69 / 82
【番外編】 弱点/憂太の彼氏力が高かった理由③
しおりを挟む
「でもまあ、湊、ちゃんと聞いてたなら分かるでしょ?」
「んん?」
どういうことだ?俺にだけ特別にってことで合ってるのか?とハンバーグを頬張りながら考える。
「相変わらず鈍感だなあ、湊」
憂太がハンバーグを口に運ぶことを中断した。
「何も分かってなさそうだけど…わざとしてたに決まってるじゃん」
「わざと?俺だけに?…そっかぁ…」
自分の都合の良い想像と合っていたことに、ほわほわっと喜びが湧いてきた。
憂太の「俺にだけ、わざと…」という言葉で十分だった。
それだけで、随分前から憂太を独占できていたのかと嬉しくなる。
「それならいい!もう大丈夫!」
「え?僕は大丈夫じゃない。絶対に湊は分かってない」
そう言うと、憂太が夕食時のファミリーレストランだというのに、はっきりと何かを言おうとしている。
「僕は、湊のことが好きだったし、恋人の練習とか言って湊は僕にキスを許したんだから、ほんの少しでも望みはないかなって思ってた」
あまりに堂々とはっきりと話す憂太に、俺たちの周りに座っている人たちが反応した。
チラッと周囲を見渡すと、憂太の声が聞こえたであろう人たちが俺と同じ驚いているような、照れているような顔をしていた。
「ちょ、ゆ、ゆうた!?待って、ここ外!」
「うん、分かってるよ。だからこそ…」
何食わぬ顔で続きを話そうとする憂太を、慌てて止めた。
「わかった!だから、もうちょい小さい声で話し…」
「やだ!」
俺の必死の訴えは、憂太の子どもみたいな返事で遮られた。
「や…って、なんでだよ」
「湊が僕のことを思わせぶりをする奴みたいな言い方するからじゃん」
「ごめん、そんなつもりじゃなくてさ」
自分のことを話す恥ずかしさを紛らわせようと、安易に憂太をからかったのが良くなかった。
それもそうだ。
憂太はあまり恋愛に関して良い思い出がないと知っていたのだから。
傷つけてしまったかなと反省していると、憂太が口を開いた。
「ま、さっきのは僕が嫌がること言ってきた湊への仕返しかな」
反省していたのに、憂太の仕返しという言葉を聞いてポカンとした。
「湊、こういうの弱いもんね?」
机に頬杖をつきながら、にやりと笑っている。
なんて言い返そうか考えていると、口がポカンと開いたままになった。
「ねえ、湊のそういう分かりやすいところも、単純なところも好きだよ」
憂太は2人きりの空間にいるかのように、まっすぐ俺を見ている。
「照れてるところも、焦ってるところもかわいいって思えて好き」
後光がさしているかと思うくらいの笑顔で憂太が好きを連呼してくる。
「ちょ、ま…待って待って、分かった。俺が悪かったから、落ち着け。ゆっくり話そう、ゆっくり!」
俺の反応を見て面白がっている憂太の口を塞ぐために、机に身を乗り上げて手で押さえた。
さっき感じたホワホワした温かく嬉しい気持ちは、いつの間にかハラハラドキドキするものに変わっていた。
「んん?」
どういうことだ?俺にだけ特別にってことで合ってるのか?とハンバーグを頬張りながら考える。
「相変わらず鈍感だなあ、湊」
憂太がハンバーグを口に運ぶことを中断した。
「何も分かってなさそうだけど…わざとしてたに決まってるじゃん」
「わざと?俺だけに?…そっかぁ…」
自分の都合の良い想像と合っていたことに、ほわほわっと喜びが湧いてきた。
憂太の「俺にだけ、わざと…」という言葉で十分だった。
それだけで、随分前から憂太を独占できていたのかと嬉しくなる。
「それならいい!もう大丈夫!」
「え?僕は大丈夫じゃない。絶対に湊は分かってない」
そう言うと、憂太が夕食時のファミリーレストランだというのに、はっきりと何かを言おうとしている。
「僕は、湊のことが好きだったし、恋人の練習とか言って湊は僕にキスを許したんだから、ほんの少しでも望みはないかなって思ってた」
あまりに堂々とはっきりと話す憂太に、俺たちの周りに座っている人たちが反応した。
チラッと周囲を見渡すと、憂太の声が聞こえたであろう人たちが俺と同じ驚いているような、照れているような顔をしていた。
「ちょ、ゆ、ゆうた!?待って、ここ外!」
「うん、分かってるよ。だからこそ…」
何食わぬ顔で続きを話そうとする憂太を、慌てて止めた。
「わかった!だから、もうちょい小さい声で話し…」
「やだ!」
俺の必死の訴えは、憂太の子どもみたいな返事で遮られた。
「や…って、なんでだよ」
「湊が僕のことを思わせぶりをする奴みたいな言い方するからじゃん」
「ごめん、そんなつもりじゃなくてさ」
自分のことを話す恥ずかしさを紛らわせようと、安易に憂太をからかったのが良くなかった。
それもそうだ。
憂太はあまり恋愛に関して良い思い出がないと知っていたのだから。
傷つけてしまったかなと反省していると、憂太が口を開いた。
「ま、さっきのは僕が嫌がること言ってきた湊への仕返しかな」
反省していたのに、憂太の仕返しという言葉を聞いてポカンとした。
「湊、こういうの弱いもんね?」
机に頬杖をつきながら、にやりと笑っている。
なんて言い返そうか考えていると、口がポカンと開いたままになった。
「ねえ、湊のそういう分かりやすいところも、単純なところも好きだよ」
憂太は2人きりの空間にいるかのように、まっすぐ俺を見ている。
「照れてるところも、焦ってるところもかわいいって思えて好き」
後光がさしているかと思うくらいの笑顔で憂太が好きを連呼してくる。
「ちょ、ま…待って待って、分かった。俺が悪かったから、落ち着け。ゆっくり話そう、ゆっくり!」
俺の反応を見て面白がっている憂太の口を塞ぐために、机に身を乗り上げて手で押さえた。
さっき感じたホワホワした温かく嬉しい気持ちは、いつの間にかハラハラドキドキするものに変わっていた。
10
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる