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最終章
第8話『1学期の終わり』
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それからも学期末の半日期間を過ごしていく。
学校が午前中しかないので、平日でも朝に雨が降っていない日にはたまに軽くジョギングするように。昼に学校が終わるからかもしれないけど、結構スッキリとした気分の中で授業を受けられる。
また、早く起きられたからなのか、
「一緒にジョギングしましょう! 涼我君!」
と、あおいが誘ってくることもあって。普段は一人でジョギングするので、あおいと一緒に走るのは結構楽しく感じられた。
早朝から体を動かすのは気持ちいいとあおいが言ってくれて。それが何だか嬉しかった。
7月20日、水曜日。
いつもよりも甘い匂いを感じる中、ゆっくりと目を覚ますと……ニッコリと笑っているあおいが視界の大半を奪っていた。
「おはようございますっ、涼我君!」
「……おはよう」
あおいに起こされるのはこれが初めてではない。だから、この状況は現実なのだとすぐに分かった。その瞬間、あおいの甘い匂いがそれまでよりも濃く感じられた。
「どうしたんだ? 久しぶりに起こしに来て。3ヶ月ぶりくらいか」
「今日で1学期が終わりますからね。ですから、涼我君を起こしたいと思いまして。智子さんに訊いて、今日はジョギングしないと知りましたから」
「……そうか」
今日は終業式が行なわれ、1学期が終了する。
明日から8月末まで夏休みだ。夏休みになれば、朝早く起きる必要はなくなる。だから、1学期最後の日にこうして起こしに来てくれたのか。あおいは朝、幼馴染を起こしに行くことの憧れがあるし。あとは好きな人の寝顔を見たいのもあるかもしれない。
「この前と同じく、涼我君の寝顔が可愛かったです。なので、頭を撫でたり、頬にキスしたりしちゃいました」
えへへっ、とあおいは可愛らしく笑う。部屋は薄暗いけど、あおいの顔が頬中心に赤くなっているのが分かった。
「そんなことをしていたのか。全然気付かなかったよ」
「ぐっすりと寝ていましたからね。幸せな時間でした」
そう言うと、あおいの顔には幸福感に溢れた笑みが浮かぶ。きっと、今のような笑顔で俺の頭を撫でたり、頬にキスしたりしていたんだろうな。告白の際にキスされたのもあり容易に想像できる。
「いつも、平日は今くらいの時間に起きていると聞きます。このまま起きてくださいね、涼我君」
「ああ。起こしてくれてありがとう、あおい」
「いえいえ。改めて……おはようございます」
可愛らしい笑顔でそう言うと、あおいは俺の右頬にキスしてきた。そのことで、キスされた右頬を中心に全身が熱くなっていく。
「おはようのキスですっ」
ふふっ、とあおいは楽しそうに笑う。そんなあおいがとても可愛いし、おはようのキスをされるのが初めてなので結構ドキドキする。
あおいが起こしてくれたおかげで、いつもよりも身も心もかなり温かい中での目覚めとなった。
今日で1学期の日程が終わり、明日から夏休みが始まる。それを祝福するかのように、昨日まで降ることの多かった雨が止み、今日は朝からよく晴れている。明日以降も晴れる日が続く予報だし、今日のうちに梅雨明けが発表されるだろう。
終業式は始業式と同じで体育館で行なわれた。校長先生の話は変わらず長かったけど、体育館はエアコンのおかげで涼しいから、そこまで気怠くは感じなかった。
始業式が終わると、教室に戻って1学期最後のロングホームルームが行なわれる。
「さあさあさあ。1学期最後のロングホームルームをやるよ。まずはみんなに通知表を渡すよ。出席番号順に渡すね」
学期最後の日恒例であり、メインディッシュの通知表配布タイムだ。こういうものはたいてい出席番号順で配布されるし、俺は出席番号1番。だから、今学期の成績はどうだっただろうと考える時間は全然ない。
「まずは涼我君」
「はい」
佐藤先生に名前を呼ばれ、俺は先生がいる教卓へ向かう。
2年生最初の成績はどんな感じだろう。中間試験では学年9位、期末も安定していて学年12位だった。定期試験では赤点科目はなかったし、成績でも赤点科目はないと思いたい。
「2年生になっても好調だね。この調子で勉強を頑張るんだよ」
「はい。ありがとうございます」
佐藤先生からお褒めの言葉と共に通知表を受け取った。
自分の席に戻り、椅子に座ってから通知表を開く。その際、前の席に座っている愛実や、左隣の席に座っているあおいは俺の成績表を覗きには来ない。
調津高校の通知表は各科目の成績が100点満点の点数で記載される。得点の横には学年平均も記載されている。また、30点未満が赤点科目であり、赤点科目には『*』マークがつく。学年末のときだけ、各科目の年間を通しての内申点が5段階評価で記載される。また、成績そのものだけでなく、クラス順位と学年順位も記載される。
俺の1学期の成績は……どの科目も80点台や90点台だ。赤点科目を示す『*』マークもなかったので一安心だ。赤点科目があると、夏休みに特別課題をこなしたり、夏休み中に学校に来て補習に出席したりしないといけないから。
クラス順位は2位で、学年順位は10位か。定期試験のなかった体育は90点で、選択芸術の音楽は82点とまあまあだったから、期末試験の順位よりもちょっと上がったのかな。
「良かった……」
好成績を取ることができたし、これで夏休みも平和に過ごせる。なので、気付けば安堵の言葉が漏れていた。
「いい成績だったんだね、リョウ君」
「いい笑顔をしていますもんね。もし良ければ、見てもいいですか? あとで私の通知表も見せますから」
「私もいい?」
「ああ、いいぞ」
広げた状態で通知表を机の上に置くと、愛実はこちらに振り返り、あおいは椅子ごと俺の近くまで動いてきた。
あおいと愛実は俺の通知表を見てくる。どう思うだろう?
「かなりいい成績だね!」
「さすがです! みんなに教えていましたもんね」
愛実、あおいの順で俺にお褒めの言葉を言ってくださった。佐藤先生のとき以上に嬉しい気持ちになる。
「あと、通知表の雰囲気は前の高校と同じ感じですね」
「そうなのか」
高校だと、成績が100点満点であったり、クラス順位や学年順位が書かれていたりするスタイルの学校が多いのだろうか。
そんなことを思っていると、海老名さんが佐藤先生から通知表を受け取っていた。海老名さんはその場でチラッと見て、いつもの落ち着いた笑顔になっている。どうやら、いい成績を取れたようだ。
「はい、次、愛実ちゃん」
「はいっ」
佐藤先生に名前を呼ばれ、愛実は教卓へと向かう。
愛実は佐藤先生に笑顔で何やら言われ、通知表を受け取った。あの感じだとなかなかの成績だったんじゃないだろうか。
「次、あおいちゃん」
「はいっ!」
自分の席に戻ってくる愛実とすれ違いながら、あおいは佐藤先生のいる教卓に向かった。
愛実のときと同様に、笑顔の佐藤先生から何か言われて、あおいは通知表を受け取っていた。あおいもいい成績だったのかな。
あおいは自分の席に戻って、自分の通知表を見ている。出席番号が一つ前の愛実もだ。2人ともいい成績であることを祈ろう。
あおいと愛実の様子を交互に見ていると、
「まずまずの成績だったよ、リョウ君。不安だった理系科目も平均をちょっと越えてた」
愛実は通知表を持って俺の方に振り返り、いつもの柔らかな笑顔で言う。
愛実に通知表を見せてもらうと……文系科目や英語科目、保健、選択芸術の音楽はかなりいいな。俺よりも点数の高い科目もいくつかある。さすがは愛実だ。理系科目もどれも平均点は越えている。それもあって、学年順位は36位だ。
「いい成績だな。文系科目のと英語科目の良さはさすがだ。理系の科目も頑張った」
「リョウ君に課題の分からないところを訊いたり、みんなと定期試験前に勉強会したりしたおかげだよ」
「そう言ってくれると嬉しい気持ちになるな。1学期頑張ったな、愛実」
愛実の頭を優しく撫でる。それが気持ち良かったのか、愛実は小さな声で「えへへっ」と可愛らしく笑った。
「私もまあまあな成績でした。赤点科目がなかったので一安心です」
あおいはそう言うと、俺と愛実に通知表を見せてくれる。
現代文や英語科目、日本史、体育といった得意科目は100点近い点数をたたき出している。ただし、数学Ⅱや生物、情報は平均ギリギリ、数学Bと化学は赤点ではないけど平均点未満と成績の差が激しい。学年順位は65位。ただ、2年生全体で300人近くいるし、この順位なら調津高校の勉強についていけていると考えていいだろう。
「得意科目は凄くいいし、赤点科目はなかったから……あおいの言う通りまあまあなのかな。理系科目中心に頑張れば凄い成績になりそうだ」
「私もそう思ったよ」
「佐藤先生に理系科目中心に頑張ってと言われました。ただ、赤点科目なしで1学期を終えられたのは、普段から涼我君が教えてくれたり、試験前にはみんなで勉強したりしたおかげですね」
「ふふっ、私と同じことを言ってる」
「そうですか?」
「言っていたぞ。あおいにも言われて嬉しいな。あおいも1学期頑張ったな」
さっきの愛実と同じように、あおいの頭も優しく撫でる。すると、あおいはニッコリと笑って、
「ありがとうございますっ」
とお礼を言ってくれた。
あおいや愛実は苦手な科目が何とかなかったし、俺もあおいや愛実達のおかげでこの成績を取れたと思っている。今後も彼女達と一緒に勉強を頑張っていこう。
その後も通知表が出席番号順に渡されていき、鈴木は、
「よっしゃあっ! 赤点科目回避だぜ!」
と歓喜の雄叫びを上げていた。鈴木はあおい以上に苦手な科目があるし、夏休みにはインターハイがあるからな。赤点回避ができたことが本当に嬉しいのだろう。
道本は鈴木のように声こそは出さなかったものの、通知表を見て爽やかな笑顔を浮かべていた。どうやら、道本も赤点科目なしで1学期を終えられたみたいだ。
一緒にいることの多いあおいや愛実達が、みんな無事に夏休みを迎えられるようで何よりである。
クラス全員に通知表が渡された後は、夏休みの課題プリントや問題集が配布されたり、佐藤先生から夏休み中の過ごし方や諸注意についての話があったりした。
「では、これにて1学期の日程は全て終了です。体調や怪我には気をつけて夏休みを過ごしてね。9月にまた会いましょう」
落ち着いた笑顔で佐藤先生がそう言う。先生とは……夏休み中もバイトや同人イベントなどで会いそうだ。去年の夏休みもそうだったから。
クラス委員の女子生徒による号令が掛けられ、1学期が終了した。
「1学期が終わったわ!」
「よーし! これで夏休みだぜ!」
終わった瞬間、教室の中の雰囲気が和気藹々としたものとなり、一部の生徒はもう夏休み気分になり、大きな声を上げている。1学期が終わった解放感もあって、終礼が終わった直後の今の時間って凄く気分いいよなぁ。
「涼我君! 愛実ちゃん! 1学期お疲れ様でした!」
あおいはとても嬉しそうな笑顔でそう言う。調津に戻ってから初めての夏休みだからかテンション高めだ。
「お疲れ様、あおいちゃん! リョウ君も!」
「お疲れ様、あおい、愛実」
愛実と俺が労いの言葉を掛けると、あおいも愛実もニッコリと笑った。
あおいが転校してきて。あおいや愛実達と同じクラスになって。最初の席も、中間試験後に席替えした今の席も、あおいと愛実とはご近所さんだった。だから、1学期の学校生活はとても楽しく過ごせたな。
「麻丘君、愛実、あおい、1学期お疲れ様」
「みんなお疲れ様」
「1学期終わったな! みんなお疲れさん!」
海老名さん、道本、鈴木が俺達のところにやってくる。1学期が終わったことの解放感かみんないい笑顔を浮かべている。俺達3人も道本達に労いの言葉を掛けた。
「ねえ、3人とも。次の日曜日……24日なんだけど、海へ遊びに行かない?」
「去年と同じで湘南の海水浴場だぜ!」
「24日は陸上部のオフ日なんだ。8月に入ったらすぐにインターハイがあるし、その前にみんなで遊んでリフレッシュしたいと持ってさ」
道本達がそんな提案をしてくれる。
去年の夏も7月下旬の陸上部の活動がお休みの日に、俺、愛実、道本、鈴木、海老名さん、須藤さんの6人で神奈川県の湘南地域の海水浴場に遊びに行ったのだ。中学時代には愛実と道本と海老名さんの4人で行っていた。
去年と違って、今年は道本と鈴木がインターハイに出場するし、インターハイ開催は8月上旬。なので、その時期に海水浴には行かないと思っていた。
「海水浴ですか! いいですね! 是非、行きたいです!」
あおいは目をキラキラと輝かせながらそう言う。小さい頃から海やプールで遊ぶのは大好きだからなぁ。こういう反応をするとは思っていた。
あおいの返事に道本達3人は嬉しそうだ。特に海老名さんは。
「分かったわ。愛実と麻丘君も今年も行く?」
「うん! 毎年恒例だし行きたいな」
「俺も一緒に行くよ」
「良かった。ただ、24日は3人ともスケジュールは大丈夫? 麻丘君とあおいはバイトしているし、愛実も長期休暇になると単発のバイトをするから」
「ちょっとスマホで確認するよ」
「私も確認します」
「私も……一応確認する」
俺達はそれぞれ自分のスマホを手に取る。
俺は確定したバイトのシフトについては、スマホのカレンダーアプリに書き込むようにしている。カレンダーにすれば、パッと見ただけでどの日にシフトが入っているかどうか確認できるから。
カレンダーアプリを表示して、今月のカレンダーを見ると――。
「24日は大丈夫だ。バイト入ってない」
「私もです!」
「私も大丈夫だよ」
あおいと愛実も24日はフリーか。良かった。
「3人とも予定が空いていたのね。良かったわ」
「今年は桐山も一緒に7人だな。須藤さんも一緒に行けるんだよな、鈴木」
「おう! 美里も24日は大丈夫だって言っていたぜ!」
須藤さんには鈴木から海水浴の話を事前にしていたのかな。ちなみに、須藤さんは自宅の近くの書店でバイトしているとのこと。
今年は去年の6人だけでなく、あおいも加わるのか。あおいとは11年ぶりだし海水浴が凄く楽しみだな。
「涼我君に可愛いと思ってもらえるような水着を買わないといけませんね!」
「この後買いに行こうか、愛実ちゃん。私も新調したいと思っていたし」
「行きましょう!」
あおいと愛実はとても楽しそうに話している。再開してからあおいの水着姿は見たことないし、愛実も水着を新調するのか。海水浴がより楽しみになった。
「海水浴かぁ。夏らしくていいねぇ」
気付けば、佐藤先生が俺達のところにやってきていた。海水浴というワードが耳に入って自然と体が引き寄せられたのだろうか。
「樹理先生も一緒に行きますか? 行くのは24日の日曜日ですが」
海老名さんが佐藤先生にそう問いかける。
そういえば、去年も佐藤先生に海水浴に誘ったっけ。ただ、学生時代のご友人と久しぶりに会う先約があって一緒には行かなかった。
「いいのかい?」
「もちろんですよ。去年も誘いましたし、一緒にお祭りとかにも行っていますし」
「海老名さんの言う通りですね」
この前の七夕祭りを含めて、佐藤先生とはプライベートで何度も会って、一緒に行動しているからな。そのとき、あおいや愛実達もみんな楽しそうにしているし。先生がいた方がより楽しくなりそうだ。
俺が肯定の言葉を言ったからか、あおいや愛実達も「行きましょう」と言う。そのことに佐藤先生は嬉しそうな笑みを見せる。
「ありがとう。24日は予定が空いているから、私も行かせてもらうよ。理沙ちゃん、当日に行くのはこの7人かい?」
「この7人と美里の計8人です」
「8人か、了解。じゃあ、大きめの車を借りて、私の運転で海水浴場まで行こう」
佐藤先生は落ち着いた笑顔でそう言ってくれる。
ここから湘南までは結構な距離があるし、電車でも1時間以上はかかる。色々と荷物もあるし、佐藤先生の運転で海水浴場まで連れて行ってくれるのは有り難い。
『ありがとうございます!』
と、6人で佐藤先生にお礼を言うと、先生は「うん」とニッコリと笑った。
今年も海水浴へ行くことになったか。しかも、あおいとは11年ぶりに、佐藤先生とは初めてで。
スマホで24日の天気を確認すると、湘南地域はよく晴れるそうだ。また、速報ニュースで関東地方が梅雨明けしたと通知が入った。
今年の夏休みは去年までよりも楽しい夏休みになりそうだ。
学校が午前中しかないので、平日でも朝に雨が降っていない日にはたまに軽くジョギングするように。昼に学校が終わるからかもしれないけど、結構スッキリとした気分の中で授業を受けられる。
また、早く起きられたからなのか、
「一緒にジョギングしましょう! 涼我君!」
と、あおいが誘ってくることもあって。普段は一人でジョギングするので、あおいと一緒に走るのは結構楽しく感じられた。
早朝から体を動かすのは気持ちいいとあおいが言ってくれて。それが何だか嬉しかった。
7月20日、水曜日。
いつもよりも甘い匂いを感じる中、ゆっくりと目を覚ますと……ニッコリと笑っているあおいが視界の大半を奪っていた。
「おはようございますっ、涼我君!」
「……おはよう」
あおいに起こされるのはこれが初めてではない。だから、この状況は現実なのだとすぐに分かった。その瞬間、あおいの甘い匂いがそれまでよりも濃く感じられた。
「どうしたんだ? 久しぶりに起こしに来て。3ヶ月ぶりくらいか」
「今日で1学期が終わりますからね。ですから、涼我君を起こしたいと思いまして。智子さんに訊いて、今日はジョギングしないと知りましたから」
「……そうか」
今日は終業式が行なわれ、1学期が終了する。
明日から8月末まで夏休みだ。夏休みになれば、朝早く起きる必要はなくなる。だから、1学期最後の日にこうして起こしに来てくれたのか。あおいは朝、幼馴染を起こしに行くことの憧れがあるし。あとは好きな人の寝顔を見たいのもあるかもしれない。
「この前と同じく、涼我君の寝顔が可愛かったです。なので、頭を撫でたり、頬にキスしたりしちゃいました」
えへへっ、とあおいは可愛らしく笑う。部屋は薄暗いけど、あおいの顔が頬中心に赤くなっているのが分かった。
「そんなことをしていたのか。全然気付かなかったよ」
「ぐっすりと寝ていましたからね。幸せな時間でした」
そう言うと、あおいの顔には幸福感に溢れた笑みが浮かぶ。きっと、今のような笑顔で俺の頭を撫でたり、頬にキスしたりしていたんだろうな。告白の際にキスされたのもあり容易に想像できる。
「いつも、平日は今くらいの時間に起きていると聞きます。このまま起きてくださいね、涼我君」
「ああ。起こしてくれてありがとう、あおい」
「いえいえ。改めて……おはようございます」
可愛らしい笑顔でそう言うと、あおいは俺の右頬にキスしてきた。そのことで、キスされた右頬を中心に全身が熱くなっていく。
「おはようのキスですっ」
ふふっ、とあおいは楽しそうに笑う。そんなあおいがとても可愛いし、おはようのキスをされるのが初めてなので結構ドキドキする。
あおいが起こしてくれたおかげで、いつもよりも身も心もかなり温かい中での目覚めとなった。
今日で1学期の日程が終わり、明日から夏休みが始まる。それを祝福するかのように、昨日まで降ることの多かった雨が止み、今日は朝からよく晴れている。明日以降も晴れる日が続く予報だし、今日のうちに梅雨明けが発表されるだろう。
終業式は始業式と同じで体育館で行なわれた。校長先生の話は変わらず長かったけど、体育館はエアコンのおかげで涼しいから、そこまで気怠くは感じなかった。
始業式が終わると、教室に戻って1学期最後のロングホームルームが行なわれる。
「さあさあさあ。1学期最後のロングホームルームをやるよ。まずはみんなに通知表を渡すよ。出席番号順に渡すね」
学期最後の日恒例であり、メインディッシュの通知表配布タイムだ。こういうものはたいてい出席番号順で配布されるし、俺は出席番号1番。だから、今学期の成績はどうだっただろうと考える時間は全然ない。
「まずは涼我君」
「はい」
佐藤先生に名前を呼ばれ、俺は先生がいる教卓へ向かう。
2年生最初の成績はどんな感じだろう。中間試験では学年9位、期末も安定していて学年12位だった。定期試験では赤点科目はなかったし、成績でも赤点科目はないと思いたい。
「2年生になっても好調だね。この調子で勉強を頑張るんだよ」
「はい。ありがとうございます」
佐藤先生からお褒めの言葉と共に通知表を受け取った。
自分の席に戻り、椅子に座ってから通知表を開く。その際、前の席に座っている愛実や、左隣の席に座っているあおいは俺の成績表を覗きには来ない。
調津高校の通知表は各科目の成績が100点満点の点数で記載される。得点の横には学年平均も記載されている。また、30点未満が赤点科目であり、赤点科目には『*』マークがつく。学年末のときだけ、各科目の年間を通しての内申点が5段階評価で記載される。また、成績そのものだけでなく、クラス順位と学年順位も記載される。
俺の1学期の成績は……どの科目も80点台や90点台だ。赤点科目を示す『*』マークもなかったので一安心だ。赤点科目があると、夏休みに特別課題をこなしたり、夏休み中に学校に来て補習に出席したりしないといけないから。
クラス順位は2位で、学年順位は10位か。定期試験のなかった体育は90点で、選択芸術の音楽は82点とまあまあだったから、期末試験の順位よりもちょっと上がったのかな。
「良かった……」
好成績を取ることができたし、これで夏休みも平和に過ごせる。なので、気付けば安堵の言葉が漏れていた。
「いい成績だったんだね、リョウ君」
「いい笑顔をしていますもんね。もし良ければ、見てもいいですか? あとで私の通知表も見せますから」
「私もいい?」
「ああ、いいぞ」
広げた状態で通知表を机の上に置くと、愛実はこちらに振り返り、あおいは椅子ごと俺の近くまで動いてきた。
あおいと愛実は俺の通知表を見てくる。どう思うだろう?
「かなりいい成績だね!」
「さすがです! みんなに教えていましたもんね」
愛実、あおいの順で俺にお褒めの言葉を言ってくださった。佐藤先生のとき以上に嬉しい気持ちになる。
「あと、通知表の雰囲気は前の高校と同じ感じですね」
「そうなのか」
高校だと、成績が100点満点であったり、クラス順位や学年順位が書かれていたりするスタイルの学校が多いのだろうか。
そんなことを思っていると、海老名さんが佐藤先生から通知表を受け取っていた。海老名さんはその場でチラッと見て、いつもの落ち着いた笑顔になっている。どうやら、いい成績を取れたようだ。
「はい、次、愛実ちゃん」
「はいっ」
佐藤先生に名前を呼ばれ、愛実は教卓へと向かう。
愛実は佐藤先生に笑顔で何やら言われ、通知表を受け取った。あの感じだとなかなかの成績だったんじゃないだろうか。
「次、あおいちゃん」
「はいっ!」
自分の席に戻ってくる愛実とすれ違いながら、あおいは佐藤先生のいる教卓に向かった。
愛実のときと同様に、笑顔の佐藤先生から何か言われて、あおいは通知表を受け取っていた。あおいもいい成績だったのかな。
あおいは自分の席に戻って、自分の通知表を見ている。出席番号が一つ前の愛実もだ。2人ともいい成績であることを祈ろう。
あおいと愛実の様子を交互に見ていると、
「まずまずの成績だったよ、リョウ君。不安だった理系科目も平均をちょっと越えてた」
愛実は通知表を持って俺の方に振り返り、いつもの柔らかな笑顔で言う。
愛実に通知表を見せてもらうと……文系科目や英語科目、保健、選択芸術の音楽はかなりいいな。俺よりも点数の高い科目もいくつかある。さすがは愛実だ。理系科目もどれも平均点は越えている。それもあって、学年順位は36位だ。
「いい成績だな。文系科目のと英語科目の良さはさすがだ。理系の科目も頑張った」
「リョウ君に課題の分からないところを訊いたり、みんなと定期試験前に勉強会したりしたおかげだよ」
「そう言ってくれると嬉しい気持ちになるな。1学期頑張ったな、愛実」
愛実の頭を優しく撫でる。それが気持ち良かったのか、愛実は小さな声で「えへへっ」と可愛らしく笑った。
「私もまあまあな成績でした。赤点科目がなかったので一安心です」
あおいはそう言うと、俺と愛実に通知表を見せてくれる。
現代文や英語科目、日本史、体育といった得意科目は100点近い点数をたたき出している。ただし、数学Ⅱや生物、情報は平均ギリギリ、数学Bと化学は赤点ではないけど平均点未満と成績の差が激しい。学年順位は65位。ただ、2年生全体で300人近くいるし、この順位なら調津高校の勉強についていけていると考えていいだろう。
「得意科目は凄くいいし、赤点科目はなかったから……あおいの言う通りまあまあなのかな。理系科目中心に頑張れば凄い成績になりそうだ」
「私もそう思ったよ」
「佐藤先生に理系科目中心に頑張ってと言われました。ただ、赤点科目なしで1学期を終えられたのは、普段から涼我君が教えてくれたり、試験前にはみんなで勉強したりしたおかげですね」
「ふふっ、私と同じことを言ってる」
「そうですか?」
「言っていたぞ。あおいにも言われて嬉しいな。あおいも1学期頑張ったな」
さっきの愛実と同じように、あおいの頭も優しく撫でる。すると、あおいはニッコリと笑って、
「ありがとうございますっ」
とお礼を言ってくれた。
あおいや愛実は苦手な科目が何とかなかったし、俺もあおいや愛実達のおかげでこの成績を取れたと思っている。今後も彼女達と一緒に勉強を頑張っていこう。
その後も通知表が出席番号順に渡されていき、鈴木は、
「よっしゃあっ! 赤点科目回避だぜ!」
と歓喜の雄叫びを上げていた。鈴木はあおい以上に苦手な科目があるし、夏休みにはインターハイがあるからな。赤点回避ができたことが本当に嬉しいのだろう。
道本は鈴木のように声こそは出さなかったものの、通知表を見て爽やかな笑顔を浮かべていた。どうやら、道本も赤点科目なしで1学期を終えられたみたいだ。
一緒にいることの多いあおいや愛実達が、みんな無事に夏休みを迎えられるようで何よりである。
クラス全員に通知表が渡された後は、夏休みの課題プリントや問題集が配布されたり、佐藤先生から夏休み中の過ごし方や諸注意についての話があったりした。
「では、これにて1学期の日程は全て終了です。体調や怪我には気をつけて夏休みを過ごしてね。9月にまた会いましょう」
落ち着いた笑顔で佐藤先生がそう言う。先生とは……夏休み中もバイトや同人イベントなどで会いそうだ。去年の夏休みもそうだったから。
クラス委員の女子生徒による号令が掛けられ、1学期が終了した。
「1学期が終わったわ!」
「よーし! これで夏休みだぜ!」
終わった瞬間、教室の中の雰囲気が和気藹々としたものとなり、一部の生徒はもう夏休み気分になり、大きな声を上げている。1学期が終わった解放感もあって、終礼が終わった直後の今の時間って凄く気分いいよなぁ。
「涼我君! 愛実ちゃん! 1学期お疲れ様でした!」
あおいはとても嬉しそうな笑顔でそう言う。調津に戻ってから初めての夏休みだからかテンション高めだ。
「お疲れ様、あおいちゃん! リョウ君も!」
「お疲れ様、あおい、愛実」
愛実と俺が労いの言葉を掛けると、あおいも愛実もニッコリと笑った。
あおいが転校してきて。あおいや愛実達と同じクラスになって。最初の席も、中間試験後に席替えした今の席も、あおいと愛実とはご近所さんだった。だから、1学期の学校生活はとても楽しく過ごせたな。
「麻丘君、愛実、あおい、1学期お疲れ様」
「みんなお疲れ様」
「1学期終わったな! みんなお疲れさん!」
海老名さん、道本、鈴木が俺達のところにやってくる。1学期が終わったことの解放感かみんないい笑顔を浮かべている。俺達3人も道本達に労いの言葉を掛けた。
「ねえ、3人とも。次の日曜日……24日なんだけど、海へ遊びに行かない?」
「去年と同じで湘南の海水浴場だぜ!」
「24日は陸上部のオフ日なんだ。8月に入ったらすぐにインターハイがあるし、その前にみんなで遊んでリフレッシュしたいと持ってさ」
道本達がそんな提案をしてくれる。
去年の夏も7月下旬の陸上部の活動がお休みの日に、俺、愛実、道本、鈴木、海老名さん、須藤さんの6人で神奈川県の湘南地域の海水浴場に遊びに行ったのだ。中学時代には愛実と道本と海老名さんの4人で行っていた。
去年と違って、今年は道本と鈴木がインターハイに出場するし、インターハイ開催は8月上旬。なので、その時期に海水浴には行かないと思っていた。
「海水浴ですか! いいですね! 是非、行きたいです!」
あおいは目をキラキラと輝かせながらそう言う。小さい頃から海やプールで遊ぶのは大好きだからなぁ。こういう反応をするとは思っていた。
あおいの返事に道本達3人は嬉しそうだ。特に海老名さんは。
「分かったわ。愛実と麻丘君も今年も行く?」
「うん! 毎年恒例だし行きたいな」
「俺も一緒に行くよ」
「良かった。ただ、24日は3人ともスケジュールは大丈夫? 麻丘君とあおいはバイトしているし、愛実も長期休暇になると単発のバイトをするから」
「ちょっとスマホで確認するよ」
「私も確認します」
「私も……一応確認する」
俺達はそれぞれ自分のスマホを手に取る。
俺は確定したバイトのシフトについては、スマホのカレンダーアプリに書き込むようにしている。カレンダーにすれば、パッと見ただけでどの日にシフトが入っているかどうか確認できるから。
カレンダーアプリを表示して、今月のカレンダーを見ると――。
「24日は大丈夫だ。バイト入ってない」
「私もです!」
「私も大丈夫だよ」
あおいと愛実も24日はフリーか。良かった。
「3人とも予定が空いていたのね。良かったわ」
「今年は桐山も一緒に7人だな。須藤さんも一緒に行けるんだよな、鈴木」
「おう! 美里も24日は大丈夫だって言っていたぜ!」
須藤さんには鈴木から海水浴の話を事前にしていたのかな。ちなみに、須藤さんは自宅の近くの書店でバイトしているとのこと。
今年は去年の6人だけでなく、あおいも加わるのか。あおいとは11年ぶりだし海水浴が凄く楽しみだな。
「涼我君に可愛いと思ってもらえるような水着を買わないといけませんね!」
「この後買いに行こうか、愛実ちゃん。私も新調したいと思っていたし」
「行きましょう!」
あおいと愛実はとても楽しそうに話している。再開してからあおいの水着姿は見たことないし、愛実も水着を新調するのか。海水浴がより楽しみになった。
「海水浴かぁ。夏らしくていいねぇ」
気付けば、佐藤先生が俺達のところにやってきていた。海水浴というワードが耳に入って自然と体が引き寄せられたのだろうか。
「樹理先生も一緒に行きますか? 行くのは24日の日曜日ですが」
海老名さんが佐藤先生にそう問いかける。
そういえば、去年も佐藤先生に海水浴に誘ったっけ。ただ、学生時代のご友人と久しぶりに会う先約があって一緒には行かなかった。
「いいのかい?」
「もちろんですよ。去年も誘いましたし、一緒にお祭りとかにも行っていますし」
「海老名さんの言う通りですね」
この前の七夕祭りを含めて、佐藤先生とはプライベートで何度も会って、一緒に行動しているからな。そのとき、あおいや愛実達もみんな楽しそうにしているし。先生がいた方がより楽しくなりそうだ。
俺が肯定の言葉を言ったからか、あおいや愛実達も「行きましょう」と言う。そのことに佐藤先生は嬉しそうな笑みを見せる。
「ありがとう。24日は予定が空いているから、私も行かせてもらうよ。理沙ちゃん、当日に行くのはこの7人かい?」
「この7人と美里の計8人です」
「8人か、了解。じゃあ、大きめの車を借りて、私の運転で海水浴場まで行こう」
佐藤先生は落ち着いた笑顔でそう言ってくれる。
ここから湘南までは結構な距離があるし、電車でも1時間以上はかかる。色々と荷物もあるし、佐藤先生の運転で海水浴場まで連れて行ってくれるのは有り難い。
『ありがとうございます!』
と、6人で佐藤先生にお礼を言うと、先生は「うん」とニッコリと笑った。
今年も海水浴へ行くことになったか。しかも、あおいとは11年ぶりに、佐藤先生とは初めてで。
スマホで24日の天気を確認すると、湘南地域はよく晴れるそうだ。また、速報ニュースで関東地方が梅雨明けしたと通知が入った。
今年の夏休みは去年までよりも楽しい夏休みになりそうだ。
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主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
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クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
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サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
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クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
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小さなことから〜露出〜えみ〜
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毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
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「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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