44 / 124
俺の大事な抱き枕【side 類】
4
しおりを挟む
「あーじゃあ、やっぱり本人だ。おまえの同居人、家出でもした?」
「はっ、どういうことだ?」
「いや、こんな時間に、うちの近所の公園でボーっとしてるからさ」
「なんだって!?」
自分でも驚くほどの大声で叫んでいた。
「おい、状況を説明しろ」
焦る俺とは対照的に、英輔はのんびりと答える。
「それが彼女に家を追い出されてさあ……ちょっと他の子とデートしただけなんだぜ、それもたった一回、なのにアイツ、俺のスマホ見たらしくて――」
「お前の話はいい、七海ちゃんのことだ!」
「はいはい――で、近所をぶらついてたら、井草公園に女の子がいて、どうも見た事があるなって……」
「今もいるのか?」
「あーうん、いるよ。声かけようかと思ったんだけど、俺、七海ちゃんに一度しか会ったことないじゃん? 念のため確認」
だったら、新台なんかより、先に言えよ。
そう思いながらも、財布だけ持って外に飛び出す。
「今から行く、雨は凌げてるのか?」
「俺なら傘と一緒に追い出されたから大丈――」
「おまえじゃない、七海ちゃんだ」
「冷たいなあ……ああ、東屋のベンチに居る」
「なら、そこを動くなって伝えてくれ」
「いいけど今さあ、おっぱいの写真がプリントされたTシャツに、ショッキングピンクの短パン、髪も昨日緑に染めたばっかりなんだよなあ……声かける前に逃げられないかな」
なんだよ、そのTシャツは。
あと、緑に染めたって……仕事はどうすんだよ。
「じゃあ、変なのに絡まれないように、そこから見といてくれ」
「ラジャー、今度、おごってね」
「分かったから、しっかり見張っとけよ」
友人のセンスにげんなりしながら指示を出した俺は、駅前のタクシー乗り場まで走った。
英輔から聞いた詳しい場所を運転手に告げ、シートに体を沈める。
まったく、こんな大雨の中連絡もよこさず、なにやってんだよ。
英輔に発見されなかったら、どうするつもりだったんだ。
それも……暴漢に襲われかけて以来、苦手だと言っていた公園で。
「世話、かけさせやがって」
車窓を流れる水滴を見ながら、俺の心はひどくざわついていた。
「はっ、どういうことだ?」
「いや、こんな時間に、うちの近所の公園でボーっとしてるからさ」
「なんだって!?」
自分でも驚くほどの大声で叫んでいた。
「おい、状況を説明しろ」
焦る俺とは対照的に、英輔はのんびりと答える。
「それが彼女に家を追い出されてさあ……ちょっと他の子とデートしただけなんだぜ、それもたった一回、なのにアイツ、俺のスマホ見たらしくて――」
「お前の話はいい、七海ちゃんのことだ!」
「はいはい――で、近所をぶらついてたら、井草公園に女の子がいて、どうも見た事があるなって……」
「今もいるのか?」
「あーうん、いるよ。声かけようかと思ったんだけど、俺、七海ちゃんに一度しか会ったことないじゃん? 念のため確認」
だったら、新台なんかより、先に言えよ。
そう思いながらも、財布だけ持って外に飛び出す。
「今から行く、雨は凌げてるのか?」
「俺なら傘と一緒に追い出されたから大丈――」
「おまえじゃない、七海ちゃんだ」
「冷たいなあ……ああ、東屋のベンチに居る」
「なら、そこを動くなって伝えてくれ」
「いいけど今さあ、おっぱいの写真がプリントされたTシャツに、ショッキングピンクの短パン、髪も昨日緑に染めたばっかりなんだよなあ……声かける前に逃げられないかな」
なんだよ、そのTシャツは。
あと、緑に染めたって……仕事はどうすんだよ。
「じゃあ、変なのに絡まれないように、そこから見といてくれ」
「ラジャー、今度、おごってね」
「分かったから、しっかり見張っとけよ」
友人のセンスにげんなりしながら指示を出した俺は、駅前のタクシー乗り場まで走った。
英輔から聞いた詳しい場所を運転手に告げ、シートに体を沈める。
まったく、こんな大雨の中連絡もよこさず、なにやってんだよ。
英輔に発見されなかったら、どうするつもりだったんだ。
それも……暴漢に襲われかけて以来、苦手だと言っていた公園で。
「世話、かけさせやがって」
車窓を流れる水滴を見ながら、俺の心はひどくざわついていた。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】
衣草 薫
恋愛
朋美が酔った勢いで注文した吸うタイプのアダルトグッズが、お隣の爽やかイケメン蓮の部屋に誤配されて大ピンチ。
でも蓮はそれを肩こり用のマッサージ器だと誤解して、マッサージ器を落として壊してしまったお詫びに朋美の肩をマッサージしたいと申し出る。
実は蓮は幼少期に朋美に恋して彼女を忘れられず、大人になって朋美を探し出してお隣に引っ越してきたのだった。
マッサージ師である蓮は大好きな朋美の体を施術と称して愛撫し、過去のトラウマから男性恐怖症であった朋美も蓮を相手に恐怖症を克服していくが……。
セックスシーンには※、
ハレンチなシーンには☆をつけています。
【R18】そっとキスして暖めて
梗子
恋愛
夏樹と颯斗は付き合って5年目になる。
同棲も今日で2年目。
いつもと変わらない日常で
今日も2人は互いを求め愛し合う。
※始終エッチしてるだけのお話しです。
※ムーンライトノベルズ様にも掲載させていただいております。
おっぱい、触らせてください
スケキヨ
恋愛
社畜生活に疲れきった弟の友達を励ますべく、自宅へと連れて帰った七海。転職祝いに「何が欲しい?」と聞くと、彼の口から出てきたのは――
「……っぱい」
「え?」
「……おっぱい、触らせてください」
いやいや、なに言ってるの!? 冗談だよねー……と言いながらも、なんだかんだで年下の彼に絆されてイチャイチャする(だけ)のお話。
【R18・完結】蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない〜
花室 芽苳
恋愛
契約結婚しませんか?貴方は確かにそう言ったのに。気付けば貴方の冷たい瞳に炎が宿ってー?ねえ、これは大人の恋なんですか?
どこにいても誰といても冷静沈着。
二階堂 柚瑠木《にかいどう ゆるぎ》は二階堂財閥の御曹司
そんな彼が契約結婚の相手として選んだのは
十条コーポレーションのお嬢様
十条 月菜《じゅうじょう つきな》
真面目で努力家の月菜は、そんな柚瑠木の申し出を受ける。
「契約結婚でも、私は柚瑠木さんの妻として頑張ります!」
「余計な事はしなくていい、貴女はお飾りの妻に過ぎないんですから」
しかし、挫けず頑張る月菜の姿に柚瑠木は徐々に心を動かされて――――?
冷徹御曹司 二階堂 柚瑠木 185㎝ 33歳
努力家妻 十条 月菜 150㎝ 24歳
初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。
だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。
あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは……
幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!?
これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。
※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。
「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。
やさしい幼馴染は豹変する。
春密まつり
恋愛
マンションの隣の部屋の喘ぎ声に悩まされている紗江。
そのせいで転職1日目なのに眠くてたまらない。
なんとか遅刻せず会社に着いて挨拶を済ませると、なんと昔大好きだった幼馴染と再会した。
けれど、王子様みたいだった彼は昔の彼とは違っていてーー
▼全6話
▼ムーンライト、pixiv、エブリスタにも投稿しています
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる