14 / 25
02.
05.忍び寄る悪魔
しおりを挟むあれから、石橋くんとは
すれ違っても挨拶すら交わしていない。
必ずスマホから目を離さない石橋くんに
私ももはや為す術なく、
現実を受け止めるしかなかった。
私には檜垣さんしか残っていない。
死ぬ時に、つまらない人生だったなと
振り返るんだろうな。
「そういえば隣の事業部に
ハイスペ入ってくるらしい!」
「まじ?」
トイレで一息ついているとうちの事業部の
事務の子が話しているのが聞こえてきた。
趣味は悪いがつい聞き耳を立てる。
「なんかあんまよくわかんないんだけど、
人事の鈴木さんに酔った勢いで聞いたんだけど、
うちの事業部の誰かの旦那らしいよ」
何だかものすごく嫌な予感がする。
ちなみに隣の事業部は再開発をやっている。
畑違いなので違うはずなのだが…
「え~既婚?つまんな」
「弥生地所のプロパー社員らしいよ」
「まじで?地所の人と結婚した人とかいたかなあ」
あーまずいまずいまずい最悪だ。
嘘だと言ってくれ。
「おかえり、遅かったね」
「あの…転職とかしてませんよね」
帰宅するなり、檜垣さんにおずおずと問いかける。
「あれ、もう聞いちゃったの?
サプライズにしようと思ってたのに」
最悪。
「緋莉のことが心配だから転職しちゃった……
悪い虫がつかないように
見張ってなきゃいけないからね?」
そう言って指先で私の頬を撫でる。
どうしてここまで私に執着するんだろう?
取るに足らない人間なのに。
───
「あの人じゃない?初めて見るもん」
「やばめっちゃイケメンなんですけど~」
「あ、でもうち来てたの見た事ある気がする」
「てことはうちの営業の誰か?嫁」
昼ごはんを食べている間も気が休まらない。
「どしたの緋莉」
「あっ、ううんなんも…」
仲介チームには同い年の営業が何人かいて、
たまに時間が合うと一緒にお昼に来るのだが、
同じフロアの社員が集まるスペースでは
檜垣さんが事務所から出てくるたびに少しざわつく。
今のところ、気配を消して、
向こうも声はかけてこないが、
この距離では時間の問題だ。
「弥生地所からきた檜垣さんだっけ、
あんま競合と関わりないからわかんないけど
緋莉のチームは絡みあるの」
「ああ、まあ…よく情報交換してたかな…」
「えそうなの?え、もしかして噂の嫁って、
まさか緋莉じゃないよね」
図星を突かれて目が合わせられない。
「え、嘘でしょ?あんた未婚でしょ?え?
いや待って嘘?え、今まで誰にも言わずに
隠してたってこと???」
同期の質問攻めに、もう隠し通せないと思い、
観念する。
「色々複雑だから、あんまり言いたくなかったんだ…」
「あーだから石橋くん気まずそうにしてたのか、
そうかそうか」
「石橋くん?」
「緋莉のこと好きだったの、だいぶ有名な話だけど」
そうだったんだ…
「石橋くんも悪くないけど、
あんなイケメンにとられちゃ病むよな~」
違うんだ、そうじゃないのに。
石橋くんはそんな些細な事で
潰れるような人じゃない。
「檜垣さんの嫁が私だって、周りに言わないでよね…」
「そんなん広まるの、時間の問題っしょ」
それに関しては、同期の言う通りなのだ。
檜垣さんがまさかうちに転職してくるとは、
本当に想定外だった。
石橋くんがトラウマを刺激されていないか心配だ。
別棟勤務なので、偶然を装って
様子を見に行くしか、会える機会がない。
「あれ、高瀬さんどうしたんですか」
「あ、うんちょっとね、製本テープ借りたくてさあ」
白々しく仲介の事務所に入るが、
石橋くんはモニターから目を離さない。
とてもじゃないが
自分から声を掛けにいけるような空気ではなかった。
私が悪いんだ。
込み上げる"悲しい"という感情を殺して、
事務所を後にした。
1
あなたにおすすめの小説
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ホストな彼と別れようとしたお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。
あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる