ゲキモリアン

HARUNAR

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ゲキモリアン

カンナ

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季節は夏。

息がとても白いのは新宿に城を構えたゲキモリアンのせいだろう。

ニュースではゲキモリアンの所為で世界は危機に瀕してるとかいうけど私はこの世界の方が好き。

毎日死んだような目をした大人を見なくて済むし、何より自由だ。


私は生きている。



あれだけの人が溢れた新宿には今やゲキモリアンの仲間しかいない。

そんな場所に単身向かうのが毎日の楽しみでもある。

(さぁ、今日も出かけるか。そろそろ食べ物も尽きるだろうし。
アクロの店にでも寄ろっかな。)

アクロはこの世界になって初めて友達になった亀の商人だ。
小さい店でありながらコンビニ以上の品揃えだ。勿論沢山の訳の分からない物もある。
それが目当てでもあるけど。

コンビニの跡地を改造した"アクロの窓"へ向かう。

桜上水駅から線路を伝い歩くと10分ほどで明大前駅に着く。

牙を持った黄色の鳥、小さな人型のコウモリ、ヘラヘラした口だけの化け物。

数えきれない種類の生き物?が右往左往する。どいつもこいつも日本語を喋るからつい耳を傾けてしまう。

「おい見たか?昨日のゲキモリアンのPV。
    youtube に上がってたやつ。」

「え、何それ、超気になる。笑
  まさかあの人が歌ってるん?」

「いや、それがさぁ、、、

人型のロボットとすぐにでも折れそうな枝?が楽しそうに話している。


(私も話したいなぁ。正直、ゲキモリアンのファンなんだよな。。人見知りだけどあいつらなら話せると思う。なんたって人間じゃないし。)

そんな事を考えたけど、考えるだけにした。

カンナはタレ目をこすり歩き続ける。
次第に気分が良くなった。
カンナは歩きながら歌う。
周りが一層輝いた。


♪ゲキモリアーンならなんでもでーきる
  きっときっと花咲か爺さんも驚くさ


(このAメロがいいなぁ。独特の世界観はやっぱり人じゃないからなのかな?)

今日本で人気の曲
"ゲキモリアン"は爆発的な再生数を獲得している。
世間では新しい音楽のジャンルG-POPが来たと騒がしい。
まあ、騒いでるのはあいつらなんだけど。


熱狂的なファンと沢山のアンチが毎日コメント欄で争っている。
大半のアンチが人であり、曲の批判というよりはネットの中でしかイキれない人が必死に戦っているようにも見える。

だとしても人は醜いよな。


ラスサビが終わった頃、
カンナは目的地の"アクロの窓"のドアの前に辿り着いた。






  



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