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第4章

第6話『中間試験の順位』

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 5月30日、月曜日。
 今日も朝からよく晴れている、日差しが強いので、朝でも直接当たると結構暑く感じる。明後日から季節が夏になるのも納得だ。
 これまで、あおいは制服のジャケットを着ていたけど、今日は朝から暑いという理由でブラウス姿になっている。こういうところからも、もうすぐ夏なのだと実感できる。

「ブラウス姿のあおいと登校するのは新鮮だな」
「そうだね。教室でたまにジャケットを脱ぐことがあるけど」
「そうですね。これまでは、暑かったらジャケットのボタンを外せばそれなりに快適でしたけど、今日はそれでも暑く感じて」

 そういえば、あおいはたまにジャケットのボタンを全て外していたり、ブラウスの第1ボタンを外していたりしているときがあったな。

「思い返すと、あおいちゃんがベストやカーティガンを着ている姿って見たことないな。持ってる?」
「カーティガンは持っています。京都の高校に通っていたとき、寒い時期にセーラー服の上から着ていました。ただ、ベストは持っていないですね。冬服は結構温かいですし、夏服の時期は半袖になったセーラー服でして。それだけで結構快適でしたから」
「そうだったんだ。これからの時期はベストがあるといいよ」
「愛実の意見に賛成だな。6月になるとエアコンを点けられるようになるんだけど、設定温度や席の場所によってはかなり寒く感じるし。夏服期間でも長袖のブラウスはOKだけど、ベストがあるに越したことはないから」
「なるほど納得です。では、今日の放課後にナルコへベストを買いに行きましょう」
「一緒に行ってもいい? あおいちゃん」
「もちろんですよ!」

 放課後に予定ができたからか、あおいと愛実は楽しそうな笑顔になる。微笑ましい光景だ。一緒に服を見に行こうという内容だから可愛くも思えて。

「涼我君も一緒に行きますか?」
「ごめん。今日はバイトなんだ。だから、あおいのベストは明日以降のお楽しみにしてもらってもいいかな?」
「分かりました! では、キリ良く夏服期間スタートの明後日にお披露目しますね!」
「ああ。楽しみにしているよ」

 あおいのベスト姿がどんな感じなのか楽しみだな。あとは、あおいの調津高校の夏服姿も明後日に初めて見られるのか。そう考えると、今日と明日の学校や、今日の放課後のバイトをより頑張れそうな気がする。
 それから程なくして、調津高校校舎が見え始める。それに伴い、周りにはうちの高校の生徒が多く歩いている。俺達のようにジャケットを着ていない生徒が多いな。
 校門を通ると、掲示板の前に生徒が集まっているのが見える。

「掲示板の前に多くの生徒がいますね。何か貼り出されているのでしょうか?」
「この時期だと……中間試験の上位者一覧が貼り出されたんじゃないかな」
「先週で全部の試験が返却されたからな。それはあるかもしれない」
「だね。調津高校では定期試験や成績の上位者について、学年ごとにあの掲示板に貼り出されるの。確か、上位20位までだったよね、リョウ君」
「そうだったな」
「上位20名ですか。私が前に通っていた高校でも同じように成績上位者が発表されていましたが、30名まで発表されていましたね。向こうは10クラスと生徒の人数が調津よりも多かったからだと思いますが」
「そうだったんだね」

 定期試験や成績の上位者が発表される高校って多いのかな。そのことで、勉強へのモチベーションを高めたり、維持したりするのが目的なのかもしれない。

「ちなみに、リョウ君は1年生の頃に2回入ったことがあるよね」
「ああ。8位と15位だったかな」

 それは定期試験で特に調子がいいときの話で、いつもは20位から30位くらいだ。個人的には順位よりも、試験の点数や成績そのものを重要視している。

「涼我君凄いですね! さすがです。今回、涼我君はどの教科も点数が良かったですし、上位者に入っているかもしれませんよ」
「入っている気がするよね」
「どうだろうなぁ」

 一番低い教科でも85点を取れたけど、満点の教科は一つもなかった。上位20名に入れているかどうかは微妙じゃないかと思う。

「見に行きましょう、涼我君!」
「見に行こうよ」
「そうだな」

 一覧に自分の名前が入っていると嬉しい気持ちになるし。あおいと愛実と一緒に確認してみよう。
 俺達は生徒が集まっている掲示板前へと向かう。
 今回も学年ごとに別々のポスターに名前とクラス、合計得点が記載されている。ちなみに、1年生と2年生は20位までだけど、3年生は文系理系とクラスが分かれているため、文系10名、理系10名が記載されている。
 俺達は2年生の成績上位者の一覧を見始める。果たして、俺達は20名までに入ることができているのだろうか。
 1位から順に見ていく。1位の生徒は……992点か。全10科目なので、どの教科も100点やそれに近かったことが分かる。凄いなぁ。
 3位にはうちのクラスメイトの女子の名前が。合計点数は978点。彼女も凄い。これにはあおいと愛実も「凄い」と声を漏らしていた。この女子生徒がうちのクラスでは1番か。
 その後も順位を見ていくと――。

『9位:麻丘涼我 (2組) 907点』

 俺の名前があった。上位20人に入れるかどうか分からないと思っていたのに、まさかの一桁順位とは。これは予想外だった。
 あおいと愛実も俺の名前を見つけたようで、「おおっ!」と黄色い声を上げる。

「涼我君! 9位ですよ9位!」
「20位はおろか、トップテンに入るなんて! さすがだよ、リョウ君! おめでとう!」
「おめでとうございます、涼我君!」
「ありがとう、あおい、愛実。2人や道本達と一緒に勉強会をしたおかげだよ」

 彼らの分からないところを教えて、勉強を深く理解することができたし。満点はなかったけど、どの教科も高得点を取れたのが学年9位に繋がったのだと思う。
 あと、自分の名前を見つけたときよりも、あおいと愛実が笑顔でおめでとうと言ってくれたときの方が嬉しい。2人の笑顔を見ると、この先も成績上位者に入ることを一つの目標に勉強を頑張りたいと思える。
 あおいはスマホを取り出して、俺の名前が書かれている部分を撮影している。それを見て、愛実まで撮っていて。そんなにも嬉しく思ってくれているのか。思わず「ははっ」と笑い声が漏れる。

「涼我君に送りますね」
「私も送るよ」

 あおいと愛実がそう言った直後、3人のグループトークに2人が先ほど撮った写真を送信してくれた。若干の覚悟の違いはあるけど、2枚連続で『9位:麻丘涼我 (2組) 907点』が表示されると何だかシュールだ。
 2人にお礼を言って、俺はスマホに保存した。そうしたら、今度はスマホのアルバムに2枚連続して表示されて。シュールさも保存された。
 その後、10位以降の生徒も見ていくけど……20位までにあおいや愛実達の名前は入っていなかった。

「私達の名前はありませんでしたね」
「そうだね」
「まあ、私は理系科目中心に平均点前後の教科がいくつもありましたからね」

 納得の表情をするあおい。
 あおいは苦手科目があったけど、勉強を頑張って赤点にはならず、平均点ほどを取ることができた。赤点科目はなかったため、御両親からバイトをする許可が下りたとのこと。あらかじめ、バイトの情報収集はしていて、先週末に採用面接に行ったそうだ。

「私はともかく、愛実ちゃんが入っていないのは意外です。満点の教科が2つありましたし」
「俺も満点がある愛実は可能性があるかなって思ってた」
「私も数ⅡとBは平均点くらいだったからね。20位までに入るのは難しいんじゃないかって思っていたよ」

 落ち着いた笑顔でそう言う愛実。
 20位の生徒の得点からして、平均点程度の科目がいくつかあると、学年20位までに入るのは難しいのかも。

「改めて、涼我君の凄さを実感しました」
「リョウ君は苦手科目ないもんね。凄いよ」
「私達に分かりやすく教えられるほどですからね」
「みんなのおかげだよ。今回の結果を励みに期末以降も頑張るよ。じゃあ、教室に行くか」
「そうですね」
「行こうか」

 俺達は2年2組の教室へ向かう。
 俺が学年9位にランクインしているのを知っていたのだろう。教室に到着すると、道本、鈴木、海老名さんが開口一番に「おめでとう」と言ってくれたのであった。
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