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02.鬼上司と歪な関係

01.嫉妬とかではないですけど

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事務所で高濱さんに抱かれてから
何事もなく1ヶ月が過ぎた。

あれは幻想だったのかと思うくらい何もなかった。
なんとなくわかっちゃいたけど
私、いいように使われてた?

そりゃ私だって、お互い周りにバラしても
デメリットしかない都合のいいセフレ見つけた、
と思ったけど、私は使い捨てだったってこと?
部下なのに????


「明日役員会があるからまた内容共有する、
 今回は大阪だから、俺が不在の間の緊急対応は
 武田さんと藍沢でよろしく」

ムカつきすぎてペンをへし折って
突き刺してやりたいくらいだ。




─────



高濱さんのいない事務所は、穏やかで、平和だ。

「みんな、今日はせっかくだし早くあがろう
 高濱さんは平気で残業させるけど、残業時間上限
 上回ると総務が本社に怒られるんだ」

次席で課長の武田さんは高濱さんと折が合わない。
基本的に温厚な人なのだが、たまに高濱さんと
言い合いになりそうな時があって見てられない。

「わーい今日嫁とデートなんです」

チーフの藍沢さんはいつもクールだけど
引くほどの愛妻家で、珍しくご機嫌そうにしてる。

この2人と久野さんと相良くんと私、全員で
今日こそは定時退社を決め込んだ。
みんなパタパタとpcを閉じて、後片付けを始める。

「何も予定ないのに定時で帰るのいつぶりだろ~」
久野さんもいつも難しい顔をしているのに
今日は心なしか気が抜けている。

「久野さん梨沙さん飲み行きましょ!」
相良くんがニコニコで私たちに話しかけてくる。

「なんでこんな早く帰れんのに
 相良くんと飲み行かなきゃいけないの」

「えええ」

今日は岩盤浴にでも行って、
精神統一しないと気が済まない。




──────


昨日は久しぶりにたくさん汗をかいて、
ビールを飲んで、好きなもの食べて、
一番いいストレス発散ができたと思う。


「高濱さん今日も二日酔いですか、
 飲み過ぎちゃだめですよ」

「もうほんと前より飲めなくなったな~
 もうアラフォーだし気をつけないとな」

「まだ早いですって~」


今日、今まさに、あれを見なければ。

事務所のフロアに着くと、
廊下の先に高濱さんと加藤さんが2人で歩いてる。

加藤さん、高濱さんに
ボディタッチなんかしちゃって…

別にあれに何の意味もないことは分かってる。

ただ、高濱さんのあの女性に対するスマイル、
腹が立って仕方ない。

どれだけ私が仕事を頑張っても
向けられることはないからなのか、
わからないけど、朝から信じられないくらい
嫌な気分になった。




「みんな今日は上期納会だから早く上がるぞ」
特別、イベントがあって早く帰れる日だけは、
こうして高濱さんがみんなに告知してくれる。

ああ、でも全然気乗りしない。
飲み会は好きだけど、
今日は高濱さんの顔見たくない。


徐に社用携帯の連絡先を開き、席を立つ。

「もしもし、瀬田さん、お久しぶりです
 今近くまで来てるんですが、
 事務所いらっしゃいますか?

 …今から伺っても?」

事務所にいたくなくて、
無理矢理アポを詰め込んで、定時を待った。








ぞろぞろと退店する社員に紛れて
退店しようとしていたところに
久野さんから肩をポンポンと叩かれる。

「梨沙さん、なんか最近元気ないね」
「あ、久野さん…」

本当は事業部の納会、楽しみにしてたんだけど、
高濱さんと同じテーブルなのが分かってたから
めちゃくちゃ気分が悪かった。

でも、今回参加して思ったのは、
もう7年目だし、毎年同じ。
しかもそれに加えて鬼上司と同じ卓なんて
何も面白くない。


「年近い人たちと二次会やるけど行かない?」
距離を詰めてきて、腕を掴まれる。

「何があったのか
 わかんないけど…飲んで忘れようよ」

「ちょっと久野さん」

相良くんが間に割って入ってくる。

「セクハラっすよ」

酔って顔が赤くなってる。
不機嫌そうな顔。

「何揉めてんだ、他所でやれ」
後ろから高濱さんの声がする。


「久野さん私も二次会行きます」

これ見よがしに久野さんと腕を組んで
グイグイ引っ張る。

「高濱さん、お先失礼します
 相良くんは若手の二次会あるでしょ、
 早く行きなよ」

久野さんはニコニコしながら振り返って
2人に手を上げて見せる。


「ちょっと今の馴れ馴れしすぎたかな、
 高濱さんイラっとしてないかな~」

頭に手をやって苦い顔をする。
私がチラッと目をやって逸らすと、
不思議そうな顔をする。


「高濱さんと何かあったの?」


ガヤガヤとした周囲の音に混ざって、
私にだけ聞こえるようなこえで聞く。

「えっ」

「なんか前より仲悪くなったような気がするなー
 と思って」

「…そうですかね」

「高濱さん、梨沙さんに話しかけすらしないじゃん
 …嫌いとかじゃないと思うけどね、大人だし」

「…いや、嫌いなんですよ、たぶん」

前に、本当に法人営業部に入りたいのか
しつこく聞かれたことがある。
前の部署の方が性に合ってるんじゃないかとか、
言われたっけな。

男社会にしゃしゃって出てくる
足手纏いと思われてるに違いない。
女の営業なんて、面倒臭いって。

私を一人前に育てるつもりなんて、
そんなにないって。

「…久野さん、今日終電になったら
 乗り遅れないように一緒帰りましょうね」

私が口角をにっと上げると引き攣った表情になる。

「ひぃ~アルハラはやめてよね~」


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