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第53話 優しい想像力

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「んまあ、でも、憂太は俺が嘘ついてるってずっと前から分かってたわけじゃん。何で問い詰めたり、怒ったりしなかったんだよ」

これまで憂太と一緒に過ごしていて、一度も疑われているように感じたことがない。

不信感を抱くことはなかったのだろうか。

「うーん、僕も隠してたし、何か言いにくい理由があるのかなあって。だから、言っても良いなって思ってくれるまで待とうと思ってたから…かな」

全身の体温が一気に上がった気がした。

漫画やアニメだったら、キュンという音と共に、心が射抜かれた描写が描かれていたと思う。

俺は、こういう優しい想像力を持っている憂太が好きだ。

「そっか。ありがとな、憂太。…でも俺、隠す理由があった訳じゃなくて…」

「あ、そう…なんだ?」

憂太は隠し事がなくなって気持ちがすっきりしたのか、お茶を一口飲み、買ってきたお菓子を開けながら俺の話を聞こうとしている。

「う…ん。えーっと、ただ見栄を張ってただけ…です」

憂太の話を聞いた後に、こんな邪念の塊みたいな嘘の動機を披露しても良いのだろうか。

「あはは。待って、見栄張ってただけって」

誠実であろうとかっこつけずに言った結果、こんな風に爆笑されるなんて。

「もっと何か言いにくい理由があるのかと思ってたけど、逆に湊らしい…ね…っんふ…あはは」

口元を押さえて、笑いを堪えようとしているが、全く堪えられていない。

「俺らしいってなんだよ!どうやって話そうって、ずっと悩んでたのに笑うなよー」

憂太の首元を掴み、憂太の身体をグラグラと揺らす。

「待って、待って、ごめん。っはは。笑ってないって」

はあ、と一息ついて憂太が話を続けた。

「僕たち、ずっと隠しごとしてたんだね」

こんな偶然があるのかと、お互い顔を見合わせて頬を緩ませる。
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