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第4章
第14話『体育祭④-綱引き-』
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その後も競技が続き、午前の部も終盤に近づいてきた。
緑チームの順位は変わらず2位。ただ、1位の青チームとの差が少しずつ縮まっているし、まだ午前中なので、今後1位になる可能性は十分にあるだろう。
『次の種目は綱引きです。出場する生徒のみなさんはグラウンドに出て、自分のチームの色の画用紙を持った係の生徒の周りに集まってください』
おっ、次は綱引きか。鈴木にとっては初めて出場する種目だ。
「よーし、いくぜ!」
鈴木はとても大きな声でそう言い、レジャーシートから立ち上がる。そんな鈴木はかなり意気込んでいる様子だ。鈴木はこれが初種目だし、ウズウズしていたのかもしれない。
俺達6人は鈴木に「頑張れ」とエールを送ったり、俺と道本が鈴木の背中を軽く叩いたりする。
「みんな、ありがとな! 綱引っ張ってくるぜ!」
持ち前の明るい笑顔でそう言い、鈴木は綱引きに参加するクラスメイト達と一緒にグラウンドへ出て行く。
綱引きに参加する生徒は多く、4分の1ほどのクラスメイトがグラウンドに向かっている。それもあって、レジャーシートがかなり広くなったように思える。
緑色の画用紙を持つ男子生徒が、俺達のいるレジャーシートのほぼ正面にいる。そこに結構な数の緑チームの生徒が集まる。ただ、そんな中でも、鈴木は体がかなりデカいからすぐに見つかるな。
「体がデカいから、鈴木の存在感が凄いな」
「緑チームで一番大きいんじゃないかな」
「大きそうですよね。鈴木君はやり投げをしていますし、チームの中では一番のパワーを持っていそうです。頼りになるオーラが出ていますね」
あおいのその言葉に俺、愛実、道本、海老名さん、佐藤先生は深く頷く。
「実際頼りになるぞ、あいつは。去年も鈴木は綱引きに出たけど、全試合で鈴木のいる黄色チームが勝ったから」
「そういえば……そうだったな」
1年の頃は鈴木とは別のクラスだったから、体育祭のチームも別だった。当時から友人なのもあるけど、鈴木のいた黄色チームに綱引きで負けても悔しさを感じなかった。むしろ、凄いとかあっぱれとか清々しい気持ちになったくらいだ。
「普段は槍を投げるのを専門にしているけど、体力が物凄くあるからね。綱を引くパワーも相当なものじゃないかしら」
落ち着いた笑顔を見せる海老名さんが、鈴木のことをそう分析する。さすがはマネージャーだ。
「あの立派な筋肉を見れば納得だね。あと、放課後に職員室から練習風景をたまに眺めるけど、鈴木君の投げた槍はかなり跳ぶよね」
「ええ。4月にマネージャーのお手伝いをしたとき、何度か鈴木君の投てきを生で見ました。そのときも凄く跳んでいましたね。何だか、鈴木君一人で綱引きしても勝てそうな気がしてきました!」
「あいつならやれそうな気がする」
あおいと道本のそんな言葉に、俺達6人は笑い声に包まれる。俺達の会話を聞いていたのか、近くにいたクラスメイト数人も笑っていた。
鈴木一人で綱引きをしている姿……見てみたいな。結構いい試合になりそうな気がする。
グラウンドを見ると、太くて長い綱が2本置かれる。4チームあるから、2本の綱を使って一斉に対戦するのだろう。確か、去年もその形で綱引きが実施された記憶がある。
緑チームの側にある綱を見ていくと、赤チームの生徒達が立っている。彼らと対戦するのかな。
『お待たせしました! これより、綱引きを始めます。綱引きはチーム単位での総当たり戦です。試合ごとに、勝利したチームには得点が入ります。各チーム、勝利を目指して頑張ってください!』
放送委員の男子生徒によるアナウンスがされ、グラウンドの雰囲気も盛り上がっていく。
総当たり戦で、試合ごとに勝利チームだけに得点が入るのか。ここで勝利できたらチームとして結構大きいな。結果次第では1位の青チームを逆転できるかもしれない。
『第1試合は、青チーム対黄色チーム。緑チーム対赤チームで行います。綱引きに参加される選手のみなさんは綱を持ってください』
グラウンドにいる生徒達は綱に沿って並び、アナウンスの指示に従って綱を持ち上げる。
ちなみに、鈴木は緑チームの先頭にいる。鈴木の後ろには背の高い男子や恰幅のいい男子が固まって並んでいる。
「鈴木君が先頭にいますね」
「そうだな」
「鈴木に聞いたことあるけど、綱引きでは背の高い人が先頭に並ぶのがコツらしい。去年の綱引きでも、全ての試合で鈴木は先頭に立っていたよ」
「そうだったんですね、道本君」
思い返すと、去年は全試合で鈴木はチームの先頭で綱を引っ張っていたな。あれは勝つためのコツの一つなのか。あとは、鈴木が先頭にいると相手チームの生徒達にプレッシャーを与える効果もありそうだ。
今の道本の解説を聞いて、鈴木など大柄の男子が何人も先頭に立っているうちのチームがより勝ちそうな気がしてきた。赤チームの方は……背の高い男子が立っているけど、その後ろは背の高さや体格はバラバラだ。
『綱の中心を示す赤い印が、自分のチーム側にグラウンドに引かれている白線のラインまで引っ張ることができたら勝利です。その際、係の生徒が持っているチーム色の画用紙が上げます。では、スターターピストルが鳴ったら試合スタートです!』
いよいよ綱引きのスタートか。鈴木がいるからうちのチームは勝てそうだけど、見ている俺までちょっと緊張してきた。
――パァン!
スターターピストルが鳴り、綱引きの第1試合がスタートした。
鈴木率いる緑チームは音にいち早く反応し、勢い良く綱を引き始める。
「みんないいぞー! 引けてるぞー!」
鈴木はとても大きな声でそう言い、緑チームの生徒を鼓舞していく。そういえば、去年も鈴木はこうやって声かけしていたっけ。
「緑チーム頑張れー!」
鈴木が大きな声を出していることに刺激を受けて、俺は大きな声で緑チームを応援する。
それまでシートに座っていた道本はすっと立ち上がって、
「鈴木の言う通り綱引けてるぞ! その調子だ!」
普段よりもかなり大きな声で、緑チームに向かってエールを送る。また、あおいや愛実達もみんな「頑張れー!」と大きな声で応援している。
大声で応援するのは俺達だけじゃない。チーム単位での対戦であり、全チームが同時に対戦しているので、校庭にいる多くの生徒が応援している。これまでの中で会場が一番盛り上がっていて。これぞチーム戦って感じだ。
緑チームは調子良く綱を引くことができている。綱の赤い印が、グラウンドに引かれている白線をそろそろ越えようとしている。
「よーし! あと少しだっ! みんな頑張って引くぞー!」
再度、鈴木が声を張り上げる。鈴木がこうして状況をチームメイトに伝えることも、彼が先頭に立っている理由の一つなのかもしれない。
鈴木の声で緑チームの生徒達の力が入ったのだろうか。ググッ、と綱が緑チームの方に引かれていくのが分かった。そして、
「そこまで! 緑チームの勝利!」
係の男子生徒がそう言って、右手で持っている緑色の画用紙を高く掲げた。
緑チーム対赤チームの試合は……緑チームの勝利となった!
『緑チームと赤チームの試合は、緑チームの勝利です!』
『やったー!』
勝利した緑チームの生徒達はその場で喜ぶ。中には抱きしめ合っている生徒もいる。
緑チームが勝ったので、俺達もハイタッチする。あおいや愛実達はみんな嬉しそうな笑顔を浮かべていて。チーム戦だから、個人競技で友達が勝ったときの嬉しさとはまた違った嬉しさがあるな。
「うおおっ! 勝ったぜ!」
鈴木は勝利の雄叫びを上げて、両手を拳にした状態で突き上げている。そんな鈴木は凄く嬉しそうで。まさしく勝者の姿って感じだ。鈴木は近くにいる男子生徒達とハイタッチしたり、肩を組んだりしていた。
その後、緑チームは黄色チーム、青チームの順番で対戦していく。どちらの試合でも鈴木はチームの先頭で綱を引っ張っていく。また、鈴木は、
「よーし、この試合も勝つぞ! オレ達緑チームなら絶対に勝てるぜ!」
「いいぞいいぞ! みんないいぞぉ!!」
「この調子で引くぞ!」
といったチームメイトを鼓舞する言葉を大きな声で何度も言っていて。そんな鈴木の言葉に応えようと、緑チームの生徒達は綱を一生懸命に引っ張っている。
また、鈴木の明るく元気な振る舞いもあって、レジャーシートにいる緑チームの生徒や教師達の応援の声も大きくなって。それらのことがチームに追い風をもたらしたのか、緑チームは3戦全勝を果たすことができた。
「今年も全勝できたな! 鈴木が凄かった!」
かなり興奮した様子で言う道本。普段は落ち着いていることが多いから、綱引きに臨んだ緑チームの戦いがとても良かったのだと窺える。
「道本君の言う通り、本当に頼りになりましたね!」
「鈴木君の存在感は凄かったね!」
「鈴木君が全勝した立役者だわ! 凄いよ!」
あおい、愛実、海老名さんは鈴木の活躍を讃えている。鈴木は元気良く振る舞っていたし、先頭で頑張って綱を引っ張っていた。海老名さんの言う通り、鈴木は緑チームを全勝へ導いた立役者だと思う。
「さすがは鈴木って感じの活躍だったな。緑チームのみんなも頑張った」
「鈴木君中心に緑チームのみんなが頑張った結果だよ。素晴らしいね」
佐藤先生は笑顔でそう言うと、グラウンドにいる緑チームに向かって拍手していた。そんな先生を見て、俺達も拍手する。
それから程なくして、緑チームの生徒達がレジャーシートに戻ってくる。3戦全勝したのもありみんな明るい。特に鈴木は。
「緑チーム全勝できたぜ! みんなと一緒に引っ張ったことと、ここにいるみんなの応援のおかげだ! ありがとな!」
レジャーシートに戻ってくるや否や、鈴木はとても明るい笑顔で俺達にそう言ってくれた。そんな鈴木は男から見ても本当にかっこいい男だ。この姿を別の高校に通っている彼の恋人の須藤さんにも生で見せたいくらいだ。
みんなのおかげで勝てた……か。チームメイトに対する鈴木の思いが伝わったから、大きな力となって全勝を手繰り寄せることができたのだと思う。
鈴木はクラスメイトとはもちろん、近くのレジャーシートにいる他クラスの生徒ともハイタッチするのであった。
緑チームの順位は変わらず2位。ただ、1位の青チームとの差が少しずつ縮まっているし、まだ午前中なので、今後1位になる可能性は十分にあるだろう。
『次の種目は綱引きです。出場する生徒のみなさんはグラウンドに出て、自分のチームの色の画用紙を持った係の生徒の周りに集まってください』
おっ、次は綱引きか。鈴木にとっては初めて出場する種目だ。
「よーし、いくぜ!」
鈴木はとても大きな声でそう言い、レジャーシートから立ち上がる。そんな鈴木はかなり意気込んでいる様子だ。鈴木はこれが初種目だし、ウズウズしていたのかもしれない。
俺達6人は鈴木に「頑張れ」とエールを送ったり、俺と道本が鈴木の背中を軽く叩いたりする。
「みんな、ありがとな! 綱引っ張ってくるぜ!」
持ち前の明るい笑顔でそう言い、鈴木は綱引きに参加するクラスメイト達と一緒にグラウンドへ出て行く。
綱引きに参加する生徒は多く、4分の1ほどのクラスメイトがグラウンドに向かっている。それもあって、レジャーシートがかなり広くなったように思える。
緑色の画用紙を持つ男子生徒が、俺達のいるレジャーシートのほぼ正面にいる。そこに結構な数の緑チームの生徒が集まる。ただ、そんな中でも、鈴木は体がかなりデカいからすぐに見つかるな。
「体がデカいから、鈴木の存在感が凄いな」
「緑チームで一番大きいんじゃないかな」
「大きそうですよね。鈴木君はやり投げをしていますし、チームの中では一番のパワーを持っていそうです。頼りになるオーラが出ていますね」
あおいのその言葉に俺、愛実、道本、海老名さん、佐藤先生は深く頷く。
「実際頼りになるぞ、あいつは。去年も鈴木は綱引きに出たけど、全試合で鈴木のいる黄色チームが勝ったから」
「そういえば……そうだったな」
1年の頃は鈴木とは別のクラスだったから、体育祭のチームも別だった。当時から友人なのもあるけど、鈴木のいた黄色チームに綱引きで負けても悔しさを感じなかった。むしろ、凄いとかあっぱれとか清々しい気持ちになったくらいだ。
「普段は槍を投げるのを専門にしているけど、体力が物凄くあるからね。綱を引くパワーも相当なものじゃないかしら」
落ち着いた笑顔を見せる海老名さんが、鈴木のことをそう分析する。さすがはマネージャーだ。
「あの立派な筋肉を見れば納得だね。あと、放課後に職員室から練習風景をたまに眺めるけど、鈴木君の投げた槍はかなり跳ぶよね」
「ええ。4月にマネージャーのお手伝いをしたとき、何度か鈴木君の投てきを生で見ました。そのときも凄く跳んでいましたね。何だか、鈴木君一人で綱引きしても勝てそうな気がしてきました!」
「あいつならやれそうな気がする」
あおいと道本のそんな言葉に、俺達6人は笑い声に包まれる。俺達の会話を聞いていたのか、近くにいたクラスメイト数人も笑っていた。
鈴木一人で綱引きをしている姿……見てみたいな。結構いい試合になりそうな気がする。
グラウンドを見ると、太くて長い綱が2本置かれる。4チームあるから、2本の綱を使って一斉に対戦するのだろう。確か、去年もその形で綱引きが実施された記憶がある。
緑チームの側にある綱を見ていくと、赤チームの生徒達が立っている。彼らと対戦するのかな。
『お待たせしました! これより、綱引きを始めます。綱引きはチーム単位での総当たり戦です。試合ごとに、勝利したチームには得点が入ります。各チーム、勝利を目指して頑張ってください!』
放送委員の男子生徒によるアナウンスがされ、グラウンドの雰囲気も盛り上がっていく。
総当たり戦で、試合ごとに勝利チームだけに得点が入るのか。ここで勝利できたらチームとして結構大きいな。結果次第では1位の青チームを逆転できるかもしれない。
『第1試合は、青チーム対黄色チーム。緑チーム対赤チームで行います。綱引きに参加される選手のみなさんは綱を持ってください』
グラウンドにいる生徒達は綱に沿って並び、アナウンスの指示に従って綱を持ち上げる。
ちなみに、鈴木は緑チームの先頭にいる。鈴木の後ろには背の高い男子や恰幅のいい男子が固まって並んでいる。
「鈴木君が先頭にいますね」
「そうだな」
「鈴木に聞いたことあるけど、綱引きでは背の高い人が先頭に並ぶのがコツらしい。去年の綱引きでも、全ての試合で鈴木は先頭に立っていたよ」
「そうだったんですね、道本君」
思い返すと、去年は全試合で鈴木はチームの先頭で綱を引っ張っていたな。あれは勝つためのコツの一つなのか。あとは、鈴木が先頭にいると相手チームの生徒達にプレッシャーを与える効果もありそうだ。
今の道本の解説を聞いて、鈴木など大柄の男子が何人も先頭に立っているうちのチームがより勝ちそうな気がしてきた。赤チームの方は……背の高い男子が立っているけど、その後ろは背の高さや体格はバラバラだ。
『綱の中心を示す赤い印が、自分のチーム側にグラウンドに引かれている白線のラインまで引っ張ることができたら勝利です。その際、係の生徒が持っているチーム色の画用紙が上げます。では、スターターピストルが鳴ったら試合スタートです!』
いよいよ綱引きのスタートか。鈴木がいるからうちのチームは勝てそうだけど、見ている俺までちょっと緊張してきた。
――パァン!
スターターピストルが鳴り、綱引きの第1試合がスタートした。
鈴木率いる緑チームは音にいち早く反応し、勢い良く綱を引き始める。
「みんないいぞー! 引けてるぞー!」
鈴木はとても大きな声でそう言い、緑チームの生徒を鼓舞していく。そういえば、去年も鈴木はこうやって声かけしていたっけ。
「緑チーム頑張れー!」
鈴木が大きな声を出していることに刺激を受けて、俺は大きな声で緑チームを応援する。
それまでシートに座っていた道本はすっと立ち上がって、
「鈴木の言う通り綱引けてるぞ! その調子だ!」
普段よりもかなり大きな声で、緑チームに向かってエールを送る。また、あおいや愛実達もみんな「頑張れー!」と大きな声で応援している。
大声で応援するのは俺達だけじゃない。チーム単位での対戦であり、全チームが同時に対戦しているので、校庭にいる多くの生徒が応援している。これまでの中で会場が一番盛り上がっていて。これぞチーム戦って感じだ。
緑チームは調子良く綱を引くことができている。綱の赤い印が、グラウンドに引かれている白線をそろそろ越えようとしている。
「よーし! あと少しだっ! みんな頑張って引くぞー!」
再度、鈴木が声を張り上げる。鈴木がこうして状況をチームメイトに伝えることも、彼が先頭に立っている理由の一つなのかもしれない。
鈴木の声で緑チームの生徒達の力が入ったのだろうか。ググッ、と綱が緑チームの方に引かれていくのが分かった。そして、
「そこまで! 緑チームの勝利!」
係の男子生徒がそう言って、右手で持っている緑色の画用紙を高く掲げた。
緑チーム対赤チームの試合は……緑チームの勝利となった!
『緑チームと赤チームの試合は、緑チームの勝利です!』
『やったー!』
勝利した緑チームの生徒達はその場で喜ぶ。中には抱きしめ合っている生徒もいる。
緑チームが勝ったので、俺達もハイタッチする。あおいや愛実達はみんな嬉しそうな笑顔を浮かべていて。チーム戦だから、個人競技で友達が勝ったときの嬉しさとはまた違った嬉しさがあるな。
「うおおっ! 勝ったぜ!」
鈴木は勝利の雄叫びを上げて、両手を拳にした状態で突き上げている。そんな鈴木は凄く嬉しそうで。まさしく勝者の姿って感じだ。鈴木は近くにいる男子生徒達とハイタッチしたり、肩を組んだりしていた。
その後、緑チームは黄色チーム、青チームの順番で対戦していく。どちらの試合でも鈴木はチームの先頭で綱を引っ張っていく。また、鈴木は、
「よーし、この試合も勝つぞ! オレ達緑チームなら絶対に勝てるぜ!」
「いいぞいいぞ! みんないいぞぉ!!」
「この調子で引くぞ!」
といったチームメイトを鼓舞する言葉を大きな声で何度も言っていて。そんな鈴木の言葉に応えようと、緑チームの生徒達は綱を一生懸命に引っ張っている。
また、鈴木の明るく元気な振る舞いもあって、レジャーシートにいる緑チームの生徒や教師達の応援の声も大きくなって。それらのことがチームに追い風をもたらしたのか、緑チームは3戦全勝を果たすことができた。
「今年も全勝できたな! 鈴木が凄かった!」
かなり興奮した様子で言う道本。普段は落ち着いていることが多いから、綱引きに臨んだ緑チームの戦いがとても良かったのだと窺える。
「道本君の言う通り、本当に頼りになりましたね!」
「鈴木君の存在感は凄かったね!」
「鈴木君が全勝した立役者だわ! 凄いよ!」
あおい、愛実、海老名さんは鈴木の活躍を讃えている。鈴木は元気良く振る舞っていたし、先頭で頑張って綱を引っ張っていた。海老名さんの言う通り、鈴木は緑チームを全勝へ導いた立役者だと思う。
「さすがは鈴木って感じの活躍だったな。緑チームのみんなも頑張った」
「鈴木君中心に緑チームのみんなが頑張った結果だよ。素晴らしいね」
佐藤先生は笑顔でそう言うと、グラウンドにいる緑チームに向かって拍手していた。そんな先生を見て、俺達も拍手する。
それから程なくして、緑チームの生徒達がレジャーシートに戻ってくる。3戦全勝したのもありみんな明るい。特に鈴木は。
「緑チーム全勝できたぜ! みんなと一緒に引っ張ったことと、ここにいるみんなの応援のおかげだ! ありがとな!」
レジャーシートに戻ってくるや否や、鈴木はとても明るい笑顔で俺達にそう言ってくれた。そんな鈴木は男から見ても本当にかっこいい男だ。この姿を別の高校に通っている彼の恋人の須藤さんにも生で見せたいくらいだ。
みんなのおかげで勝てた……か。チームメイトに対する鈴木の思いが伝わったから、大きな力となって全勝を手繰り寄せることができたのだと思う。
鈴木はクラスメイトとはもちろん、近くのレジャーシートにいる他クラスの生徒ともハイタッチするのであった。
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