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第34話 脈アリ?
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映画のエンドロールが流れ終わると、しだいに辺りが明るくなってくる。
憂太が照明の明るさにまだ目が慣れていない内に話しかけてきた。
「楽しかったね、湊」
さわやかに話しかけてくる姿を見て、手を繋ぎながら映画を観るなんて、本当の恋人みたいだと胸がバクバクしていたのはまた自分だけかよと思った。
「うん、映画、おもしろかったな」
白々しく返事をしながら立ち上がって、階段を降りる。
「うん、映画 も おもしろかったよね」
「そうだな、映画おもしろかったよな」
「……」
返事が返ってこない。
どうせ、憂太は相変わらずいたずらっ子のような顔をしているのだろうと思って振り返ったら、眉毛を下げ、不安そうな表情で立っている。
「湊、嫌だった?」
「え?」
「手、勝手に握ったままだったの。明るくなっても湊なんにも言ってこないから」
憂太の発言はいつものいたずら心から来るものだと思い込んでいたから、手を握った反応を直接探りにきていたことに驚いた。
「い、いや。…嫌じゃなかった。…どう握る…握り返して良いのかな…と思っただけで…」
焦って質問に対して変な回答になった。
それを聞いた憂太の不安そうな表情は、口元が緩んでにやけてしまうのを我慢しているような表情へころりと変わる。
「嫌じゃなかったか…んふふ~そっか、そっか」
安心したのか、満足そうにふんふんと頷きながら俺を追い抜かして2人分の飲み物やポップコーンのゴミを捨てにいった。
俺の反応に一喜一憂している憂太を見ると、本当の気持ちを打ち明けても恋心は成就するかもしれないと思えてくる。
それなのに、絶対にうまくいくという確信を持ちきれない。
理由はわかっている。
憂太の恋愛に関する話を聞いたことがないからだ。
キスをしてから憂太を意識してしまって、恋愛観を尋ねることをなんとなく避けていたのかもしれない。
どんな人がタイプなのか、別れても友達に戻れるタイプなのか、そもそも恋愛対象として男も含まれるのかと、考えれば考えるほど何も知らないことを実感する。
憂太が照明の明るさにまだ目が慣れていない内に話しかけてきた。
「楽しかったね、湊」
さわやかに話しかけてくる姿を見て、手を繋ぎながら映画を観るなんて、本当の恋人みたいだと胸がバクバクしていたのはまた自分だけかよと思った。
「うん、映画、おもしろかったな」
白々しく返事をしながら立ち上がって、階段を降りる。
「うん、映画 も おもしろかったよね」
「そうだな、映画おもしろかったよな」
「……」
返事が返ってこない。
どうせ、憂太は相変わらずいたずらっ子のような顔をしているのだろうと思って振り返ったら、眉毛を下げ、不安そうな表情で立っている。
「湊、嫌だった?」
「え?」
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憂太の発言はいつものいたずら心から来るものだと思い込んでいたから、手を握った反応を直接探りにきていたことに驚いた。
「い、いや。…嫌じゃなかった。…どう握る…握り返して良いのかな…と思っただけで…」
焦って質問に対して変な回答になった。
それを聞いた憂太の不安そうな表情は、口元が緩んでにやけてしまうのを我慢しているような表情へころりと変わる。
「嫌じゃなかったか…んふふ~そっか、そっか」
安心したのか、満足そうにふんふんと頷きながら俺を追い抜かして2人分の飲み物やポップコーンのゴミを捨てにいった。
俺の反応に一喜一憂している憂太を見ると、本当の気持ちを打ち明けても恋心は成就するかもしれないと思えてくる。
それなのに、絶対にうまくいくという確信を持ちきれない。
理由はわかっている。
憂太の恋愛に関する話を聞いたことがないからだ。
キスをしてから憂太を意識してしまって、恋愛観を尋ねることをなんとなく避けていたのかもしれない。
どんな人がタイプなのか、別れても友達に戻れるタイプなのか、そもそも恋愛対象として男も含まれるのかと、考えれば考えるほど何も知らないことを実感する。
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