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ハメられました詰みました
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「誤解です、このアカウントも、私のものではありません」
「うん、それは僕らも信じたいんだけど……実はこんなのまで出てきて……ちょっとまずいかも」
設楽さんがマウスを動かし、告発文へのリプライ画面を表示する。
そこには予想通り『NANA・T』へ向けた攻撃的な言葉が並んでいる。
だがその中に、とんでもない内容を見つけた。
『この人コモケンに枕する前に、自社でも枕してるよ。営業部だったのに、企画部の部長を誑し込んで部署移動した上に、経験ないくせにいきなり企画通してるもん』
おそらくは、捨てアカウントからのコメント。
けれどもそこに付いている数字から、大量に拡散されていることが分かる。
さらに私を凍りつかせたのは、コメントに添付された多数の写真だった。
類さんと私が、同じ家から出て来る場面。
伊豆へ向かう為に、ふたりで車に乗り込むもの。
そしてなぜか、私と類さんのメッセージアプリでのやり取りまで画像として切り取られている。
「七海ん、こんなの合成だよね、偽物だよね!」
ずっと黙っていた湯川さんが、とつぜんに声を荒げた。
私を正面から見据え、今にも泣き出しそうな顔をしている。
答えられなかった。
ここで嘘をつくことは、どうしても出来なかった。
「……すみません」
私の謝罪に、設楽さんが深いため息をつく。
「いつから? 今回、谷川さんのアイディアが採用されたのに、二階堂部長との仲は関係してるの?」
「違いますっ、企画に関しては誓って――」
弁明は、入り口から聞こえた大声に遮られた。
「おい、リミッター見たか!」
声の主は開発チームの沖田さんだった。
スマホを片手に、荒い息を吐いている。
彼は私たちのもとに駆け寄ってくると、スマホの画面を差し出してくる。
「ああ、今その話をしている最中だ」
設楽さんの低い声に、三人の視線が私に突き刺さる。
と、その時だった。
商品企画部直通の外線電話が鳴った。
ディスプレイには『デザイン事務所・コモンズ』の文字。
「わ、私が出ます」
先ずは謝罪して、なんとか誤解を解かなければ。
震える手で受話器を取った瞬間。
「コモンズの小森です、谷川さん出して!」
鼓膜を破るほどの怒声が耳を打った。
「すみません、谷川です、小森さん、この度は大変――」
「あんたねえ、いったいどうすんだよ、これ!」
謝罪をさせて貰える空気ではなかった。
「うん、それは僕らも信じたいんだけど……実はこんなのまで出てきて……ちょっとまずいかも」
設楽さんがマウスを動かし、告発文へのリプライ画面を表示する。
そこには予想通り『NANA・T』へ向けた攻撃的な言葉が並んでいる。
だがその中に、とんでもない内容を見つけた。
『この人コモケンに枕する前に、自社でも枕してるよ。営業部だったのに、企画部の部長を誑し込んで部署移動した上に、経験ないくせにいきなり企画通してるもん』
おそらくは、捨てアカウントからのコメント。
けれどもそこに付いている数字から、大量に拡散されていることが分かる。
さらに私を凍りつかせたのは、コメントに添付された多数の写真だった。
類さんと私が、同じ家から出て来る場面。
伊豆へ向かう為に、ふたりで車に乗り込むもの。
そしてなぜか、私と類さんのメッセージアプリでのやり取りまで画像として切り取られている。
「七海ん、こんなの合成だよね、偽物だよね!」
ずっと黙っていた湯川さんが、とつぜんに声を荒げた。
私を正面から見据え、今にも泣き出しそうな顔をしている。
答えられなかった。
ここで嘘をつくことは、どうしても出来なかった。
「……すみません」
私の謝罪に、設楽さんが深いため息をつく。
「いつから? 今回、谷川さんのアイディアが採用されたのに、二階堂部長との仲は関係してるの?」
「違いますっ、企画に関しては誓って――」
弁明は、入り口から聞こえた大声に遮られた。
「おい、リミッター見たか!」
声の主は開発チームの沖田さんだった。
スマホを片手に、荒い息を吐いている。
彼は私たちのもとに駆け寄ってくると、スマホの画面を差し出してくる。
「ああ、今その話をしている最中だ」
設楽さんの低い声に、三人の視線が私に突き刺さる。
と、その時だった。
商品企画部直通の外線電話が鳴った。
ディスプレイには『デザイン事務所・コモンズ』の文字。
「わ、私が出ます」
先ずは謝罪して、なんとか誤解を解かなければ。
震える手で受話器を取った瞬間。
「コモンズの小森です、谷川さん出して!」
鼓膜を破るほどの怒声が耳を打った。
「すみません、谷川です、小森さん、この度は大変――」
「あんたねえ、いったいどうすんだよ、これ!」
謝罪をさせて貰える空気ではなかった。
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