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反撃です、なりふり構っていられません

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「なっ、陽介?」
「……久しぶり……色々と大丈夫か?」


彼に会うのは二週間ぶりだけど、少し痩せたような気がする。


「うん、大丈夫ではないけど……解決に向けて動いてる」


そうだ、なぜ彼がここに居るのかも気になるけど、まずは小森さんへの説明だ。
陽介に向かって「あとで話そう」と言い置いてから、小森さんに向き直る。


「今日は釈明の機会を頂き、ありがとうございます。お電話でもお話ししましたが、あのアカウントは私ではありません」
「ああ、それは僕も分かっているよ。ありもしないゴシップを捏造するメリットがないからね」
「はい……実は私のスマホに、不正アプリがインストールされていました。スマホ内の全情報、位置情報まで漏れていたようで……おそらくは、このアプリを入れた人間が仕組んだことだと思います」


昨夜、これを発見した慧さんに「どこかにスマホを置き忘れたり、放置したまま目を離したりしていない?」と聞かれて、いちばんに思い出したのは陽介の家に落としたことだ。そして、翌日それを届けてくれたのは松本凛。正直いって、怪しいのは彼女なんだけど――。


「今、専門の者が、スマホ内情報の漏洩先、そしてリミッターに虚偽を書き込んだ人物を特定しています。その後、犯人の身辺調査を行い、確証が取れた時点で、インフルエンサーが真相を発信する手筈を整えています」


実際の作戦は、もっと綿密で細かいものだけど、これが大筋だ。
小森さんは「なるほど」と、頷いたけど、表情は決して明るいとは言えない。


「ご心配はお察しします。けれど超一流の方々に協力を頂いていますので、確実に成功します」


そう言い切ったのは、ハッタリではない。昨夜の作戦会議で彼らの凄みを、目の当たりにしたからだ。ディスカッションの内容、表情、オーラ、その全てに圧倒され――勝利を確信した。


「随分と自信があるようだね、そんな人脈をどこで?」
「っと……それは」


類さんのギャンブル仲間だとは言えない。
でも嘘はつきたくないし……と思考を巡らせていると。


「言いづらいのなら聞かないよ。しかし例え真相が判明しても、この炎上を上回るセンセーショナルな内容でない限り、世間には浸透しないんじゃないかな」
「はい、おっしゃる通りです。ですから――」


そこで一呼吸を置き、チラリと陽介を盗み見る。彼は感情の読めない顔で私を見ていた。


これから私が提示する作戦は、犯人が松本凛だった場合、陽介にとって辛いものになるかもしれない。


でも……ごめんね、私にも守りたいものがあるの。
それが誰かを傷つけると分かっていても、綺麗ごとだけで済ませる訳にはいかなから。


覚悟を決め、私は言った。


「真相を明るみ出すと同時に、犯人の氏名、顔、そして身辺調査で得た、世間が喜びそうなネタも晒します」


――どんな人間も一つや二つ、後ろ暗い過去を持っているものだよ。


探偵、工藤さんの言葉に、インフルエンサーのジュンピーさんがつけ加えた。


――そしてその小さな火種に色を付けて、世間の攻撃真理を刺激してあげればいい。


さっきまで笑顔で私の手料理を食べていたとは思えないくらい、彼らは冷然としていた。
怖い、と思った。そしてまた、目的に向かう残酷なまでに真っすぐな姿勢こそが、超一流と呼ばれる所以なのだと思った。
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