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02.
01.救いは無い
しおりを挟む石橋くんはメンタル不調で休職してしまったそうだ。
「ほら言ったでしょ、
あいつに緋莉は幸せにできないって」
後ろから私に手を回す。
「僕はずっと緋莉の側にいてあげるからね」
首筋に唇が触れる。
逃げられないという気持ちと、
どこかこんなに必要とされてうっすらと
嬉しいという感情が芽生え始めてくる。
石橋くんには、
何度かメッセージを送ってみたが連絡がつかず、
上司も休職中だし
極力連絡しないようにと言ってくる。
いなくなってしまった喪失感から、
私はまたこの家に戻ってきてしまった。
檜垣さんの手の上に手を重ねてみる。
「もっと緋莉が欲しいよ…」
これ以上何をすればいいんだろう。
「殺して一生自分のものにしますか?」
「……そんなことできないよ僕には」
そう言って、爽やかに笑う。
この男なら何でもできてしまいそうだ。
犯罪行為であっても。
私をベッドに倒す。
「檜垣さんは毎日私といて同じことやって
飽きないんですか」
「……それはもう緋莉は飽きてるってこと?」
檜垣さんが手をついて、膝をつくと
ベッドがギシッと音を立てる。
私の顔を覗き込む。
「私、檜垣さんに飽きられたら
何も残ってないなあって思ったんです」
思えば、檜垣さんに捕まってからの私は、
仕事とセックスしかしていなかった。
友達もそんなに多いわけではないし、
そこまで頻繁に集まるわけでもなかったので
本当に檜垣さんが私の生活の
ほぼ全てを支配していた。
「なんだそんなことか、飽きるわけないじゃないか。
そうだ、もう結婚しようか?
僕はいつでもいいけど」
私はその後、結婚の話を受諾した。
営業職で苗字が変わるとややこしいし、
石橋くんには知られたくなかったので、
職場でも人事とトップだけに報告して。
「私も石橋くんみたいな人と、
幸せになりたかったな~…」
「会わないうちに色々あったんだね…お疲れ」
職場の他に、一番仲がよかった大学の友達だけには
結婚報告をした。
弥生地所とうちの会社は関係性も良好な同業なので、
本来であればお互いの社員を招待して
式も挙げるべきだったんだろうけど、
檜垣さんもそんなつもりはなさそうだったし、
特に何もなく籍だけいれた。
「その後輩くんは結局まだ復帰してないの」
「理由は分からないままだけど
ほぼほぼ私のせいだろうし、
連絡したら思い出させちゃうかなって…
上司は連絡取ってて特に変わりないって聞いてる」
「なんか何で言えばいいか…胸糞すぎて」
「最低だよね、私も」
一つだけ引っかかることがあるとすれば、
石橋くんは何故休職するほど
病んでしまったのかということだ。
休職前の彼は確かに疲れが溜まってはいそうだった。
けれど、仕事は順調だったし、
何も問題は無さそうだったのに。
「高瀬さん石橋くんと連絡とってる?」
今日は女性社員が集まる飲み会だ。
事務も営業もいるので、
必然的に話は社内のことに偏る。
「いや、全然……
私も連絡したいのは山々なんですけどね……」
「石橋くん、なんか変な奴に
ずっと絡まれてたらしいよ」
事務の先輩の一言に思わず手が止まる。
知らなかった真実に近づいた気がして、耳を傾けた。
「なに、嫌がらせ?」
「どうも反社っぽいみたいな話聞いたけど…
営業いった不動産屋がそれだったとか」
「怖……」
……そんなことはないはずだ。
石橋くんはまだ歴も浅いので、リスク排除のため
よくわからない業者には
当たれないようにされているはず。
「誰がそれを?」
「誰が言い出したのかはわかんないけど、
一応ボスの耳には入れたよ、でも
それはないっていわれちゃった」
「プライベートでも
そんな問題ありそうには見えないしね……」
嫌な予感がする。
帰宅するなり、檜垣さんのいる部屋に向かう。
「石橋くんに何したんですか」
私の問いかけに、とぼけた顔をする檜垣さん。
「何急に、何もしてないよ」
「会社の人が、石橋くんが
反社か半グレか知らないですけど
粘着されてるって言ってました」
掴みかかる勢いで詰め寄ると鼻で笑われる。
「そんな噂話、信じるんだ?」
「火のないところに煙はたちませんよ」
突然休職なんてどう考えてもおかしい。
問題なくやっていたし、責任感もある。
目の前の男が何かしたのは明白だった。
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