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第3章
第30話『3人でのジョギング』
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午前7時半。
これから、3人でウォーキングとジョギングをする。そのため、俺はジョギングウェア、あおいと愛実は学校の体操着にジャージの上着を羽織って、家の外に出る。また、愛実は以前に何度か俺とジョギングしたことがあるのでランニングポーチを、あおいは小さなウエストポーチを身に付けている。
今も晴れているし、普段ジョギングするときよりも少し遅めの時刻。なので、肌寒さは特に感じない。今日はあおいも愛実もいるので、気持ちのいい時間になりそうだ。
いつもと同じように、ジョギング前に軽くストレッチを行なう。あおいと愛実にもやってもらう。怪我防止のためにもストレッチは大切だから。
あおいも愛実も気持ち良さそうにストレッチしている。愛実曰く、昨日の夜にあおいから教えてもらったストレッチよりも楽だという。
「よし。これで準備のストレッチは以上だ」
「はい。ストレッチしたので、体が温まってきました」
「そうだね、あおいちゃん」
「いいことだ。じゃあ、まずは多摩川沿いの歩道に到着するまでウォーキングしよう。それで脚を動かすことに慣れよう」
「昔、私と一緒にジョギングしてくれたときも、まずはウォーキングからだったね。分かったよ」
「分かりました、涼我君!」
2人とも、やる気になってくれているな。それがとても嬉しい。
俺は動きを交えて、あおいと愛実にウォーキング中の正しいフォームを教えていく。
「今教えたフォームを心がけてウォーキングしていこう。じゃあ、出発だ」
「おー!」
あおいは拳にした右手を突き上げ、元気良く声を出す。そんなあおいに対し、愛実は声に出して笑いながら「おー」と可愛く言った。
俺達はウォーキングで家を出発する。
あおいと愛実のフォームを確認するためにも、俺は2人の後ろでウォーキングする。
愛実は中学時代に何度か一緒にウォーキングしているのもあってか、始めてすぐにとてもいいフォームで歩くように。
あおいも中学のときにテニスをしていたり、体を動かすのが好きだったりするからか、少しするといいフォームで歩けるように。歩きながら、俺が足の着地の仕方をアドバイスすると、さらにいいフォームになった。さすがはあおい。飲み込みが早い。
あと、こうしていると、あおいと愛実のコーチになった気分だ。2人は学校の体操着姿だし。
「2人ともいいフォームで歩けているよ」
「ありがとうございます。フォームを心がけると、歩くことでもちゃんとした運動になりますね!」
「そうだね、あおいちゃん。中学生のとき、リョウ君とウォーキングやジョギングしていたときのことを思い出してきたよ」
「俺もだよ」
当時はダイエット目的だったから、愛実が一生懸命にウォーキングしていたことを。愛実のスピードが速くて俺が必死に追いかけたり、愛実が途中でバテたりしたときもあった。
登校するときに歩く道を通り抜けて、俺達は調津駅前の道を歩いていく。
「休日の朝だからでしょうか。いつもとは違って人が全然いませんね」
「そうだな。朝早い時間にウォーキングやジョギングをするから、そのときはいつもこういう景色を見ているよ」
「そうなんですか。新鮮でいいですね!」
あおいは俺や愛実に明るい笑顔を見せてくれる。自分がいつも見ている景色を褒めてくれると嬉しい気持ちになる。
「静かなことも含めて普段とは違うよね。今のこの景色もいいね。そういえば、前もこんな雰囲気だったな。懐かしいなぁ」
当時のことを思い出しているのか、愛実は優しい笑みを浮かべながら周りの景色を見ている。
この景色が新鮮とか懐かしい……か。まあ、俺のようにジョギングが日課になっているとか、部活やバイトに行くってことがなければ、定期的に休日のこの時間帯に外出することはあまりないもんな。
あおいと愛実の反応を楽しみつつ、俺は2人と一緒に多摩川沿いの歩道に到着するまでウォーキングしていった。
「よし、ここで少し休憩しようか」
「うん、休憩しよう。さっき、あおいちゃんが言ったように、フォームを意識して歩くと結構な運動になるね」
「そうですね。とても気持ちいいです!」
爽やかな笑顔でそう言うあおいは顔がほんのり赤くなる程度。だけど、愛実は額に少し汗が浮かんでおり、呼吸もちょっと乱れている。これは2人の基礎体力の差によるものだろう。特に急ぐ必要もないし、休憩をしてから川沿いの歩道をジョギングしよう。
俺達は家から持ってきた麦茶を飲みながら休憩する。また、愛実はタオルで額や首筋の汗を拭っていた。
「あぁっ、麦茶が美味しいですっ!」
「美味しいし、冷たさが身に沁みるよ」
あおいと愛実は麦茶を飲むと、爽やかな笑顔でそう言った。
「ウォーキングしたり、ジョギングしたりした後の麦茶は格別だよな。いつも、ここで少し休憩することにしているんだ」
「そうなんですね。あと、多摩川がとても綺麗ですね! 河原から川を見るのは幼稚園のとき以来ですが、この綺麗な光景は変わらないですね」
「綺麗だよね、あおいちゃん。私も河原から見るのは……もしかしたら、中学のときにリョウ君と一緒にジョギングしたとき以来かも」
「地元に住んでいても、ここまではなかなか来ないよな。俺も事故に遭ってから、ジョギングを再開するまではここには来なかったよ」
河原に行くには、駅を通り過ぎて南側の住宅街を抜けないといけないからな。普段は川の近くまで来ることもないし。
これから走っていく下流方面を見ると、多摩川が朝陽に照らされていてとても綺麗だ。歩道に着いたときに休憩するのはキリがいいのもあるけど、この綺麗な多摩川の景色を見ると癒やされるからでもある。
周辺の景色を見ると、犬の散歩をしていたり、俺達と同じようにジョギングやウォーキングしたりしている人がちらほらと見受けられる。祝日なのもあってか老若男女問わず。
今日はウォーキングだから、いつもよりも疲れが取れるのが早いな。
「あおい、愛実、疲れはどうかな」
「疲れが取れてきました」
「私も。麦茶を飲んだり、綺麗な景色を見たりしたから。ウォーキングやジョギングを始めても大丈夫だよ」
「私もです」
「分かった。じゃあ、これからこの川沿いの歩道をジョギングしていこう」
2人とも体力が戻ってきていて良かった。ここで休憩を入れたのは正解だったようだ。
ウォーキングのときのように、俺は動きを交えて、2人にジョギングの正しいフォームを教えた。
「よし、じゃあ……ジョギングしていこうか。俺がいつも走っているコースを。愛実のペースで走っていこう」
「そうしてもらえると嬉しいよ。私が一番遅いから……」
「気にしないでください、愛実ちゃん」
「あおいの言う通りだ。それに、中学のときも愛実のペースで一緒に走ったじゃないか。あのときも楽しかったぞ」
「……うんっ」
愛実は可愛らしい笑顔を浮かべて、小さく頷いた。
愛実のペースでジョギングしたことは何度もあるし、この前、道本と一緒にジョギングしたときは彼にペースを合わせてもらった。誰かのペースに合わせることは全く悪いとは思わない。
「よし、ジョギングしよう」
『おー!』
今度はあおいと愛実が一緒に元気よく声を上げたな。
俺達は下流方面に向かって川沿いの歩道をジョギングし始める。ウォーキングのときと同じく、2人のフォーム確認のために後ろで走ることに。
愛実もあおいもいいフォームでジョギングできているな。愛実は俺と一緒に何度もジョギングしているし、あおいは……部活で走っていたのかな。フォームがいいので、俺から指摘することはなかった。なので、途中から2人の前でジョギングすることに。
今は愛実のペースでジョギングしているので、いつもよりも楽に感じる。中学のときもそうだったな。先日の道本もこういう感覚だったのだろう。
「川沿いの歩道だからでしょうか。ジョギングがとても気持ちいいです!」
「気持ちいいよね、あおいちゃん。たまに川の方を見ると、気持ちが爽やかになるよね」
「そうですね。川の流れる音が聞こえてきますし。涼我君がこの道をジョギングコースにするのが分かります」
「そう言ってくれて嬉しいな」
「中学の頃もこの歩道をジョギングコースにしていたよね。あと、この歩道では必ずジョギングだったよね。だから懐かしいな」
「そうだな」
ウォーキングでもジョギングでも、川沿いの歩道まで来ると体が温まってくるからな。それに、ここの歩道は景色が広いし、川を見て気分転換もしやすいから、川沿いの歩道は基本的にジョギングの区間にしている。
「ねえ、リョウ君。覚えてる? 初めて一緒にジョギングしたとき、すぐにバテてウォーキングに戻っちゃったこと」
「あったな」
「そんなことがあったんですね」
「ああ。でも、中学のときに比べると、愛実も体力はついていると思うよ。走るスピードも上がっているし」
そう言って、後ろに振り返ると、愛実は俺に向かってニコッと笑ってくれる。息が少し上がっているけど、話したり、笑ったりしながらジョギングできている。当時からの成長を感じるよ。
陸上をしていたのもあるけど、俺は中学に比べると……退化しているなぁ。ジョギングを再開した頃と比べて、ちょっとは体力がついていると思いたい。
それからも、あおいと愛実の様子を確認したり、多摩川を見たりしながら川沿いの歩道をジョギングしていく。いい気候だし、あおいと愛実と一緒だから気持ちいいな。
「涼我君。確か昔、多摩川の河原で、お休みの日に家族ぐるみでお弁当を食べましたよね。覚えていますか?」
「ジョギングを再開した日……ここをジョギングしているときに思い出したよ」
「そうですか。思い出してくれて嬉しいです」
あおいと愛実の方に振り返ると、あおいは俺に向かってニッコリと嬉しそうな笑顔を向けてくれる。その笑顔はお弁当を食べたときの笑顔にそっくりで。
「広い草原もあるし、多摩川も綺麗だから、お弁当を食べるのに良さそうだね」
「はいっ! お弁当がとても美味しかったことを覚えています。春休みのお花見が楽しかったですから、いつかは河原でみんなでお弁当を食べてみたいですね」
「それいいね」
「お花見といえば、川沿いに桜の木が植えられているエリアがいくつかあったな」
「では、来年のお花見は川沿いでやりましょう!」
「川も見られるしいいかも」
11ヶ月近く先のことだけど、あおいと愛実は意気投合。川沿いでお花見をしたことはないし、今年とは別の場所でのお花見だから新鮮でいいかもしれないな。
ジョギング中に思い出を振り返ることはあると思ったけど、これからの予定を決めるのは予想外だったな。先のことではあるけど、彼女達との予定ができることが嬉しかった。
いつも自宅方面へ向かう大通りとの交差点が見えてきた。なので、ここでもう一度休憩を取ることに。さすがにジョギングしたので、愛実だけでなく、あおいも少し息が上がり始めていた。
麦茶を飲むなどして、5分ほど休憩を取る。ジョギングをした後なので、川沿いの歩道に到着したときよりも麦茶が美味しいな。
休憩を取ったのもあり、あおいも愛実も体力的に大丈夫とのこと。なので、ジョギングして自宅まで帰っていった。
「よーし、これで終わり。お疲れ様!」
「お疲れ様でした!」
「うん……お疲れ様でした」
あおいは首筋に汗が多少流れているけど、爽やかな笑みを浮かべている。もしかしたら、あおいはいつもの俺の速さで一緒にジョギングしても大丈夫かもしれない。
愛実も汗をそれなりに掻いていて、息も結構上がっている。それでも、俺とあおいに笑顔を向けることができている。この様子なら、この後ゆっくりすればいつもの元気さを取り戻せそうかな。
「これがいつものコースだ。2人はウォーキングとジョギングをしてみてどうだった?」
「とても楽しかったです! 朝から体を動かすのもいいですね! 特に多摩川沿いの歩道を走っているときは気持ち良かったです!」
「久しぶりだったから疲れもあるけど、リョウ君とあおいちゃんと一緒だったから楽しかったよ。リョウ君と一緒にまたジョギングできて嬉しかったし。あと、あおいちゃんと同じで川沿いの歩道は気持ち良かったな。……今後、ダイエットのときにはよろしくお願いします」
「私も早く起きられたときにはよろしくお願いしますっ!」
「分かった。俺も今日は2人と一緒に初めてウォーキングとジョギングができて楽しかったよ。ありがとう」
俺がお礼を言うと、あおいと愛実は可愛らしい笑顔を向けてくれた。
再び趣味となったジョギングを、あおいと愛実も楽しいと言ってくれて。その気持ちを共有できたことがとても嬉しい。また一緒にジョギングしようとも言ってくれた。今日のジョギングのことは忘れられない思い出になったな。
その後、軽くストレッチしてから自宅の中に入った。
シャワーを浴びたり、朝食を食べたりする中で、あおいと愛実の体力が回復していった。
朝食を食べ終わった後は、昨日の深夜に放送されたアニメを観たり、小さい頃から人気の対戦ゲームをしたりと3人で楽しい時間を過ごすのであった。
高校2年生のゴールデンウィークは、あおいと愛実と2人の幼馴染と一緒に過ごす初めてのゴールデンウィークで。
前半の3連休はオリティアに参加し、後半の3連休は俺の家であおいと愛実とお泊まりして。また、どちらの連休でも1日バイトした日があり、3年ぶりに再開したジョギングも楽しむことができて。とても充実したゴールデンウィークになったのであった。
これから、3人でウォーキングとジョギングをする。そのため、俺はジョギングウェア、あおいと愛実は学校の体操着にジャージの上着を羽織って、家の外に出る。また、愛実は以前に何度か俺とジョギングしたことがあるのでランニングポーチを、あおいは小さなウエストポーチを身に付けている。
今も晴れているし、普段ジョギングするときよりも少し遅めの時刻。なので、肌寒さは特に感じない。今日はあおいも愛実もいるので、気持ちのいい時間になりそうだ。
いつもと同じように、ジョギング前に軽くストレッチを行なう。あおいと愛実にもやってもらう。怪我防止のためにもストレッチは大切だから。
あおいも愛実も気持ち良さそうにストレッチしている。愛実曰く、昨日の夜にあおいから教えてもらったストレッチよりも楽だという。
「よし。これで準備のストレッチは以上だ」
「はい。ストレッチしたので、体が温まってきました」
「そうだね、あおいちゃん」
「いいことだ。じゃあ、まずは多摩川沿いの歩道に到着するまでウォーキングしよう。それで脚を動かすことに慣れよう」
「昔、私と一緒にジョギングしてくれたときも、まずはウォーキングからだったね。分かったよ」
「分かりました、涼我君!」
2人とも、やる気になってくれているな。それがとても嬉しい。
俺は動きを交えて、あおいと愛実にウォーキング中の正しいフォームを教えていく。
「今教えたフォームを心がけてウォーキングしていこう。じゃあ、出発だ」
「おー!」
あおいは拳にした右手を突き上げ、元気良く声を出す。そんなあおいに対し、愛実は声に出して笑いながら「おー」と可愛く言った。
俺達はウォーキングで家を出発する。
あおいと愛実のフォームを確認するためにも、俺は2人の後ろでウォーキングする。
愛実は中学時代に何度か一緒にウォーキングしているのもあってか、始めてすぐにとてもいいフォームで歩くように。
あおいも中学のときにテニスをしていたり、体を動かすのが好きだったりするからか、少しするといいフォームで歩けるように。歩きながら、俺が足の着地の仕方をアドバイスすると、さらにいいフォームになった。さすがはあおい。飲み込みが早い。
あと、こうしていると、あおいと愛実のコーチになった気分だ。2人は学校の体操着姿だし。
「2人ともいいフォームで歩けているよ」
「ありがとうございます。フォームを心がけると、歩くことでもちゃんとした運動になりますね!」
「そうだね、あおいちゃん。中学生のとき、リョウ君とウォーキングやジョギングしていたときのことを思い出してきたよ」
「俺もだよ」
当時はダイエット目的だったから、愛実が一生懸命にウォーキングしていたことを。愛実のスピードが速くて俺が必死に追いかけたり、愛実が途中でバテたりしたときもあった。
登校するときに歩く道を通り抜けて、俺達は調津駅前の道を歩いていく。
「休日の朝だからでしょうか。いつもとは違って人が全然いませんね」
「そうだな。朝早い時間にウォーキングやジョギングをするから、そのときはいつもこういう景色を見ているよ」
「そうなんですか。新鮮でいいですね!」
あおいは俺や愛実に明るい笑顔を見せてくれる。自分がいつも見ている景色を褒めてくれると嬉しい気持ちになる。
「静かなことも含めて普段とは違うよね。今のこの景色もいいね。そういえば、前もこんな雰囲気だったな。懐かしいなぁ」
当時のことを思い出しているのか、愛実は優しい笑みを浮かべながら周りの景色を見ている。
この景色が新鮮とか懐かしい……か。まあ、俺のようにジョギングが日課になっているとか、部活やバイトに行くってことがなければ、定期的に休日のこの時間帯に外出することはあまりないもんな。
あおいと愛実の反応を楽しみつつ、俺は2人と一緒に多摩川沿いの歩道に到着するまでウォーキングしていった。
「よし、ここで少し休憩しようか」
「うん、休憩しよう。さっき、あおいちゃんが言ったように、フォームを意識して歩くと結構な運動になるね」
「そうですね。とても気持ちいいです!」
爽やかな笑顔でそう言うあおいは顔がほんのり赤くなる程度。だけど、愛実は額に少し汗が浮かんでおり、呼吸もちょっと乱れている。これは2人の基礎体力の差によるものだろう。特に急ぐ必要もないし、休憩をしてから川沿いの歩道をジョギングしよう。
俺達は家から持ってきた麦茶を飲みながら休憩する。また、愛実はタオルで額や首筋の汗を拭っていた。
「あぁっ、麦茶が美味しいですっ!」
「美味しいし、冷たさが身に沁みるよ」
あおいと愛実は麦茶を飲むと、爽やかな笑顔でそう言った。
「ウォーキングしたり、ジョギングしたりした後の麦茶は格別だよな。いつも、ここで少し休憩することにしているんだ」
「そうなんですね。あと、多摩川がとても綺麗ですね! 河原から川を見るのは幼稚園のとき以来ですが、この綺麗な光景は変わらないですね」
「綺麗だよね、あおいちゃん。私も河原から見るのは……もしかしたら、中学のときにリョウ君と一緒にジョギングしたとき以来かも」
「地元に住んでいても、ここまではなかなか来ないよな。俺も事故に遭ってから、ジョギングを再開するまではここには来なかったよ」
河原に行くには、駅を通り過ぎて南側の住宅街を抜けないといけないからな。普段は川の近くまで来ることもないし。
これから走っていく下流方面を見ると、多摩川が朝陽に照らされていてとても綺麗だ。歩道に着いたときに休憩するのはキリがいいのもあるけど、この綺麗な多摩川の景色を見ると癒やされるからでもある。
周辺の景色を見ると、犬の散歩をしていたり、俺達と同じようにジョギングやウォーキングしたりしている人がちらほらと見受けられる。祝日なのもあってか老若男女問わず。
今日はウォーキングだから、いつもよりも疲れが取れるのが早いな。
「あおい、愛実、疲れはどうかな」
「疲れが取れてきました」
「私も。麦茶を飲んだり、綺麗な景色を見たりしたから。ウォーキングやジョギングを始めても大丈夫だよ」
「私もです」
「分かった。じゃあ、これからこの川沿いの歩道をジョギングしていこう」
2人とも体力が戻ってきていて良かった。ここで休憩を入れたのは正解だったようだ。
ウォーキングのときのように、俺は動きを交えて、2人にジョギングの正しいフォームを教えた。
「よし、じゃあ……ジョギングしていこうか。俺がいつも走っているコースを。愛実のペースで走っていこう」
「そうしてもらえると嬉しいよ。私が一番遅いから……」
「気にしないでください、愛実ちゃん」
「あおいの言う通りだ。それに、中学のときも愛実のペースで一緒に走ったじゃないか。あのときも楽しかったぞ」
「……うんっ」
愛実は可愛らしい笑顔を浮かべて、小さく頷いた。
愛実のペースでジョギングしたことは何度もあるし、この前、道本と一緒にジョギングしたときは彼にペースを合わせてもらった。誰かのペースに合わせることは全く悪いとは思わない。
「よし、ジョギングしよう」
『おー!』
今度はあおいと愛実が一緒に元気よく声を上げたな。
俺達は下流方面に向かって川沿いの歩道をジョギングし始める。ウォーキングのときと同じく、2人のフォーム確認のために後ろで走ることに。
愛実もあおいもいいフォームでジョギングできているな。愛実は俺と一緒に何度もジョギングしているし、あおいは……部活で走っていたのかな。フォームがいいので、俺から指摘することはなかった。なので、途中から2人の前でジョギングすることに。
今は愛実のペースでジョギングしているので、いつもよりも楽に感じる。中学のときもそうだったな。先日の道本もこういう感覚だったのだろう。
「川沿いの歩道だからでしょうか。ジョギングがとても気持ちいいです!」
「気持ちいいよね、あおいちゃん。たまに川の方を見ると、気持ちが爽やかになるよね」
「そうですね。川の流れる音が聞こえてきますし。涼我君がこの道をジョギングコースにするのが分かります」
「そう言ってくれて嬉しいな」
「中学の頃もこの歩道をジョギングコースにしていたよね。あと、この歩道では必ずジョギングだったよね。だから懐かしいな」
「そうだな」
ウォーキングでもジョギングでも、川沿いの歩道まで来ると体が温まってくるからな。それに、ここの歩道は景色が広いし、川を見て気分転換もしやすいから、川沿いの歩道は基本的にジョギングの区間にしている。
「ねえ、リョウ君。覚えてる? 初めて一緒にジョギングしたとき、すぐにバテてウォーキングに戻っちゃったこと」
「あったな」
「そんなことがあったんですね」
「ああ。でも、中学のときに比べると、愛実も体力はついていると思うよ。走るスピードも上がっているし」
そう言って、後ろに振り返ると、愛実は俺に向かってニコッと笑ってくれる。息が少し上がっているけど、話したり、笑ったりしながらジョギングできている。当時からの成長を感じるよ。
陸上をしていたのもあるけど、俺は中学に比べると……退化しているなぁ。ジョギングを再開した頃と比べて、ちょっとは体力がついていると思いたい。
それからも、あおいと愛実の様子を確認したり、多摩川を見たりしながら川沿いの歩道をジョギングしていく。いい気候だし、あおいと愛実と一緒だから気持ちいいな。
「涼我君。確か昔、多摩川の河原で、お休みの日に家族ぐるみでお弁当を食べましたよね。覚えていますか?」
「ジョギングを再開した日……ここをジョギングしているときに思い出したよ」
「そうですか。思い出してくれて嬉しいです」
あおいと愛実の方に振り返ると、あおいは俺に向かってニッコリと嬉しそうな笑顔を向けてくれる。その笑顔はお弁当を食べたときの笑顔にそっくりで。
「広い草原もあるし、多摩川も綺麗だから、お弁当を食べるのに良さそうだね」
「はいっ! お弁当がとても美味しかったことを覚えています。春休みのお花見が楽しかったですから、いつかは河原でみんなでお弁当を食べてみたいですね」
「それいいね」
「お花見といえば、川沿いに桜の木が植えられているエリアがいくつかあったな」
「では、来年のお花見は川沿いでやりましょう!」
「川も見られるしいいかも」
11ヶ月近く先のことだけど、あおいと愛実は意気投合。川沿いでお花見をしたことはないし、今年とは別の場所でのお花見だから新鮮でいいかもしれないな。
ジョギング中に思い出を振り返ることはあると思ったけど、これからの予定を決めるのは予想外だったな。先のことではあるけど、彼女達との予定ができることが嬉しかった。
いつも自宅方面へ向かう大通りとの交差点が見えてきた。なので、ここでもう一度休憩を取ることに。さすがにジョギングしたので、愛実だけでなく、あおいも少し息が上がり始めていた。
麦茶を飲むなどして、5分ほど休憩を取る。ジョギングをした後なので、川沿いの歩道に到着したときよりも麦茶が美味しいな。
休憩を取ったのもあり、あおいも愛実も体力的に大丈夫とのこと。なので、ジョギングして自宅まで帰っていった。
「よーし、これで終わり。お疲れ様!」
「お疲れ様でした!」
「うん……お疲れ様でした」
あおいは首筋に汗が多少流れているけど、爽やかな笑みを浮かべている。もしかしたら、あおいはいつもの俺の速さで一緒にジョギングしても大丈夫かもしれない。
愛実も汗をそれなりに掻いていて、息も結構上がっている。それでも、俺とあおいに笑顔を向けることができている。この様子なら、この後ゆっくりすればいつもの元気さを取り戻せそうかな。
「これがいつものコースだ。2人はウォーキングとジョギングをしてみてどうだった?」
「とても楽しかったです! 朝から体を動かすのもいいですね! 特に多摩川沿いの歩道を走っているときは気持ち良かったです!」
「久しぶりだったから疲れもあるけど、リョウ君とあおいちゃんと一緒だったから楽しかったよ。リョウ君と一緒にまたジョギングできて嬉しかったし。あと、あおいちゃんと同じで川沿いの歩道は気持ち良かったな。……今後、ダイエットのときにはよろしくお願いします」
「私も早く起きられたときにはよろしくお願いしますっ!」
「分かった。俺も今日は2人と一緒に初めてウォーキングとジョギングができて楽しかったよ。ありがとう」
俺がお礼を言うと、あおいと愛実は可愛らしい笑顔を向けてくれた。
再び趣味となったジョギングを、あおいと愛実も楽しいと言ってくれて。その気持ちを共有できたことがとても嬉しい。また一緒にジョギングしようとも言ってくれた。今日のジョギングのことは忘れられない思い出になったな。
その後、軽くストレッチしてから自宅の中に入った。
シャワーを浴びたり、朝食を食べたりする中で、あおいと愛実の体力が回復していった。
朝食を食べ終わった後は、昨日の深夜に放送されたアニメを観たり、小さい頃から人気の対戦ゲームをしたりと3人で楽しい時間を過ごすのであった。
高校2年生のゴールデンウィークは、あおいと愛実と2人の幼馴染と一緒に過ごす初めてのゴールデンウィークで。
前半の3連休はオリティアに参加し、後半の3連休は俺の家であおいと愛実とお泊まりして。また、どちらの連休でも1日バイトした日があり、3年ぶりに再開したジョギングも楽しむことができて。とても充実したゴールデンウィークになったのであった。
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