10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ

文字の大きさ
上 下
15 / 236
第1章

第14話『アニメショップ』

しおりを挟む
 午前10時過ぎ。
 俺達は調津駅の方に向かって歩いている。春の日差しの温かさと、柔らかく吹く風の涼しさが心地いい。このままずっと歩くだけでもいいと思えるほどだ。

「あおいちゃん。まずはどんなお店に行くの?」
「アニメイクですっ! アニメショップですから、特に行きたいお店の一つです」
「そうなんだ! アニメイクなんだね」

 やっぱり、あおいが行きたいお店の一つはアニメショップだったか。予想が当たったな。俺と同じことを思ったのか、愛実は俺にニコッと笑いかけた。

「今日は私の行きたいお店に行くことになっていますが、お二人も行きたいお店やオススメのお店があったら遠慮なく言ってください。そういったお店を知りたいですし、行ってみたいですから」
「分かったよ、あおいちゃん」
「分かった。ちなみに、アニメイクはオススメのお店だぞ」
「オススメだよね。漫画やラノベ、アニメ関連のものはアニメイクに行けば大抵は買えるもんね」
「そうだな」

 小学生の頃にアニメイク調津店が開店してから、そういったものの大半はアニメイクで買うようになった。購入特典の付くものが多いし、カードやアプリでポイントを貯められるから。
 あおいは「ふふっ」と声に出して楽しそうに笑う。

「お二人がオススメしてくれるので、ますます楽しみになりました。事前に場所を調べていますが、お二人が一緒なら迷いなく行けますね」
「ああ。俺達に任せろ」
「任せておいて」

 俺達がそう言うと、あおいは明るい笑顔で「はいっ」と返事した。
 アニメイクには数え切れないほどに行っているから、あおいを連れて行くのは容易いことだ。
 あおいと愛実と話していたのもあり、気付けば調津駅の近くまで来ていた。
 今日は土曜日で天気がいいのもあって、年齢や性別問わず多くの人がいる。そのうちの大半は休日を楽しんでいるようだけど、中にはスーツ姿や学生服の人も見受けられる。きっと、会社や学校に行くのだろう。土曜日までお疲れ様です。
 また、男性中心にこちらを見てくる人がちらほらと。あおいも愛実も魅力的な容姿の持ち主だからなぁ。どちらも、今着ている服が凄く似合っているし。ただ、俺も一緒だからか、話しかけたり、絡んできたりする人はいない。2人が楽しいと思える日にするためにも、俺がしっかりしないと。
 俺達はアニメイク調津店が入っているショッピングセンター・調津ナルコに入る。

「うわあっ、ナルコ懐かしいですね。入っているお店は色々と変わっていますが」
「ナルコに来たことあるんだね」
「小さい頃、両親とよくお買い物に来ていました。涼我君ともアイスやスイーツを食べたり、ゲームコーナーで遊んだりしましたよね」
「そうだったな」

 あおいと一緒に、両親に「アイス食べたい!」「ゲームコーナー行きたい!」ってお願いしたこともあったっけ。

「そうなんだ。私もリョウ君とはよく買い物に来るよ。アイス食べたり、ゲームコーナーで遊んだりもするよ。駅前だし、高校からも近いから学校帰りに行くこともあるの」
「そうなんですね! あと、昔はアニメイクはなかった気がします」
「小学生の頃にできたからな。確か……3年生ぐらいの頃だっけ」
「そのくらいだと思う」
「そうだったんですね。福岡にも京都にもアニメイクはありましたが、調津のアニメイクはどんな感じが楽しみです!」

 ワクワクした様子でそう言うあおい。
 福岡と京都にもアニメイクがあるのか。アニメイクは全国展開しているからな。
 俺達はエスカレーターでアニメイクのある4階まで向かう。このフロアにはアニメイクを含め、雑貨屋、手芸ショップ、ゲームセンターなどの専門店が集まっている。こういうお店があるんですね、と興味津々な様子で歩きながら周りを見るあおいが可愛らしい。

「ここがアニメイクだよ」

 俺達は最初の目的地であるアニメイクの入り口前に到着した。
 あおいは「おおっ!」と甲高い声を上げ、輝かせた目で店内を見ている。
 午前10時半前だけど、アニメイクの中には結構多くのお客さんがいる。俺達のような学生から30代くらいの若い世代が多い。また、小学生くらいの子供の姿も見受けられる。

「パッと見た感じ、立派そうなアニメイクですね!」
「漫画やラノベ、CDやBlu-rayの品揃えは結構いいぞ。グッズも人気作品とか、放送中のアニメ作品中心に売ってるよ」
「あと、女性向けの同人誌も少し取り扱ってるよ」
「そうなんですね! では、さっそく入りましょう!」

 あおいを先頭にして、俺達はアニメイク調津店の中に入る。
 お店に入ってすぐにあるのは、新刊コミックのコーナー。少年漫画や少女漫画、青年漫画の新刊が置かれている。その近くには、この4月からTVアニメが放送される少年漫画の特設コーナーも設けられていた。
 新刊のコーナーだけあって、並んでいる商品を眺めたり、手に取ったり、サンプル冊子を読んでいたりするお客さんが多い。俺達もそれに漏れず、コーナーに置かれている本をゆっくり眺めることに。

「たくさんの新刊が並んでいますね。午前中ですが、今日発売の漫画も置かれていますね。さすがは東京です」
「京都や福岡だと入荷が遅れるのか? 地方だと、入荷が遅れるのが普通って聞いたことがあるけど」
「京都では発売当日に買えましたが、福岡に住んでいた頃は1日や2日か遅れるのが当たり前でしたね。CMや広告で漫画の発売日を知って、その日に本屋に行っても入荷されていなくて。福岡に引っ越して間もない頃は、そのことに泣いちゃうこともありました」
「そうだったのか」
「ここだと漫画は発売当日に買えるよね。大人気で売り切れない限りは」
「そうだな。ラノベとかは、レーベルによっては発売日前に買えることもあるよな」
「そうだね」

 発売日には欲しい本が買えるのは普通だと思っていたけど、それは東京という場所に住んでいるからなんだな。有り難いことだ。

「あっ」

 あおいはそう声を漏らすと、一冊の本を手に取る。その本の表紙には美麗な男女のイラストが描かれている。

「数日前に発売された好きな漫画の最新巻がありました! 引っ越しの作業があって今まで買えなかったんです」
「そうなんだね」
「あって良かったな」
「はいっ!」

 あおいは嬉しそうに返事する。引っ越しがあって欲しい漫画がなかなか買えなかったことも、アニメイクに行きたいと思った理由の一つなのかもしれない。

「あっ、私の好きな漫画の最新巻も発売されてる」

 愛実はそう言うと、嬉しそうな様子で漫画を手に取る。その本のタイトルを見ると……愛実の部屋の本棚にある少女漫画か。
 それぞれ買いたい漫画があったからか、あおいと愛実は楽しそうに笑い合っている。そんな2人を見ると、アニメイクに来て良かったなぁと思える。これからはこういう光景をたくさん見るのかもしれない。
 新刊漫画コーナーの奥に行くと、次にあるのは新刊のライトノベルやライト文芸のコーナーだ。月初めに新刊を発売するレーベルがあるのでチェックしておくか。

「ラノベの方もたくさん置かれていますね」
「そうだな。……おっ」

 好きなライトノベル作家の新作が置かれているので、一冊手に取る。タイトルからしてラブコメ作品かな。裏表紙に書いてあるあらすじを読んでみると……結構面白そうだ。

「それは何ですか?」
「好きな作家の新作だ。あらすじ読んだら、面白そうなラブコメっぽいし買うよ」
「そうですか」
「リョウ君、ラブコメのラノベが大好きだもんね」
「そういえば、本棚にも結構ありましたね」
「ラノベも漫画もアニメもラブコメが一番好きだからな」

 タイトルや表紙が良かったり、あらすじを読んで面白そうだったりしたら買ってみるラブコメ作品は多い。
 俺が買うと決めたラノベを書いた作家は、これまでにラブコメやファンタジーシリーズを何作も発表している。ジャンル問わず好みに合った作品が多い。なので、この新作は期待大だ。
 その後も、ラノベの新刊コーナーを見ていくと、

「ありました! これも数日前に発売されたんです!」

 あおいがボーイズラブの新刊を手に取っていた。

「私、タイトルは知ってるよ」
「そうですかっ! これは意中の男性のツンデレな言動や濃厚なキスシーンにとてもキュンキュンするラノベシリーズなんですっ! 美しい表紙や挿絵も素晴らしいですよっ!」

 と、あおいが早口で熱弁。そのせいなのか、それとも興奮しているのかあおいはほんのりと顔を赤らめ「はあっ、はあっ……」と息を乱している。今までで一番オタクな姿を見た気がする。そんなあおいの語りに感銘を受けたようで、愛実があおいに第1巻を貸してほしいとお願いしていた。ここまで熱烈な布教現場を見るのは初めてだ。
 新刊のラノベコーナーを見終わり、俺達はグッズ、女性向け同人誌コーナーの順番に廻っていく。
 あおい曰く、グッズや女性向け同人誌が売られている種類の多さは福岡や京都のアニメイクといい勝負とのこと。こちらのアニメイクでも満足できそうで良かった。
 最終的に俺はラノベ一冊、愛実は漫画一冊、あおいはラノベと漫画、同人誌をそれぞれ一冊ずつ購入するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※続編がスタートしました!(2025.2.8)  ※1日1話ずつ公開していく予定です。  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...