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第3章
第1話『称賛と期待』
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特に事故やトラブルに遭うこともなく、俺達は調津高校に到着した。
美人な転校生のあおいと、とても可愛らしい愛実も一緒にいるのもあって、新年度が始まった直後は俺達に視線を向ける生徒は結構多かった。ただ、今は俺達を見てくる生徒は少なくなってきている。新年度が始まってから2週間が経ち、2人がいる風景に慣れてきたのだろうか。
昇降口で上履きに履き替え、2年2組の教室がある4階まで階段で向かう。
「階段で4階まで上がるのにも慣れてきたよ。疲れを感じなくなってきた」
「新年度が始まって2週間経ちましたからね。体力が付いてきたのでしょう」
「そうだといいな」
確かに、新年度が始まってすぐの時期は、4階まで一気に上がると愛実の呼吸は少し乱れていた。でも、今は特にそんな様子は見られない。
「あとは慣れもありそう」
「愛実の言うこと分かるなぁ。俺も2年になった直後は4階まで行くのはちょっと遠いと思ったけど、今は何とも思わなくなったし」
「私も分かる気がします。階段もそうですが、調津高校での学校生活にも少しずつ慣れてきましたから」
あおいは爽やかな笑顔でそう言った。
あおいはクラスで俺達や女子中心に仲良く話しているし、勉強も……課題について俺や愛実に分からないところを質問することはあるけど、特についていけていないようには見えない。幼馴染から見ても、あおいはまずまずなスタートを切れていると思う。その状況に安心する。
2年2組の教室に向かって歩き始めると、
「おっ、速水! 昨日の昼休みのレース見たぞ! 速くて凄かったな! 一緒に走ったのは、そっちの黒髪の女子だったよな。確か……桐山って言ったっけ」
別のクラスにいる中学時代からの友人の男子生徒から、昨日の昼休みのあおいとのレースについて話しかけられる。昨日の昼休みや放課後にも別の友人達から言われたし、これで何度目だろうか。まあ、この教室A棟の教室からは校庭がバッチリと見えるからなぁ。
「そうだよ。彼女は昔、調津にいた幼馴染なんだ。そのときによく公園で走っていたから、彼女の誘いで久しぶりに走ったんだよ」
この説明も何度もしたから、スラスラと言えるようになってしまった。
「へえ、そうなのか。凄く速くて楽しそうに走っていたし、また陸上部に入ったりするのか?」
そう言う友人は目を少し輝かせて俺のことを見てくる。こういう風に言われるのも何度目だろう。
中学からの友人なので、俺がかつて陸上部に入部して、短距離走専門の部員だったこと。3年前の事故で陸上から退いたことも知っている。中1の頃は同じクラスで、体育の授業で俺が走る姿を見ている。あと、都大会で優勝したり、関東大会で入賞したりしたときは、中学の全校集会で全校生徒の前で紹介されたこともある。だから、また陸上を始めるんじゃないかって期待しているのかもしれない。
「今のところは……そのつもりはないなぁ。バイトも楽しいし、漫画とかアニメとかラノベとかのオタクライフも充実してるからさ」
「ははっ、そっか。お前、サリーズでしっかり店員やってるもんな。漫画やアニメとかも凄く楽しんでるし。でも、久しぶりに麻丘の楽しそうに走っている姿を見られて良かったぜ。じゃあ、またな!」
「ああ、またな」
俺がそう言うと、友人は俺の肩をポンと叩いて、自分のクラスの教室に入っていった。
「一日経っても、昨日のレースのことで話しかけられるなんて。涼我君は凄いですね!」
「あおいと一緒に走ったからだよ。それに、話しかけてくれる人の大半は小学校や中学校からの友達だし」
「調津高校は地元の高校だから、リョウ君や私が卒業した中学から進学している人は何人もいるからね。ただ、それだけ中学時代のリョウ君も、昨日のリョウ君も凄かったって証拠だと思うよ。私もそう思っているから」
愛実はニッコリとした表情になってそう言ってくれる。陸上や走ることで、ここまで笑顔で言ってくれるなんて。俺の走りについて褒めてくれること以上に嬉しい。
「ありがとう、愛実。あおいも」
俺はそうお礼を言って、愛実とあおいの頭を優しく撫でる。そのことで、2人の髪からシャンプーの甘い匂いが香った。2人の可愛らしい笑顔を見ると、その香りは濃くなって鼻孔をくすぐった。
それからすぐに、俺達は黒板側の扉から2年2組の教室の中に入る。
教室に入った瞬間に道本、鈴木、海老名さんが「おはよう」と元気よく挨拶してくれた。俺達は彼らに「おはよう」と返事をし、自分の席に荷物を置いて3人が集まっている鈴木の席の周りに向かう。これが最近の登校時のお決まりとなっている。
「麻丘! 桐山! 昨日の昼休みのお前らのレースは部活でも好評だったぜ!」
俺達が鈴木の席に集まった直後、鈴木がとてもいい笑顔でそんなことを言ってきた。
「俺達にスターターやゴール判定を頼んだのは、一昨日の部活中だったからさ。引き受けた直後に、2人が昼休みに競走するって同じ短距離の部員に話したんだ」
「あたしもマネージャーの友達に。それで部活全体に広まったの。いいレースだったって褒めていた部員やマネージャーが多かったわ」
「そうなのか」
徒競走をすること。その2人は道本と鈴木、海老名さんの友人であること。そのうちの1人は中学時代に陸上をしており、関東大会に出場経験があること。それに、俺と同じ中学出身の陸上部部員も何人もいるし。だから、興味を持ってレースを見た陸上部員が多いのは自然なことだと思う。
そういえば、昨日のレース直後、校舎から俺達に向かって拍手する生徒が何人もいたな。きっと、あの生徒達の多くは陸上部の部員だったのだろう。
「陸上部の方々に褒めてもらえるなんて嬉しいですね」
「そうだな。あおいも速かったもんな」
「スタート直後はあおいちゃんが速かったけど、そこからリョウ君が逆転したっていうレース展開も、良かったって言ってくれる人が多い理由かもね」
「それは言えてそうですね。後半に逆転するレースをネットやテレビで見たときには胸が熱くなりました!」
興奮気味にそう言うあおい。
スタート直後は横一線か後ろの順位でも、走るスピードがどんどん加速していって1位でゴールするレースを見ると、俺もて興奮するなぁ。
「短距離走専門の部員として、2人が陸上部に来てほしいって言う先輩もいるくらいだ」
「麻丘君とあおいの姿がかっこいいから来てほしいって言ってる女子部員やマネージャーの子もいたわ」
「オレは投てき種目だけど、いい刺激になったって言ってる奴もいたな」
「こっちは短距離走種目だから、昨日の練習や今日の朝練でやる気になっている奴が何人もいたよ。今の麻丘でも、そこら辺にいる運動系部活の部員よりは速いからな」
道本も鈴木も海老名さんも明るい笑顔でそう話してくれる。あおいとのレースは、図らずも陸上部にいい影響を及ぼしていたようだ。
「陸上部の方から部活に来てほしいと言われるなんて。凄いですね、涼我君!」
「ありがとう。ただ、来てほしいって言われたのはあおいもじゃないか。俺は中学時代に陸上をやっていたし、陸上部には中学で一緒に活動していた同級生や先輩もいる。ただ、あおいは転入して2週間ほど。俺としてはあおいの方が凄いなって思ってるよ」
「……涼我君にそう言われると嬉しいですね。ありがとうございますっ」
えへへっ、とあおいは声に出しながら嬉しそうに笑った。
「まあ、俺としては、麻丘と桐山が陸上部に入部してくれたら、刺激を受けていい陸上生活を送れるそうだとは思ってる。短距離走の部員を中心に志気が上がりそうだ」
「もっと楽しく部活できそうだよな!」
「よりマネージャーのし甲斐がありそうね」
道本、鈴木、海老名さんはそう言ってくれる。もし、俺とあおいが陸上部に入部したら、彼らの言葉通りになりそうな気がする。
「3人がそう言ってくれるのは嬉しいけど……友達にも言っているように、今のところは陸上部に入る気はないかな」
体育の授業や体育祭で走ったり、ジョギングしたりすることはできる。ただ、大会に出たり、速さを追求したりするための練習はドクターストップがかかっているし。
「私も同じ考えです。今は調津高校の学校生活に慣れたり、勉強についていったりすることに集中したいので。京都にいた頃はバイトしていたので、こちらでもバイトしたい気持ちは変わりませんね」
あおいは穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。陸上部についてあおいの考えを聞くのはこれが初めてだけど、あおいの部活に対するスタンスは変わらないか。
俺とあおいが陸上部に入るつもりはないと言ったけど、道本達3人の明るい笑顔は変わらなかった。
「そうか。まあ、麻丘は怪我もあるもんな。2人の考えを尊重するよ」
「2人が楽しい毎日を送れるのが一番だからな!」
「陸上部に入ってくれたら良さそうだと思ったけど……2人の考えは分かったわ。2人が伸び伸び過ごせるのに越したことはないものね」
「3人の言う通りだね」
「ただ、部員でもマネージャーでも入部したいって思えたら俺達は歓迎するよ。あと、もし誰かにしつこく勧誘されたら、俺達に言ってくれ。3人で止めるからさ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
陸上部からの勧誘については、道本達に話せば何とかなるだろう。
友達から「陸上を再開するのか?」って訊かれることも、時間が経てば、じきに収まっていくと思う。
ただ、あおいと一緒に本気で走ったのをきっかけに、走ることがまた楽しいと思えたのも事実。この先も、何かしらの形で走ることを楽しんでいきたいとは思っている。
それから程なくして、朝礼のチャイムが鳴り、
「やあやあやあ。みんなおはよう。自分の席に着いてね」
ロングスカートに長袖のブラウス姿の佐藤先生が教室の中に入ってきた。先生と目が合った瞬間、先生は俺に微笑みかけてくれたような気がした。
そして、今日も学校生活が始まる。
昨日までと同じように、教室で授業を受けていく。だけど、新年度が始まった直後のように、新生活を過ごしている感覚になるのであった。
美人な転校生のあおいと、とても可愛らしい愛実も一緒にいるのもあって、新年度が始まった直後は俺達に視線を向ける生徒は結構多かった。ただ、今は俺達を見てくる生徒は少なくなってきている。新年度が始まってから2週間が経ち、2人がいる風景に慣れてきたのだろうか。
昇降口で上履きに履き替え、2年2組の教室がある4階まで階段で向かう。
「階段で4階まで上がるのにも慣れてきたよ。疲れを感じなくなってきた」
「新年度が始まって2週間経ちましたからね。体力が付いてきたのでしょう」
「そうだといいな」
確かに、新年度が始まってすぐの時期は、4階まで一気に上がると愛実の呼吸は少し乱れていた。でも、今は特にそんな様子は見られない。
「あとは慣れもありそう」
「愛実の言うこと分かるなぁ。俺も2年になった直後は4階まで行くのはちょっと遠いと思ったけど、今は何とも思わなくなったし」
「私も分かる気がします。階段もそうですが、調津高校での学校生活にも少しずつ慣れてきましたから」
あおいは爽やかな笑顔でそう言った。
あおいはクラスで俺達や女子中心に仲良く話しているし、勉強も……課題について俺や愛実に分からないところを質問することはあるけど、特についていけていないようには見えない。幼馴染から見ても、あおいはまずまずなスタートを切れていると思う。その状況に安心する。
2年2組の教室に向かって歩き始めると、
「おっ、速水! 昨日の昼休みのレース見たぞ! 速くて凄かったな! 一緒に走ったのは、そっちの黒髪の女子だったよな。確か……桐山って言ったっけ」
別のクラスにいる中学時代からの友人の男子生徒から、昨日の昼休みのあおいとのレースについて話しかけられる。昨日の昼休みや放課後にも別の友人達から言われたし、これで何度目だろうか。まあ、この教室A棟の教室からは校庭がバッチリと見えるからなぁ。
「そうだよ。彼女は昔、調津にいた幼馴染なんだ。そのときによく公園で走っていたから、彼女の誘いで久しぶりに走ったんだよ」
この説明も何度もしたから、スラスラと言えるようになってしまった。
「へえ、そうなのか。凄く速くて楽しそうに走っていたし、また陸上部に入ったりするのか?」
そう言う友人は目を少し輝かせて俺のことを見てくる。こういう風に言われるのも何度目だろう。
中学からの友人なので、俺がかつて陸上部に入部して、短距離走専門の部員だったこと。3年前の事故で陸上から退いたことも知っている。中1の頃は同じクラスで、体育の授業で俺が走る姿を見ている。あと、都大会で優勝したり、関東大会で入賞したりしたときは、中学の全校集会で全校生徒の前で紹介されたこともある。だから、また陸上を始めるんじゃないかって期待しているのかもしれない。
「今のところは……そのつもりはないなぁ。バイトも楽しいし、漫画とかアニメとかラノベとかのオタクライフも充実してるからさ」
「ははっ、そっか。お前、サリーズでしっかり店員やってるもんな。漫画やアニメとかも凄く楽しんでるし。でも、久しぶりに麻丘の楽しそうに走っている姿を見られて良かったぜ。じゃあ、またな!」
「ああ、またな」
俺がそう言うと、友人は俺の肩をポンと叩いて、自分のクラスの教室に入っていった。
「一日経っても、昨日のレースのことで話しかけられるなんて。涼我君は凄いですね!」
「あおいと一緒に走ったからだよ。それに、話しかけてくれる人の大半は小学校や中学校からの友達だし」
「調津高校は地元の高校だから、リョウ君や私が卒業した中学から進学している人は何人もいるからね。ただ、それだけ中学時代のリョウ君も、昨日のリョウ君も凄かったって証拠だと思うよ。私もそう思っているから」
愛実はニッコリとした表情になってそう言ってくれる。陸上や走ることで、ここまで笑顔で言ってくれるなんて。俺の走りについて褒めてくれること以上に嬉しい。
「ありがとう、愛実。あおいも」
俺はそうお礼を言って、愛実とあおいの頭を優しく撫でる。そのことで、2人の髪からシャンプーの甘い匂いが香った。2人の可愛らしい笑顔を見ると、その香りは濃くなって鼻孔をくすぐった。
それからすぐに、俺達は黒板側の扉から2年2組の教室の中に入る。
教室に入った瞬間に道本、鈴木、海老名さんが「おはよう」と元気よく挨拶してくれた。俺達は彼らに「おはよう」と返事をし、自分の席に荷物を置いて3人が集まっている鈴木の席の周りに向かう。これが最近の登校時のお決まりとなっている。
「麻丘! 桐山! 昨日の昼休みのお前らのレースは部活でも好評だったぜ!」
俺達が鈴木の席に集まった直後、鈴木がとてもいい笑顔でそんなことを言ってきた。
「俺達にスターターやゴール判定を頼んだのは、一昨日の部活中だったからさ。引き受けた直後に、2人が昼休みに競走するって同じ短距離の部員に話したんだ」
「あたしもマネージャーの友達に。それで部活全体に広まったの。いいレースだったって褒めていた部員やマネージャーが多かったわ」
「そうなのか」
徒競走をすること。その2人は道本と鈴木、海老名さんの友人であること。そのうちの1人は中学時代に陸上をしており、関東大会に出場経験があること。それに、俺と同じ中学出身の陸上部部員も何人もいるし。だから、興味を持ってレースを見た陸上部員が多いのは自然なことだと思う。
そういえば、昨日のレース直後、校舎から俺達に向かって拍手する生徒が何人もいたな。きっと、あの生徒達の多くは陸上部の部員だったのだろう。
「陸上部の方々に褒めてもらえるなんて嬉しいですね」
「そうだな。あおいも速かったもんな」
「スタート直後はあおいちゃんが速かったけど、そこからリョウ君が逆転したっていうレース展開も、良かったって言ってくれる人が多い理由かもね」
「それは言えてそうですね。後半に逆転するレースをネットやテレビで見たときには胸が熱くなりました!」
興奮気味にそう言うあおい。
スタート直後は横一線か後ろの順位でも、走るスピードがどんどん加速していって1位でゴールするレースを見ると、俺もて興奮するなぁ。
「短距離走専門の部員として、2人が陸上部に来てほしいって言う先輩もいるくらいだ」
「麻丘君とあおいの姿がかっこいいから来てほしいって言ってる女子部員やマネージャーの子もいたわ」
「オレは投てき種目だけど、いい刺激になったって言ってる奴もいたな」
「こっちは短距離走種目だから、昨日の練習や今日の朝練でやる気になっている奴が何人もいたよ。今の麻丘でも、そこら辺にいる運動系部活の部員よりは速いからな」
道本も鈴木も海老名さんも明るい笑顔でそう話してくれる。あおいとのレースは、図らずも陸上部にいい影響を及ぼしていたようだ。
「陸上部の方から部活に来てほしいと言われるなんて。凄いですね、涼我君!」
「ありがとう。ただ、来てほしいって言われたのはあおいもじゃないか。俺は中学時代に陸上をやっていたし、陸上部には中学で一緒に活動していた同級生や先輩もいる。ただ、あおいは転入して2週間ほど。俺としてはあおいの方が凄いなって思ってるよ」
「……涼我君にそう言われると嬉しいですね。ありがとうございますっ」
えへへっ、とあおいは声に出しながら嬉しそうに笑った。
「まあ、俺としては、麻丘と桐山が陸上部に入部してくれたら、刺激を受けていい陸上生活を送れるそうだとは思ってる。短距離走の部員を中心に志気が上がりそうだ」
「もっと楽しく部活できそうだよな!」
「よりマネージャーのし甲斐がありそうね」
道本、鈴木、海老名さんはそう言ってくれる。もし、俺とあおいが陸上部に入部したら、彼らの言葉通りになりそうな気がする。
「3人がそう言ってくれるのは嬉しいけど……友達にも言っているように、今のところは陸上部に入る気はないかな」
体育の授業や体育祭で走ったり、ジョギングしたりすることはできる。ただ、大会に出たり、速さを追求したりするための練習はドクターストップがかかっているし。
「私も同じ考えです。今は調津高校の学校生活に慣れたり、勉強についていったりすることに集中したいので。京都にいた頃はバイトしていたので、こちらでもバイトしたい気持ちは変わりませんね」
あおいは穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。陸上部についてあおいの考えを聞くのはこれが初めてだけど、あおいの部活に対するスタンスは変わらないか。
俺とあおいが陸上部に入るつもりはないと言ったけど、道本達3人の明るい笑顔は変わらなかった。
「そうか。まあ、麻丘は怪我もあるもんな。2人の考えを尊重するよ」
「2人が楽しい毎日を送れるのが一番だからな!」
「陸上部に入ってくれたら良さそうだと思ったけど……2人の考えは分かったわ。2人が伸び伸び過ごせるのに越したことはないものね」
「3人の言う通りだね」
「ただ、部員でもマネージャーでも入部したいって思えたら俺達は歓迎するよ。あと、もし誰かにしつこく勧誘されたら、俺達に言ってくれ。3人で止めるからさ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
陸上部からの勧誘については、道本達に話せば何とかなるだろう。
友達から「陸上を再開するのか?」って訊かれることも、時間が経てば、じきに収まっていくと思う。
ただ、あおいと一緒に本気で走ったのをきっかけに、走ることがまた楽しいと思えたのも事実。この先も、何かしらの形で走ることを楽しんでいきたいとは思っている。
それから程なくして、朝礼のチャイムが鳴り、
「やあやあやあ。みんなおはよう。自分の席に着いてね」
ロングスカートに長袖のブラウス姿の佐藤先生が教室の中に入ってきた。先生と目が合った瞬間、先生は俺に微笑みかけてくれたような気がした。
そして、今日も学校生活が始まる。
昨日までと同じように、教室で授業を受けていく。だけど、新年度が始まった直後のように、新生活を過ごしている感覚になるのであった。
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