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第65話 2度目のキス
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「…湊。4年生になったら、恋人ごっこでデートしたところ、もう1回行こう」
「…うん」
さっきまでのふざけ合っていた雰囲気が、憂太の落ち着いた優しい声で一気に甘い雰囲気になった。
「みなと…」
胸の奥に響いてくるようなしっとりとした低い声で名前を呼ばれる。
「湊。キス、したい」
無意識なのか、憂太は俺の両手首を掴んだままでいる。
憂太の情欲と愛情が入り混じったような目がまっすぐ俺を見つめている。
「……俺も」
憂太の視線に耐えられなくなって、目を逸らして恐る恐る返事をした。
今、俺も同じような表情をしているのだろうか。
憂太とキスをするのは初めてじゃないのに、初めてキスをしたときよりも緊張する。
「こっち向いて?」
声がする方に顔を向けると、唇に少し弾力のある柔らかい感触がした。
「…っん」
唇に触れたのはほんの一瞬だった。
軽く、俺の様子を伺うようなキス。
憂太との2度目のキス。
それだけで胸がいっぱいなはずなのに、1度だけじゃ足りない。
「もう、いっかい…したい」
上手くキスしたいのに、息はいつすれば良いのか、口は閉じていて良いのかわからない。
ぎこちないキスになるのは分かっていても、憂太と何度もキスをしたくてたまらない。
「僕もしたい」
そう言って、憂太が俺の名前を何度も呼びながら啄むようなキスを繰り返す。
触れたと思ったら、あっという間に憂太の柔らかくて薄い唇が離れてしまう。
もっと憂太が欲しい。
物足りない。
「なあ、ゆう…た」
俺が憂太の名前を呼ぶと同時に、もう一度口を塞がれる。
さっきよりも長く唇を押し付けるようにキスをされたかと思うと、俺の閉じている唇を甘く噛まれた。
「湊。力抜いて、口、あけて?」
憂太に言われるがまま、キスをしながら口の力を抜くと今度は憂太の熱くうねるものが、口の中に入ってくる。
「んむ…っはぁ」
「(これ、やば…)」
憂太の舌が俺の上顎をざらりと撫でる。
初めての感覚にゾワッとした何かが背中に走り、身体がビクッと反応する。
「んんんーっ」
声にならない声をあげる。
「(俺からも…憂太にキス…したい)」
そう思うのに憂太が俺の両手首を掴んだままでいるから、自由に動けなくてもどかしい。
もっと、もっと、憂太に触れたい…と思った瞬間だった。
ーービシャ。
机の上に置いてあった缶酎ハイが倒れた。
まだ3分の2ほど残っていた酎ハイは机だけじゃなく、カーペットにもこぼれ、机からポタポタと酎ハイの中身が垂れている。
「あ……」
2人の声が重なる。
酎ハイが倒れた衝動で我に返ったのは、俺だけじゃなかった。
「やばっ。憂太、大丈夫?」
「ちょっとズボンにかかったけど大丈夫!湊は濡れてない?」
憂太は近くにあったティッシュを取って、俺の心配をしながら濡れたカーペットから液体を吸い取っている。
トントンと床を叩く音がする。
「んはは。何か、締まらねーな」
いい雰囲気をこんな形で壊してしまう自分たちの間抜けさに笑いが込み上がってくる。
「っふふ。ほんとだよね、あはは」
2人でこぼれた酎ハイを一生懸命拭きながら大笑いした。
「まあ、これも俺たちの思い出か」
「あはは。そうだね。これからも締まらない思い出は増えそう」
どんな失敗も憂太と居ればなんてことないように思える。
むしろ、思い出すたびに笑ってしまうような記憶になるだろう。
憂太と一緒にいると、すごく安心するのに、心がくすぐったくもなるから不思議だ。
改めて俺は憂太に惚れているんだなと思った。
「…うん」
さっきまでのふざけ合っていた雰囲気が、憂太の落ち着いた優しい声で一気に甘い雰囲気になった。
「みなと…」
胸の奥に響いてくるようなしっとりとした低い声で名前を呼ばれる。
「湊。キス、したい」
無意識なのか、憂太は俺の両手首を掴んだままでいる。
憂太の情欲と愛情が入り混じったような目がまっすぐ俺を見つめている。
「……俺も」
憂太の視線に耐えられなくなって、目を逸らして恐る恐る返事をした。
今、俺も同じような表情をしているのだろうか。
憂太とキスをするのは初めてじゃないのに、初めてキスをしたときよりも緊張する。
「こっち向いて?」
声がする方に顔を向けると、唇に少し弾力のある柔らかい感触がした。
「…っん」
唇に触れたのはほんの一瞬だった。
軽く、俺の様子を伺うようなキス。
憂太との2度目のキス。
それだけで胸がいっぱいなはずなのに、1度だけじゃ足りない。
「もう、いっかい…したい」
上手くキスしたいのに、息はいつすれば良いのか、口は閉じていて良いのかわからない。
ぎこちないキスになるのは分かっていても、憂太と何度もキスをしたくてたまらない。
「僕もしたい」
そう言って、憂太が俺の名前を何度も呼びながら啄むようなキスを繰り返す。
触れたと思ったら、あっという間に憂太の柔らかくて薄い唇が離れてしまう。
もっと憂太が欲しい。
物足りない。
「なあ、ゆう…た」
俺が憂太の名前を呼ぶと同時に、もう一度口を塞がれる。
さっきよりも長く唇を押し付けるようにキスをされたかと思うと、俺の閉じている唇を甘く噛まれた。
「湊。力抜いて、口、あけて?」
憂太に言われるがまま、キスをしながら口の力を抜くと今度は憂太の熱くうねるものが、口の中に入ってくる。
「んむ…っはぁ」
「(これ、やば…)」
憂太の舌が俺の上顎をざらりと撫でる。
初めての感覚にゾワッとした何かが背中に走り、身体がビクッと反応する。
「んんんーっ」
声にならない声をあげる。
「(俺からも…憂太にキス…したい)」
そう思うのに憂太が俺の両手首を掴んだままでいるから、自由に動けなくてもどかしい。
もっと、もっと、憂太に触れたい…と思った瞬間だった。
ーービシャ。
机の上に置いてあった缶酎ハイが倒れた。
まだ3分の2ほど残っていた酎ハイは机だけじゃなく、カーペットにもこぼれ、机からポタポタと酎ハイの中身が垂れている。
「あ……」
2人の声が重なる。
酎ハイが倒れた衝動で我に返ったのは、俺だけじゃなかった。
「やばっ。憂太、大丈夫?」
「ちょっとズボンにかかったけど大丈夫!湊は濡れてない?」
憂太は近くにあったティッシュを取って、俺の心配をしながら濡れたカーペットから液体を吸い取っている。
トントンと床を叩く音がする。
「んはは。何か、締まらねーな」
いい雰囲気をこんな形で壊してしまう自分たちの間抜けさに笑いが込み上がってくる。
「っふふ。ほんとだよね、あはは」
2人でこぼれた酎ハイを一生懸命拭きながら大笑いした。
「まあ、これも俺たちの思い出か」
「あはは。そうだね。これからも締まらない思い出は増えそう」
どんな失敗も憂太と居ればなんてことないように思える。
むしろ、思い出すたびに笑ってしまうような記憶になるだろう。
憂太と一緒にいると、すごく安心するのに、心がくすぐったくもなるから不思議だ。
改めて俺は憂太に惚れているんだなと思った。
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