【R18】鬼上司は今日も私に甘くない

白波瀬 綾音

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02.鬼上司と歪な関係

02.半期末の納会の後で

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「久野さん」
「んー?」

二次会は座敷の個室で、同期をはじめ、
中堅に片足を踏み入れてる人達が
20人以上集まった。

みんな泥酔一歩手前でうるさすぎて、
私に身体をくっつけて、顔を寄せる久野さん。
いっつも距離近くて、最初はびっくりしたけど
もう当たり前に感じる。

「さすがに人多すぎ」
「ね、3次会は2人で行こっか」

「またいちゃついてる!!」
「すーぐいちゃつく」

茶化してくる同期に、笑いかける久野さん。
正直めちゃくちゃエロい。

距離の詰め方とか、喋りが落ち着いてるとことか、
笑った時に綺麗に整った歯が見えるのとか。




欲求不満すぎて久野さんと2人で
抜け出してきてしまった……

近くのバーで終電まで飲むことにした。

「梨沙さんはさあ…最近好きな人でもできた?」
「え?」

「なんか最近変わったなあと思って…
 いい匂いするし」

私の髪に指を通して匂いを嗅ぐ。

「いや、逆と言うかなんというか」

私何言ってんだろ。


「じゃあ俺次の男に立候補しようかな」
そう言って私の手を取る。

「久野さん絶対沼だから嫌だ、
 やです…っぅ、やだってばっ」

ふわふわした頭のまま、
無理矢理キスされた感触だけが残る。

唇の動きで口をこじ開けられて
いきなり舌を入れられた。

「久野さん酔ってる…」
「自分は酔ってないみたいな言い方だな」


久野さんと2人で飲みにくるべきじゃなかった。
ただ距離が近い人だなあと思っていたけど、違った。

「今日はも、帰りましょ…」

「気が向いたらまた飲み行こ」

同じチームだから信用して、油断してたけど
この人、危険すぎる。



飲みすぎて具合が悪いと、
久野さんを先に帰るよう促して撒いた。

酔った私は正直だ。


「こんなとこに1人で居るなよ」

ちょっとした広場の座れるところに
座って待っていると、不機嫌そうに
乱れた髪をかき上げて私を見下ろす。

「久野と帰ったくせになんだよ今になって」

近くの店で他チームのトップと
飲み直していた高濱さんを呼び出した。

「飲みすぎて休んでたら終電逃して、
 だから高濱さんと帰ろっかなって」

私がそう言ってへへっと笑うと、
冷たい目で私を見てくる。

「俺がいたらタクシータダだもんな」
「私が酔ってるときだけ優しいですよね」

白けた目のまま腕を組んで溜息をつく。

「お前は危機管理能力が低すぎる、
 だから表に出せないんだ」

「すみません…」

すぐ怒る。まるで私の保護者みたいに。
私ってこんなにダメだっけ、というか、
こんなに怒られるタイプだったかな、
と自信がなくなる。高濱さんといると。

「ほら帰るぞ、立てるか」

差し出された手に手を重ねて立ち上がる。
高濱さんの大きな手、安心する。



大通りまで歩いてる間、何を話すか考えていると
先に高濱さんが口を開く。

「久野に何された」

「いや…その」

私が口籠もっていると、
ハァ、とまた大きな溜息をつかれる。

「嫌ならもう久野とは2人になるな、
 あいつは誰にでもするぞ」
「いや分かってますよ…」

私だって久野さんみたいな男に
ハマっちゃいけないことくらいわかるんですけど。
高濱さんは私を子供扱いしてる。
もう立派なアラサーなのに。


すぐタクシーを止めてくれて、
おぼつかない足で乗り込む。

家の方向が同じで、私は少し先に住んでいるのだが
いつも私を先に下ろしてから帰る。
本当は部長の立場の人にこんなこと、失礼だけど
高濱さんの優しさに甘えてるんだ、私。


「高濱さん私のことどう思ってるんですか」

「部下だよ、それ以上でもそれ以下でもない」

分かっちゃいたけどムッとした。
酔っててもそれは変わらないんだ。

「ただの部下に手出すんすね、最低」
「だから悪かったって」

半ば私から誘った形なので
一方的に怒るのは筋違いだが、それでも腹が立った。

「仕事でも女としても半人前なんですね私って…」
窓に頭をつけて外を眺める。

確かに高濱さんは社内で人気ないけど、
普通に見たらカッコいいし、頼り甲斐があるし、
仕事もできる。

女遊びもそれなりにしてきてるだろうし、
私なんてこれまでの相手に比べたら
大したことないのもわかる。

「俺は助かってる、梨沙がいてくれて」


高濱さんがいないと、私は半人前だ。
他のみんなと違って、1人じゃ何もできない。

1人じゃ利益を出せる仕事ができないから、
厳しいことを言われても、
私は甘やかされてるんだ。

出来る人に囲まれて、実力の無さを
まざまざと見せつけられてきたここ最近。
チームメイトがみんな敵に見える。

みんなに
高濱さん厳しくて大変だね
って言われるけど、
私はこの人に生かされてる。



うとうとしてる間に寝ていた。

頭を乗せていた肩が、
無言で私を跳ね返してきて目覚める。

「あっすみません」
「早く降りろ」

家に着くまで寝かせてくれたんだ。


歩道と逆側に座っていたので、失礼ながら
高濱さんを跨いでタクシーを降りる。
「狭い、降りてください」
「やだよ面倒臭い、降りれんだろ」

「高濱さん」

高濱さんの目線まで身を屈めて、
両頬を手で包み込んでキスする。

「おやすみなさい」

一瞬驚いたような顔をして、
何も言わずにドアを閉める。

私は走り去るタクシーにひらひら手を振った。



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