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第1章
第19話『猫カフェ-後編-』
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それからも、猫と戯れて癒しの時間を過ごしていく。
俺の膝の上をよほど気に入ってくれたのだろうか。黒猫は何度か体勢を変えたり、ゴロンゴロンしたりはするけど、膝から降りることはない。それはあおいの膝に乗っているハチ割れ猫も、愛実の膝に乗っている三毛猫も同じだ。
ただ、たまに俺のすぐ側までやってきて、頭をスリスリしてくる猫もいる。そういった猫に頭や背中を撫でているので、ソファーにずっと座っていても色々な猫と戯れることができている。
「涼我君、愛実ちゃん。確か、ここの猫カフェではおやつをあげられるんですよね」
「あげられるよ。受付で買ったおやつをね」
「そうなんですね。では、さっそく買いましょうか」
「そうだね」
「買いに行くか」
俺達は膝の上でくつろいでいる猫をソファーの上に置き、おやつを買いに受付へ向かう。その際、ハチ割れ猫と三毛猫は2人の後をついてきていたけど、黒猫はソファーでゴロンゴロンしていた。性格の違いか、それとも懐き具合の違いか。……前者であってほしいな。
受付で猫用のおやつを購入し、さっきまで座っていたソファーに戻る。
ソファーに座ると、黒猫は再び俺の膝の上に乗ってくる。ただし、さっきまでとは違って、俺の方を向いてきちんと座っている。受付で買ったおやつの匂いを嗅ぎつけたのだろうか。2人の方をチラッと見ると、ハチ割れ猫と三毛猫も同様だった。
餌が入っているケースの蓋を開け、黒猫の口元まで持っていく。
「ほら、おやつだよ」
「にゃ~ん」
黒猫はおやつを食べ始める。食べる姿はもちろんのこと「カリッ、カリッ」という咀嚼音も可愛い。
「わぁっ、食べてくれています。可愛いですっ」
「可愛いよね、あおいちゃん」
あおいを気に入っているハチ割れ猫も、愛実を気に入っている三毛猫もおやつを食べている。三毛猫の方は、両手でおやつのケースを持つ愛実の右手首を掴んでいるほどだ。
「三毛猫さん、愛実ちゃんの右手首を掴んでいますね。よほどお腹が空いていたのでしょうか。それとも、愛実ちゃんにとても懐いているからでしょうか」
「ふふっ、どんな理由だろうね。ただ、掴んでくれるとより可愛く思えるよ」
「いいですね。羨ましいです」
何度も訪れて、ハチ割れ猫ともっと仲良くなったら、愛実のように手首を掴んでくれるんじゃないだろうか。
それから少しの間、俺達の座るソファーでは「カリッ、カリッ」という聞き心地のいい咀嚼音の合唱が鳴り響いた。
「にゃぉ~ん」
「おっ、完食したな」
黒猫はケースに入っているおやつを完食。体が大きいからか、三毛猫やハチ割れ猫よりも前に食べ終わった。しっかりと食べて偉いな。黒猫の頭を優しく撫でる。
おやつを食べて眠くなったのだろうか。黒猫は俺の膝の上で寝転がり、グーグーといびきをかき始めた。
「ふふっ。黒猫さん、涼我君の膝の上でぐっすり寝ていますね。お店に来た直後からずっといますし、涼我君の膝が気に入ったんでしょうね」
「そうだと嬉しいな。あと、食べてすぐに寝るから、こんなに体が大きくなるのかなって思ったよ」
「それは言えているかもしれませんね。……あっ、あなたも完食ですね。偉い偉いです」
あおいに頭を撫でられると、ハチ割れ猫は「なぁう」と甘い鳴き声を上げて、その場で香箱座りをした。
「今日も完食してくれたね。嬉しいよ~」
どうやら、三毛猫もおやつを完食したようだ。三毛猫は愛実の膝の上でゴロンゴロンしている。
3人ともおやつをあげ終わったので、ケースを受付のところにあるゴミ箱へ捨てに行く。その際、
「ここの猫カフェは猫耳カチューシャのレンタルをやっているんですね」
あおいがそんなことを言った。……ゴミ箱の近くに『猫耳カチューシャをレンタルしてます! あなたも猫ちゃん気分になりませんか? ご希望の方は受付まで!』と書かれた紙が貼られている。これを見たのか。
「無料でレンタルできるよ。これまで何回かレンタルしたことあるよ。リョウ君も1回か2回レンタルしたことあるよね」
「ああ」
「そうなんですか! 福岡や京都の猫カフェにはこういうサービスはありませんでしたね。是非、やってみたいです!」
「いいね。レンタルしてみようか。リョウ君も」
「……まあ、ここは猫カフェだからな」
屋外や学校で付けろって言われたら断っていたけど。
「決まりですねっ」
俺達は受付に行き、猫耳カチューシャをレンタルすることに。
様々な色の猫耳カチューシャがある。その中で、俺は黄色、あおいは黒、愛実は茶色のカチューシャをレンタルした。
ソファーに戻って、俺達はそれぞれレンタルしたカチューシャを頭に付ける。
「わあっ、涼我君も愛実ちゃんも猫耳似合っていますね!」
「ありがとう。あおいちゃんも猫耳似合ってるよ」
「似合ってるな」
「ありがとうございますっ」
あおいの可愛さが増したな。あと、自分と同じ髪色の猫耳カチューシャを付けているから、実際に猫耳が生えているように見える。それは愛実にも言えることだ。
猫耳カチューシャの威力もあってか、ハチ割れ猫と三毛猫はこれまで以上にあおいと愛実に体をスリスリさせている。そして、俺と一緒にいる黒猫はというと、
「グー……グー……」
膝の上でマイペースに寝ている。ソファーに戻ってきて、猫耳カチューシャを付けた直後に俺の顔をチラッと見たが、特別なリアクションもなく眠り始めたのだ。まあ、嫌われて離れられてしまうよりはいい。
「きゃっ。どうしたの、あおいちゃん」
「カチューシャを付けて猫の気分になってきたので。ハチ割れ猫さんや三毛猫さんに倣って、愛実ちゃんにスリスリしようかと」
にゃおにゃおっ、あおいは楽しそうに愛実の左肩に頭をスリスリさせている。本当の猫みたいで可愛いな。
あおいにスリスリされるのが気持ちいいのか、愛実は優しげな笑みを浮かべる。
「ふふっ。あおにゃんだね」
と言い、愛実はあおいの頭を優しく撫でる。微笑ましい光景だ。
黒猫を撫でながら、2人のことを眺めていると、
「うおっ」
あおいは俺の右肩にも頭をスリスリしてきたのだ。男の俺にはやらないと思っていたんだけどな。だから、変な声が出てしまった。愛実に頭をスリスリして、あおいの猫気分がさらに高まったのだろうか。
猫耳カチューシャ姿が可愛いと思っていたけど、こうして頭をスリスリされるとより可愛く見えてくるぞ。
「可愛いね」
あおいの頭をポンポンと軽く叩くと、あおいは俺のことを見上げて、
「涼我君にもスリスリしたくなって。にゃんっ」
と鳴いて再びスリスリ。……可愛さが限界突破しそうなんですけど。
「……わ、私もリョウ君に頭をスリスリしようかなっ。猫気分が高まってきたし」
愛実はそう言い、三毛猫を抱き上げた状態でソファーから立ち上がった。そんな愛実は笑顔だけど、さっきまでと違ってどこか陰りがあるように見えた。
愛実は俺のすぐ左側に腰を下ろすと、俺の左肩に頭をスリスリしてきた。あおいよりも控えめな強さで。
まさか、愛実から頭をスリスリされるとは思わなかった。これまで、以前にもここで猫耳カチューシャを付けたことはあったけど、スリスリすることはなかったから。スリスリするあおいを見て羨ましくなったのかな。
少しスリスリすると、愛実は俺のことを見上げてきて、
「……ま、まにゃみだにゃんっ」
俺やあおいにしか聞こえないような小さな声でそう言ってきた。そんな愛実の顔はとても赤くなっていて。きっと、恥ずかしい中で勇気を出して言ったのだろう。
「まにゃみも可愛いね」
あおいのときと同じく、頭をポンポンと軽く叩く。そのことで、愛実はやんわりとした笑顔になり、再び頭をスリスリし始めた。「にゃ、にゃあっ……」と鳴きながら。あおいと負けず劣らずの可愛さだ。
「愛実ちゃん、とても可愛いです」
あおいはそう言うと、俺の右肩をスリスリしてくる。あおいと愛実の両方から温もりや匂いが感じられるから、結構ドキドキしてくるな。そして、幸せな気分に。
ただ、この状況……周りの人からは「何というプレイをさせているんだ」と思われそう。恐る恐る周りを見渡すと……猫に夢中な人ばかりで、こちらを見ている人は全然いなかった。一安心。
「涼我君。愛実ちゃん。せっかく猫耳カチューシャを付けたのですから、写真撮りましょうよ」
「そうだな。愛実はどうだ?」
「いいよ。撮ろう」
それから、真ん中に座っている俺のスマホを使って、猫耳カチューシャを付けている俺達の姿を何枚も撮影した。その写真は3人のグループトークにアップした。
写真を撮り終わったときには、制限時間60分まで残り10分ほど。なので、キャットルームにいる間はずっとカチューシャを付けて過ごすのであった。
「猫カフェ最高でした!」
「楽しかったね!」
制限時間を迎えたため、調津猫屋を後にすると、あおいと愛実は可愛らしい笑顔でそう言った。
「俺も楽しかったよ。猫と戯れられたし。黒猫っていうずっといる猫もいたし」
「私も三毛猫ちゃんがずっといてくれて嬉しかったな」
「ハチ割れ猫と仲良くなれて良かったです! おやつをあげたり、猫耳カチューシャを付けたりして満足できました!」
あおいは言葉通りの満足そうな笑顔を見せる。今後、あおいは調津猫屋に通って、色々な猫と仲良くなりそうだ。
今回は60分コースにしたけど、あっという間だったな。いつかは120分コースに挑戦してみたい。
「あおいちゃんが満足できて良かった。他に行きたいお店ってある?」
「今日行きたいお店は、この調津猫屋で最後です。全て行けたのでとても満足ですし、楽しかったです。それに、タピオカドリンクを飲んだり、美味しいパスタも食べたりできたので」
「あおいがそう思ってくれて良かったよ。俺も3人で駅周辺を廻って楽しかった」
「私も楽しかったよ。また、こうして3人で色々なお店に行こうね」
「ええ!」
「そうだな」
きっと、放課後や休日に駅周辺のお店を廻ることはたくさんあるだろう。
どんなお店があるのか眺めながらゆっくりと歩き、俺達は帰路に就く。出発するときにはなかった本やスマホの写真、そして思い出をたくさん持って。
俺の膝の上をよほど気に入ってくれたのだろうか。黒猫は何度か体勢を変えたり、ゴロンゴロンしたりはするけど、膝から降りることはない。それはあおいの膝に乗っているハチ割れ猫も、愛実の膝に乗っている三毛猫も同じだ。
ただ、たまに俺のすぐ側までやってきて、頭をスリスリしてくる猫もいる。そういった猫に頭や背中を撫でているので、ソファーにずっと座っていても色々な猫と戯れることができている。
「涼我君、愛実ちゃん。確か、ここの猫カフェではおやつをあげられるんですよね」
「あげられるよ。受付で買ったおやつをね」
「そうなんですね。では、さっそく買いましょうか」
「そうだね」
「買いに行くか」
俺達は膝の上でくつろいでいる猫をソファーの上に置き、おやつを買いに受付へ向かう。その際、ハチ割れ猫と三毛猫は2人の後をついてきていたけど、黒猫はソファーでゴロンゴロンしていた。性格の違いか、それとも懐き具合の違いか。……前者であってほしいな。
受付で猫用のおやつを購入し、さっきまで座っていたソファーに戻る。
ソファーに座ると、黒猫は再び俺の膝の上に乗ってくる。ただし、さっきまでとは違って、俺の方を向いてきちんと座っている。受付で買ったおやつの匂いを嗅ぎつけたのだろうか。2人の方をチラッと見ると、ハチ割れ猫と三毛猫も同様だった。
餌が入っているケースの蓋を開け、黒猫の口元まで持っていく。
「ほら、おやつだよ」
「にゃ~ん」
黒猫はおやつを食べ始める。食べる姿はもちろんのこと「カリッ、カリッ」という咀嚼音も可愛い。
「わぁっ、食べてくれています。可愛いですっ」
「可愛いよね、あおいちゃん」
あおいを気に入っているハチ割れ猫も、愛実を気に入っている三毛猫もおやつを食べている。三毛猫の方は、両手でおやつのケースを持つ愛実の右手首を掴んでいるほどだ。
「三毛猫さん、愛実ちゃんの右手首を掴んでいますね。よほどお腹が空いていたのでしょうか。それとも、愛実ちゃんにとても懐いているからでしょうか」
「ふふっ、どんな理由だろうね。ただ、掴んでくれるとより可愛く思えるよ」
「いいですね。羨ましいです」
何度も訪れて、ハチ割れ猫ともっと仲良くなったら、愛実のように手首を掴んでくれるんじゃないだろうか。
それから少しの間、俺達の座るソファーでは「カリッ、カリッ」という聞き心地のいい咀嚼音の合唱が鳴り響いた。
「にゃぉ~ん」
「おっ、完食したな」
黒猫はケースに入っているおやつを完食。体が大きいからか、三毛猫やハチ割れ猫よりも前に食べ終わった。しっかりと食べて偉いな。黒猫の頭を優しく撫でる。
おやつを食べて眠くなったのだろうか。黒猫は俺の膝の上で寝転がり、グーグーといびきをかき始めた。
「ふふっ。黒猫さん、涼我君の膝の上でぐっすり寝ていますね。お店に来た直後からずっといますし、涼我君の膝が気に入ったんでしょうね」
「そうだと嬉しいな。あと、食べてすぐに寝るから、こんなに体が大きくなるのかなって思ったよ」
「それは言えているかもしれませんね。……あっ、あなたも完食ですね。偉い偉いです」
あおいに頭を撫でられると、ハチ割れ猫は「なぁう」と甘い鳴き声を上げて、その場で香箱座りをした。
「今日も完食してくれたね。嬉しいよ~」
どうやら、三毛猫もおやつを完食したようだ。三毛猫は愛実の膝の上でゴロンゴロンしている。
3人ともおやつをあげ終わったので、ケースを受付のところにあるゴミ箱へ捨てに行く。その際、
「ここの猫カフェは猫耳カチューシャのレンタルをやっているんですね」
あおいがそんなことを言った。……ゴミ箱の近くに『猫耳カチューシャをレンタルしてます! あなたも猫ちゃん気分になりませんか? ご希望の方は受付まで!』と書かれた紙が貼られている。これを見たのか。
「無料でレンタルできるよ。これまで何回かレンタルしたことあるよ。リョウ君も1回か2回レンタルしたことあるよね」
「ああ」
「そうなんですか! 福岡や京都の猫カフェにはこういうサービスはありませんでしたね。是非、やってみたいです!」
「いいね。レンタルしてみようか。リョウ君も」
「……まあ、ここは猫カフェだからな」
屋外や学校で付けろって言われたら断っていたけど。
「決まりですねっ」
俺達は受付に行き、猫耳カチューシャをレンタルすることに。
様々な色の猫耳カチューシャがある。その中で、俺は黄色、あおいは黒、愛実は茶色のカチューシャをレンタルした。
ソファーに戻って、俺達はそれぞれレンタルしたカチューシャを頭に付ける。
「わあっ、涼我君も愛実ちゃんも猫耳似合っていますね!」
「ありがとう。あおいちゃんも猫耳似合ってるよ」
「似合ってるな」
「ありがとうございますっ」
あおいの可愛さが増したな。あと、自分と同じ髪色の猫耳カチューシャを付けているから、実際に猫耳が生えているように見える。それは愛実にも言えることだ。
猫耳カチューシャの威力もあってか、ハチ割れ猫と三毛猫はこれまで以上にあおいと愛実に体をスリスリさせている。そして、俺と一緒にいる黒猫はというと、
「グー……グー……」
膝の上でマイペースに寝ている。ソファーに戻ってきて、猫耳カチューシャを付けた直後に俺の顔をチラッと見たが、特別なリアクションもなく眠り始めたのだ。まあ、嫌われて離れられてしまうよりはいい。
「きゃっ。どうしたの、あおいちゃん」
「カチューシャを付けて猫の気分になってきたので。ハチ割れ猫さんや三毛猫さんに倣って、愛実ちゃんにスリスリしようかと」
にゃおにゃおっ、あおいは楽しそうに愛実の左肩に頭をスリスリさせている。本当の猫みたいで可愛いな。
あおいにスリスリされるのが気持ちいいのか、愛実は優しげな笑みを浮かべる。
「ふふっ。あおにゃんだね」
と言い、愛実はあおいの頭を優しく撫でる。微笑ましい光景だ。
黒猫を撫でながら、2人のことを眺めていると、
「うおっ」
あおいは俺の右肩にも頭をスリスリしてきたのだ。男の俺にはやらないと思っていたんだけどな。だから、変な声が出てしまった。愛実に頭をスリスリして、あおいの猫気分がさらに高まったのだろうか。
猫耳カチューシャ姿が可愛いと思っていたけど、こうして頭をスリスリされるとより可愛く見えてくるぞ。
「可愛いね」
あおいの頭をポンポンと軽く叩くと、あおいは俺のことを見上げて、
「涼我君にもスリスリしたくなって。にゃんっ」
と鳴いて再びスリスリ。……可愛さが限界突破しそうなんですけど。
「……わ、私もリョウ君に頭をスリスリしようかなっ。猫気分が高まってきたし」
愛実はそう言い、三毛猫を抱き上げた状態でソファーから立ち上がった。そんな愛実は笑顔だけど、さっきまでと違ってどこか陰りがあるように見えた。
愛実は俺のすぐ左側に腰を下ろすと、俺の左肩に頭をスリスリしてきた。あおいよりも控えめな強さで。
まさか、愛実から頭をスリスリされるとは思わなかった。これまで、以前にもここで猫耳カチューシャを付けたことはあったけど、スリスリすることはなかったから。スリスリするあおいを見て羨ましくなったのかな。
少しスリスリすると、愛実は俺のことを見上げてきて、
「……ま、まにゃみだにゃんっ」
俺やあおいにしか聞こえないような小さな声でそう言ってきた。そんな愛実の顔はとても赤くなっていて。きっと、恥ずかしい中で勇気を出して言ったのだろう。
「まにゃみも可愛いね」
あおいのときと同じく、頭をポンポンと軽く叩く。そのことで、愛実はやんわりとした笑顔になり、再び頭をスリスリし始めた。「にゃ、にゃあっ……」と鳴きながら。あおいと負けず劣らずの可愛さだ。
「愛実ちゃん、とても可愛いです」
あおいはそう言うと、俺の右肩をスリスリしてくる。あおいと愛実の両方から温もりや匂いが感じられるから、結構ドキドキしてくるな。そして、幸せな気分に。
ただ、この状況……周りの人からは「何というプレイをさせているんだ」と思われそう。恐る恐る周りを見渡すと……猫に夢中な人ばかりで、こちらを見ている人は全然いなかった。一安心。
「涼我君。愛実ちゃん。せっかく猫耳カチューシャを付けたのですから、写真撮りましょうよ」
「そうだな。愛実はどうだ?」
「いいよ。撮ろう」
それから、真ん中に座っている俺のスマホを使って、猫耳カチューシャを付けている俺達の姿を何枚も撮影した。その写真は3人のグループトークにアップした。
写真を撮り終わったときには、制限時間60分まで残り10分ほど。なので、キャットルームにいる間はずっとカチューシャを付けて過ごすのであった。
「猫カフェ最高でした!」
「楽しかったね!」
制限時間を迎えたため、調津猫屋を後にすると、あおいと愛実は可愛らしい笑顔でそう言った。
「俺も楽しかったよ。猫と戯れられたし。黒猫っていうずっといる猫もいたし」
「私も三毛猫ちゃんがずっといてくれて嬉しかったな」
「ハチ割れ猫と仲良くなれて良かったです! おやつをあげたり、猫耳カチューシャを付けたりして満足できました!」
あおいは言葉通りの満足そうな笑顔を見せる。今後、あおいは調津猫屋に通って、色々な猫と仲良くなりそうだ。
今回は60分コースにしたけど、あっという間だったな。いつかは120分コースに挑戦してみたい。
「あおいちゃんが満足できて良かった。他に行きたいお店ってある?」
「今日行きたいお店は、この調津猫屋で最後です。全て行けたのでとても満足ですし、楽しかったです。それに、タピオカドリンクを飲んだり、美味しいパスタも食べたりできたので」
「あおいがそう思ってくれて良かったよ。俺も3人で駅周辺を廻って楽しかった」
「私も楽しかったよ。また、こうして3人で色々なお店に行こうね」
「ええ!」
「そうだな」
きっと、放課後や休日に駅周辺のお店を廻ることはたくさんあるだろう。
どんなお店があるのか眺めながらゆっくりと歩き、俺達は帰路に就く。出発するときにはなかった本やスマホの写真、そして思い出をたくさん持って。
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