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第1章
第7話『アルバム-前編-』
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「面白かったですね!」
クリスのアニメを観終わると、あおいはニッコリと笑ってそう言った。あおいにとって楽しい時間になって何よりだ。
「面白かったな。あと、あおいと一緒にクリスを観たのが懐かしかったし、3人で観られたのが楽しくて嬉しかった」
「私も楽しかったよ、あおいちゃん」
あおいのことを見つめながら愛実はそう言う。いつもの優しい笑顔を見せていることからして、今の言葉が特に気遣ったものではないと分かる。この3人でアニメを観るのは初めてだけど、愛実にとっても楽しい時間になって嬉しいな。
愛実の言葉もあってか、あおいの口角がさらに上がる。
「お二人がそう言ってくれて嬉しいです。あと、私も涼我君と一緒にクリスを観て懐かしい気持ちになりました」
「そうか」
クリスは小さい頃にたくさん観たアニメだからな。あおいと10年ぶりに一緒に観たアニメがクリスで良かった。アイスコーヒーを一口飲むと、あおいが来る前よりも美味しく感じられた。
「2人とも、この後もクリスを観るか? それとも他のアニメを観る? アニメを観ること以外でもかまわないよ」
「あおいちゃんのしたいことがいいな。私はいつも来ているし。それに、あおいちゃんが来てからあまり時間も経っていないから」
優しく微笑みながら愛実はそう言う。愛実らしいな。
「愛実の意見に賛成だ」
「ありがとうございますっ! では、お言葉に甘えて」
そう言うと、あおいは本棚の方を指さす。本棚に入っているもので何をしたいんだろう?
「一番下の棚に入っているアルバムを見てみたいです。水色の分厚い冊子がアルバムですよね。さっき、愛実ちゃんに教えてもらいました」
「ああ。アルバムだよ」
何がしたいのかと思ったけど、アルバムを見ることだったのか。昔、あおいがいた頃の俺とあおいの写真や、あおいと離ればなれになっていたこの10年間の俺と愛実の写真を見てみたいのだろう。あとは、写真を見ることをきっかけに思い出を語り合ったり、この10年間の話を聞いたりしたいのかも。
「分かった。じゃあ、アルバム鑑賞をするか」
「ありがとうございます! 楽しみです!」
「私も久しぶりに見るから楽しみだな」
2人が楽しいと思えるアルバム鑑賞になるといいな。あおいと離れていたこの10年。決していいことばかりじゃなかったけど。
俺は本棚の一番下にある水色のアルバムを取り出す。
あおいがアルバムを見やすいように、さっきとは違ってあおいを真ん中にして3人並んで座る。
「だいたい撮影順に貼ってあるよ」
「分かりました! では、最初から見ていきましょうか」
「そうしよう、あおいちゃん」
1ページ目からしっかりと見ていくスタイルなのね。てっきり、ペラペラめくって、気になった写真に関するエピソードを話すのかと思っていた。まあ、2人の鑑賞スタイルに従おう。
あおいがアルバムの表紙をめくると……そこには赤ちゃんの頃の俺の写真が貼られている。
『可愛いっ!』
表紙をめくった瞬間、あおいと愛実は黄色い声でそう言う。2人は目を輝かせて赤ちゃん時代の俺の写真を見ていて。ちょっと恥ずかしくなってきたな。
「赤ちゃんの頃の涼我君可愛いですね!」
「可愛いよね! 智子さんと竜也さんは今とあまり変わらない……」
「変わりませんよね。特に智子さんは。昨日、挨拶するためにこの家に来たとき、昔と変わらない智子さんを見て何だか安心しました」
昨日のことを思い出しているのだろうか。あおいは柔和な笑みを浮かべている。
あおいが調津に住むのは10年ぶり。家でも人でも、当時と変わらないものがあると安心できるのだろう。
「息子から見ても、見た目は変わらないな。あおいの御両親も昔とそんなに変わってないって思ったよ」
「ふふっ、そうですか。家に帰ったら、お母さんとお父さんに話しましょう。それにしても、赤ちゃんの涼我君は物凄く可愛いです。生まれたときから金髪だったんですね」
「そうだな。両親も金髪だし、そこはしっかり受け継がれたよ」
むしろ、金髪じゃなかったら大問題な気がするけど。どちらの家系も金髪の人ばかりだし。
それからも、あおいがたまにページをめくりながら、アルバム鑑賞をしていく。幼少期だから、俺一人だけの写真や両親、親戚と一緒に写る写真が多い。
あと、時系列で貼っているため、ページをめくる度に写真に写る俺が成長している。それでも、幼少期だからかあおいも愛実も「可愛い」と連呼している。今日が、今年一番に可愛いって言われる日になりそうだ。
やがて、幼稚園時代の写真が貼られているページとなり、
「あっ、私と一緒に写っている写真が出てきましたね!」
アルバムに小さい頃のあおいが登場し始めた。幼稚園の制服姿でツーショットで写る写真や、お互いの家族6人全員で写っている写真が貼られている。
「小さい頃のあおいちゃん可愛い!」
「可愛いよな。それに懐かしい」
「私も懐かしい気持ちになりますね。このくらい大きくなると、知っている涼我君ですから」
「……こうして昔の写真を見ると、あおいの雰囲気が変わったんだなって改めて思うよ。昔は髪型がショートヘアだったから中性的な感じがしたけど、今は綺麗な女性になったし」
「リョウ君の言うこと分かるなぁ」
愛実は写真とあおいを交互に見ながらそう言う。
幼稚園の頃から雰囲気が変わったから、昨日、再会したときはすぐにあおいだと気付くことができなかった。愛実のように写真とあおいを交互に見ると……10年という月日の長さを感じさせられる。
「涼我君はとてもかっこよくなりましたけど、小さい頃の面影が残っていますね」
「そうだね。写真に写っているリョウ君は可愛いけど、かっこよさも感じられるよね」
「ですね。写真を見ているとあの頃のことを思い出します。幼稚園の年長組だった1年間だけ調津に住んでいたのですが、涼我君とは色々なことをしましたね。お互いの家や近所の公園で遊んだり、家族ぐるみで買い物や食事に行ったり。2,3回ほどですがお泊まりもしましたよね」
「したなぁ」
あおいと一緒にいたのは1年間だけだったけど、思い返すと結構色々なことをしたと思う。ただ、幼稚園の頃だったので、互いの親が一緒だったり、家族ぐるみだったりしたことがほとんどだった。
「これまでアルバムを見せてもらったときに、あおいちゃんとの思い出話はリョウ君から聞いてるよ」
「何度か話したことがあるな」
「そうだったのですか。……このページは幼稚園の制服姿と、家族みんなの写真くらいですから、次のページにそういった思い出の写真が貼ってあるでしょうか」
そう言って、あおいはアルバムのページをめくっていく。
あおいの予想は当たっており、ファミレスに食事に行ったときの写真やベッドで寝ている寝間着姿の俺とあおいの写っている写真、地元の夏祭りに行ったときの浴衣姿の写真など、あおいとの思い出の写真がたくさん貼られていた。これらの写真は今までに何度も見ている。だけど、隣にあおいがいるからか、今回が最も鮮明に思い出が蘇る。
また、あおいは笑顔で「あぁ……」と可愛い声を漏らす。俺と一緒に写っているたくさんの写真を目にしたからだろうか。
「私との写真がたくさん貼ってありますね! こうして写真で見ると、涼我君とたくさんのことをしたのだと実感します」
「そうだな」
「これらの写真を見たり、リョウ君の話を聞いたりしただけだけど、1年間で楽しいことをいっぱいしたんだって分かるよ」
「ふふっ、そうですか。色々な写真がありますが、この中で特に覚えているのは……この写真についてですかね」
あおいはそう言うと、右手の人差し指でとある写真を指さす。その写真には私服姿のあおいと俺が走っている姿が写っている。2人とも笑顔で、特にあおいは楽しそうだ。
「近所の公園に遊びに行くと、たくさん競走しましたよね。だから、よく覚えているんです」
「そうなのか。確かに、あおいとは公園でたくさん競走したな。だけど、あおいには一度も勝てなかった」
あおいと競走していると、あおいの背中がいつも見えていた。一度も勝てなかったけど、あおいと競走するのはとても楽しかったな。走ると気持ち良かったし、あおいもこの写真のような笑顔をたくさん見せていたから。
「負けていても、涼我君は楽しそうでしたね。愛実ちゃんは涼我君と公園で遊ぶことはありましたか?」
「うん。小学生の頃は遊んでいたよ。ブランコとか滑り台とかの遊具で遊ぶことが多かったな」
「そうでしたか。遊具で遊ぶのも楽しいですよね」
「うんっ。リョウ君と一緒だったから、とても楽しかったよ」
愛実は俺の目を見て微笑みかけてくれる。今の愛実の言葉に嬉しくなると同時に、ちょっとキュンとなった。そうだな、と俺が言うと愛実の口角が少し上がった。
「あっ、この写真のリョウ君。ピンクのワンピース着てる。可愛いっ」
愛実はそう言うと、アルバムに貼ってある写真を指さす。その写真にはピンクのワンピースを着ている俺と水色のワンピースを着るあおいが写っている。あおいは楽しそうだけど、俺はちょっと恥ずかしそうにしている。ピースはしているけど。
「可愛いですね! 昔は涼我君と体格差があまりなかったですから、私の服を着させてみることもありましたね」
「似合いそうだからって色々と着させられたな。あおいはもちろんだけど、麻美さんも結構楽しんでいたのを覚えてる」
「『可愛い!』って興奮していましたね」
「麻美さんが興奮する気持ち……分かるかも」
うんうん、と愛実は写真と俺を交互に見ながら頷いている。あおいも俺をチラチラと見ていて。今の俺でもレディースの服が似合いそうとか着させてみたいとか思ってないよな?
あおいと一緒に写っている写真だからだろうか。ワンピース服姿を可愛いと言われても嫌な気分にはならない。アルバムに貼ったままにしておこう。
それからも、幼稚園の頃の写真を見ながら、あおいとの思い出中心に語り合った。愛実にあおいとの思い出を話したことは何度もあるけど、今が一番楽しい。
あおいが引っ越した直後の俺に教えてあげたいな。10年後になってしまうけど、あおいとまた会えて、この頃のことを楽しく話していると。そのときは、10年間一緒にいる幼馴染の女の子も一緒であると。信じてくれるかな。
クリスのアニメを観終わると、あおいはニッコリと笑ってそう言った。あおいにとって楽しい時間になって何よりだ。
「面白かったな。あと、あおいと一緒にクリスを観たのが懐かしかったし、3人で観られたのが楽しくて嬉しかった」
「私も楽しかったよ、あおいちゃん」
あおいのことを見つめながら愛実はそう言う。いつもの優しい笑顔を見せていることからして、今の言葉が特に気遣ったものではないと分かる。この3人でアニメを観るのは初めてだけど、愛実にとっても楽しい時間になって嬉しいな。
愛実の言葉もあってか、あおいの口角がさらに上がる。
「お二人がそう言ってくれて嬉しいです。あと、私も涼我君と一緒にクリスを観て懐かしい気持ちになりました」
「そうか」
クリスは小さい頃にたくさん観たアニメだからな。あおいと10年ぶりに一緒に観たアニメがクリスで良かった。アイスコーヒーを一口飲むと、あおいが来る前よりも美味しく感じられた。
「2人とも、この後もクリスを観るか? それとも他のアニメを観る? アニメを観ること以外でもかまわないよ」
「あおいちゃんのしたいことがいいな。私はいつも来ているし。それに、あおいちゃんが来てからあまり時間も経っていないから」
優しく微笑みながら愛実はそう言う。愛実らしいな。
「愛実の意見に賛成だ」
「ありがとうございますっ! では、お言葉に甘えて」
そう言うと、あおいは本棚の方を指さす。本棚に入っているもので何をしたいんだろう?
「一番下の棚に入っているアルバムを見てみたいです。水色の分厚い冊子がアルバムですよね。さっき、愛実ちゃんに教えてもらいました」
「ああ。アルバムだよ」
何がしたいのかと思ったけど、アルバムを見ることだったのか。昔、あおいがいた頃の俺とあおいの写真や、あおいと離ればなれになっていたこの10年間の俺と愛実の写真を見てみたいのだろう。あとは、写真を見ることをきっかけに思い出を語り合ったり、この10年間の話を聞いたりしたいのかも。
「分かった。じゃあ、アルバム鑑賞をするか」
「ありがとうございます! 楽しみです!」
「私も久しぶりに見るから楽しみだな」
2人が楽しいと思えるアルバム鑑賞になるといいな。あおいと離れていたこの10年。決していいことばかりじゃなかったけど。
俺は本棚の一番下にある水色のアルバムを取り出す。
あおいがアルバムを見やすいように、さっきとは違ってあおいを真ん中にして3人並んで座る。
「だいたい撮影順に貼ってあるよ」
「分かりました! では、最初から見ていきましょうか」
「そうしよう、あおいちゃん」
1ページ目からしっかりと見ていくスタイルなのね。てっきり、ペラペラめくって、気になった写真に関するエピソードを話すのかと思っていた。まあ、2人の鑑賞スタイルに従おう。
あおいがアルバムの表紙をめくると……そこには赤ちゃんの頃の俺の写真が貼られている。
『可愛いっ!』
表紙をめくった瞬間、あおいと愛実は黄色い声でそう言う。2人は目を輝かせて赤ちゃん時代の俺の写真を見ていて。ちょっと恥ずかしくなってきたな。
「赤ちゃんの頃の涼我君可愛いですね!」
「可愛いよね! 智子さんと竜也さんは今とあまり変わらない……」
「変わりませんよね。特に智子さんは。昨日、挨拶するためにこの家に来たとき、昔と変わらない智子さんを見て何だか安心しました」
昨日のことを思い出しているのだろうか。あおいは柔和な笑みを浮かべている。
あおいが調津に住むのは10年ぶり。家でも人でも、当時と変わらないものがあると安心できるのだろう。
「息子から見ても、見た目は変わらないな。あおいの御両親も昔とそんなに変わってないって思ったよ」
「ふふっ、そうですか。家に帰ったら、お母さんとお父さんに話しましょう。それにしても、赤ちゃんの涼我君は物凄く可愛いです。生まれたときから金髪だったんですね」
「そうだな。両親も金髪だし、そこはしっかり受け継がれたよ」
むしろ、金髪じゃなかったら大問題な気がするけど。どちらの家系も金髪の人ばかりだし。
それからも、あおいがたまにページをめくりながら、アルバム鑑賞をしていく。幼少期だから、俺一人だけの写真や両親、親戚と一緒に写る写真が多い。
あと、時系列で貼っているため、ページをめくる度に写真に写る俺が成長している。それでも、幼少期だからかあおいも愛実も「可愛い」と連呼している。今日が、今年一番に可愛いって言われる日になりそうだ。
やがて、幼稚園時代の写真が貼られているページとなり、
「あっ、私と一緒に写っている写真が出てきましたね!」
アルバムに小さい頃のあおいが登場し始めた。幼稚園の制服姿でツーショットで写る写真や、お互いの家族6人全員で写っている写真が貼られている。
「小さい頃のあおいちゃん可愛い!」
「可愛いよな。それに懐かしい」
「私も懐かしい気持ちになりますね。このくらい大きくなると、知っている涼我君ですから」
「……こうして昔の写真を見ると、あおいの雰囲気が変わったんだなって改めて思うよ。昔は髪型がショートヘアだったから中性的な感じがしたけど、今は綺麗な女性になったし」
「リョウ君の言うこと分かるなぁ」
愛実は写真とあおいを交互に見ながらそう言う。
幼稚園の頃から雰囲気が変わったから、昨日、再会したときはすぐにあおいだと気付くことができなかった。愛実のように写真とあおいを交互に見ると……10年という月日の長さを感じさせられる。
「涼我君はとてもかっこよくなりましたけど、小さい頃の面影が残っていますね」
「そうだね。写真に写っているリョウ君は可愛いけど、かっこよさも感じられるよね」
「ですね。写真を見ているとあの頃のことを思い出します。幼稚園の年長組だった1年間だけ調津に住んでいたのですが、涼我君とは色々なことをしましたね。お互いの家や近所の公園で遊んだり、家族ぐるみで買い物や食事に行ったり。2,3回ほどですがお泊まりもしましたよね」
「したなぁ」
あおいと一緒にいたのは1年間だけだったけど、思い返すと結構色々なことをしたと思う。ただ、幼稚園の頃だったので、互いの親が一緒だったり、家族ぐるみだったりしたことがほとんどだった。
「これまでアルバムを見せてもらったときに、あおいちゃんとの思い出話はリョウ君から聞いてるよ」
「何度か話したことがあるな」
「そうだったのですか。……このページは幼稚園の制服姿と、家族みんなの写真くらいですから、次のページにそういった思い出の写真が貼ってあるでしょうか」
そう言って、あおいはアルバムのページをめくっていく。
あおいの予想は当たっており、ファミレスに食事に行ったときの写真やベッドで寝ている寝間着姿の俺とあおいの写っている写真、地元の夏祭りに行ったときの浴衣姿の写真など、あおいとの思い出の写真がたくさん貼られていた。これらの写真は今までに何度も見ている。だけど、隣にあおいがいるからか、今回が最も鮮明に思い出が蘇る。
また、あおいは笑顔で「あぁ……」と可愛い声を漏らす。俺と一緒に写っているたくさんの写真を目にしたからだろうか。
「私との写真がたくさん貼ってありますね! こうして写真で見ると、涼我君とたくさんのことをしたのだと実感します」
「そうだな」
「これらの写真を見たり、リョウ君の話を聞いたりしただけだけど、1年間で楽しいことをいっぱいしたんだって分かるよ」
「ふふっ、そうですか。色々な写真がありますが、この中で特に覚えているのは……この写真についてですかね」
あおいはそう言うと、右手の人差し指でとある写真を指さす。その写真には私服姿のあおいと俺が走っている姿が写っている。2人とも笑顔で、特にあおいは楽しそうだ。
「近所の公園に遊びに行くと、たくさん競走しましたよね。だから、よく覚えているんです」
「そうなのか。確かに、あおいとは公園でたくさん競走したな。だけど、あおいには一度も勝てなかった」
あおいと競走していると、あおいの背中がいつも見えていた。一度も勝てなかったけど、あおいと競走するのはとても楽しかったな。走ると気持ち良かったし、あおいもこの写真のような笑顔をたくさん見せていたから。
「負けていても、涼我君は楽しそうでしたね。愛実ちゃんは涼我君と公園で遊ぶことはありましたか?」
「うん。小学生の頃は遊んでいたよ。ブランコとか滑り台とかの遊具で遊ぶことが多かったな」
「そうでしたか。遊具で遊ぶのも楽しいですよね」
「うんっ。リョウ君と一緒だったから、とても楽しかったよ」
愛実は俺の目を見て微笑みかけてくれる。今の愛実の言葉に嬉しくなると同時に、ちょっとキュンとなった。そうだな、と俺が言うと愛実の口角が少し上がった。
「あっ、この写真のリョウ君。ピンクのワンピース着てる。可愛いっ」
愛実はそう言うと、アルバムに貼ってある写真を指さす。その写真にはピンクのワンピースを着ている俺と水色のワンピースを着るあおいが写っている。あおいは楽しそうだけど、俺はちょっと恥ずかしそうにしている。ピースはしているけど。
「可愛いですね! 昔は涼我君と体格差があまりなかったですから、私の服を着させてみることもありましたね」
「似合いそうだからって色々と着させられたな。あおいはもちろんだけど、麻美さんも結構楽しんでいたのを覚えてる」
「『可愛い!』って興奮していましたね」
「麻美さんが興奮する気持ち……分かるかも」
うんうん、と愛実は写真と俺を交互に見ながら頷いている。あおいも俺をチラチラと見ていて。今の俺でもレディースの服が似合いそうとか着させてみたいとか思ってないよな?
あおいと一緒に写っている写真だからだろうか。ワンピース服姿を可愛いと言われても嫌な気分にはならない。アルバムに貼ったままにしておこう。
それからも、幼稚園の頃の写真を見ながら、あおいとの思い出中心に語り合った。愛実にあおいとの思い出を話したことは何度もあるけど、今が一番楽しい。
あおいが引っ越した直後の俺に教えてあげたいな。10年後になってしまうけど、あおいとまた会えて、この頃のことを楽しく話していると。そのときは、10年間一緒にいる幼馴染の女の子も一緒であると。信じてくれるかな。
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