174 / 236
最終章
第48話『ウォータースライダー』
しおりを挟む
俺とのツーショット写真を撮り終わった後、あおいはスマホを戻すために女性用更衣室へ入っていった。
元々、プールデートを楽しみにしていたけど、1ヶ月ぶりにあおいの水着姿を見たらより楽しみになってきた。あおいと一緒にプールデートを楽しんでいこう。
「お待たせしました」
1、2分ほどして、あおいが戻ってきた。
「では、プールに行きましょう」
「ああ」
あおいは俺の左手を握り、引いてくる。
俺達は屋内プールの中に入る。
屋内プールの中に入るとすぐに、正面にある大きな青いウォータースライダーのコースが目に入る。流れるプールを中心に普通のプール、学校のプールのような25mプール、子供でも楽しめるような浅いプールと様々な種類のプールがある。普通のプールや流れるプールには多くの人が入っていて賑わっている。
また、端の方にはサマーベッドが大量に並べられている。サマーベッドはプールの利用客なら誰でも自由に利用でき、施設内で買えるドリンクを飲んでも大丈夫だ。それもあってか、サマーベッドでゆっくりしている人もそれなりにいる。
「うわあっ、立派ですね……!」
あおいは目をキラキラとさせながら、屋内プールを見渡している。その姿がとても可愛くて。あと、今のあおいを見ていると、小学生の頃に初めてここに来たときの愛実に重なる部分がある。
「立派なところだよな」
「ええ! 色々なプールがあって、ウォータースライダーもありますから、たくさん遊べそうです! あそこにあるサマーベッドではゆっくりできそうですし」
「今までもいっぱい遊んだし、あのサマーベッドでゆっくりしたよ」
「そうですか! では、たっぷり遊ぶためにもまずはストレッチしましょうか」
「そうだな」
ケガをしたら楽しめることも楽しめなくなるからな。ケガの防止のためにも、ストレッチはしっかりしないと。
他の人の邪魔にならないように、俺達は屋内プールの端でストレッチしていく。
あおいと向き合った体勢でしているので、ストレッチしているあおいの姿が自然と視界に入る。海水浴のときも思ったけど、ストレッチしているあおいの姿は美しい。体を伸ばしているから、全身に程良く筋肉が付いているのが分かって。思わず見入ってしまう。
「あそこにいるストレッチしている青いビキニの女の子、凄く可愛いな……」
「そうだよな。男連れじゃなければ話しかけていたのに……」
「青いビキニの黒髪の子、本当に綺麗だよね」
「そうだね。スタイルも良くて。憧れる……」
「憧れるし、羨ましいよね。金髪のかっこいい彼氏がいるのも含めて」
「ねぇ。優しそうだし、背も高いし」
男女問わず、あおいのことを褒める声が聞こえてきて。あおいは美人でスタイルがいいから、性別関係なくあおいに目が留まるのだろう。
あと、すぐ近くで一緒にストレッチしているから、俺のことをあおいの彼氏と勘違いしているようだ。まあ、男女2人で一緒に来ていればカップルだと思うよな。顔立ちが似ていれば仲のいい兄妹とかにも見えるんだろうけど。
当の本人であるあおいは……滅茶苦茶嬉しそう。今みたいに、周りから注目を集めたり、自分のことを話されたりしても気にしないことが多いのに。
「涼我君とカップルに見えちゃいますかぁ。まぁ、2人きりですもんねぇ」
デレデレとした雰囲気でそう言うと、あおいは「えへへっ……」と嬉しそうに笑う。俺とカップルに思われていることが嬉しかったのか。それが分かって、今のあおいがとても可愛く思えて。
その後も、上機嫌なあおいを見ながらストレッチしていった。
「……よし、このくらいでいいかな」
「私もストレッチ終わりました」
「うん。じゃあ、遊ぶか。あおいはどこか行きたい場所はある?」
「ウォータースライダーに行ってみたいです!」
食い気味に、そして元気良くそう言うと、あおいはウォータースライダーの方を指さす。目を輝かせているし、ウォータースライダーにかなり興味があると窺える。
「ウォータースライダーか。いいぞ」
「ありがとうございます! ウォータースライダーは大好きなので、ここのはどんな感じなのか楽しみです!」
「ははっ、そうか。遊園地の絶叫系アトラクションが好きだから、ウォータースライダー好きは納得だな。ここのウォータースライダーはスリルあるぞ」
「そうなんですね!」
「よし、入口に行くか」
あおいと手を繋いで、ウォータースライダーの入口に向かって歩き出す。
多くのお客さんとすれ違うけど、男性中心にあおいのことを見る人が多い。ただ、あおいはウォータースライダーが楽しみなのか、そちらの方ばかり見ているが。
「あっ、今……滑り終わった人が見えました。ここのは浮き輪に乗って滑るタイプなんですね」
「ああ。1人用と2人用の専用うきわがあるんだ。あおいはどっちがいい?」
「2人用がいいです! 涼我君と一緒に滑りたいです!」
「分かった。一緒に滑ろう」
「はいっ!」
あおいはとても嬉しそうに返事する。2人用もあると教えたら、一緒に滑りたいって言うだろうと思っていたよ。それでも嬉しい気持ちになる。
それから程なくして、入口に到着する。入口に立っていた男性スタッフに1人用か2人用の浮き輪どちらがいいかと訊かれ、あおいは元気良く、
「2人用をお願いしますっ!」
と答え、2人用の浮き輪を受け取っていた。ただ、結構大きいので、その直後に俺が持つことにした。
スタート地点に行くために階段を上っていくけど、人気があるから階段の途中まで待機列が伸びている。俺達は列の最後尾に並んだ。
「ここから並ぶんですね」
「人気だからな。これまでも、階段から並ぶことが多かったよ」
「そうですか。それを聞いてより期待が高まりますねっ」
あおいはワクワクとした様子でそう言う。
「……ところで。2人用の浮き輪があるということは、愛実ちゃんとも一緒に滑ったことがあるのですか?」
「ああ、何度もあるぞ」
「そうですか。それを知ってより滑りたくなりましたね」
あおいは笑顔でそう言う。愛実が体験していることは自分も体験したいってことかな。ましてや、大好きなウォータースライダーなら。
愛実はスリルのある絶叫系は苦手ではない。だから、ここのウォータースライダーは何度も一緒に滑り、楽しんでいたな。一緒に家族旅行に行った先のホテルにあるウォータースライダーも一緒に滑ったことがある。
「……そうだ。あおい。この浮き輪は前後に座るタイプなんだ。あおいは前と後ろ、どっちに座りたい?」
「そうですね……前がいいですね。前の方がよりスリルを味わえそうですから」
「確かに、前の方がスリルを感じられるな。じゃあ、前にあおい、後ろには俺が座ろう」
「はいっ」
やっぱり、あおいは前の方がいいと言ったな。
それからは、プール絡みの思い出話をしながら、待機列での時間を過ごす。その中で、あおいも家族旅行でウォータースライダーのあるホテルで泊まったときは、スライダーをいっぱい滑ったことを知った。また、母親の麻美さんも大好きで、麻美さんと一緒に滑ることもあったのだそうだ。あおいの絶叫系好きは麻美さん譲りか。納得した。
思い出話に花を咲かせたのもあり、気付けば次が俺達の番になっていた。
「次の方は……お二人で滑るんですね」
「はいっ!」
スタート地点にいる女性スタッフさんの問いかけに、あおいはとても元気良く答える。
俺がスタート地点に浮き輪を置き、さっき話したように前にあおい、後ろには俺が座る。そのことで、あおいの後ろ姿がすぐ近くに見える形に。水着姿なのもあってドキッとするな。
「それでは、カップルさん! いってらっしゃ~い!」
女性スタッフさんは元気な声でそう言い、俺とあおいが乗る浮き輪を押した。あおいとの初ウォータースライダーのスタートだ!
俺達の乗る浮き輪は水の流れに乗り、スライダーのコースを進み始める。
「スタートしましたね!」
「ああ。水の流れに勢いがあるから、スピード上がっていくぞ!」
「それは楽しみですっ!」
ウォータースライダーがスタートしたからか、あおいの声はかなり弾んでいる。
水の流れやコースが下っているのもあり、俺達の乗る浮き輪のスピードは段々上がっていく。カープに差し掛かったときなどには水しぶきがかかるように。
「きゃあっ、冷たいっ! 速くなってきましたね!」
「そうだな!」
きゃーっ! と、あおいは黄色い声を何度も上げている。この声色からして、怖さよりも楽しさによるものだろう。
たまに、傾斜が急に大きくなってスピードがグンと上がったり、コーナー角度がキツくて浮き輪が左右に大きく揺れたりして。何度も滑ったことはあるけど、結構スリルがあるな!
スリルの感じる場所ではあおいの黄色い叫び声が大きくなって。そんなあおいと一緒に、俺も「おおっ!」と叫びまくった。
スピードが落ちることなく、俺達の乗る浮き輪はゴール地点のプールに到着した。その瞬間、
――バシャッ!
ウォータースライダーでの勢いがあったため、俺もあおいも浮き輪から投げ出されてプールに落ちてしまった。今までも、ゴールに到着するとプールに落ちることが何度もあったっけ。
プールにはまだ一度も入っていなかったので、プールの水が結構冷たく感じる。そんなことを思いながら、水面から顔を出した。
「冷たっ」
顔についた水を右手で拭いながら周りを見ると……ひっくり返った浮き輪はあるけど、あおいの姿は見えない。まさか、溺れたり、意識を失ったりしてしまったか?
また、この光景を見て、海水浴のときにあおいが波に飲み込まれ、胸をポロリしてしまったことを思い出す。まさか、今回も同じことに? 勢い良くプールに落ちたから。
「ぷはあっ!」
あおいは水面から顔を出した。俺と目が合うと、あおいは爽やかな笑顔になって。プールの水に濡れたあおいの顔がとても綺麗で。あと、あおいが溺れたり、意識を失ったりしたわけじゃなくて良かった。
また、あおいはゆっくりと立ち上がると……水着は脱げていなかった。そのことを含めてほっと胸を撫で下ろす。
「どうしたんですか? ほっとしていて」
「……こ、今回は脱げていなくて良かったと思って」
「……な、なるほどです。勢い良くプールに落ちましたもんね」
そう言い、あおいははにかむ。ポロリしてしまったときのことを思い出したのだろう。
「ご、ごめんな。あのときと状況が似ていたから」
「いいんですよ。気にしないでください。心配してくれて嬉しいですから。それにしても、ここのウォータースライダーとてもいいですね! スピードがありますし、スリルのあるポイントがいくつもありましたから! いっぱい叫んじゃいました!」
「いっぱい叫んでたな。久しぶりだったから、俺も結構叫んだよ」
「一緒に叫べて楽しかったですっ!」
あおいはニコニコでそう言う。ここのウォータースライダーを気に入ってくれたようで良かった。
「とても楽しいですから、また一緒に滑りませんか?」
「もちろんさ」
「ありがとうございます! 今度は私が後ろに座りたいです!」
「ああ、いいぞ。じゃあ、行くか」
「はいっ!」
座ってきた浮き輪を持ってプールから出て、あおいに手を引かれる形でウォータースライダーの入口へと向かった。
元々、プールデートを楽しみにしていたけど、1ヶ月ぶりにあおいの水着姿を見たらより楽しみになってきた。あおいと一緒にプールデートを楽しんでいこう。
「お待たせしました」
1、2分ほどして、あおいが戻ってきた。
「では、プールに行きましょう」
「ああ」
あおいは俺の左手を握り、引いてくる。
俺達は屋内プールの中に入る。
屋内プールの中に入るとすぐに、正面にある大きな青いウォータースライダーのコースが目に入る。流れるプールを中心に普通のプール、学校のプールのような25mプール、子供でも楽しめるような浅いプールと様々な種類のプールがある。普通のプールや流れるプールには多くの人が入っていて賑わっている。
また、端の方にはサマーベッドが大量に並べられている。サマーベッドはプールの利用客なら誰でも自由に利用でき、施設内で買えるドリンクを飲んでも大丈夫だ。それもあってか、サマーベッドでゆっくりしている人もそれなりにいる。
「うわあっ、立派ですね……!」
あおいは目をキラキラとさせながら、屋内プールを見渡している。その姿がとても可愛くて。あと、今のあおいを見ていると、小学生の頃に初めてここに来たときの愛実に重なる部分がある。
「立派なところだよな」
「ええ! 色々なプールがあって、ウォータースライダーもありますから、たくさん遊べそうです! あそこにあるサマーベッドではゆっくりできそうですし」
「今までもいっぱい遊んだし、あのサマーベッドでゆっくりしたよ」
「そうですか! では、たっぷり遊ぶためにもまずはストレッチしましょうか」
「そうだな」
ケガをしたら楽しめることも楽しめなくなるからな。ケガの防止のためにも、ストレッチはしっかりしないと。
他の人の邪魔にならないように、俺達は屋内プールの端でストレッチしていく。
あおいと向き合った体勢でしているので、ストレッチしているあおいの姿が自然と視界に入る。海水浴のときも思ったけど、ストレッチしているあおいの姿は美しい。体を伸ばしているから、全身に程良く筋肉が付いているのが分かって。思わず見入ってしまう。
「あそこにいるストレッチしている青いビキニの女の子、凄く可愛いな……」
「そうだよな。男連れじゃなければ話しかけていたのに……」
「青いビキニの黒髪の子、本当に綺麗だよね」
「そうだね。スタイルも良くて。憧れる……」
「憧れるし、羨ましいよね。金髪のかっこいい彼氏がいるのも含めて」
「ねぇ。優しそうだし、背も高いし」
男女問わず、あおいのことを褒める声が聞こえてきて。あおいは美人でスタイルがいいから、性別関係なくあおいに目が留まるのだろう。
あと、すぐ近くで一緒にストレッチしているから、俺のことをあおいの彼氏と勘違いしているようだ。まあ、男女2人で一緒に来ていればカップルだと思うよな。顔立ちが似ていれば仲のいい兄妹とかにも見えるんだろうけど。
当の本人であるあおいは……滅茶苦茶嬉しそう。今みたいに、周りから注目を集めたり、自分のことを話されたりしても気にしないことが多いのに。
「涼我君とカップルに見えちゃいますかぁ。まぁ、2人きりですもんねぇ」
デレデレとした雰囲気でそう言うと、あおいは「えへへっ……」と嬉しそうに笑う。俺とカップルに思われていることが嬉しかったのか。それが分かって、今のあおいがとても可愛く思えて。
その後も、上機嫌なあおいを見ながらストレッチしていった。
「……よし、このくらいでいいかな」
「私もストレッチ終わりました」
「うん。じゃあ、遊ぶか。あおいはどこか行きたい場所はある?」
「ウォータースライダーに行ってみたいです!」
食い気味に、そして元気良くそう言うと、あおいはウォータースライダーの方を指さす。目を輝かせているし、ウォータースライダーにかなり興味があると窺える。
「ウォータースライダーか。いいぞ」
「ありがとうございます! ウォータースライダーは大好きなので、ここのはどんな感じなのか楽しみです!」
「ははっ、そうか。遊園地の絶叫系アトラクションが好きだから、ウォータースライダー好きは納得だな。ここのウォータースライダーはスリルあるぞ」
「そうなんですね!」
「よし、入口に行くか」
あおいと手を繋いで、ウォータースライダーの入口に向かって歩き出す。
多くのお客さんとすれ違うけど、男性中心にあおいのことを見る人が多い。ただ、あおいはウォータースライダーが楽しみなのか、そちらの方ばかり見ているが。
「あっ、今……滑り終わった人が見えました。ここのは浮き輪に乗って滑るタイプなんですね」
「ああ。1人用と2人用の専用うきわがあるんだ。あおいはどっちがいい?」
「2人用がいいです! 涼我君と一緒に滑りたいです!」
「分かった。一緒に滑ろう」
「はいっ!」
あおいはとても嬉しそうに返事する。2人用もあると教えたら、一緒に滑りたいって言うだろうと思っていたよ。それでも嬉しい気持ちになる。
それから程なくして、入口に到着する。入口に立っていた男性スタッフに1人用か2人用の浮き輪どちらがいいかと訊かれ、あおいは元気良く、
「2人用をお願いしますっ!」
と答え、2人用の浮き輪を受け取っていた。ただ、結構大きいので、その直後に俺が持つことにした。
スタート地点に行くために階段を上っていくけど、人気があるから階段の途中まで待機列が伸びている。俺達は列の最後尾に並んだ。
「ここから並ぶんですね」
「人気だからな。これまでも、階段から並ぶことが多かったよ」
「そうですか。それを聞いてより期待が高まりますねっ」
あおいはワクワクとした様子でそう言う。
「……ところで。2人用の浮き輪があるということは、愛実ちゃんとも一緒に滑ったことがあるのですか?」
「ああ、何度もあるぞ」
「そうですか。それを知ってより滑りたくなりましたね」
あおいは笑顔でそう言う。愛実が体験していることは自分も体験したいってことかな。ましてや、大好きなウォータースライダーなら。
愛実はスリルのある絶叫系は苦手ではない。だから、ここのウォータースライダーは何度も一緒に滑り、楽しんでいたな。一緒に家族旅行に行った先のホテルにあるウォータースライダーも一緒に滑ったことがある。
「……そうだ。あおい。この浮き輪は前後に座るタイプなんだ。あおいは前と後ろ、どっちに座りたい?」
「そうですね……前がいいですね。前の方がよりスリルを味わえそうですから」
「確かに、前の方がスリルを感じられるな。じゃあ、前にあおい、後ろには俺が座ろう」
「はいっ」
やっぱり、あおいは前の方がいいと言ったな。
それからは、プール絡みの思い出話をしながら、待機列での時間を過ごす。その中で、あおいも家族旅行でウォータースライダーのあるホテルで泊まったときは、スライダーをいっぱい滑ったことを知った。また、母親の麻美さんも大好きで、麻美さんと一緒に滑ることもあったのだそうだ。あおいの絶叫系好きは麻美さん譲りか。納得した。
思い出話に花を咲かせたのもあり、気付けば次が俺達の番になっていた。
「次の方は……お二人で滑るんですね」
「はいっ!」
スタート地点にいる女性スタッフさんの問いかけに、あおいはとても元気良く答える。
俺がスタート地点に浮き輪を置き、さっき話したように前にあおい、後ろには俺が座る。そのことで、あおいの後ろ姿がすぐ近くに見える形に。水着姿なのもあってドキッとするな。
「それでは、カップルさん! いってらっしゃ~い!」
女性スタッフさんは元気な声でそう言い、俺とあおいが乗る浮き輪を押した。あおいとの初ウォータースライダーのスタートだ!
俺達の乗る浮き輪は水の流れに乗り、スライダーのコースを進み始める。
「スタートしましたね!」
「ああ。水の流れに勢いがあるから、スピード上がっていくぞ!」
「それは楽しみですっ!」
ウォータースライダーがスタートしたからか、あおいの声はかなり弾んでいる。
水の流れやコースが下っているのもあり、俺達の乗る浮き輪のスピードは段々上がっていく。カープに差し掛かったときなどには水しぶきがかかるように。
「きゃあっ、冷たいっ! 速くなってきましたね!」
「そうだな!」
きゃーっ! と、あおいは黄色い声を何度も上げている。この声色からして、怖さよりも楽しさによるものだろう。
たまに、傾斜が急に大きくなってスピードがグンと上がったり、コーナー角度がキツくて浮き輪が左右に大きく揺れたりして。何度も滑ったことはあるけど、結構スリルがあるな!
スリルの感じる場所ではあおいの黄色い叫び声が大きくなって。そんなあおいと一緒に、俺も「おおっ!」と叫びまくった。
スピードが落ちることなく、俺達の乗る浮き輪はゴール地点のプールに到着した。その瞬間、
――バシャッ!
ウォータースライダーでの勢いがあったため、俺もあおいも浮き輪から投げ出されてプールに落ちてしまった。今までも、ゴールに到着するとプールに落ちることが何度もあったっけ。
プールにはまだ一度も入っていなかったので、プールの水が結構冷たく感じる。そんなことを思いながら、水面から顔を出した。
「冷たっ」
顔についた水を右手で拭いながら周りを見ると……ひっくり返った浮き輪はあるけど、あおいの姿は見えない。まさか、溺れたり、意識を失ったりしてしまったか?
また、この光景を見て、海水浴のときにあおいが波に飲み込まれ、胸をポロリしてしまったことを思い出す。まさか、今回も同じことに? 勢い良くプールに落ちたから。
「ぷはあっ!」
あおいは水面から顔を出した。俺と目が合うと、あおいは爽やかな笑顔になって。プールの水に濡れたあおいの顔がとても綺麗で。あと、あおいが溺れたり、意識を失ったりしたわけじゃなくて良かった。
また、あおいはゆっくりと立ち上がると……水着は脱げていなかった。そのことを含めてほっと胸を撫で下ろす。
「どうしたんですか? ほっとしていて」
「……こ、今回は脱げていなくて良かったと思って」
「……な、なるほどです。勢い良くプールに落ちましたもんね」
そう言い、あおいははにかむ。ポロリしてしまったときのことを思い出したのだろう。
「ご、ごめんな。あのときと状況が似ていたから」
「いいんですよ。気にしないでください。心配してくれて嬉しいですから。それにしても、ここのウォータースライダーとてもいいですね! スピードがありますし、スリルのあるポイントがいくつもありましたから! いっぱい叫んじゃいました!」
「いっぱい叫んでたな。久しぶりだったから、俺も結構叫んだよ」
「一緒に叫べて楽しかったですっ!」
あおいはニコニコでそう言う。ここのウォータースライダーを気に入ってくれたようで良かった。
「とても楽しいですから、また一緒に滑りませんか?」
「もちろんさ」
「ありがとうございます! 今度は私が後ろに座りたいです!」
「ああ、いいぞ。じゃあ、行くか」
「はいっ!」
座ってきた浮き輪を持ってプールから出て、あおいに手を引かれる形でウォータースライダーの入口へと向かった。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-が完結しました!(2024.5.30)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
管理人さんといっしょ。
桜庭かなめ
恋愛
桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。
しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。
風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、
「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」
高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。
ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!
※特別編10が完結しました!(2024.6.21)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※特別編8が完結しました!(2024.7.19)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる