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第3章
エピローグ『クロノスタシス⑦-決断-』
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今日の学校生活も終わって、放課後となった。ゴールデンウィークが明けたけど、1日学校に行っただけで週末の連休を迎えられるとは。連休明けって感じがあまりしないな。
今日の放課後は午後4時から7時までバイトだ。
また、昨日まで合宿だったため、今日は陸上部の練習はお休みとのこと。なので、海老名さんはあおいや愛実と一緒に駅周辺のお店へ買い物に行き、道本と鈴木は陸上部の部員と一緒にボウリングしに行くとのこと。試験前を除けば、平日の放課後の活動が休みになることは滅多にないそうだし、楽しい時間になるといいな。
幼馴染や友人達が遊ぶ中で、俺はバイトか。結構前にシフト希望を提出していたので、こればかりは仕方のないことだ。あおいと愛実と海老名さんは俺のバイト中に来てくれるそうだし、バイト代も出るから、それらを糧に頑張ろう。
今日もカウンターでの接客を中心に仕事していく。
平日の夕方なのもあってか、調津高校を含め制服姿のお客様が多いな。こういうことからもゴールデンウィークが明けたことを実感する。
ただ、いつもの平日とは違って、私服姿の大人のお客様も多い。昨日まではゴールデンウィークで明日からは週末だから、今日は有休を使っているのだろうか。
客層が普段とは違うのを楽しみながら仕事をしていく。
今日のバイトが始まってから1時間ほどして、
「リョウ君、お疲れ様」
「涼我君、お疲れ様です!」
「お疲れ様、麻丘君。平日のこの時間に、バイトしている麻丘君を見るのは新鮮ね」
愛実とあおいと海老名さんが来店してくれた。3人が笑顔で手を振りながら俺が担当しているカウンターに来てくれるのもあって、今日の学校やここまでのバイトの疲れがすーっと抜けていく。
「いらっしゃいませ。来てくれてありがとう。買い物行ってきたんだよな」
「はいっ! アニメイクに行ったり、服やコスメを見たりしました!」
「アニメイクではあおいちゃんが漫画を買っていたよ」
「興奮していたわね」
そのときのことを思い出しているのか、愛実と海老名さんは楽しげな様子。アニメイクで買いたい漫画を手にとって興奮するあおい……容易に想像できるな。
「楽しい買い物になったみたいで良かった。……店内でのご利用ですか?」
「はいっ! タピオカドリンクを飲みに来ました!」
あおいが元気良くそう言ってくる。そういえば、お泊まり中にサリーズでタピオカドリンクを販売していると話したら、あおいと愛実が一緒に飲みに行こうって話していたな。
あおいはタピオカミルクティー、愛実はタピオカストロベリーラテ、海老名さんはタピオカカフェオレを注文した。
俺が商品を渡すと、3人は俺の担当するカウンターから一番近い4人用のテーブル席に腰を下ろした。3人はさっそくタピオカドリンクを飲んで、
『美味しい!』
と、ほぼ同じタイミングで感想を口にしていた。提供した人間として、彼女達の笑顔を見るととても嬉しい気持ちになる。
美少女が3人一緒にいて、魅力的な笑顔になっているからだろうか。男性を中心に3人に視線を向けるお客様は結構多い。ただ、こういう状況に慣れているのか、3人は周りを全く気にせずにお喋りに興じていた。
それからも、俺はカウンターでの仕事をしていく。お客様対応していないときに3人のことを見ながら。
3人が来店してから20分ほどして、俺は休憩に入った。
休憩室でアイスコーヒーを飲みながらスマホを弄っていると、
「うん?」
LIMEで、海老名さんからメッセージが届いたとポップアップ通知が表示された。どうしたんだ? 何かあったのかな?
通知をタップすると、海老名さんとの個別トークが開き、
『麻丘君と2人きりで話したいことがあるの。バイトが終わってから時間はある?』
というメッセージが表示された。俺と話したいことがあるのか。
3人の座るテーブル席からカウンターがバッチリ見える。俺がいなくなったから、休憩に入ったのだと思って海老名さんはメッセージを送ったのだろう。
『バイトの後なら大丈夫だ。午後7時に終わるよ』
海老名さんにそうメッセージを送った。
向こうもトーク画面を開いているのか、俺がメッセージを送った瞬間に『既読』のマークが付く。
『ありがとう。じゃあ、7時過ぎにね』
という返信が海老名さんから届いた。
「俺と話したいことか……」
しかも、2人きりで。海老名さんとは4年以上の付き合いになるけど、こういうことは初めてだ。
休憩中はスマホを弄るけど、海老名さんが俺に話したいことが気になって、画面に集中することができなかった。
休憩が終わってカウンターに戻ってからは、気持ちを切り替えて接客を中心に仕事に集中していく。ただ、テーブル席に座っている海老名さん達のことを見ると、気になる気持ちが頭をよぎった。
午後6時過ぎになって、
「涼我君。私達はこれで帰りますね。残りのバイトも頑張ってください」
「頑張ってね、リョウ君」
「頑張って、麻丘君」
タピオカドリンクを飲み終わった3人は、荷物を持って再び俺の担当するカウンターの前に来てくれた。3人から労いの言葉を言ってもらえたので、体がちょっと軽くなった気がした。
「ありがとう。またな」
俺がそう言うと、3人とも明るい笑顔を向けてくれる。そんな3人の顔を見て……海老名さんと目が合うと、彼女は口角をさらに上げた。
3人は俺に小さく手を振ってお店を後にした。
これから1時間弱、海老名さんはどこかで時間を潰すのだろう。シフト上がりの時間は伝えてあるけど、バイトが終わったら、海老名さんに終わったってメッセージを送らないと。
海老名さんとの約束もあるし、何の問題やトラブルが起きないといいなぁ……と思いながらバイトを続ける。
想いが届いたのか、何事もなくシフト上がりの午後7時を迎え、俺はバイトを終えた。
更衣室でバイトの制服から学校の制服に着替える際、海老名さんにバイトが終わったとメッセージを送る。海老名さんからすぐに返信が来て、従業員用の出入口の近くで待つとのこと。
普段よりも素早く着替えて、俺は従業員用の出入口から外に出る。
「バイトお疲れ様、麻丘君」
扉を開けると、そこには海老名さんが立っており、微笑みながら俺に労いの言葉を掛けてくれる。お店の横だし、海老名さん一人なので何だか新鮮な光景だ。
「ありがとう、海老名さん」
「いえいえ。こっちこそありがとう。突然なお願いを聞いてくれて」
「別にかまわないさ。だって、俺に話したいことがあるんだろう?」
「……ええ」
俺の目を見ながら小さく頷く海老名さん。
「ここだと人の出入りもあるから、調津北公園で話しましょう」
「ああ、分かった」
今は午後7時過ぎだし、日も暮れて暗くなった。公園で遊んでいる子供達も既に家に帰っている時間だろう。それでいて、北公園には電灯がいくつもあるので真っ暗ではない。ベンチもある。だから、海老名さんと2人で話すには最適な場所だと思う。
俺は海老名さんと一緒に、調津北公園に向かって歩き始める。
海老名さんと2人で歩いたこともあまりないし、しかも夜だ。住み慣れた街の風景が、今は少し違って見える。
「麻丘君」
「うん?」
「昨日、グループトークで愛実とあおいから話されたけど、お泊まりの日の夜……2人と同じ布団で一緒に寝たそうね」
やっぱり、海老名さんはお泊まりの夜に3人で同じ布団で寝たことを知っていたか。やましいことは一切ないのに、そのことを海老名さんに言われるとドキッとした。あおいと愛実に変なことをするなって2度注意されたからだろうか。
「夜中に、あおいが寝ぼけて俺のベッドに入ってきたのがきっかけでさ」
「それで、あおいをふとんに戻したら、その直後に愛実に脚を抱きしめられて、それに気を取られていたら、あおいにも脚を抱きしめられてベッドに戻れなくなったんでしょ」
「ああ。寝ぼけているとはいえ、変なことをされたのは俺だったよ」
「そうだったみたいね」
ふふっ、と上品に笑う海老名さん。どうやら、あの夜のことを彼女は信じてくれたようだ。安心した。
お泊まりの夜のことを話していたのもあり、気付けば調津北公園が見えていた。俺の予想通り、公園内には人が全然いない。これなら、海老名さんと2人きりで話ができそうだ。
俺達は静かな公園の中に入り、街灯に照らされたベンチに腰を下ろした。休憩のとき以外はバイト中はずっと立っていたので、こうして座ると体が楽に感じる。
海老名さんを見ると……ちょっと俯いている。さっきまで浮かんでいた笑みが顔から消えていた。真剣な表情になっており、緊張しているようにも見える。俺から切り出した方が海老名さんも話しやすいだろうか。
「……海老名さん。俺と2人きりになって話したいことってどんなことかな」
海老名さんを見ながら、俺はそう問いかける。君を真剣な表情にさせるほどの内容とはいったい何なのか。
海老名さんは表情を変えず、ゆっくりと俺の方を向いてくる。その流れで彼女の視線が俺の目にしっかりと向けられて。
「陸上部のマネージャーになってほしい」
普段よりも小さなボリュームで、それでいて力のこもった声で海老名さんはそう言ってきた。
「陸上部のマネージャー……」
予想もしていなかった内容だったので、気付けばオウム返しのように言葉を漏らしていた。
俺の言葉が聞こえたようで、海老名さんは小さく頷く。
「ゴールデンウィーク前の部活でマネージャーの仕事を手伝ってくれたとき、麻丘君はとてもいい働きをしていた。3年の先輩が怪我をしたときの応急処置も的確だったし。それに、短距離走の部員中心にモチベーションが上がっているように見えて。もちろん、それは麻丘君の中1のときの活躍や、4月のあおいとのレースを見たからだと思うけど」
「あおいと一緒にタイム計測したからか、元気に走る部員が多かったな」
「ええ。あの日のタイムが一番良かったっていう部員もいるわ」
「そうなのか」
「ええ。……合宿中も、麻丘君達がこの場にいたらもっと充実した内容になるんじゃないかって何度思った。特に麻丘君がいてくれたら」
「……買いかぶりすぎだよ」
「そんなことない!」
いつになく、張り上げた声で海老名さんはそう言ってくる。そのことに俺は体がビクリと震えた。
「中1の春に初めて麻丘君の走りを見たけど、速くて、フォームも綺麗で凄いと思った。中1の時点で関東大会に行けるほどの実力の持ち主で。何よりも楽しそうに走っていて。だから、学年関係なく短距離走の部員中心に麻丘君を慕って」
「海老名さん……」
「中2の春に事故に遭って、麻丘君は陸上を辞めた。ただ、あれから3年経っても、麻丘君の人を惹きつける走りは健在で。そんな麻丘君がいれば、陸上部はもっと盛り上がって、インターハイに行ける部員が出てくるかもしれない」
そう言うと、海老名さんは両手で俺の右手を掴んで、
「麻丘君に……いてほしい」
パッチリとした目で俺を見つめて、海老名さんは俺にそう言ってきた。そんな彼女は頬を中心に顔を赤らめているのもあり、とても可愛らしくて。海老名さんのこんな表情を見るのは初めてで。ただ、そんな彼女を目の前にして、ここにはいない彼女達の顔が頭に浮かぶ。
俺の手を握る力が強くなり、その両手からは強い温もりが伝わってくる。
中学1年から2年の今くらいの時期まで陸上部にいたことや、先日のあおいとのレース、マネージャーの手伝いを通じて、海老名さんは俺がマネージャーという形でも陸上部に必要だと考えてくれているようだ。
ただ……「いてほしい」という言葉や、海老名さんが顔を赤くしながら見つめているから、陸上部のマネージャーの勧誘だけじゃないように思えてくる。好きだって告白されているように思えて。そう考えると、体が少し熱くなった。
でも、それは……きっと俺の思い過ごしだろう。自意識過剰だろう。今は言われたことに対して、俺の想いを伝えよう。
「ありがとう、海老名さん。陸上部の部員として俺を必要としてくれて。いてほしいって言ってくれて。嬉しいよ」
「じゃあ――」
「でも、ごめん。俺は……陸上部に入らない」
「……どうして?」
理由を問いかける海老名さんの両目は、近くにある街灯の灯りでキラリと光る。そんな海老名さんを見ると、胸がチクリと痛んだ。
「……今の生活が楽しいし、それを続けたいから。漫画やアニメやラノベを堪能して。高校生になってからは、サリーズでバイトして稼いで。そのバイトも楽しいって思ってる。マネージャーをやったら、とてもじゃないけどそれらのことが今まで通りにできなくなる。中学の1年ちょっとだけど陸上部に入っていたから、マネージャーの仕事が大変なのは分かっているし」
「……まあ、少なくともバイトと掛け持ちは厳しいでしょうね。漫画とかを楽しむ時間も、きっと今よりは少なくなりそう」
「ああ。ただ、助っ人をしてみて、誰かのサポートをするのもいいとは思ったのは事実だ」
あおいと愛実と一緒に、マネージャーの助っ人をしたのはいい経験だった。海老名さんを含めた当時のマネージャーへの感謝の気持ちがより強くなったし。
「そう言ってくれるのは嬉しい。ちなみに、選手としては? ……まあ、ドクターストップがかかっているから、マネージャー以上に可能性ないか」
「……ああ。あの事故で俺の陸上人生は終わったって思ってる。でも、この前のあおいとのレースを通して、走ることが楽しいって思えた。あれ以降、何度か休日の早朝にジョギングして。あおいや愛実、道本とも一緒にして。ジョギングなら、今の自分の生活に難なく加えることができて、これからもずっと走ることを楽しんでいけそうだって思ったんだ。だから、マネージャーとしても、選手としても陸上部には入らない」
それが、陸上部に関する決断だ。入部しない。ただ、個人として自分のペースで走ることを続けていきたい。
それから、俺達の間には静寂の時間が流れていく。たまに吹く柔らかな風が妙に冷たく感じる。
「……なるほどね」
陸上部に入らないと言ってから、どのくらいの時間が経っただろうか。
呟くようにして言うと、海老名さんは微笑んだ。顔を少し下に向けると、両目からは涙がこぼれ落ちそうで。ただ、それが分かったのか、海老名さんは右手で両目を拭った。
「分かったわ」
「……ごめんな。俺の個人的な理由で断って」
「いいのよ。こっちも自分のことばかり考えて、麻丘君を誘ったし。それに、前にも言ったように……伸び伸び過ごせるのに越したことはないから。麻丘君の好きなことを堪能していってほしいから。漫画とかアニメの話をすると凄く楽しそうだし、バイト中もいい顔をして接客していたものね。愛実もあおいも道本君も、ジョギングする麻丘君は楽しそうだったって言っていたし。走ることをずっと楽しんでいけそうだって麻丘君から聞けたのがとても嬉しいの」
優しい声色でそう言うと、海老名さんは俺の目を見て笑ってくれる。どうやら、俺の返事を受け入れてくれたようだ。
「これからも一個人として、陸上部を応援するよ。あと、この前みたいに、陸上部が緊急事態で俺の予定も空いていたら、またマネージャーの手伝いをするよ」
「ありがとう。今までと変わらずにいてくれるのは嬉しいわ。これからも部活で何かあったときには麻丘君に訊いてみる」
海老名さんは柔らかな笑みを浮かべる。
もしかしたら、海老名さんは……俺をマネージャーとしてでも陸上部に迎え入れることで、中学のときのような部活の時間を一緒に過ごしたかったのかもしれない。今の海老名さんの笑顔を見てそう思った。
「あと、あたしも一緒にジョギングすることがあるかも。愛実みたいに、あたしも油断すると太っちゃうことがあるから」
「そうなのか。……分かった」
思い返すと、海老名さんとは一度もジョギングしたことはなかったな。いつか、彼女とジョギングする日を楽しみにしておこう。
「麻丘君。あたしに付き合ってくれてありがとう」
「いえいえ。それに、海老名さんが……陸上部のことで俺のことを凄く考えてくれていたのが分かって嬉しかったし。こちらこそありがとう」
「いえいえ」
「ちなみに、あおいと愛実にも誘ったのか?」
「うん。この前手伝ってくれたから、今日の放課後に話してみた。ただ、愛実はキッチン部があるし、あおいはバイトをしたいって断られたわ。中間試験が終わった後に始めたいって考えているみたい」
「……そうか」
愛実は既にキッチン部に入っている。週に一度に加え、たまに買い出しに行く程度の活動だけど、陸上部マネージャーとの両立は難しいかも。それに、料理好きだし、キッチン部の活動もとても楽しんでいるようだから。
あおいは……バイトをしたい気持ちが変わらないか。中間試験が明けたら……ということは、中間試験の結果次第でバイトを始める感じなのかな。
「じゃあ、あたしはこれで帰るわ」
「ああ。暗いし、途中まででも送ろうか?」
「ううん、いいわ。家の方向も違うし、気持ちだけで十分」
「分かった。気をつけて帰れよ。あと、明日は部活あるんだろう? 頑張って」
「ありがとう。じゃあ、またね」
「またな」
俺達はベンチから立ち上がって、一緒に公園の入口まで向かう。
入口に辿り着いたところで再び「またね」と声を掛け合って、俺は一人で帰路に就く。
高校生以降は、バイトを始めたのもあって、夜になってから家に帰っていくことには慣れている。だけど、今は少し寂しさを感じた。
5月になっても、夜風が肌寒く感じて。海老名さんは寒くないだろうか。俺と同じくシャツにベスト姿だったから。
「海老名さん……か」
両手で俺の手を掴んで「いてほしい」と言ったときの海老名さんを思い出す。あのときの海老名さんはとても可愛らしくて。
ただ、いてほしいって言われたとき、
どうして、あおいと愛実の笑顔が頭に浮かんだのだろうか。
あおいと愛実が幼馴染だからなのか。昨日の朝、一緒にウォーキングやジョギングをして楽しかったからなのか。告白のように思えたときも、2人の笑顔が頭から離れなかった。
あおいと愛実の笑顔を思い浮かぶと、あのときのように再び体が熱くなっていった。風の肌寒さが気にならなくなるくらいに。
第3章 おわり
第4章に続く。
今日の放課後は午後4時から7時までバイトだ。
また、昨日まで合宿だったため、今日は陸上部の練習はお休みとのこと。なので、海老名さんはあおいや愛実と一緒に駅周辺のお店へ買い物に行き、道本と鈴木は陸上部の部員と一緒にボウリングしに行くとのこと。試験前を除けば、平日の放課後の活動が休みになることは滅多にないそうだし、楽しい時間になるといいな。
幼馴染や友人達が遊ぶ中で、俺はバイトか。結構前にシフト希望を提出していたので、こればかりは仕方のないことだ。あおいと愛実と海老名さんは俺のバイト中に来てくれるそうだし、バイト代も出るから、それらを糧に頑張ろう。
今日もカウンターでの接客を中心に仕事していく。
平日の夕方なのもあってか、調津高校を含め制服姿のお客様が多いな。こういうことからもゴールデンウィークが明けたことを実感する。
ただ、いつもの平日とは違って、私服姿の大人のお客様も多い。昨日まではゴールデンウィークで明日からは週末だから、今日は有休を使っているのだろうか。
客層が普段とは違うのを楽しみながら仕事をしていく。
今日のバイトが始まってから1時間ほどして、
「リョウ君、お疲れ様」
「涼我君、お疲れ様です!」
「お疲れ様、麻丘君。平日のこの時間に、バイトしている麻丘君を見るのは新鮮ね」
愛実とあおいと海老名さんが来店してくれた。3人が笑顔で手を振りながら俺が担当しているカウンターに来てくれるのもあって、今日の学校やここまでのバイトの疲れがすーっと抜けていく。
「いらっしゃいませ。来てくれてありがとう。買い物行ってきたんだよな」
「はいっ! アニメイクに行ったり、服やコスメを見たりしました!」
「アニメイクではあおいちゃんが漫画を買っていたよ」
「興奮していたわね」
そのときのことを思い出しているのか、愛実と海老名さんは楽しげな様子。アニメイクで買いたい漫画を手にとって興奮するあおい……容易に想像できるな。
「楽しい買い物になったみたいで良かった。……店内でのご利用ですか?」
「はいっ! タピオカドリンクを飲みに来ました!」
あおいが元気良くそう言ってくる。そういえば、お泊まり中にサリーズでタピオカドリンクを販売していると話したら、あおいと愛実が一緒に飲みに行こうって話していたな。
あおいはタピオカミルクティー、愛実はタピオカストロベリーラテ、海老名さんはタピオカカフェオレを注文した。
俺が商品を渡すと、3人は俺の担当するカウンターから一番近い4人用のテーブル席に腰を下ろした。3人はさっそくタピオカドリンクを飲んで、
『美味しい!』
と、ほぼ同じタイミングで感想を口にしていた。提供した人間として、彼女達の笑顔を見るととても嬉しい気持ちになる。
美少女が3人一緒にいて、魅力的な笑顔になっているからだろうか。男性を中心に3人に視線を向けるお客様は結構多い。ただ、こういう状況に慣れているのか、3人は周りを全く気にせずにお喋りに興じていた。
それからも、俺はカウンターでの仕事をしていく。お客様対応していないときに3人のことを見ながら。
3人が来店してから20分ほどして、俺は休憩に入った。
休憩室でアイスコーヒーを飲みながらスマホを弄っていると、
「うん?」
LIMEで、海老名さんからメッセージが届いたとポップアップ通知が表示された。どうしたんだ? 何かあったのかな?
通知をタップすると、海老名さんとの個別トークが開き、
『麻丘君と2人きりで話したいことがあるの。バイトが終わってから時間はある?』
というメッセージが表示された。俺と話したいことがあるのか。
3人の座るテーブル席からカウンターがバッチリ見える。俺がいなくなったから、休憩に入ったのだと思って海老名さんはメッセージを送ったのだろう。
『バイトの後なら大丈夫だ。午後7時に終わるよ』
海老名さんにそうメッセージを送った。
向こうもトーク画面を開いているのか、俺がメッセージを送った瞬間に『既読』のマークが付く。
『ありがとう。じゃあ、7時過ぎにね』
という返信が海老名さんから届いた。
「俺と話したいことか……」
しかも、2人きりで。海老名さんとは4年以上の付き合いになるけど、こういうことは初めてだ。
休憩中はスマホを弄るけど、海老名さんが俺に話したいことが気になって、画面に集中することができなかった。
休憩が終わってカウンターに戻ってからは、気持ちを切り替えて接客を中心に仕事に集中していく。ただ、テーブル席に座っている海老名さん達のことを見ると、気になる気持ちが頭をよぎった。
午後6時過ぎになって、
「涼我君。私達はこれで帰りますね。残りのバイトも頑張ってください」
「頑張ってね、リョウ君」
「頑張って、麻丘君」
タピオカドリンクを飲み終わった3人は、荷物を持って再び俺の担当するカウンターの前に来てくれた。3人から労いの言葉を言ってもらえたので、体がちょっと軽くなった気がした。
「ありがとう。またな」
俺がそう言うと、3人とも明るい笑顔を向けてくれる。そんな3人の顔を見て……海老名さんと目が合うと、彼女は口角をさらに上げた。
3人は俺に小さく手を振ってお店を後にした。
これから1時間弱、海老名さんはどこかで時間を潰すのだろう。シフト上がりの時間は伝えてあるけど、バイトが終わったら、海老名さんに終わったってメッセージを送らないと。
海老名さんとの約束もあるし、何の問題やトラブルが起きないといいなぁ……と思いながらバイトを続ける。
想いが届いたのか、何事もなくシフト上がりの午後7時を迎え、俺はバイトを終えた。
更衣室でバイトの制服から学校の制服に着替える際、海老名さんにバイトが終わったとメッセージを送る。海老名さんからすぐに返信が来て、従業員用の出入口の近くで待つとのこと。
普段よりも素早く着替えて、俺は従業員用の出入口から外に出る。
「バイトお疲れ様、麻丘君」
扉を開けると、そこには海老名さんが立っており、微笑みながら俺に労いの言葉を掛けてくれる。お店の横だし、海老名さん一人なので何だか新鮮な光景だ。
「ありがとう、海老名さん」
「いえいえ。こっちこそありがとう。突然なお願いを聞いてくれて」
「別にかまわないさ。だって、俺に話したいことがあるんだろう?」
「……ええ」
俺の目を見ながら小さく頷く海老名さん。
「ここだと人の出入りもあるから、調津北公園で話しましょう」
「ああ、分かった」
今は午後7時過ぎだし、日も暮れて暗くなった。公園で遊んでいる子供達も既に家に帰っている時間だろう。それでいて、北公園には電灯がいくつもあるので真っ暗ではない。ベンチもある。だから、海老名さんと2人で話すには最適な場所だと思う。
俺は海老名さんと一緒に、調津北公園に向かって歩き始める。
海老名さんと2人で歩いたこともあまりないし、しかも夜だ。住み慣れた街の風景が、今は少し違って見える。
「麻丘君」
「うん?」
「昨日、グループトークで愛実とあおいから話されたけど、お泊まりの日の夜……2人と同じ布団で一緒に寝たそうね」
やっぱり、海老名さんはお泊まりの夜に3人で同じ布団で寝たことを知っていたか。やましいことは一切ないのに、そのことを海老名さんに言われるとドキッとした。あおいと愛実に変なことをするなって2度注意されたからだろうか。
「夜中に、あおいが寝ぼけて俺のベッドに入ってきたのがきっかけでさ」
「それで、あおいをふとんに戻したら、その直後に愛実に脚を抱きしめられて、それに気を取られていたら、あおいにも脚を抱きしめられてベッドに戻れなくなったんでしょ」
「ああ。寝ぼけているとはいえ、変なことをされたのは俺だったよ」
「そうだったみたいね」
ふふっ、と上品に笑う海老名さん。どうやら、あの夜のことを彼女は信じてくれたようだ。安心した。
お泊まりの夜のことを話していたのもあり、気付けば調津北公園が見えていた。俺の予想通り、公園内には人が全然いない。これなら、海老名さんと2人きりで話ができそうだ。
俺達は静かな公園の中に入り、街灯に照らされたベンチに腰を下ろした。休憩のとき以外はバイト中はずっと立っていたので、こうして座ると体が楽に感じる。
海老名さんを見ると……ちょっと俯いている。さっきまで浮かんでいた笑みが顔から消えていた。真剣な表情になっており、緊張しているようにも見える。俺から切り出した方が海老名さんも話しやすいだろうか。
「……海老名さん。俺と2人きりになって話したいことってどんなことかな」
海老名さんを見ながら、俺はそう問いかける。君を真剣な表情にさせるほどの内容とはいったい何なのか。
海老名さんは表情を変えず、ゆっくりと俺の方を向いてくる。その流れで彼女の視線が俺の目にしっかりと向けられて。
「陸上部のマネージャーになってほしい」
普段よりも小さなボリュームで、それでいて力のこもった声で海老名さんはそう言ってきた。
「陸上部のマネージャー……」
予想もしていなかった内容だったので、気付けばオウム返しのように言葉を漏らしていた。
俺の言葉が聞こえたようで、海老名さんは小さく頷く。
「ゴールデンウィーク前の部活でマネージャーの仕事を手伝ってくれたとき、麻丘君はとてもいい働きをしていた。3年の先輩が怪我をしたときの応急処置も的確だったし。それに、短距離走の部員中心にモチベーションが上がっているように見えて。もちろん、それは麻丘君の中1のときの活躍や、4月のあおいとのレースを見たからだと思うけど」
「あおいと一緒にタイム計測したからか、元気に走る部員が多かったな」
「ええ。あの日のタイムが一番良かったっていう部員もいるわ」
「そうなのか」
「ええ。……合宿中も、麻丘君達がこの場にいたらもっと充実した内容になるんじゃないかって何度思った。特に麻丘君がいてくれたら」
「……買いかぶりすぎだよ」
「そんなことない!」
いつになく、張り上げた声で海老名さんはそう言ってくる。そのことに俺は体がビクリと震えた。
「中1の春に初めて麻丘君の走りを見たけど、速くて、フォームも綺麗で凄いと思った。中1の時点で関東大会に行けるほどの実力の持ち主で。何よりも楽しそうに走っていて。だから、学年関係なく短距離走の部員中心に麻丘君を慕って」
「海老名さん……」
「中2の春に事故に遭って、麻丘君は陸上を辞めた。ただ、あれから3年経っても、麻丘君の人を惹きつける走りは健在で。そんな麻丘君がいれば、陸上部はもっと盛り上がって、インターハイに行ける部員が出てくるかもしれない」
そう言うと、海老名さんは両手で俺の右手を掴んで、
「麻丘君に……いてほしい」
パッチリとした目で俺を見つめて、海老名さんは俺にそう言ってきた。そんな彼女は頬を中心に顔を赤らめているのもあり、とても可愛らしくて。海老名さんのこんな表情を見るのは初めてで。ただ、そんな彼女を目の前にして、ここにはいない彼女達の顔が頭に浮かぶ。
俺の手を握る力が強くなり、その両手からは強い温もりが伝わってくる。
中学1年から2年の今くらいの時期まで陸上部にいたことや、先日のあおいとのレース、マネージャーの手伝いを通じて、海老名さんは俺がマネージャーという形でも陸上部に必要だと考えてくれているようだ。
ただ……「いてほしい」という言葉や、海老名さんが顔を赤くしながら見つめているから、陸上部のマネージャーの勧誘だけじゃないように思えてくる。好きだって告白されているように思えて。そう考えると、体が少し熱くなった。
でも、それは……きっと俺の思い過ごしだろう。自意識過剰だろう。今は言われたことに対して、俺の想いを伝えよう。
「ありがとう、海老名さん。陸上部の部員として俺を必要としてくれて。いてほしいって言ってくれて。嬉しいよ」
「じゃあ――」
「でも、ごめん。俺は……陸上部に入らない」
「……どうして?」
理由を問いかける海老名さんの両目は、近くにある街灯の灯りでキラリと光る。そんな海老名さんを見ると、胸がチクリと痛んだ。
「……今の生活が楽しいし、それを続けたいから。漫画やアニメやラノベを堪能して。高校生になってからは、サリーズでバイトして稼いで。そのバイトも楽しいって思ってる。マネージャーをやったら、とてもじゃないけどそれらのことが今まで通りにできなくなる。中学の1年ちょっとだけど陸上部に入っていたから、マネージャーの仕事が大変なのは分かっているし」
「……まあ、少なくともバイトと掛け持ちは厳しいでしょうね。漫画とかを楽しむ時間も、きっと今よりは少なくなりそう」
「ああ。ただ、助っ人をしてみて、誰かのサポートをするのもいいとは思ったのは事実だ」
あおいと愛実と一緒に、マネージャーの助っ人をしたのはいい経験だった。海老名さんを含めた当時のマネージャーへの感謝の気持ちがより強くなったし。
「そう言ってくれるのは嬉しい。ちなみに、選手としては? ……まあ、ドクターストップがかかっているから、マネージャー以上に可能性ないか」
「……ああ。あの事故で俺の陸上人生は終わったって思ってる。でも、この前のあおいとのレースを通して、走ることが楽しいって思えた。あれ以降、何度か休日の早朝にジョギングして。あおいや愛実、道本とも一緒にして。ジョギングなら、今の自分の生活に難なく加えることができて、これからもずっと走ることを楽しんでいけそうだって思ったんだ。だから、マネージャーとしても、選手としても陸上部には入らない」
それが、陸上部に関する決断だ。入部しない。ただ、個人として自分のペースで走ることを続けていきたい。
それから、俺達の間には静寂の時間が流れていく。たまに吹く柔らかな風が妙に冷たく感じる。
「……なるほどね」
陸上部に入らないと言ってから、どのくらいの時間が経っただろうか。
呟くようにして言うと、海老名さんは微笑んだ。顔を少し下に向けると、両目からは涙がこぼれ落ちそうで。ただ、それが分かったのか、海老名さんは右手で両目を拭った。
「分かったわ」
「……ごめんな。俺の個人的な理由で断って」
「いいのよ。こっちも自分のことばかり考えて、麻丘君を誘ったし。それに、前にも言ったように……伸び伸び過ごせるのに越したことはないから。麻丘君の好きなことを堪能していってほしいから。漫画とかアニメの話をすると凄く楽しそうだし、バイト中もいい顔をして接客していたものね。愛実もあおいも道本君も、ジョギングする麻丘君は楽しそうだったって言っていたし。走ることをずっと楽しんでいけそうだって麻丘君から聞けたのがとても嬉しいの」
優しい声色でそう言うと、海老名さんは俺の目を見て笑ってくれる。どうやら、俺の返事を受け入れてくれたようだ。
「これからも一個人として、陸上部を応援するよ。あと、この前みたいに、陸上部が緊急事態で俺の予定も空いていたら、またマネージャーの手伝いをするよ」
「ありがとう。今までと変わらずにいてくれるのは嬉しいわ。これからも部活で何かあったときには麻丘君に訊いてみる」
海老名さんは柔らかな笑みを浮かべる。
もしかしたら、海老名さんは……俺をマネージャーとしてでも陸上部に迎え入れることで、中学のときのような部活の時間を一緒に過ごしたかったのかもしれない。今の海老名さんの笑顔を見てそう思った。
「あと、あたしも一緒にジョギングすることがあるかも。愛実みたいに、あたしも油断すると太っちゃうことがあるから」
「そうなのか。……分かった」
思い返すと、海老名さんとは一度もジョギングしたことはなかったな。いつか、彼女とジョギングする日を楽しみにしておこう。
「麻丘君。あたしに付き合ってくれてありがとう」
「いえいえ。それに、海老名さんが……陸上部のことで俺のことを凄く考えてくれていたのが分かって嬉しかったし。こちらこそありがとう」
「いえいえ」
「ちなみに、あおいと愛実にも誘ったのか?」
「うん。この前手伝ってくれたから、今日の放課後に話してみた。ただ、愛実はキッチン部があるし、あおいはバイトをしたいって断られたわ。中間試験が終わった後に始めたいって考えているみたい」
「……そうか」
愛実は既にキッチン部に入っている。週に一度に加え、たまに買い出しに行く程度の活動だけど、陸上部マネージャーとの両立は難しいかも。それに、料理好きだし、キッチン部の活動もとても楽しんでいるようだから。
あおいは……バイトをしたい気持ちが変わらないか。中間試験が明けたら……ということは、中間試験の結果次第でバイトを始める感じなのかな。
「じゃあ、あたしはこれで帰るわ」
「ああ。暗いし、途中まででも送ろうか?」
「ううん、いいわ。家の方向も違うし、気持ちだけで十分」
「分かった。気をつけて帰れよ。あと、明日は部活あるんだろう? 頑張って」
「ありがとう。じゃあ、またね」
「またな」
俺達はベンチから立ち上がって、一緒に公園の入口まで向かう。
入口に辿り着いたところで再び「またね」と声を掛け合って、俺は一人で帰路に就く。
高校生以降は、バイトを始めたのもあって、夜になってから家に帰っていくことには慣れている。だけど、今は少し寂しさを感じた。
5月になっても、夜風が肌寒く感じて。海老名さんは寒くないだろうか。俺と同じくシャツにベスト姿だったから。
「海老名さん……か」
両手で俺の手を掴んで「いてほしい」と言ったときの海老名さんを思い出す。あのときの海老名さんはとても可愛らしくて。
ただ、いてほしいって言われたとき、
どうして、あおいと愛実の笑顔が頭に浮かんだのだろうか。
あおいと愛実が幼馴染だからなのか。昨日の朝、一緒にウォーキングやジョギングをして楽しかったからなのか。告白のように思えたときも、2人の笑顔が頭から離れなかった。
あおいと愛実の笑顔を思い浮かぶと、あのときのように再び体が熱くなっていった。風の肌寒さが気にならなくなるくらいに。
第3章 おわり
第4章に続く。
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