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【番外編②】1年生の女子/憂太の過去(2)

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※憂太視点で物語は進みます※
※憂太がつらくなる展開が続きますが、最後 (現在の憂太) はハッピーです※


高校3年生になり、麻生さんとはクラスが離れた。

何人かは昨年と同じクラスの子がいたが、仲の良かった友達とはクラスが離れてしまった。

「あ、あの…」

昼ごはんを買いに食堂に行くと、1年生らしき女子から声をかけられた。

「よ、よ、読んでください」

四つ折りにされた小さな紙を開くと、「6限目が終わってから、西門に来てもらえませんか」と書かれていた。

西門は僕の行き帰りで使う門だ。

「(えーっと、どうしようかな)」

きっと告白されるだろう。

僕の姉曰く、僕は背が高くて、鼻筋が通っている切長の目だから、一見かっこよく見えるらしい。

6時間目が終わり、西門に向かうと、1年生の彼女がいた。

小さな鏡を見て前髪を何度も直し、落ち着かなさそうにしている。

「あの…」

声をかけた途端に、ビクッと大きく肩を上げて振り返った。

「あ、あ、いきなり呼び出してすみません。あの、彼女っていたりしますか?」

「いないかな」

僕の答えを聞いて、嬉しそうにまた前髪を触った。

「えーっと、好きです。入学してから、毎日登校する時に見かけていて、見ているうちに好きになっちゃいました!」

恥ずかしいのか、俯いたまま話し続ける彼女を見て、青春しているなあと思ってしまった。

「いきなり付き合ってって言うのは無理だと思うので、連絡先教えてもらえませんか?もし良かったら、たまに遊びに行ったりしたいなあって…」

最大限の勇気を振り絞ってくれているのだろう。

笑顔から緊張が伝わってくる。

「ごめんね。思わせぶりなことをしたくないから、連絡先は教えられない。でも気持ちは嬉しいよ、ありがとう」

正直に伝える。

曖昧にしてもお互いに良いことはないと思う。

「あ…ですよね…。いきなり気持ち悪かったですよね…。すみません」

さっきまでふんわりとピンクがかった頬をしていた彼女は、みるみるうちに涙目になっていた。

「そんなことはないよ。でも適当なことはしたくないからさ」

「別に私は適当にしてくれててもいいです…」

僕がそれは嫌なんだよ、口から出そうになった言葉を飲み込んだ。

「適当にして良い訳ないでしょ。お互い、なにも知らない同士だから良く見えてるだけかもしれないし…」

「これから知っていったら良くないですか?」

きっと合わないことだけは、何となくわかる。

「僕は、恋愛するためだけに人の良いところを探すのが苦手なんだ。本当に…ごめんね」

断った僕が悪いのだろうか。

学校の門の前で泣いている1年生の女の子と3年生の男の僕。

通り過ぎる人のチラチラと見られる視線が居心地が悪い。

「…連絡先もダメですか」

「うん。ごめんね。思わせぶりをしたくないから…」

彼女は涙でいっぱいになった目をパチパチさせている。

「なんか…余計に好きになっちゃったんですけど」

「え?」

僕は絶対に性格が合わないだろうなって思ってしまっていたから驚いた。

「適当なことはしない。誠実なんですね。…先輩に好きになってもらえるように頑張ります!連絡先、聞きたくなったらいつでも聞いてくださいね!」

「あ、うん…」

台風のように突然告白して、泣いて、やっぱり好きだと言って去っていった。

「(これで良かったのかな)」

呆気に取られながら家に向かう。

さっきみたいに突然告白される機会は何度もあった。

僕は外見の多少の好みはあったとしても、一目惚れをする人の気持ちがわからない。

人を好きになるには、ゆっくり時間がかかると思っている。

良いところ、悪いところ全部含めて好きじゃないのかな…と思う。
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