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大団円……なんですかね?
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* * *
「み……水を……」
夏の砂漠を三日三晩さまよった気分だ。
体が重くて動かせるのは唯一指先だけ。
カサカサに乾いた喉からなんとか絞り出した声は、中年のオッサンのようだった。
「だ、大丈夫か、すぐに持ってくる」
あまりに酷い私の声に驚いたのだろう。
類さんは血相を変えてベッドを飛び出した。
走り去る足音が聞こえなくなってから、目玉だけを動かす。
窓の外は白み始め、どこからともなく鳥の囀りが聞こえた。
今日って……何曜だっけ。
ぼんやりした頭を働かすのは億劫だけど、これは死活問題だ。
なんとか脳細胞を叩き起こし、思考を巡らせる。
ええと、水曜の定例会議があって、翌々日に工場視察だったから……助かった、休みだ!
たとえ出勤日だったとしても、ベッドから動ける気はしないのだけど。
あの後も私たちは、飽きることなく抱き合った。
いや正確には、途中から私の意識は半分以上なかった。
それなのに、類さんの性欲と体力と「どれだけストックしとるんじゃい!」という避妊具は尽きることがなかった。
「七海ちゃん、お待たせ!」
両手にペットボトルを握った類さんが、ドアを蹴破るり戻ってくる。そのままベッドに飛び乗った彼は、私の上半身を抱き起こし、唇にかかった髪を、丁寧に取り払ってくれるけど……。
ぶっちゃけ、そんなのどうでもいい。
一刻も早く水をくれ!
ベッドに投げ捨てられたペットボトルに視線を向ける。
「どうした、恥ずかしいのか?」
違うわ!
鬼の形相をつくって睨みつける。
「えっ、なんで怒ってんだ!?」
体はあんなに分かり合えたのに、どうして心は通じないんだろう。
なんだか、情けなくなってくる。
「うおっ、今度は悲しいのか!?」
もういい……きっと私は、このまま干からび果てるんだ。めでたく恋も成就したことだし、思い残すことはない。
ゆっくりと瞼を下ろそうとすると。
「もしかして、水……飲みたいのか?」
そう、それよっ!
カッと目を剥き、口を開ける。
すると類さんは「そうかそうか、待ってろ」と、ペットボトルの蓋を開けて。
なにっ!?
あろうことか、私よりも先に自分が飲み始めたのだ。
とんでもない嫌がらせだと思ったら、彼の顔がゆっくり近づいてきて、柔らかな唇が押し付けられた。
まさかの口移し?
なんて動揺よりも、渇きを癒したいという欲求がまさる。
「み……水を……」
夏の砂漠を三日三晩さまよった気分だ。
体が重くて動かせるのは唯一指先だけ。
カサカサに乾いた喉からなんとか絞り出した声は、中年のオッサンのようだった。
「だ、大丈夫か、すぐに持ってくる」
あまりに酷い私の声に驚いたのだろう。
類さんは血相を変えてベッドを飛び出した。
走り去る足音が聞こえなくなってから、目玉だけを動かす。
窓の外は白み始め、どこからともなく鳥の囀りが聞こえた。
今日って……何曜だっけ。
ぼんやりした頭を働かすのは億劫だけど、これは死活問題だ。
なんとか脳細胞を叩き起こし、思考を巡らせる。
ええと、水曜の定例会議があって、翌々日に工場視察だったから……助かった、休みだ!
たとえ出勤日だったとしても、ベッドから動ける気はしないのだけど。
あの後も私たちは、飽きることなく抱き合った。
いや正確には、途中から私の意識は半分以上なかった。
それなのに、類さんの性欲と体力と「どれだけストックしとるんじゃい!」という避妊具は尽きることがなかった。
「七海ちゃん、お待たせ!」
両手にペットボトルを握った類さんが、ドアを蹴破るり戻ってくる。そのままベッドに飛び乗った彼は、私の上半身を抱き起こし、唇にかかった髪を、丁寧に取り払ってくれるけど……。
ぶっちゃけ、そんなのどうでもいい。
一刻も早く水をくれ!
ベッドに投げ捨てられたペットボトルに視線を向ける。
「どうした、恥ずかしいのか?」
違うわ!
鬼の形相をつくって睨みつける。
「えっ、なんで怒ってんだ!?」
体はあんなに分かり合えたのに、どうして心は通じないんだろう。
なんだか、情けなくなってくる。
「うおっ、今度は悲しいのか!?」
もういい……きっと私は、このまま干からび果てるんだ。めでたく恋も成就したことだし、思い残すことはない。
ゆっくりと瞼を下ろそうとすると。
「もしかして、水……飲みたいのか?」
そう、それよっ!
カッと目を剥き、口を開ける。
すると類さんは「そうかそうか、待ってろ」と、ペットボトルの蓋を開けて。
なにっ!?
あろうことか、私よりも先に自分が飲み始めたのだ。
とんでもない嫌がらせだと思ったら、彼の顔がゆっくり近づいてきて、柔らかな唇が押し付けられた。
まさかの口移し?
なんて動揺よりも、渇きを癒したいという欲求がまさる。
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