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最終章
第51話『デートからの帰り。そして。』
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サマーベッドで30分ほどゆっくりした後は、ウォータースライダーで1人用の浮き輪に乗って滑ったり、レンタルコーナーで借りた大人用のアームリングを装着して流れるプールでゆったりしたりと、あおいとのプールデートを楽しんでいく。
あおいも楽しんでいるようで、あおいは俺に笑顔をたくさん見せてくれて。そのことがとても嬉しくて、心が温まることが何度もあった。
「あっ、もう6時を過ぎていたんですね」
あおいは目を見開きながらそう言う。
あおいの視線の先には大きめのアナログ時計がある。その時計の針は午後6時過ぎを示していた。
「もうこんな時間なのか。遊ぶのに夢中になっていたから、全然気付かなかった」
「私もです。涼我君とプールで遊ぶのがとても楽しかったですから」
「俺もだ。楽しいと時間ってあっという間に過ぎるよな」
あおいの目を見ながらそう言うと、あおいは俺に向けてニッコリと笑いかけて「ですねっ」と言ってくれる。そのことが嬉しくて、頬が緩んでいくのが分かった。
「帰ることを考えると、遊ぶのはこれで終わるのが良さそうですが」
「そうだな。体をたくさん動かしたからお腹空いてきたし」
「ふふっ、私もです。では、今日は帰りましょうか」
「ああ、そうしよう」
その後、いっぱい遊んだ屋内プールをあおいと一緒に後にする。
水着に着替えたときと同じく、更衣室を出たところで待ち合わせすると約束して、俺は男性用更衣室の中に入っていく。
午後6時というのは区切りのいい時間帯なのだろうか。水着に着替えたときや、小銭入れを取りに言ったときなどとは違って、更衣室の中は結構な数の人がいる。中にあるシャワールームには列ができていて。
少し待った後に、シャワールームで全身の汗や汚れを洗い流した。プールと同様で、水が程良く冷たくて気持ち良かった。
ロッカーの前で水着から私服に着替える。洗面台にはドライヤーがあったので、それを使って髪を乾かした後に更衣室を出た。
「あおいはまだいないか」
あおいもシャワールームに入っていたり、髪を乾かしたりしているのだろう。あとはスキンケアとかもしているかもしれない。気長に待とう。
スマホの電源を切っていたので、電源を入れると……LIMEに色々なアカウントからメッセージや画像が届いている。その大半が好きなアニメやアーティストの公式アカウントだけど、
「おっ、あおいからいくつも届いてる」
時刻は……俺達がここに来たあたりか。
あおいとのトーク画面を開くと、水着に着替えた直後にここで撮ったあおいとのツーショット写真が何枚も表示される。そういえば、写真を撮るときにLIMEで俺に送るって言っていたっけ。プールで遊び終わり、水着姿のあおいを見られなくなることを名残惜しく思っていたので、写真でもあおいの水着姿を見られることが嬉しい。そう思いながら、あおいが送ってくれた写真を全て保存した。
『今、写真見たよ。送ってくれてありがとう。いい写真だ。更衣室の前で待っているから。ゆっくりでいいからな』
というメッセージを送った。
俺が送信したことに気付いたのか、送信してから10秒ほどで『既読』マークが付き、
『ありがとうございます。髪を乾かすだけなので、もう少しでそっちに行けると思います』
という返信が届いた。あとは髪を乾かすだけか。いつまでも待つけど、あと少しだって分かると嬉しい気持ちになる。
あおいからのメッセージを受け取ってから数分ほど。
「お待たせしました」
私服姿になったあおいが女性用の更衣室から出てきた。
「何時間も水着姿でいたから、その服を見るのが久しぶりに思えるな」
「ふふっ、そうですか。そう言われると、私も涼我君のその服装が久しぶりに思えてきます」
「ははっ。じゃあ、帰るか」
「はいっ」
あおいは笑顔で手を繋いできた。
俺達はスイムブルー八神を後にして、清王八神駅に向かって歩き始める。
ちょうど日の入りの時間帯のようで、夜の帳が下りてきている。それもあって、スイムブルー八神に来たときに比べると暑さが和らいでいる。
「お昼過ぎと比べて過ごしやすい気温になっていますね」
「そうだな。空も結構暗くなっているからかな。少しずつ秋が近づいているんだなって思うよ」
「ですね。夏休みが始まった直後は夜でも結構蒸し暑かったですから」
「そうだな。夜までバイトがあると、バイト帰りの蒸し暑さがちょっとキツかったな」
「分かります。バイトの後で疲れていますし。あと、お店は涼しいですからね」
「そうそう」
と、俺はあおいと笑い合う。バイト先は違うけど、バイト絡みの内容で話が合うことに嬉しさを感じる。
「初めて来る街ですし、暗くなってきましたから、旅先を歩いているような感じがします」
「そうか。俺も旅行に行くとホテルの周りを歩いたり、コンビニでお菓子を買ったりしたなぁ。親とか愛実とかと一緒に」
「私も旅先では夜に散歩しますね。歩いているだけでもワクワクするんですよね」
「分かる。普段は夜にあまり歩かないし、知らない場所だからかな」
「そうかもしれませんね。……今はとてもワクワクしていますよ。涼我君と一緒ですから。こういう時間を涼我君と2人きりで過ごせることが嬉しいです」
あおいはニッコリとしながら俺にそう言ってくれる。そのことに胸がとても温かくなって。日が暮れて、涼しさも感じられるようになってきたけど、体が熱くなっていくのが分かった。
「俺も……嬉しいよ」
「そうですかっ」
可愛い声でそう言うと、あおいは俺の手を今一度しっかりと握った。
あおいと話していたのもあり、清王八神駅までにはあっという間に到着した。
改札を通り、電光掲示板を見ると……あと2分で特急電車が発車するらしい。ここは始発駅なので既に電車は到着している。中を見ると……帰宅ラッシュなのもあってか、席は全て埋まっていた。なので、特急電車の10分後に発車する急行電車に乗ることにした。そちらの電車も既に停車していたが、後発の電車なのもあり座ることができた。
「始発駅だと、少し待てば必ず座れるのがいいですね」
「そうだな。あと、調津駅が全ての種別の電車が停車するのも助かる」
「途中で乗り換えなくていいですもんね。あと、1本遅い電車に乗って良かったです。こうして涼我君と隣同士に座る時間が長くなりますから」
あおいはそう言い、俺にそっと身を寄せてきた。その仕草もあって、今のあおいの言葉に結構ドキッとした。
俺達の乗る急行電車は定刻通りに発車する。
車内にある液晶ディスプレイを見ると……停車駅が同じなのか、特急電車と同じく調津駅までは25分で到着するらしい。もう少し停車駅を多くしてもいい気がするけど。
あおいと今日のプールデートのことや、これまでプールで遊んだときのことなどの話をしていく。互いのスマホに入っている写真も見せたこともあり、結構盛り上がって。それもあってか、調津駅まではあっという間だった。
調津駅に到着し、駅を出た頃には空は完全に暗くなっていた。ただ、建物や街灯の灯りもあって、街自体はあまり暗く感じない。
「バイト終わりに偶然会うのを除いたら、涼我君と夜の調津の街を歩くのはいつ以来でしょうか」
「う~ん……七夕祭り以来かな」
「七夕祭り以来ですか。久しぶりの七夕祭りでしたが、みんなで行って楽しかったですね。七夕祭りの前は……2年生になった直後に行った遊園地以来でしょうか?」
「そうかもしれない」
「やっぱり。遊園地もみんなで行って楽しかったですね」
「楽しかったよなぁ」
「……調津に戻ってきて5ヶ月近くになりますけど、楽しいことがいっぱいあったなって思います。その一番の理由は涼我君が隣にいるからですよ」
あおいは持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれる。暗くなっているけど、あおいの笑顔はキラキラと輝いて見えて。そんなあおいにキュンとなる。
「嬉しいな。俺もあおいが調津に戻ってきてくれたから、この5ヶ月近くがとても楽しくて、素敵な日々になっているよ。ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ素敵な日々をありがとうございます」
あおいは明るい笑顔でお礼を言った。
これからも、あおいが調津で過ごす日々を楽しいと思ってもらえるためにも、俺はちゃんとあおいと愛実の告白の返事をしないといけないと改めて思う。
あおいと談笑しながら歩いていると、あおい、俺、愛実のそれぞれの自宅が見えてきた。どの家も灯りが点いている。帰る場所に誰かがいると思えて、ほっとする。
あおいの家の前に到着し、俺達は歩みを止める。
「あおい。今日はプールデートに誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」
「私も楽しかったです! 誘って良かったです」
ニコリと笑いながらあおいは言う。あおいにとっても楽しいデートの時間になったようで嬉しい。
あおいは俺の手を離すと、あおいは俺のすぐ目の前に立つ。あおいの家からの灯りによって、あおいの顔が頬を中心に赤くなっていることが分かった。
「プールでいっぱい遊んで涼我君の笑顔をたくさん見て。ナンパから助けてもらったことで、涼我君が優しくてかっこいいと改めて思って。今日のプールデートを通じて、涼我君のことがもっと好きになりました」
そう言うと、あおいはゆっくりと顔を近づけてくる。
俺の視界があおいの顔で埋め尽くされる中、唇に柔らかくて、とても優しい温もりを感じるように。あおいの甘い匂いも濃く香ってきて。
俺……あおいにキスされているんだ。
これまでキスの経験がないから、この感覚は初めてで。でも、キスしてきたのがあおいだから、心地良く思え、ドキドキしてくる。
キスされてから10秒ほどして、あおいからゆっくりと唇を離した。そのことで、俺の目の前には、真っ赤な顔に恍惚とした笑みを浮かべるあおいがいて。
「告白したとき、唇へのキスは付き合ってからと言いました。でも、その我慢ができなくなっちゃいました。そのくらいに涼我君のことが大好きです」
「……唇を通じて伝わってきたよ」
「そうですかっ。ちなみに、これが私のファーストキスです。涼我君はどうですか? 愛実ちゃんと……もう経験がありますか?」
「……俺も、今のがファーストキスだよ」
「そうですか! 涼我君の初めてをもらえて嬉しいですっ」
その言葉が心からのものであると示すように、あおいは凄く嬉しそうな表情を見せてくる。あおいとキスして、あおいのファーストキスをもらったのもあり、あおいの笑顔を見ていると物凄くドキドキする。体が熱くなる。
「これからも大好きな涼我君と楽しい時間を過ごしていきたいです。あと……今日の楽しい時間をここで終わらせたくないです。ですから、今夜は私の家でお泊まりしませんか? 昔のように、私の家で涼我君と一緒に夜の時間を過ごしたいです」
そうお願いすると、あおいは俺のことを上目遣いで見つめてくる。俺の着ているVネックシャツの裾も掴んできて。
あおいの家にお泊まりか。幼稚園の頃は何度もあったけど、再会してからは一度もない。
ゴールデンウィークに俺の家であおいとお泊まりしたけど、あのときは愛実と3人一緒だった。2人から告白される前だったし、2人の幼馴染との久しぶりのお泊まりという側面が強かった。
ただ、今回は違う。あおいに好きだと告白されて。キスもされて。俺もあおいが好きだと自覚して。そういった状況の中で、あおいの家に泊まり、2人きりで一夜を明かす。それはいいのだろうか。付き合っているならもちろんいいだろうけど、そうでない2人が。そんなことを考えていると、愛実の笑顔が不意に頭によぎって。
ただ、プールデートからの楽しい時間を終わらせたくない気持ちもあって。あと、あおいが言った「昔のように」という言葉に俺の心がぎゅっと掴まれる。
「……分かったよ、あおい」
「涼我君……!」
「ただ、お互いに親から許可をもらえたらな。あと、うちで夕食を用意してくれているから、夕食を食べた後に行く形になると思う。それでいいなら」
「もちろんいいですよっ!」
あおい、凄く嬉しそうだ。満面の笑顔になっている。この笑顔を見ると、両親が許可を出してほしいと強く願う。
「じゃあ、涼我君。できれば、また後で」
「ああ。できればまた後で」
あおいと特殊な別れの挨拶を交わした後、俺は帰宅する。
午後7時過ぎという時間もあって、母さんだけでなく父さんも帰宅していた。
あおいに泊まりに誘われたから泊まりに行ってもいいかと両親に尋ねると、「あおいちゃんの家なら、相手の御両親がOKを出せばかまわない」と条件付きに許可してくれた。
あおいに「御両親がOKを出せば泊まっていい」とメッセージを送る。すると、1分ほどして、
『こちらも許可が出ました! では、夕飯を食べたらうちに来てください! お待ちしていますね!』
という返信が届いた。あおいの嬉しそうな笑顔が目に浮かぶよ。
こうして、今夜はあおいの家にお泊まりすることが決まった。
あおいも楽しんでいるようで、あおいは俺に笑顔をたくさん見せてくれて。そのことがとても嬉しくて、心が温まることが何度もあった。
「あっ、もう6時を過ぎていたんですね」
あおいは目を見開きながらそう言う。
あおいの視線の先には大きめのアナログ時計がある。その時計の針は午後6時過ぎを示していた。
「もうこんな時間なのか。遊ぶのに夢中になっていたから、全然気付かなかった」
「私もです。涼我君とプールで遊ぶのがとても楽しかったですから」
「俺もだ。楽しいと時間ってあっという間に過ぎるよな」
あおいの目を見ながらそう言うと、あおいは俺に向けてニッコリと笑いかけて「ですねっ」と言ってくれる。そのことが嬉しくて、頬が緩んでいくのが分かった。
「帰ることを考えると、遊ぶのはこれで終わるのが良さそうですが」
「そうだな。体をたくさん動かしたからお腹空いてきたし」
「ふふっ、私もです。では、今日は帰りましょうか」
「ああ、そうしよう」
その後、いっぱい遊んだ屋内プールをあおいと一緒に後にする。
水着に着替えたときと同じく、更衣室を出たところで待ち合わせすると約束して、俺は男性用更衣室の中に入っていく。
午後6時というのは区切りのいい時間帯なのだろうか。水着に着替えたときや、小銭入れを取りに言ったときなどとは違って、更衣室の中は結構な数の人がいる。中にあるシャワールームには列ができていて。
少し待った後に、シャワールームで全身の汗や汚れを洗い流した。プールと同様で、水が程良く冷たくて気持ち良かった。
ロッカーの前で水着から私服に着替える。洗面台にはドライヤーがあったので、それを使って髪を乾かした後に更衣室を出た。
「あおいはまだいないか」
あおいもシャワールームに入っていたり、髪を乾かしたりしているのだろう。あとはスキンケアとかもしているかもしれない。気長に待とう。
スマホの電源を切っていたので、電源を入れると……LIMEに色々なアカウントからメッセージや画像が届いている。その大半が好きなアニメやアーティストの公式アカウントだけど、
「おっ、あおいからいくつも届いてる」
時刻は……俺達がここに来たあたりか。
あおいとのトーク画面を開くと、水着に着替えた直後にここで撮ったあおいとのツーショット写真が何枚も表示される。そういえば、写真を撮るときにLIMEで俺に送るって言っていたっけ。プールで遊び終わり、水着姿のあおいを見られなくなることを名残惜しく思っていたので、写真でもあおいの水着姿を見られることが嬉しい。そう思いながら、あおいが送ってくれた写真を全て保存した。
『今、写真見たよ。送ってくれてありがとう。いい写真だ。更衣室の前で待っているから。ゆっくりでいいからな』
というメッセージを送った。
俺が送信したことに気付いたのか、送信してから10秒ほどで『既読』マークが付き、
『ありがとうございます。髪を乾かすだけなので、もう少しでそっちに行けると思います』
という返信が届いた。あとは髪を乾かすだけか。いつまでも待つけど、あと少しだって分かると嬉しい気持ちになる。
あおいからのメッセージを受け取ってから数分ほど。
「お待たせしました」
私服姿になったあおいが女性用の更衣室から出てきた。
「何時間も水着姿でいたから、その服を見るのが久しぶりに思えるな」
「ふふっ、そうですか。そう言われると、私も涼我君のその服装が久しぶりに思えてきます」
「ははっ。じゃあ、帰るか」
「はいっ」
あおいは笑顔で手を繋いできた。
俺達はスイムブルー八神を後にして、清王八神駅に向かって歩き始める。
ちょうど日の入りの時間帯のようで、夜の帳が下りてきている。それもあって、スイムブルー八神に来たときに比べると暑さが和らいでいる。
「お昼過ぎと比べて過ごしやすい気温になっていますね」
「そうだな。空も結構暗くなっているからかな。少しずつ秋が近づいているんだなって思うよ」
「ですね。夏休みが始まった直後は夜でも結構蒸し暑かったですから」
「そうだな。夜までバイトがあると、バイト帰りの蒸し暑さがちょっとキツかったな」
「分かります。バイトの後で疲れていますし。あと、お店は涼しいですからね」
「そうそう」
と、俺はあおいと笑い合う。バイト先は違うけど、バイト絡みの内容で話が合うことに嬉しさを感じる。
「初めて来る街ですし、暗くなってきましたから、旅先を歩いているような感じがします」
「そうか。俺も旅行に行くとホテルの周りを歩いたり、コンビニでお菓子を買ったりしたなぁ。親とか愛実とかと一緒に」
「私も旅先では夜に散歩しますね。歩いているだけでもワクワクするんですよね」
「分かる。普段は夜にあまり歩かないし、知らない場所だからかな」
「そうかもしれませんね。……今はとてもワクワクしていますよ。涼我君と一緒ですから。こういう時間を涼我君と2人きりで過ごせることが嬉しいです」
あおいはニッコリとしながら俺にそう言ってくれる。そのことに胸がとても温かくなって。日が暮れて、涼しさも感じられるようになってきたけど、体が熱くなっていくのが分かった。
「俺も……嬉しいよ」
「そうですかっ」
可愛い声でそう言うと、あおいは俺の手を今一度しっかりと握った。
あおいと話していたのもあり、清王八神駅までにはあっという間に到着した。
改札を通り、電光掲示板を見ると……あと2分で特急電車が発車するらしい。ここは始発駅なので既に電車は到着している。中を見ると……帰宅ラッシュなのもあってか、席は全て埋まっていた。なので、特急電車の10分後に発車する急行電車に乗ることにした。そちらの電車も既に停車していたが、後発の電車なのもあり座ることができた。
「始発駅だと、少し待てば必ず座れるのがいいですね」
「そうだな。あと、調津駅が全ての種別の電車が停車するのも助かる」
「途中で乗り換えなくていいですもんね。あと、1本遅い電車に乗って良かったです。こうして涼我君と隣同士に座る時間が長くなりますから」
あおいはそう言い、俺にそっと身を寄せてきた。その仕草もあって、今のあおいの言葉に結構ドキッとした。
俺達の乗る急行電車は定刻通りに発車する。
車内にある液晶ディスプレイを見ると……停車駅が同じなのか、特急電車と同じく調津駅までは25分で到着するらしい。もう少し停車駅を多くしてもいい気がするけど。
あおいと今日のプールデートのことや、これまでプールで遊んだときのことなどの話をしていく。互いのスマホに入っている写真も見せたこともあり、結構盛り上がって。それもあってか、調津駅まではあっという間だった。
調津駅に到着し、駅を出た頃には空は完全に暗くなっていた。ただ、建物や街灯の灯りもあって、街自体はあまり暗く感じない。
「バイト終わりに偶然会うのを除いたら、涼我君と夜の調津の街を歩くのはいつ以来でしょうか」
「う~ん……七夕祭り以来かな」
「七夕祭り以来ですか。久しぶりの七夕祭りでしたが、みんなで行って楽しかったですね。七夕祭りの前は……2年生になった直後に行った遊園地以来でしょうか?」
「そうかもしれない」
「やっぱり。遊園地もみんなで行って楽しかったですね」
「楽しかったよなぁ」
「……調津に戻ってきて5ヶ月近くになりますけど、楽しいことがいっぱいあったなって思います。その一番の理由は涼我君が隣にいるからですよ」
あおいは持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれる。暗くなっているけど、あおいの笑顔はキラキラと輝いて見えて。そんなあおいにキュンとなる。
「嬉しいな。俺もあおいが調津に戻ってきてくれたから、この5ヶ月近くがとても楽しくて、素敵な日々になっているよ。ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ素敵な日々をありがとうございます」
あおいは明るい笑顔でお礼を言った。
これからも、あおいが調津で過ごす日々を楽しいと思ってもらえるためにも、俺はちゃんとあおいと愛実の告白の返事をしないといけないと改めて思う。
あおいと談笑しながら歩いていると、あおい、俺、愛実のそれぞれの自宅が見えてきた。どの家も灯りが点いている。帰る場所に誰かがいると思えて、ほっとする。
あおいの家の前に到着し、俺達は歩みを止める。
「あおい。今日はプールデートに誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」
「私も楽しかったです! 誘って良かったです」
ニコリと笑いながらあおいは言う。あおいにとっても楽しいデートの時間になったようで嬉しい。
あおいは俺の手を離すと、あおいは俺のすぐ目の前に立つ。あおいの家からの灯りによって、あおいの顔が頬を中心に赤くなっていることが分かった。
「プールでいっぱい遊んで涼我君の笑顔をたくさん見て。ナンパから助けてもらったことで、涼我君が優しくてかっこいいと改めて思って。今日のプールデートを通じて、涼我君のことがもっと好きになりました」
そう言うと、あおいはゆっくりと顔を近づけてくる。
俺の視界があおいの顔で埋め尽くされる中、唇に柔らかくて、とても優しい温もりを感じるように。あおいの甘い匂いも濃く香ってきて。
俺……あおいにキスされているんだ。
これまでキスの経験がないから、この感覚は初めてで。でも、キスしてきたのがあおいだから、心地良く思え、ドキドキしてくる。
キスされてから10秒ほどして、あおいからゆっくりと唇を離した。そのことで、俺の目の前には、真っ赤な顔に恍惚とした笑みを浮かべるあおいがいて。
「告白したとき、唇へのキスは付き合ってからと言いました。でも、その我慢ができなくなっちゃいました。そのくらいに涼我君のことが大好きです」
「……唇を通じて伝わってきたよ」
「そうですかっ。ちなみに、これが私のファーストキスです。涼我君はどうですか? 愛実ちゃんと……もう経験がありますか?」
「……俺も、今のがファーストキスだよ」
「そうですか! 涼我君の初めてをもらえて嬉しいですっ」
その言葉が心からのものであると示すように、あおいは凄く嬉しそうな表情を見せてくる。あおいとキスして、あおいのファーストキスをもらったのもあり、あおいの笑顔を見ていると物凄くドキドキする。体が熱くなる。
「これからも大好きな涼我君と楽しい時間を過ごしていきたいです。あと……今日の楽しい時間をここで終わらせたくないです。ですから、今夜は私の家でお泊まりしませんか? 昔のように、私の家で涼我君と一緒に夜の時間を過ごしたいです」
そうお願いすると、あおいは俺のことを上目遣いで見つめてくる。俺の着ているVネックシャツの裾も掴んできて。
あおいの家にお泊まりか。幼稚園の頃は何度もあったけど、再会してからは一度もない。
ゴールデンウィークに俺の家であおいとお泊まりしたけど、あのときは愛実と3人一緒だった。2人から告白される前だったし、2人の幼馴染との久しぶりのお泊まりという側面が強かった。
ただ、今回は違う。あおいに好きだと告白されて。キスもされて。俺もあおいが好きだと自覚して。そういった状況の中で、あおいの家に泊まり、2人きりで一夜を明かす。それはいいのだろうか。付き合っているならもちろんいいだろうけど、そうでない2人が。そんなことを考えていると、愛実の笑顔が不意に頭によぎって。
ただ、プールデートからの楽しい時間を終わらせたくない気持ちもあって。あと、あおいが言った「昔のように」という言葉に俺の心がぎゅっと掴まれる。
「……分かったよ、あおい」
「涼我君……!」
「ただ、お互いに親から許可をもらえたらな。あと、うちで夕食を用意してくれているから、夕食を食べた後に行く形になると思う。それでいいなら」
「もちろんいいですよっ!」
あおい、凄く嬉しそうだ。満面の笑顔になっている。この笑顔を見ると、両親が許可を出してほしいと強く願う。
「じゃあ、涼我君。できれば、また後で」
「ああ。できればまた後で」
あおいと特殊な別れの挨拶を交わした後、俺は帰宅する。
午後7時過ぎという時間もあって、母さんだけでなく父さんも帰宅していた。
あおいに泊まりに誘われたから泊まりに行ってもいいかと両親に尋ねると、「あおいちゃんの家なら、相手の御両親がOKを出せばかまわない」と条件付きに許可してくれた。
あおいに「御両親がOKを出せば泊まっていい」とメッセージを送る。すると、1分ほどして、
『こちらも許可が出ました! では、夕飯を食べたらうちに来てください! お待ちしていますね!』
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「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
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