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娘の寝顔でアルバムが作れる
しおりを挟む翌朝、腹部に重さを感じ、目を覚ますと彩愛が康成に乗り寝息をかいていた。
格好も凄まじく康成の両肩に足をかけ腹を枕にうつ伏せで寝ていた。
娘の寝相は凄まじい
朝起きたら寝る前と上下反対になってることも良くある。
「彩ちゃーん起きてくださーい、パパが悪戯しちゃうぞ~」
康成が声をかけると目をうっすら開け康成の腹から隣の布団へ落ちていった。
「パパおはよー」
「おはよ、パパはご飯の準備してくるけど着替えできる?」
「できるー」
娘が用意した保育園用の服に着替え出したの確認し康成は台所に向かった。
朝ごはんを作りながら昨日のことを思い出す
多分あれが幽霊なんだろうなぁ…
ゴリゴリのホラーだったし案外ホラー映画も現実に忠実に再現してるのかもな
成仏していればすぐに転生できたのに
死んで未練がましく残っても何も良いこと無いのに…
天国も地獄もありゃしない
いるのはムキムキマッチョだけ
何か知ってたら逆に行きたくないな…
そこで康成は大事なことに気がついた。
俺、幽霊殴って成仏させたな…
見えたし触れた。
成仏したかはわからないが本気で拳骨したら幽霊が爆散した。
それよりも今まで幽霊や心霊体験なんてしたこと無かったのに何で急に見えるようになったんだろ?
霊界に行ったから?
初日は何も起きなかった。
んー、わかんねぇし、めんどくせ…
今度霊界に行ったら甚平さんにでも聞いてみよ。
ちょうど朝食が出来上がったので康成は考えるのを止めた。
いつも通りの朝食を済ませ、娘を保育園に送ると夜勤まで暇な康成は軽く運動した後、夕方まで仮眠をとることにした。
仕事前に車を走らせ夜食を買いにコンビニに向かいタバコを一服していると街中に違和感を感じた。
あちこちにぼやけた何かが見えた。
何かはわからない、はっきりと見える訳ではないが多分あれが幽霊なのだろうと
康成はめんどくさいし自分に被害が無いのであれば手を出さないほうが良いと考え職場へ向かった。
康成の職場はいわゆる老人施設であり介護に従事していた。
2交代制の職場のため夕方から朝まで夜勤の康成はロッカーで制服に着替え、冷蔵庫に夜食の弁当をいれた。
「おはよーございまーす」
「おはよ、康成君。今日はよろしくね」
夜間の相方の職員へ挨拶を済ませ、日勤の申し送り事項を確認する。
「そういえば富樫さんそろそろじゃない?」
「そうでしたね…2日位前から家族も代わる代わる待機してるんでしたっけ?」
「そうね、もう100歳位だっけ?」
「去年、市役所の表彰があったから100か101歳じゃないですか?」
「家族も親戚も沢山来てましたからね。良いお爺さんだったんでしょうね。」
昔は最期は家で…と考える家族も、多かったが最近はごく稀で施設で最後を迎える利用者も少なくはない。
「孫が来るたびにお菓子とかあげてましたもんね。あっ年齢的に、ひ孫か」
「ああいう人が天国にいけるんでしょうね」
そんな話をしながら業務をしていると時間もあっという間に過ぎ、時刻も日付を越そうとしていた。
「今日の夜勤は静かですね…」
「康成君…施設とか病院で夜勤中にその言葉はタブーだよ」
「あれですっけ?静かな夜勤が急にコールとかが多くなって忙しくなるんですよね?」
「ハァ、何でわかっててそれをいうかな?まぁ富樫さんの件もあるからこれから忙しくなりそうだけど…」
「そうっすよ。これから忙しくなりそうだから俺も仮眠とらないで一緒に夜勤、回してるじゃないっすか」
「まぁね、それはありがたいよ。それじゃ何かあったらよろしくね相方君」
「うっす」
ピンポーン
「噂をすればかな?」
「そうっすね」
コール盤を見ると富樫さんの部屋からだった。
「私はナースに連絡してくるから康成君は先に部屋に行ってきて」
富樫さんの部屋に入ると親族が五人程並んでいた。
「失礼します。」
「職員さん…そろそろみたいです。お爺ちゃんさっきから反応も鈍くなってきて、息も弱くなってるんです…」
富樫さんを見ると呼吸器をつけているが段々感覚が長くなって行くのがわかる。
家族が何度も声をかけるが反応もなく呼吸器の音が響くのみ
血圧、体温を測定していると、ようやくナースが到着したが脈も呼吸も浅くなっている富樫さんを見て家族へ問う。
「今から救急搬送もできますがどうしますか?」
問いに家族は首を横にふった
「お爺ちゃんも良い歳ですし、ここまで来たら最期はゆっくりして欲しいんです。」
「わかりました。無理して蘇生処置はやめておきましょう。」
そういうと家族は富樫さんの周りを囲むように座り、思い出話に花を咲かせた。
それから10分もしないうちに富樫さんは親族に見守られ息を引き取った。
その際康成は富樫さんの体からまるで天井に向かって何かが出てくるのが見えた。
それは明るく虹色に輝く魂のようだった。
まるで後悔や心残りの一切ない綺麗な色のした魂は天井付近につくと親族を見渡し少しずつ薄くなりやがて消えた。
「ありがとうございました。大往生だったと思います。」
親族は一斉に職員へ頭を下げると皆、笑顔だった。
「康成君お疲れさま。あとは任せていいよ。ずっと対応してて疲れたでしょ?今日の夜勤は静かみたいだから少し仮眠してきなよ。」
「良いんですか?タブーですよ?」
「大丈夫でしょ?もう忙しい時間は越えたしあとはどうにでもなるよ。」
笑いながら相方に感謝をし康成は少し仮眠をとることにした。
施設のベランダで一服を終わらせ仮眠室へ入る。
その後がっつり寝坊し内線のモーニングコールで目を覚まし、あの後、コールが止まらなかったと愚痴をこぼされたのであった。
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