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最終章
第65話『告白の返事』
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――あおいと愛実からの告白の返事をするよ。
あおいと愛実にさっそく本題を切り出す。
告白の返事と言ったからか、あおいは真剣な表情に、愛実はちょっと緊張しい様子になる。俺がどんな返事をするのか期待や不安があるのだろう。
あおいと愛実はこの場所で俺に好きだと告白してくれた。だから、俺も2人に想いをしっかりと伝えよう。
「まずは……2人とも。俺に好きだって告白してくれてありがとう。告白されてから、毎日がより楽しい日々になったよ」
「私もですよ、涼我君」
「私も告白できて良かったって思っているよ。リョウ君とより近い関係になれた気がするから」
あおいも愛実も笑顔になってそう言ってくれる。その笑顔もとても魅力的で。
「2人のことを女の子として意識するようになって。一緒にいると、ドキドキすることが増えて。あおいと愛実が海老名さんと一緒にお泊まりしたとき、窓を開けて話しただろう? あのとき、2人が『大好き!』って言ってくれて。あの直後に俺は……2人のことが女性として好きなんだって自覚したんだ。あおいも愛実も好きだよ」
「涼我君……」
「リョウ君……」
家の玄関灯や道路の街灯くらいしか灯りがないけど、あおいと愛実の顔が頬を中心に赤くなっていくのが分かった。
あおいと愛実に初めて好きだと言ったから、頬が熱くなっている。きっと、2人のように頬が赤くなっているんだろうな。
「好きだって自覚したとき、2人のことをしっかりと考えて、どちらかと付き合おうって決めた。でも、2人がとても魅力的だから、なかなか答えが出なくて。だから、メッセージで道本や鈴木と、佐藤先生とは偶然会ったから直接相談して。色々な考え方をアドバイスしてもらって。その上でよく考えて……数日前、花火大会に行こうって2人がメッセージをくれたときに、返事が決まったよ」
3人以外にも、鈴木との馴れ初めを話してくれた須藤さんや、振ってしまったけど、告白してくれたことであおいと愛実が特別な存在だと気付かせてくれた海老名さんのおかげでもある。
あおいから告白されて1ヶ月半。愛実から告白されて1ヶ月。
俺が心に決めた返事は――。
「愛実の告白を受け入れて、愛実と恋人として付き合うことに決めたよ」
俺が選んだ相手は……香川愛実。
小学1年生から10年間ずっと一緒にいる香川愛実だ。
「そして、あおい。あおいからの告白は……お断りします。1ヶ月半も待たせて。断って。本当にごめんなさい」
俺はあおいに向かって深く頭を下げた。
返事を1ヶ月半待った末に、告白を断られて。あおいはどんな想いを抱いているだろう。どんな顔をしているだろう。柔らかく吹く風が妙に冷たく感じられる。
「……顔を上げてください、涼我君」
静かに震えた声で、あおいはそう言った。
ゆっくりと顔を上げると、目の前には両目に涙を浮かべる愛実とあおいの姿があった。ただ、2人の涙の種類は全く違うだろう。その証拠に愛実は微笑んでいて、あおいは悲しそうな笑顔になっているから。
「いつまでも待っていると言いました。それに、愛実ちゃんが告白したとき、強力なライバルが現れたと思いました。フラれることも覚悟していました。なので、謝る必要はありませんよ、涼我君。ちゃんと返事をしてくれて……嬉しいです。フラれて……ショックではありますけどね」
あおいは涙を流しながらも微笑みかけてくれる。この状況でも微笑みを見せられるとは。あおいは強い女の子だと思う。
「どうして、愛実ちゃんと付き合いたいと決めたのですか? その理由を知りたいです」
「私も……知りたい」
愛実とあおいは涙が浮かぶ目で俺を見つめながら、そう問いかけてくる。
「愛実にもあおいにも一緒にいたい気持ちと、離れたら寂しい気持ちを強く抱いている。ただ……愛実の方がそれらの気持ちがより強く抱いているからだよ」
道本、鈴木、佐藤先生に相談し、アドバイスをもらった上で辿り着けた想いだ。
「愛実が引っ越してきてから10年以上一緒にいて、愛実は俺にとって大切な幼馴染になった。愛実と出会って、一緒にいて、笑顔を見せてくれたおかげで、あおいが引っ越して離れたことの寂しさを乗り越えられたんだよ。愛実は隣に住んでいて、同じクラスでも楽しいことがいっぱいで」
「リョウ君……」
「ただ、辛いこともあった。一緒にいる大切な人だから、3年前の交通事故のときは愛実を失いたくない一心で愛実を助けようとした。その結果、俺が大けがをして、愛実を泣かせてしまった。ただ、愛実がリハビリや退院してからの学校生活をサポートしてくれたから、事故直後の一番辛い時期を乗り越えられたと思っているよ」
辛いことはあったけど、愛実と過ごしてきた10年間の日々を思い返すと胸がとても温かくなる。そうなるのは道本や海老名さんといった友人達がいて、今年の春にあおいが調津に帰ってきてくれたおかげでもある。
「10年ぶりに再会したあおいともう二度と離れたくない気持ちもある。デートしたり、お泊まりしたりしてその気持ちが強くなった。でも、それ以上に……出会ってから10年間ずっと一緒にいた愛実と離れたくない気持ちの方が強いんだ。離れたことを想像したら、愛実の方がより寂しく思えたんだ。だから、これからも愛実と一緒にいて、愛実と恋人として付き合って一緒に幸せになりたいと思った。もちろん、優しいところとか、笑顔が可愛いところとか好きなところもいっぱいある。それが、愛実を選んだ理由です」
愛実とあおいを交互に見ながら、俺は愛実を選んだ理由を話した。今の説明で、愛実もあおいも少しは納得してくれただろうか。
好きな想いと理由を伝えたから、体が凄く熱くなって、ドキドキしている。あおいも愛実も海老名さんも俺に告白してくれたときはこういう感じだったのかな。
あおいは右手で、両目に浮かんだ涙を拭い、
「そういう理由ですか。愛実ちゃんは素敵な女の子ですし、涼我君と10年間一緒にいますもんね。調津に引っ越して、愛実ちゃんと出会って5ヶ月ほどですが、涼我君にとって愛実ちゃんがとても大きな存在なのだと実感しています。もちろん、愛実ちゃんにとっての涼我君も。ですから……納得しました」
俺のことを見つめながら、あおいらしい明るい笑顔でそう言った。あおいの今の言葉が胸に優しく響く。
「愛実。改めて言うよ。愛実のことが好きです。愛実の返事を受け入れて、愛実と恋人として付き合いたいです。そんな俺の返事を……受け入れてくれますか」
愛実の目を見つめて、俺はしっかりとした口調で返事の言葉を改めて言った。
愛実は満面の笑みを浮かべ、涙をポロポロと流しながら、
「……はい。リョウ君からの返事……とても嬉しいです。ありがとう。これからは恋人としてよろしくお願いします」
俺の返事を受け入れると言ってくれた。
この瞬間、俺と愛実は幼馴染としてだけでなく、恋人という関係にもなった。それがとても嬉しくて、俺は愛実のことを抱きしめた。
「ありがとう、愛実」
お礼を言うと、愛実は俺のことを見上げて、愛実らしい可愛らしい笑顔を見せてくれる。その笑顔は今までで一番と言っていいほどに可愛く感じられた。
「……んっ」
可愛らしい声を漏らすと、愛実はゆっくりと目を閉じて、唇を少し突き出してくる、……キスしてってことか。
キス待ちをする愛実の顔はとても可愛くて。いつまでも見ていたいけど、愛実を待たせるわけにはいかない。
あおいに見られていることの緊張もある中、俺は愛実にキスする。
愛実の唇からは独特の柔らかさと温もりが伝わってくる。ただ、恋人になってからは初めてのキスだから、愛実の温もりがとても優しく感じられた。
俺から唇を離すと、すぐ目の前には愛実のとても嬉しそうな笑顔が見える。この笑顔を守りたい。いつも、いつまでも……愛実が笑顔でいられるように頑張ろうと思った。
「リョウ君から初めてキスしてくれたね。とてもいいキスでした」
満足そうな笑顔で愛実はそう言ってくれた。
そういえば、今まで何度か愛実とキスしたことあるけど、全て愛実からしたものだったな。あおいとのキスを含めて、自分からしたのはこれが初めてだ。
――パチパチ!
すぐ近くから、あおいは爽やかな笑顔で拍手を送っている。
「涼我君、愛実ちゃん、おめでとうございます! いつまでも仲良くしてくださいね!」
「ありがとう、あおい」
「ありがとう、あおいちゃん」
幼馴染のあおいに祝ってもらえてとても嬉しい。
俺にフラれて。ライバルの愛実が俺と付き合うことになって。俺と愛実がキスする瞬間を見ても、笑顔で祝福するあおいはとても優しい女の子だと思う。
「涼我君にフラれてしまいましたが、涼我君に恋をしたことで、高2の夏はとても素敵な夏になりました。本当にありがとうございました」
「いえいえ。俺もあおいと愛実のおかげで、今年の夏は素敵で思い出深い夏になったよ」
「良かったです。……あと、お二人が恋人になりましたので、頻度は減るかもしれませんが、これからも3人で一緒にアニメを観たいです。いいですか?」
「もちろんいいよ、あおいちゃん。3人でアニメ観るの楽しいから」
「愛実の言う通りだな」
「ありがとうございますっ!」
あおいはいつもの明るく元気な笑顔でそう言った。
あおいが調津に帰ってきてから、愛実とあおいと3人でアニメを観ることが日常の一部になっているからな。あおいの言うように頻度が減る可能性はあるけど、これからも続けていきたい。
「あと……涼我君を好きな気持ちを持ち続けていてもいいですか? その気持ちがあると、これからもより元気でいられそうな気がして」
あおいはそう問いかけると、俺と愛実のことを交互に見てくる。
思い返すと、あおいは再会してからもずっと元気だったけど、好きだって告白してからはより元気になっていたな。
「私はかまわないよ。誰かを好きな気持ちを持つと、毎日が楽しくて、何だか元気になれることを知っているから。リョウ君を好きになってからがそうだし」
「あおいが元気でいられるなら、俺も好きな気持ちを持っていてかまわないよ」
「……そう言ってくれて嬉しいです。ありがとうございますっ!」
あおいは持ち前の明るくて、とても可愛らしい笑顔でそう言う。俺への好意があってこういう笑顔になれるのなら、ずっと持ち続けていいと思う。愛実もあおいに可愛らしい笑顔を見せているし。
「涼我君。これからも幼馴染として仲良くしてもらえると嬉しいです」
「もちろんだよ、あおい。幼馴染としてこれからもよろしくな」
「はいっ! よろしくお願いします!」
あおいは元気良く、そして嬉しそうに返事する。もしかしたら、フラれたら幼馴染としての関係が切れてしまうと考えていたのかもしれない。
俺の恋人になった愛実はもちろん、振ったあおいも笑顔になって良かった。2人のことをしっかり考えて、自分の言葉で返事を伝えられたからだろうか。2人の笑顔のためにも、愛実と一緒に幸せになっていこう。
あおいと愛実にさっそく本題を切り出す。
告白の返事と言ったからか、あおいは真剣な表情に、愛実はちょっと緊張しい様子になる。俺がどんな返事をするのか期待や不安があるのだろう。
あおいと愛実はこの場所で俺に好きだと告白してくれた。だから、俺も2人に想いをしっかりと伝えよう。
「まずは……2人とも。俺に好きだって告白してくれてありがとう。告白されてから、毎日がより楽しい日々になったよ」
「私もですよ、涼我君」
「私も告白できて良かったって思っているよ。リョウ君とより近い関係になれた気がするから」
あおいも愛実も笑顔になってそう言ってくれる。その笑顔もとても魅力的で。
「2人のことを女の子として意識するようになって。一緒にいると、ドキドキすることが増えて。あおいと愛実が海老名さんと一緒にお泊まりしたとき、窓を開けて話しただろう? あのとき、2人が『大好き!』って言ってくれて。あの直後に俺は……2人のことが女性として好きなんだって自覚したんだ。あおいも愛実も好きだよ」
「涼我君……」
「リョウ君……」
家の玄関灯や道路の街灯くらいしか灯りがないけど、あおいと愛実の顔が頬を中心に赤くなっていくのが分かった。
あおいと愛実に初めて好きだと言ったから、頬が熱くなっている。きっと、2人のように頬が赤くなっているんだろうな。
「好きだって自覚したとき、2人のことをしっかりと考えて、どちらかと付き合おうって決めた。でも、2人がとても魅力的だから、なかなか答えが出なくて。だから、メッセージで道本や鈴木と、佐藤先生とは偶然会ったから直接相談して。色々な考え方をアドバイスしてもらって。その上でよく考えて……数日前、花火大会に行こうって2人がメッセージをくれたときに、返事が決まったよ」
3人以外にも、鈴木との馴れ初めを話してくれた須藤さんや、振ってしまったけど、告白してくれたことであおいと愛実が特別な存在だと気付かせてくれた海老名さんのおかげでもある。
あおいから告白されて1ヶ月半。愛実から告白されて1ヶ月。
俺が心に決めた返事は――。
「愛実の告白を受け入れて、愛実と恋人として付き合うことに決めたよ」
俺が選んだ相手は……香川愛実。
小学1年生から10年間ずっと一緒にいる香川愛実だ。
「そして、あおい。あおいからの告白は……お断りします。1ヶ月半も待たせて。断って。本当にごめんなさい」
俺はあおいに向かって深く頭を下げた。
返事を1ヶ月半待った末に、告白を断られて。あおいはどんな想いを抱いているだろう。どんな顔をしているだろう。柔らかく吹く風が妙に冷たく感じられる。
「……顔を上げてください、涼我君」
静かに震えた声で、あおいはそう言った。
ゆっくりと顔を上げると、目の前には両目に涙を浮かべる愛実とあおいの姿があった。ただ、2人の涙の種類は全く違うだろう。その証拠に愛実は微笑んでいて、あおいは悲しそうな笑顔になっているから。
「いつまでも待っていると言いました。それに、愛実ちゃんが告白したとき、強力なライバルが現れたと思いました。フラれることも覚悟していました。なので、謝る必要はありませんよ、涼我君。ちゃんと返事をしてくれて……嬉しいです。フラれて……ショックではありますけどね」
あおいは涙を流しながらも微笑みかけてくれる。この状況でも微笑みを見せられるとは。あおいは強い女の子だと思う。
「どうして、愛実ちゃんと付き合いたいと決めたのですか? その理由を知りたいです」
「私も……知りたい」
愛実とあおいは涙が浮かぶ目で俺を見つめながら、そう問いかけてくる。
「愛実にもあおいにも一緒にいたい気持ちと、離れたら寂しい気持ちを強く抱いている。ただ……愛実の方がそれらの気持ちがより強く抱いているからだよ」
道本、鈴木、佐藤先生に相談し、アドバイスをもらった上で辿り着けた想いだ。
「愛実が引っ越してきてから10年以上一緒にいて、愛実は俺にとって大切な幼馴染になった。愛実と出会って、一緒にいて、笑顔を見せてくれたおかげで、あおいが引っ越して離れたことの寂しさを乗り越えられたんだよ。愛実は隣に住んでいて、同じクラスでも楽しいことがいっぱいで」
「リョウ君……」
「ただ、辛いこともあった。一緒にいる大切な人だから、3年前の交通事故のときは愛実を失いたくない一心で愛実を助けようとした。その結果、俺が大けがをして、愛実を泣かせてしまった。ただ、愛実がリハビリや退院してからの学校生活をサポートしてくれたから、事故直後の一番辛い時期を乗り越えられたと思っているよ」
辛いことはあったけど、愛実と過ごしてきた10年間の日々を思い返すと胸がとても温かくなる。そうなるのは道本や海老名さんといった友人達がいて、今年の春にあおいが調津に帰ってきてくれたおかげでもある。
「10年ぶりに再会したあおいともう二度と離れたくない気持ちもある。デートしたり、お泊まりしたりしてその気持ちが強くなった。でも、それ以上に……出会ってから10年間ずっと一緒にいた愛実と離れたくない気持ちの方が強いんだ。離れたことを想像したら、愛実の方がより寂しく思えたんだ。だから、これからも愛実と一緒にいて、愛実と恋人として付き合って一緒に幸せになりたいと思った。もちろん、優しいところとか、笑顔が可愛いところとか好きなところもいっぱいある。それが、愛実を選んだ理由です」
愛実とあおいを交互に見ながら、俺は愛実を選んだ理由を話した。今の説明で、愛実もあおいも少しは納得してくれただろうか。
好きな想いと理由を伝えたから、体が凄く熱くなって、ドキドキしている。あおいも愛実も海老名さんも俺に告白してくれたときはこういう感じだったのかな。
あおいは右手で、両目に浮かんだ涙を拭い、
「そういう理由ですか。愛実ちゃんは素敵な女の子ですし、涼我君と10年間一緒にいますもんね。調津に引っ越して、愛実ちゃんと出会って5ヶ月ほどですが、涼我君にとって愛実ちゃんがとても大きな存在なのだと実感しています。もちろん、愛実ちゃんにとっての涼我君も。ですから……納得しました」
俺のことを見つめながら、あおいらしい明るい笑顔でそう言った。あおいの今の言葉が胸に優しく響く。
「愛実。改めて言うよ。愛実のことが好きです。愛実の返事を受け入れて、愛実と恋人として付き合いたいです。そんな俺の返事を……受け入れてくれますか」
愛実の目を見つめて、俺はしっかりとした口調で返事の言葉を改めて言った。
愛実は満面の笑みを浮かべ、涙をポロポロと流しながら、
「……はい。リョウ君からの返事……とても嬉しいです。ありがとう。これからは恋人としてよろしくお願いします」
俺の返事を受け入れると言ってくれた。
この瞬間、俺と愛実は幼馴染としてだけでなく、恋人という関係にもなった。それがとても嬉しくて、俺は愛実のことを抱きしめた。
「ありがとう、愛実」
お礼を言うと、愛実は俺のことを見上げて、愛実らしい可愛らしい笑顔を見せてくれる。その笑顔は今までで一番と言っていいほどに可愛く感じられた。
「……んっ」
可愛らしい声を漏らすと、愛実はゆっくりと目を閉じて、唇を少し突き出してくる、……キスしてってことか。
キス待ちをする愛実の顔はとても可愛くて。いつまでも見ていたいけど、愛実を待たせるわけにはいかない。
あおいに見られていることの緊張もある中、俺は愛実にキスする。
愛実の唇からは独特の柔らかさと温もりが伝わってくる。ただ、恋人になってからは初めてのキスだから、愛実の温もりがとても優しく感じられた。
俺から唇を離すと、すぐ目の前には愛実のとても嬉しそうな笑顔が見える。この笑顔を守りたい。いつも、いつまでも……愛実が笑顔でいられるように頑張ろうと思った。
「リョウ君から初めてキスしてくれたね。とてもいいキスでした」
満足そうな笑顔で愛実はそう言ってくれた。
そういえば、今まで何度か愛実とキスしたことあるけど、全て愛実からしたものだったな。あおいとのキスを含めて、自分からしたのはこれが初めてだ。
――パチパチ!
すぐ近くから、あおいは爽やかな笑顔で拍手を送っている。
「涼我君、愛実ちゃん、おめでとうございます! いつまでも仲良くしてくださいね!」
「ありがとう、あおい」
「ありがとう、あおいちゃん」
幼馴染のあおいに祝ってもらえてとても嬉しい。
俺にフラれて。ライバルの愛実が俺と付き合うことになって。俺と愛実がキスする瞬間を見ても、笑顔で祝福するあおいはとても優しい女の子だと思う。
「涼我君にフラれてしまいましたが、涼我君に恋をしたことで、高2の夏はとても素敵な夏になりました。本当にありがとうございました」
「いえいえ。俺もあおいと愛実のおかげで、今年の夏は素敵で思い出深い夏になったよ」
「良かったです。……あと、お二人が恋人になりましたので、頻度は減るかもしれませんが、これからも3人で一緒にアニメを観たいです。いいですか?」
「もちろんいいよ、あおいちゃん。3人でアニメ観るの楽しいから」
「愛実の言う通りだな」
「ありがとうございますっ!」
あおいはいつもの明るく元気な笑顔でそう言った。
あおいが調津に帰ってきてから、愛実とあおいと3人でアニメを観ることが日常の一部になっているからな。あおいの言うように頻度が減る可能性はあるけど、これからも続けていきたい。
「あと……涼我君を好きな気持ちを持ち続けていてもいいですか? その気持ちがあると、これからもより元気でいられそうな気がして」
あおいはそう問いかけると、俺と愛実のことを交互に見てくる。
思い返すと、あおいは再会してからもずっと元気だったけど、好きだって告白してからはより元気になっていたな。
「私はかまわないよ。誰かを好きな気持ちを持つと、毎日が楽しくて、何だか元気になれることを知っているから。リョウ君を好きになってからがそうだし」
「あおいが元気でいられるなら、俺も好きな気持ちを持っていてかまわないよ」
「……そう言ってくれて嬉しいです。ありがとうございますっ!」
あおいは持ち前の明るくて、とても可愛らしい笑顔でそう言う。俺への好意があってこういう笑顔になれるのなら、ずっと持ち続けていいと思う。愛実もあおいに可愛らしい笑顔を見せているし。
「涼我君。これからも幼馴染として仲良くしてもらえると嬉しいです」
「もちろんだよ、あおい。幼馴染としてこれからもよろしくな」
「はいっ! よろしくお願いします!」
あおいは元気良く、そして嬉しそうに返事する。もしかしたら、フラれたら幼馴染としての関係が切れてしまうと考えていたのかもしれない。
俺の恋人になった愛実はもちろん、振ったあおいも笑顔になって良かった。2人のことをしっかり考えて、自分の言葉で返事を伝えられたからだろうか。2人の笑顔のためにも、愛実と一緒に幸せになっていこう。
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