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最終章
エピローグ『日常を、これからも。』
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湯船にゆっくりと浸かっていたのもあり、朝風呂から出ると両親が起きており、朝食を作り始めようとしていた。両親……特に母さんから何か訊かれるかと思ったけど、
「朝にも一緒にお風呂に入るなんて。2人はラブラブね」
と、母さんが一言言うだけだった。
俺達が風呂を上がってから30分ほどで、俺の家族と愛実の4人で朝食を食べることに。ご飯に茄子とネギの味噌汁、焼き鮭と和風の朝食だ。
この4人で朝食を食べるのは、小学生の頃に愛実がうちに泊まりに来たとき以来だ。なので、愛実が泊まりに来たときのことや、夏休みに香川家とうちで一緒に家族旅行へ行ったときの話題で盛り上がった。
朝食中に、両親から昨日の夜のことを訊かれるかと思っていたけど、
「昨日の夜は楽しく過ごせた? 恋人になって初めての夜だったけど」
と、母さんがざっくりと訊くに留まった。
俺と愛実が「とても楽しく過ごせた」と言うと、母さんも父さんも「それは良かった」と笑顔で言ってくれて。本当は何をしたのか分かっているのかもしれないけど、愛実のことを考え、深くは訊かなかったのかもしれない。
朝食を食べ終わり、俺は朝食の後片付けをし、愛実と俺の分のアイスティーを淹れて、愛実と一緒に部屋に戻った。
愛実と隣同士にクッションに座り、朝食後のアイスティーを飲んでくつろぐことに。
「……美味しい。リョウ君は紅茶を淹れるのも上手だよね」
「茶葉がいいんだろうけど……嬉しいな。あと少しで夏が終わるけど、冷たいものがまだまだ美味しく感じられるな」
「そうだねっ」
愛実は笑顔でそう言うと、アイスティーをもう一口飲む。
アイスティーを飲む愛実の姿……本当に綺麗だな。ロングスカートにノースリーブの縦ニットという服装がよく似合っていて可愛らしい。
「どうしたの? 私のことをじっと見て」
「……紅茶を飲む愛実が綺麗で可愛いと思って」
「ふふっ。ありがとう。てっきり、ノースリーブの服を着ているから、腋が見えていいなって思っていたのかなって。昨日のことで、リョウ君は胸ほどじゃないけど腋も好きだって分かったから」
「……わ、腋も好きです」
「ふふっ。しばらくは暑い日が続くし、そういった日はノースリーブやフレンチスリーブの服を着るね」
「……嬉しいです」
愛実本人から体の好きな箇所を指摘されると、ちょっと気恥ずかしいものがある。袖がなかったり、短かったりする服を着てくれるのは嬉しいけどな。
アイスティーをもう一口飲むと、アイスティーの冷たさや体に染み渡っていくのが分かった。
「愛実。昨日の夜に録画したアニメを観る?」
「そうだね。土曜日はリョウ君も私も観ているアニメが2つあるし。ただ、その2つのアニメってあおいちゃんも観ているよね。……誘ってみる?」
「そうだな……」
失恋した翌日だ。そのタイミングでここに呼ぶのはあおいが辛さや居づらさを感じるかもしれない。
ただ、あおいは俺が告白の返事をした後に、「これからも3人で一緒にアニメを観たい」と笑顔で言っていた。それに、これから観ようとしている作品は、これまでにも放送翌日にあおいと3人で一緒に観ることが多い。その時間も楽しかった。
「……誘ってみよう。これまで一緒に観ているから。愛実はどうだ?」
「私も誘っていいと思ってる。あおいちゃんと3人で観て楽しかったから」
「分かった。じゃあ、3人のグループトークにお誘いのメッセージを送ってみるか」
「そうだね。私も送ってみる」
俺はローテーブルに置いてある自分のスマホを手に取る。LIMEの3人でのグループトークを開いて、
『あおい。これから、昨日の夜に録画したアニメを俺の家で愛実と観る予定だ。もし、予定が空いていて、あおいが良ければ一緒に観ないか?』
あおいに向かってのメッセージを送る。愛実がトーク画面を開いているのか、俺の送信メッセージにすぐに『既読』とマークが付く。
『あおいちゃんと一緒に観られると嬉しいな』
俺がメッセージを送った直後、愛実もそんなメッセージを送る。俺達のこのメッセージを見て、あおいはどう思うだろうか。
俺達がメッセージを送ってから20秒ほど。俺の送信したメッセージに『既読2』とマークが付く。あおいが俺達のメッセージを見たんだな。
『誘ってくれて嬉しいです! 今日は特に予定はありませんから、すぐに行きますね!』
と、あおいからメッセージが送信される。このメッセージを見ると、嬉しい気持ちとほっとした気持ちを抱く。愛実も同じなのか、安堵の笑みを浮かべていた。
『予定が空いていて良かった。分かったよ、あおい』
『待ってるね』
俺達はあおいに向けてそんなメッセージを送った。
あおいはすぐに来るか。お風呂から上がって、朝食を食べ始めるまでの間に掃除しておいたから大丈夫だろう。
――ピンポーン。
あおいとメッセージをやり取りしてから5分ほど。インターホンが鳴った。
部屋の扉の近くにあるモニターに行き、応答のスイッチを押すと、画面にはあおいの明るい笑顔が映る。
「はい」
『あおいです。来ました!』
「待っていたよ。すぐに行く。……あおいだ。行ってくるよ」
「うん、いってらっしゃい」
愛実はいつもの優しい笑顔でそう言ってくれる。
愛実から「いってらっしゃい」って言われるの……何だかいいな。一緒にいるんだって実感できて。幸せな気持ちを抱きつつ部屋を出て、玄関に向かう。
玄関を開けると、そこにはスラックスに肩開きの半袖のTシャツ姿のあおいが立っていた。あおいは俺と目が合うと、あおいらしい元気で明るい笑顔を見せてくれる。昨日、あおいの告白を断ったけど、彼女らしい笑顔をまた見られて嬉しく思う。
「おはようございます、涼我君!」
「おはよう、あおい。来てくれてありがとう」
「いえいえ! 誘ってくださってありがとうございます! 涼我君と愛実ちゃんと一緒に観ているアニメはどちらも、昨日放送された話がとても面白かったので、2人と一緒に見たいと思っていました!」
「そうだったのか。愛実と俺は見ていないから、期待が高まるな。さあ、入ってくれ」
「お邪魔します!」
あおいは元気良く俺の家の中に入ってきた。あおい、いつもと変わらぬ元気さだな。面白いアニメを観たおかげだろうか。
リビングにいる両親に一言挨拶してから、あおいを俺の部屋に連れて行く。
「愛実。あおいを連れてきたよ」
部屋に戻ると、愛実はアイスティーを飲みながらスマホを弄っていた。
「おはようございます、愛実ちゃん!」
「おはよう、あおいちゃん!」
愛実もあおいも、朝の挨拶をすると笑顔で小さく手を振る。その光景を見ると、心が和んで温かい気持ちになっていく。
「あおい。冷たいものを淹れてくるけど、アイスティーでいいか?」
「はい!」
「分かった。じゃあ、適当な場所にくつろいでいてくれ」
「分かりました」
俺は部屋を後にして、1階のキッチンに向かう。
あおい専用の水色のマグカップにアイスティーを淹れていく。これからも、うちでこのマグカップを使っていくのだと思うと嬉しい気持ちになる。
アイスティーを淹れて、俺は自分の部屋に戻る。部屋の中では愛実とあおいが談笑していた。聞こえる単語からして、現在放送されているアニメのことか。
「お待たせ、あおい。アイスティー淹れてきた。ちょっと甘めに作ったよ」
「ありがとうございます!」
あおいにマグカップを渡して、それまで座っていた愛実の隣のクッションに腰を下ろす。
あおいはアイスティーを一口飲むと、やんわりとした笑顔を浮かべる。
「あぁ、ほんのり甘くて美味しいです」
「良かった」
「……ところで、あそこに大きめのバッグがありますね。ということは、昨日の夜、愛実ちゃんはお泊まりしたんですか?」
「そうだよ。リョウ君が誘ってくれて。お泊まりしました」
「そうだったんですね! 付き合い始めた日ですし、お二人ならお泊まりすると思っていました」
あおいはいつもの明るい笑顔でそう言ってくる。愛実と俺は家が隣同士だし、今までに何度もお泊まりしているからな。
「ということは、昨日の夜は……こ、恋人らしい時間を過ごしたのですか? それが気になって、ドキドキして……昨日はあまり眠れなかったんです」
あおいは頬をほんのりと赤らめてそう言う。失恋した直後に、俺と愛実の夜の過ごし方について考えてドキドキするとは。そして、そのことを俺達に訊いてくるとは。なかなかのメンタルの持ち主だな。ただ、好きな人と友人カップルのことだから気になっちゃうものなのかな。
昨日の夜は恋人らしい時間を過ごしたのかどうか……か。もちろんYESなんだけど、どこまで話そうか。俺だけじゃなくて、愛実とのことだし。お風呂に入ったり、ベッドの中を中心に肌を重ねたりしたことを思い出したら、体が熱くなってきた。
愛実のことを見ると……あっ、顔が真っ赤だ。きっと、俺と同じように昨日の夜のことを思い出しているのだろう。
「恋人らしい時間……か。えっと……昨日の夜と今日の朝に、リョウ君と一緒にお風呂に入ったよ。気持ち良かったね、リョウ君」
「ああ。気持ち良かったな」
「そうでしたか! 一緒にお風呂ですか。いいですね。それ以外は……しましたか?」
俺と愛実のことを交互に見ながら、あおいは問いかけてくる。一緒にお風呂に入ったのだから、他にも何かしているんじゃないかと考えているのだと思う。
「と、とても愛おしい夜の時間をリョウ君と過ごしました」
愛実は顔を真っ赤にしてそう答えた。この様子からして、これが今の愛実にとっての精一杯の説明なのだろう。また、愛実の言葉選びに心がとても温かくなる。
「俺にとっても、とても愛おしい時間だったよ。そういう夜を愛実と一緒に過ごしたんだ」
「そうでしたか。2人の今の言葉や真っ赤な顔から……どんなことをしたのかだいたいの想像がつきました。2人にとって、素敵な恋人初夜になったようで良かったです!」
あおいは持ち前の明るい笑顔でそう言ってくる。ただ、その笑顔は頬を中心にはっきりと赤みを帯びているので、俺と愛実がどんなことをしたのか察しが付いたのだろう。体が熱くなったのか、あおいはアイスティーをゴクゴクと飲んでいる。それが可愛くて。
「じゃあ、昨日放送されたアニメを2つ観るか。あおい曰く、どっちも昨日放送された話は面白かったみたいだぞ」
「そうなんだ。楽しみだよ!」
「面白いエピソードですよ! 3人で観ましょう!」
それから、俺達は3人並んで昨日放送されたアニメを観ることに。俺と愛実が付き合い始めたのもあり、あおい、愛実、俺という座り方で。
3人とも好きなアニメだから、3人でキャラクターやストーリーのことを話しながら観ていく。それが本当に楽しくて。
「涼我君と愛実ちゃんと3人でアニメを観るのは楽しいですね!」
「そうだね! 3人とも観ている作品だし」
「楽しいよな」
愛実もあおいも、一緒にアニメを観ることを楽しんでいると分かってとても嬉しい。
昨日から、愛実と俺は恋人として付き合い始めた。だけど、これまでの日常であるあおいと3人で一緒に過ごす時間も大切にしていきたい。愛実とあおいという2人の幼馴染の笑顔を見てそう思う。
それからも、愛実とあおいと3人でアニメを観て、何度も笑いに包まれるのであった。
『10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ』 おわり
次の話から特別編です。
「朝にも一緒にお風呂に入るなんて。2人はラブラブね」
と、母さんが一言言うだけだった。
俺達が風呂を上がってから30分ほどで、俺の家族と愛実の4人で朝食を食べることに。ご飯に茄子とネギの味噌汁、焼き鮭と和風の朝食だ。
この4人で朝食を食べるのは、小学生の頃に愛実がうちに泊まりに来たとき以来だ。なので、愛実が泊まりに来たときのことや、夏休みに香川家とうちで一緒に家族旅行へ行ったときの話題で盛り上がった。
朝食中に、両親から昨日の夜のことを訊かれるかと思っていたけど、
「昨日の夜は楽しく過ごせた? 恋人になって初めての夜だったけど」
と、母さんがざっくりと訊くに留まった。
俺と愛実が「とても楽しく過ごせた」と言うと、母さんも父さんも「それは良かった」と笑顔で言ってくれて。本当は何をしたのか分かっているのかもしれないけど、愛実のことを考え、深くは訊かなかったのかもしれない。
朝食を食べ終わり、俺は朝食の後片付けをし、愛実と俺の分のアイスティーを淹れて、愛実と一緒に部屋に戻った。
愛実と隣同士にクッションに座り、朝食後のアイスティーを飲んでくつろぐことに。
「……美味しい。リョウ君は紅茶を淹れるのも上手だよね」
「茶葉がいいんだろうけど……嬉しいな。あと少しで夏が終わるけど、冷たいものがまだまだ美味しく感じられるな」
「そうだねっ」
愛実は笑顔でそう言うと、アイスティーをもう一口飲む。
アイスティーを飲む愛実の姿……本当に綺麗だな。ロングスカートにノースリーブの縦ニットという服装がよく似合っていて可愛らしい。
「どうしたの? 私のことをじっと見て」
「……紅茶を飲む愛実が綺麗で可愛いと思って」
「ふふっ。ありがとう。てっきり、ノースリーブの服を着ているから、腋が見えていいなって思っていたのかなって。昨日のことで、リョウ君は胸ほどじゃないけど腋も好きだって分かったから」
「……わ、腋も好きです」
「ふふっ。しばらくは暑い日が続くし、そういった日はノースリーブやフレンチスリーブの服を着るね」
「……嬉しいです」
愛実本人から体の好きな箇所を指摘されると、ちょっと気恥ずかしいものがある。袖がなかったり、短かったりする服を着てくれるのは嬉しいけどな。
アイスティーをもう一口飲むと、アイスティーの冷たさや体に染み渡っていくのが分かった。
「愛実。昨日の夜に録画したアニメを観る?」
「そうだね。土曜日はリョウ君も私も観ているアニメが2つあるし。ただ、その2つのアニメってあおいちゃんも観ているよね。……誘ってみる?」
「そうだな……」
失恋した翌日だ。そのタイミングでここに呼ぶのはあおいが辛さや居づらさを感じるかもしれない。
ただ、あおいは俺が告白の返事をした後に、「これからも3人で一緒にアニメを観たい」と笑顔で言っていた。それに、これから観ようとしている作品は、これまでにも放送翌日にあおいと3人で一緒に観ることが多い。その時間も楽しかった。
「……誘ってみよう。これまで一緒に観ているから。愛実はどうだ?」
「私も誘っていいと思ってる。あおいちゃんと3人で観て楽しかったから」
「分かった。じゃあ、3人のグループトークにお誘いのメッセージを送ってみるか」
「そうだね。私も送ってみる」
俺はローテーブルに置いてある自分のスマホを手に取る。LIMEの3人でのグループトークを開いて、
『あおい。これから、昨日の夜に録画したアニメを俺の家で愛実と観る予定だ。もし、予定が空いていて、あおいが良ければ一緒に観ないか?』
あおいに向かってのメッセージを送る。愛実がトーク画面を開いているのか、俺の送信メッセージにすぐに『既読』とマークが付く。
『あおいちゃんと一緒に観られると嬉しいな』
俺がメッセージを送った直後、愛実もそんなメッセージを送る。俺達のこのメッセージを見て、あおいはどう思うだろうか。
俺達がメッセージを送ってから20秒ほど。俺の送信したメッセージに『既読2』とマークが付く。あおいが俺達のメッセージを見たんだな。
『誘ってくれて嬉しいです! 今日は特に予定はありませんから、すぐに行きますね!』
と、あおいからメッセージが送信される。このメッセージを見ると、嬉しい気持ちとほっとした気持ちを抱く。愛実も同じなのか、安堵の笑みを浮かべていた。
『予定が空いていて良かった。分かったよ、あおい』
『待ってるね』
俺達はあおいに向けてそんなメッセージを送った。
あおいはすぐに来るか。お風呂から上がって、朝食を食べ始めるまでの間に掃除しておいたから大丈夫だろう。
――ピンポーン。
あおいとメッセージをやり取りしてから5分ほど。インターホンが鳴った。
部屋の扉の近くにあるモニターに行き、応答のスイッチを押すと、画面にはあおいの明るい笑顔が映る。
「はい」
『あおいです。来ました!』
「待っていたよ。すぐに行く。……あおいだ。行ってくるよ」
「うん、いってらっしゃい」
愛実はいつもの優しい笑顔でそう言ってくれる。
愛実から「いってらっしゃい」って言われるの……何だかいいな。一緒にいるんだって実感できて。幸せな気持ちを抱きつつ部屋を出て、玄関に向かう。
玄関を開けると、そこにはスラックスに肩開きの半袖のTシャツ姿のあおいが立っていた。あおいは俺と目が合うと、あおいらしい元気で明るい笑顔を見せてくれる。昨日、あおいの告白を断ったけど、彼女らしい笑顔をまた見られて嬉しく思う。
「おはようございます、涼我君!」
「おはよう、あおい。来てくれてありがとう」
「いえいえ! 誘ってくださってありがとうございます! 涼我君と愛実ちゃんと一緒に観ているアニメはどちらも、昨日放送された話がとても面白かったので、2人と一緒に見たいと思っていました!」
「そうだったのか。愛実と俺は見ていないから、期待が高まるな。さあ、入ってくれ」
「お邪魔します!」
あおいは元気良く俺の家の中に入ってきた。あおい、いつもと変わらぬ元気さだな。面白いアニメを観たおかげだろうか。
リビングにいる両親に一言挨拶してから、あおいを俺の部屋に連れて行く。
「愛実。あおいを連れてきたよ」
部屋に戻ると、愛実はアイスティーを飲みながらスマホを弄っていた。
「おはようございます、愛実ちゃん!」
「おはよう、あおいちゃん!」
愛実もあおいも、朝の挨拶をすると笑顔で小さく手を振る。その光景を見ると、心が和んで温かい気持ちになっていく。
「あおい。冷たいものを淹れてくるけど、アイスティーでいいか?」
「はい!」
「分かった。じゃあ、適当な場所にくつろいでいてくれ」
「分かりました」
俺は部屋を後にして、1階のキッチンに向かう。
あおい専用の水色のマグカップにアイスティーを淹れていく。これからも、うちでこのマグカップを使っていくのだと思うと嬉しい気持ちになる。
アイスティーを淹れて、俺は自分の部屋に戻る。部屋の中では愛実とあおいが談笑していた。聞こえる単語からして、現在放送されているアニメのことか。
「お待たせ、あおい。アイスティー淹れてきた。ちょっと甘めに作ったよ」
「ありがとうございます!」
あおいにマグカップを渡して、それまで座っていた愛実の隣のクッションに腰を下ろす。
あおいはアイスティーを一口飲むと、やんわりとした笑顔を浮かべる。
「あぁ、ほんのり甘くて美味しいです」
「良かった」
「……ところで、あそこに大きめのバッグがありますね。ということは、昨日の夜、愛実ちゃんはお泊まりしたんですか?」
「そうだよ。リョウ君が誘ってくれて。お泊まりしました」
「そうだったんですね! 付き合い始めた日ですし、お二人ならお泊まりすると思っていました」
あおいはいつもの明るい笑顔でそう言ってくる。愛実と俺は家が隣同士だし、今までに何度もお泊まりしているからな。
「ということは、昨日の夜は……こ、恋人らしい時間を過ごしたのですか? それが気になって、ドキドキして……昨日はあまり眠れなかったんです」
あおいは頬をほんのりと赤らめてそう言う。失恋した直後に、俺と愛実の夜の過ごし方について考えてドキドキするとは。そして、そのことを俺達に訊いてくるとは。なかなかのメンタルの持ち主だな。ただ、好きな人と友人カップルのことだから気になっちゃうものなのかな。
昨日の夜は恋人らしい時間を過ごしたのかどうか……か。もちろんYESなんだけど、どこまで話そうか。俺だけじゃなくて、愛実とのことだし。お風呂に入ったり、ベッドの中を中心に肌を重ねたりしたことを思い出したら、体が熱くなってきた。
愛実のことを見ると……あっ、顔が真っ赤だ。きっと、俺と同じように昨日の夜のことを思い出しているのだろう。
「恋人らしい時間……か。えっと……昨日の夜と今日の朝に、リョウ君と一緒にお風呂に入ったよ。気持ち良かったね、リョウ君」
「ああ。気持ち良かったな」
「そうでしたか! 一緒にお風呂ですか。いいですね。それ以外は……しましたか?」
俺と愛実のことを交互に見ながら、あおいは問いかけてくる。一緒にお風呂に入ったのだから、他にも何かしているんじゃないかと考えているのだと思う。
「と、とても愛おしい夜の時間をリョウ君と過ごしました」
愛実は顔を真っ赤にしてそう答えた。この様子からして、これが今の愛実にとっての精一杯の説明なのだろう。また、愛実の言葉選びに心がとても温かくなる。
「俺にとっても、とても愛おしい時間だったよ。そういう夜を愛実と一緒に過ごしたんだ」
「そうでしたか。2人の今の言葉や真っ赤な顔から……どんなことをしたのかだいたいの想像がつきました。2人にとって、素敵な恋人初夜になったようで良かったです!」
あおいは持ち前の明るい笑顔でそう言ってくる。ただ、その笑顔は頬を中心にはっきりと赤みを帯びているので、俺と愛実がどんなことをしたのか察しが付いたのだろう。体が熱くなったのか、あおいはアイスティーをゴクゴクと飲んでいる。それが可愛くて。
「じゃあ、昨日放送されたアニメを2つ観るか。あおい曰く、どっちも昨日放送された話は面白かったみたいだぞ」
「そうなんだ。楽しみだよ!」
「面白いエピソードですよ! 3人で観ましょう!」
それから、俺達は3人並んで昨日放送されたアニメを観ることに。俺と愛実が付き合い始めたのもあり、あおい、愛実、俺という座り方で。
3人とも好きなアニメだから、3人でキャラクターやストーリーのことを話しながら観ていく。それが本当に楽しくて。
「涼我君と愛実ちゃんと3人でアニメを観るのは楽しいですね!」
「そうだね! 3人とも観ている作品だし」
「楽しいよな」
愛実もあおいも、一緒にアニメを観ることを楽しんでいると分かってとても嬉しい。
昨日から、愛実と俺は恋人として付き合い始めた。だけど、これまでの日常であるあおいと3人で一緒に過ごす時間も大切にしていきたい。愛実とあおいという2人の幼馴染の笑顔を見てそう思う。
それからも、愛実とあおいと3人でアニメを観て、何度も笑いに包まれるのであった。
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