕を抱きしめた。今も互いに何も着ていない状態だから、右腕は愛実の柔らかさと強い温もりに包まれる。それがとても気持ち良くて。

「あと、この前よりも愛実をより感じられた気がする。愛実のベッドでしたからかな。愛実に包まれている感じっていうか」
「それ分かる。私もこの前、リョウ君の部屋のベッドでえっちしたとき、リョウ君に包まれている感じがしたし。ベッドからもリョウ君の匂いを感じたからかな」
「それが理由かもしれないな。今も愛実だけじゃなくて、ベッドからも愛実のいい匂いがするし」
「そっか。リョウ君にそう思ってもらえて良かった」

 愛実は嬉しそうな笑顔でそう言った。

「お風呂のときと同じで、リョウ君と恋人になって、私のベッドでえっちできるなんて。昔からしたかったことだし、本当に幸せな時間だったよ。それもお泊まりに誘った一つの目的だけど」
「ははっ、そうか。愛実の夢が次々と叶って嬉しいよ」
「ありがとう。お風呂に入るのと同じで、えっちも……これからいっぱいしようね」
「そうだな」

 入浴でも、肌を重ねることでも……愛実と一緒に気持ち良くなれる時間を過ごしたい。愛実から言ってもらえることが嬉しかった。
 自分の家のお風呂に一緒に入ること。自分のベッドで肌を重ねること。今回のお泊まりで愛実の夢が2つ叶った。これからも、俺絡みで愛実の夢ややりたいことをいっぱい叶えていきたいな。

「ふああっ……」

 大きいあくびをしてしまう。今日は8時間バイトをして、今も愛実とたくさん体を動かしたからだろうか。急に眠気が襲ってきた。
 目の前であくびをしてしまったけど、愛実は「ふふっ」と優しく笑う。

「眠くなってきた?」
「ああ。バイトしたし、今も愛実とたくさん体を動かしたからかな。ベッドも愛実も温かくて気持ちいいから」
「ふふっ、そっか。私も眠くなってきた。じゃあ、そろそろ寝ようか」
「そうだな。愛実、おやすみ」
「おやすみ、リョウ君」

 互いに見つめながらそう言い、愛実からおやすみのキスをしてきた。
 この家にお泊まりに来てからたくさんキスをした。特に肌を重ねているときは。それでも、愛実とのキスはとても心地良くて、温かい気持ちにさせてくれる。
 少しして愛実の方から唇を離す。すると、愛実は右の胸元にキスしてきた。愛実がキスマークを付けたところだ。唇が触れる感覚がとてもいい。
 愛実の真似をして、愛実に付けた胸元のキスマークにキスした。愛実は「んっ」と可愛い声を漏らしつつも、愛実らしいやんわりとした笑顔を見せた。

「おやすみ、リョウ君」
「おやすみ、愛実」

 愛実はベッドライトを消して、そっと目を瞑る。俺の右腕を抱き枕にして。
 眠くなってきたと言っていただけあって、目を瞑ってから程なくして愛実は可愛らしい寝息を立て始める。
 俺も目を瞑ると……眠気がどっと襲ってきた。
 一日の最後まで愛実の温もりや甘い匂い、柔らかさを感じられること。愛実のベッドなので愛実に包まれた感覚になれること。それらを幸せに感じつつ、俺は眠りに落ちていった。
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