10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ

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最終章

第47話『プールデート』

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 8月18日、木曜日。
 夏休みも残り2週間ほどになった。夜になると快適に思える日も出てきたけど、昼間はまだまだ暑い。今日も朝から晴れており、最高気温は33度まで上がる予想になっている。

「今日も暑いですね、涼我君」
「晴れているもんな。ただ、プールデート日和でいいと思うぞ」
「そうですね!」

 午後1時半頃。
 俺はあおいと一緒に調津駅に向かって歩いている。これから、あおいとプールデートをするのだ。
 一昨日の夜、あおいから、

『涼我君! 私と一緒にプールデートをしませんか? 7月にみんなで海水浴をしましたから、今度は私と2人きりでプールに。夏休みも終盤に差し掛かっていますし、涼我君が似合っていると言ってくれた水着をこの夏休み中にもう一度着たくて』

 と、LIMEでメッセージが届いたのだ。
 夏休みが始まった直後に行った海水浴以来、海やプールには一度も行っていない。だから、プールデートがとても魅力的に思えて。あおいの水着姿をもう一度見たいと思ったし。何よりも、あおいがデートに誘ってくれるのが嬉しくて。だから、デートの誘いを快諾した。

「スイムブルー八神がどんな感じか楽しみです!」

 あおいはワクワクとした様子でそう言ってくる。スラックスにノースリーブのブラウスという服装が似合っているのもあり、かなり可愛くて。

「涼我君は行ったことがあるんですよね」
「ああ。小学校の高学年から中学時代までに愛実や友人達と何度か。中学のときは道本や海老名さんとも行ったな。ただ、女子と2人きりで行くのは今回が初めてだよ。場所問わずプールデートするのも」
「そうなんですか。それを知って嬉しいですっ!」

 えへへっ、とあおいは嬉しそうに笑う。

「あそこは立派な屋内プールだぞ」
「そうなんですね! あと、ウォータースライダーも立派らしいですが」
「スライダーも立派だな」
「そうですか! 期待が膨らみます!」

 そう言うあおいの目が輝いている。
 スイムブルー八神に行こうと提案したのはあおいだ。清王線沿いにあるプールを調べたら、施設の規模が大きいことと、立派なウォータースライダーがあることを知り、行きたいと思ったのだそうだ。あおいはスリルのあるアトラクション好きだからな。春にみんなで行った遊園地でもジェットコースターやフリーフォールを物凄く楽しんでいたし。

「プールも何種類かあるからたくさん遊べるし、ゆっくりできるスペースもあるから、長い時間楽しめると思う」
「そうですか。スイムブルー八神に行きたいと言ってみて良かったです」
「そうか。実際に遊んでそう思ってもらえると嬉しいな」
「きっと思いますよ。だって、涼我君と一緒ですから」

 あおいは俺の目を見つめながら、いつもの明るい笑顔でそう言ってくれる。そのことにキュンとなり、体の中心から熱くなっていくのが分かった。今日のデートがプールデートで良かったかもしれない。
 それからすぐに俺達は調津駅に到着する。
 改札を通り、スイムブルー八神の最寄り駅・清王八神駅へ行く下り方面列車が到着するホームへと向かう。愛実の物販バイトの様子を見に行ったときと同じように、先頭車両が到着する場所まで。

「私も行き方を調べましたが、涼我君が何度も行ったことがあるので安心です」
「高校生になってからは初めてだけど、覚えているから任せてくれ」
「はいっ!」

 あおいは元気良く返事する。こういうことでもあおいに頼られると嬉しいな。
 ホームに立ってから3分ほど。定刻通りに清王八神行きの特急列車が到着する。
 扉が開き、数人ほどが降車した後、俺達は電車に乗る。
 平日の昼過ぎという時間帯や先頭車両なのもあってか、2席以上空いている箇所はいくつもある。俺達は乗車した扉から一番近い席に隣同士に座った。
 あおいは座った流れで俺に体を寄り添わせてくる。

「今日も涼我君と座れて良かったです」
「そうだな」

 暑い中、駅まで歩いてきたから、座れるに越したことはない。
 あおいは俺を見ながら「ふふっ」と声に出して笑う。……本当に可愛いな。
 それから程なくして、俺達の乗る電車は調津駅を発車する。
 扉の上にある液晶ディスプレイを見ると……目的地である終点・清王八神駅までは25分か。

「清王八神駅までは25分ですか。座っていますからちょうどいい時間ですね」
「ああ」
「あと、終点で降りればいいと思うと安心できます」
「爆睡とかしなければ乗り過ごすことはないもんな」
「ふふっ、そうですね」

 それに、乗っている途中で駅のことをあまり考えなくていいから。徒歩通学なのもあって、電車に乗ることはあまりないし。

「涼我君と2人きりでプールに行くのは初めてですから楽しみですっ」
「俺もだ。昔もプールへ遊びに行ったけど、親が一緒だったもんな」
「幼稚園の頃ですからね」

 スイムブルー八神よりも近いところにある屋外プールだったな。浅いプールであおいと水をかけ合ったり、浮き輪を使って流れるプールをあおいと一緒に流れたりしたっけ。

「2人きりでのプール、楽しみましょうね」
「ああ」

 スイムブルー八神は何度も行ったことはあるけど、あおいとは初めてだ。いつもよりも新鮮な感じで楽しめそうだ。
 それからは、今放送されているアニメのことや、先日のお泊まり女子会のことなどについて話しながら電車の中での時間を過ごした。話すのが結構楽しくて、盛り上がったのもあり、終点の清王八神駅にはあっという間に到着した。

「清王八神駅に到着しましたね!」
「あっという間だったな」
「ええ。涼我君と話すのが楽しくて、気付いたときにはまもなく清王八神でしたね。終点で良かったと実感しています」
「ははっ、そうだな。よし、スイムブルー八神に行こう。駅からは数分で着くよ」
「はいっ!」

 そう返事すると、あおいは俺の手を今一度しっかりと握った。
 清王八神駅を出て、俺はあおいの手を引いてスイムブルー八神に向かって歩いていく。
 八神に来るのは高校生になってから初めてだから、懐かしいと思える。景色や道は覚えているので、スイムブルーまでは迷いなく行けるだろう。

「八神は地名だけ聞いたことがあって初めて来ましたが、なかなか立派な街ですね」
「八神は清王線だけじゃなくて、NRの駅もあるからな。そっちの方はいくつも路線が乗り入れているし」
「そうなんですね!」

 あおいはちょっと興奮した様子で周りに広がる景色を見ている。可愛いな。初めて来た場所だし、商業施設やビルなど立派な建物も多いからワクワクするのだろう。
 記憶を頼りに八神の街を歩いて数分。

「ここがスイムブルー八神だよ」

 特に迷うことなく、俺達はスイムブルー八神の前に到着することができた。そのことに一安心。

「公式サイトに外観の写真もありましたが、実際に見ると立派ですね!」
「立派だよな」
「ええ!」

 あおいは目を輝かせながら、スイムブルー八神を見ている。これまで何度も来たことがあるから、こういう反応をしてくれると嬉しい気持ちになるな。
 俺達はスイムブルー八神の中に入る。
 中学生以来だけど、ロビーの雰囲気は変わらないな。懐かしい。
 夏休み中で、今は午後2時過ぎなのもあり、俺達のような学生や、親子連れの姿がちらほらと。受付をしていたり、ソファーに座って飲み物を飲んだりしている。
 受付を済ませて、俺達は更衣室の前まで向かう。

「じゃあ、水着に着替え終わったらここで待ち合わせしようか」
「分かりました。では、また後で」
「ああ。また後でな」

 あおいは俺の手を離して、俺に手を振りながら女性用に更衣室に入っていった。
 俺は男性用の更衣室の中に入る。
 更衣室の雰囲気も全然変わっていない。広くて綺麗だ。今は水着に着替える学生グループや、私服に着替える親子の姿が見える。
 人があまりいない場所に行き、水着に着替えていく。
 水着はもちろん、海水浴のときにも穿いた緑色の海パンである。夏休みだから、家で一日ゆっくりする日もあったけど、早朝のジョギングや喫茶店のバイトもあったおかげか、あれから太ってはおらず、難なく穿けた。
 荷物をロッカーの中にしまって、鍵の付いたリストバンドを左腕に装着した。落とさないように気をつけないとな。
 更衣室を出ると……あおいの姿はまだなかった。さすがに男子の俺の方が早いか。あおいが出てくるまで気長に待とう。
 たまに、女性用更衣室の出入口を見ていると……水着姿の女性が出入りしている。更衣室から出てくる女性の中にはこちらを見る人もいて。嫌そうな表情をする人はいないけど、更衣室の入口を見ているのはまずいかもしれない。そう思い、周りの景色を眺めていると、

「お待たせしました、涼我君」

 あおいの声が聞こえた。その瞬間に、あおいの甘い匂いが香ってきて。
 女性用の更衣室の方に視線を向けると、すぐ近くにはスマホを手に持った水着姿のあおいが立っている。1ヶ月前の海水浴と同じで、あおいの水着は青い三角ビキニだ。ただ、あのときとは違って、あおいへの好意を自覚していて。だから、2度目のビキニ姿でも結構ドキッとする。

「待ちましたか?」
「ううん、そんなことない。ついさっき来たところだ」
「そうですか」

 あおいはニコッと笑いながら言う。
 あおいの水着姿……よく似合っているなぁ。ビキニの色が青いから爽やかな雰囲気だし。胸も大きめで、くびれもしっかりとあるからスタイルが良くて。夏も終盤だけど、肌も白くて綺麗で。きっと、日々のスキンケアやマッサージの賜物だろう。バイトで立ち仕事をしているのも影響しているかもしれない。

「私のことを見てくれるのは嬉しいですが、じっと見られると何だか恥ずかしいですね。ドキドキもしてきます」
「ご、ごめん。水着姿のあおいが凄くいいから見入っちゃって。その水着、本当に似合っているな。また見られて良かったよ」

 正直に感想を言うと、あおいは頬をほんのりと赤くしながらも、ぱあっと明るい笑顔を見せる。

「涼我君にそう言ってもらえて嬉しいです! 涼我君もその水着似合っていますよ! 私もまた見られて嬉しいです!」

 ニッコリと笑ってあおいはそう言ってくれる。
「似合っている」とか「また見られて嬉しい」って言われることがこんなに嬉しいとは。体の中に優しい温もりが生まれる。きっと、あおいはさっきこのような感覚を抱いたのだろう。

「そう思ってもらえて嬉しいよ」
「ふふっ。プールデート記念に、涼我君と水着姿の写真を撮ってもいいですか? LIMEで送りますから」
「ああ、いいぞ」

 俺との水着姿の写真を撮りたいから、あおいはスマホを持ってきていたのか。
 その後、あおいはスマホで、俺とのツーショット写真を何枚も撮影する。体を寄り添わせたり、あおいが腕を組んだりして。そのことで肌が直接触れたり、ビキニ越しに胸の柔らかさを感じたりするから刺激的で。ドキドキして体が熱くなっていく。
 あおいは今撮影した写真を見せてくれる。あおいはどの写真でも笑顔で、ピースサインしているあおいは特に可愛い。あと、俺の顔が赤くなっていなくて安心した。
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