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大人、親としての役割
しおりを挟む「辛気臭い話はもうやめよーぜ!とりあえず一件落着なんだろ?腹へったよ。こいつらも良いもん何も食べれてないんだろ?飯にしようぜ!」
羽歌も泣き止み、天狗族皆これからの生活が安心、安定できるものだと喜んでいると、華凛が食事の提案を出した。
「お前はいきなりメシかよ」
「良いじゃねーかよ、あれだけ動いて腹減ってんだよ」
「そうですね……華凛の言うことも一理ありますね。私はそこまで空腹ではありませんが、そうですね……夜にいきなりですが……皆さんの歓迎会をしましょう。あれだけの騒ぎで眠い方も少ないでしょう?天狗族の皆さん、お腹空きませんか?」
甚平が声をかけると天狗族一同大きく頷いた。
「ったく……仕方ねーな、甚平さん、俺も手伝うよ。何をすればいい?」
「康成君ありがとうございます。もし許可を頂けるのでしたら、今日、華凛と康成君が狩りで仕留めた猪を出してもよろしいですか?」
「俺はかまわねーよ」
「まぁコイツらもあの猪を見てここを襲撃したんだ。さぞかし旨そうに見えたんだろ?全然かまわねーよ」
「さすが康成だな!よし猪で歓迎会だ!ついでに宴会だ!」
「ありがとうございます。それでは皆さん、準備に取りかかりましょう」
「「おぉー!!」」
甚平が合図を出すと各々動きだし、家庭から包丁や調理器具、村の倉庫から大きな鉄板、鍋を持ち出し準備に取りかかった。
「私達も何かお手伝いを……」
「駄目ですよ。あなた達はもう歓迎会の主役です。主役が準備するのも変な話でしょ?」
「でも……」
「甚平さん、コイツらも心苦しいだろ?皿並べるのとか、簡単な仕事なら良いんじゃねーか?」
「そうっす!簡単な仕事でも良いので手伝わせてほしいっす!」
「俺達も何かお手伝いさせてください!」
羽歌達、みんなで声を出し甚平に頼み込むとさすがの甚平も折れた様子で
「はぁ、わかりました。それではテーブルのセッティングをお願いします」
「みんな!わかったっすね!完璧にセッティングするっすよ!」
羽歌達の手伝いもあり、歓迎会準備もスムーズに終わり、主役が真ん中、康成、華凛達も近くのテーブルについた。
真ん中の大皿にはこれでもかと言うくらいの猪料理が並んでいた。
「うわぁ……凄いっす……」
「久しぶりの肉料理だね!羽歌お姉ちゃん!もう虫とかよくわからない葉っぱを食べなくても良いんだね?」
「確かにあれはきつかったっすね……」
コイツら本当にギリギリだったんだな……
「準備も完了したみたいですね。それでは挨拶を……必要ありませんね。」
天狗族は甚平の話など全然耳に入っていないのか猪料理を凝視している。
「それでは皆さんいただきましょう」
甚平の声と共にみんな料理に群がるように手を出した。
「やっぱり今日捕れたばかりだからうめーな!」
「本当だな、全然臭みとか気になんねーわ」
康成が以前猟師飯の店に行った時に食べた猪は鮮度の問題なのか産地の問題なのか、多少なりとも臭みを感じ、猪肉は嫌いじゃないけどこんなもんか?といった感想だった。
しかし、今回食べた猪は臭みが気にならず逆にアクセントになっており、すでにカレーを食べた康成もどんどん箸が進んだ。
「旨いっす!凄いっす!ヤバいっす!」
羽歌も久しぶりの肉だからか、語彙力もシンプルになり涙目になりながら、食べては飲んでを繰り返していた。
「食べている途中で申し訳ありませんが少しよろしいでしょうか?」
甚平が食べている羽歌達に声をかけると、箸休めなのか食べるのを止め甚平の話を聞く体制になった。
「そんなに心配することもありませんよ。明日からこの村で生活する事になりますが、急なことでしたので、まだあなた達の家がありません。幸い村には広い集会所がありますので暫くはそこでの生活になると思います」
寝る場所があり、安心したのか全員安堵の息を漏らす。
「村の焼けた家の修繕もありますのでまずはそこから始めて先程の通り暫くは集会所で寝泊まりをしていただきます。」
「それは当然っす。むしろ壁と屋根のある場所に泊めて頂けて幸運なほうっす。当然修繕も手伝わせてほしいっす」
羽歌の言葉に全員大きく頷いた。
「それは助かります。空を飛べる天狗族の皆さんがいればだいぶ早く終わりそうです。
実は本題はここからで……」
甚平の言葉に全員息を飲む。
「村の子供達として受け入れますと言いましたが、家はどうしますか?私達の中には子供が自立していたり、残念ながら恵まれなかった夫婦もいます。彼らの家に入るか各自の家を建てるか、大きな家を建ててみんなで暮らすかです。ここですぐに決めろとは言いませんが、できれば村の修繕が終わる前には決めて欲しいです。準備もありますので」
確かに羽歌達はみんな若いが思春期ど真ん中の子供もいれば、まだ小学生位の子供もいる。
今までは生きるためみんなでなんとか暮らしてきたが、やはり分けるべきだと思う。
「そういえばみんな歳はいくつ何だ?」
康成が尋ねると最初に羽歌が答えた。
「私は16っす。一応最年長っす」
驚いた……その後みんなに聞くと羽歌が最年長、一番下で10歳、失禁天狗が15歳だった。老け顔なのに……
「本当によく1年も生き延びたな……」
「ほんとっすよ……運が良かったのか悪かったのか、ホントにみんなでがんばったっす」
「話がずれてきましたね。それでは羽歌さんみんなの希望を確認して私に教えてくださいね」
「了解したっす!」
羽歌が甚平に敬礼すると甚平の話は終わりみんな再び食べ始めた。
甚平はみんなが食べ始めたのを確認すると華凛の側に寄った。
「なんだよ父ちゃん?食わねーのか?うめーぞ?」
甚平は軽いため息をするとコツンッと華凛の頭に軽いげんこつを落とした。
「華凛?私はみんなと隠れてなさいと言いましたよ?それを無視して康成君に助けを求めて行くなんて、今回は助かりましたし何にもありませんでしたから良かったものを……」
「確かに悪かったよ、でも助かったんだろ?」
華凛はニカッ!と笑うと甚平は再度ため息をつき
「実は私達が現世に行けるかは私が実験しようと思っていたんです。もしも何かあっても大丈夫なように」
「そういえば華凛がこっちに来たら少し小さくなってたもんな?力が入らないって泣いてたし」
「泣いてなくわねーけどよ、言うなよな、恥ずかしい……」
「父ちゃんがぁ!ってな」
「馬鹿!言うなって!」
康成が泣いていた華凛の話をばらすと甚平は微笑み
「そうですか……華凛が私の為に……ふふっ」
「父ちゃん急に笑ってなんだよ?」
「いえいえ何でもありませんよ、康成も今回は助かりました。ありがとうございます」
「別に構わねーよ、もう知らない仲でもないからな、今度は華夜さんも一緒に三人でこっちに遊びに来てくれよな、歓迎しますぜ?」
「それは楽しみですね!今回の騒動が落ち着いたら是非とも」
嬉しそうに話すと甚平もみんなの輪に戻り宴会に再度参加した。
その後宴会も終盤になり天狗族の子供が緊張も溶け満腹になりうとうとし始めたため、宴会は御開きになった。
騒がしい雰囲気も落ち着き、天狗族も集会所の布団に入ってすぐに眠りに着いた。
康成が外で煙草を吸っていると甚平がやって来た。
「すみませんね、煙たくて、もしかして甚平さんも吸う人?」
康成は甚平に煙草を一本差し出す。
「暫くやめていたのですがね。せっかくですので一本いただきます。」
久しぶりの煙草を吸う甚平は康成の煙草をゆっくり味わうように吸った。
「一仕事終えた後の一服は、やはり美味しい」
「大変だったけどな……なんとか一件落着だな」
康成は空を見上げ少し傾いてきたお月様に向かって煙を出した。
「今回は助かりました。すみませんね、どうも子供に手を出すのは中々躊躇してしまって……変に力がついてしまって、なかなか手加減に慣れないのですよ」
「怪我をさせないように動いて、逆に怪我をさせられたら意味ねーけどな」
「ごもっともです。あれ以上被害が出る場合は、さすがに覚悟をきめる必要がありました。本当に2つの意味で助かりましたよ」
子供達に大きな怪我をさせることもなく制圧できた。
村の被害を最小限に食い止める事ができた。
気がついてはいないが康成と華凛は2つの意味で最小限の被害に留めたのだ。
「甚平さんもあんまり無理するなよ。無理して大怪我でもしたら華凛や華夜さんも悲しむだろ?」
「康成君、もし娘さんに危険が迫ったらどうします?」
「そりゃあ、命に代えても助けるさ」
「そういうことです。子供の為に無理をするのが大人であり、親ですよ」
「確かにごもっともだな。勉強になりますわ」
子供の為に命を張れる。
それが親の役目の一つ。
きれいごとかもしれない、だが子供は皆幸せであるべきだ。
康成は子供達の幸せを夜空に願って煙草の火を消した。
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