【完結R18】エリートビジネスマンの裏の顔

シラハセ カヤ

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01.

02.誰にも見せない裏の顔

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ホテルのハンガーが1つ壊れていて、
上から檜垣さんのジャケットがかけられていたので、
私の上着には檜垣さんの香水の匂いが
微かに残っており、昨日のことを思い出す。

今まで気になっていた
好みのハイスペ男と寝るなんて、少し前の私には
信じられなかった。
急に首を絞められたのは怖かったけど、
思い出すだけで顔が熱くなる。

檜垣さんにとっては
大したことのない出来事なんだろうなと
分かってはいるが、考えるとなんだか
変な気持ちになる。

ああいう完璧な男が私なんか好きになるはずがない、
私がこうして気にしているのも檜垣さんにバレたら
きっと引かれるに違いない。


社外からの着信。
一人一人登録すると膨大なので、
普段懇意にしている役付きの業者さんしか
登録していない。
ズボラが祟って、出るまでまるで誰だか分からない。

「はい、高瀬です」
「檜垣です、お疲れ様」

わかりやすく、椅子から跳ねてしまう。

「僕の携帯、登録してないでしょ」
「お世話になってます…」
「人がいないとこに移動した方がいいと思うよ」
「…はい、どうされましたか」

自然体で席を離れ、事務所を出る。
ツインタワーの別棟を結ぶ渡り廊下は今の時間、
人通りが少ないが声がよく響くので
配達業者用のエレベーターホールまで来る。

「今日大丈夫だったかなあと思って」
「大丈夫じゃないです」
中に出されなかったことだけが救いだなと思う。
リスクヘッジだけは完璧だ。

「檜垣さん暇なんですか」
「何言ってるの営業の合間よ」
少しだけガヤガヤとした音と、コーヒーカップが
ソーサーに置かれる音がする。

「……何か用ですか」
嬉しいくせにそれを悟られるのが悔しいので
ぶっきらぼうに返事をする。
「…あのさあ、今日また会えないかな…と思って」

私に断る理由はなかった。





夜、また昨日とは違う店で、檜垣さんに
穴があきそうなほど真っ直ぐ見つめられながら
口を開く。
「勘違いしたくないんです、だからそういう
 なんかこう、私をただの同業他社の営業、
 っていう、そういう感じに
 接していただきたいというか」

「勘違い?嫌だなあ、
 それはこっちのセリフなんだけど」
どういう意味か分からないが、
いつも怖いくらい笑顔の檜垣さんが真顔で言う。

「…まあ僕は、高瀬さんみたいに、
 僕のこと好きにならなそうな
 聡明な人が好きなんですけどね」
牽制とも取れるような言い分で、
涼しい顔でジントニックを一口飲み進める。

好きになった人と一度も両思いになれたためしがない
私に、檜垣さんはハードルが高すぎる。
あれは一夜の過ちなんだと整理をつけるのが
一番楽だ。

「檜垣さんはー…好きな人とかいるんですか」
彼女がしばらくいないという話は聞いていた。
が、それを聞いて、はっきりさせたかった。

「え?高瀬さんだけど」
「そういうのはいいですから」
手の甲に、檜垣さんの唇が触れる。

「はっきり言われないと分からない?
 僕は……本気だけど?」

否、きっとこれは罠だ。
最近調子がいい私の会社のスパイ要員、
ようは美人局男女逆バージョンに違いない。
こんなハイスペ男が私のことを好きだなんて
信じられない。
うちの機密情報だけは絶対渡してたまるものか。



明日は土曜だが、また昨日のように流されて
身体を許してしまうのが怖くて、
酔う前に店を後にした。

「今日はうちに来ない?」
「だ、だからそういうことは」

乗り換え駅から私の最寄駅を結ぶ路線の改札まで、
檜垣さんはついてくる。

ついてこないで、というのもおかしい気がして、
何もつっこまずにいると
ついに私の最寄駅まで来てしまった。

タイミング悪く、檜垣さんの携帯に
電話がかかってきて、通話を始められてしまった。
うちに来てしまうんじゃないだろうか、
と思いながら、横目で檜垣さんをチラチラ見ながら
家までの道を歩く。

通話が終わってこちらを見た瞬間声を掛ける。
「……あの、檜垣さん」
「僕、最近引っ越したんだよねえ」

私の家の1区画手前の最近できたマンションの前で
足を止める。当社うちの物件。

「高瀬さんは……自分のとこの物件の契約者とか
 興味無いんだ?こんなに自宅から近いのに」

頭の整理が追いついていないが、
檜垣さんの様子がおかしいことは察知していた。

「ちょっと無防備すぎるんじゃないかな、
 僕が見ていてあげないとと思って、ね……?」

「え、なんで…」
急にそこでブラックアウトしてしまった。









目が覚めると、いつもより寝心地の良い
ベッドの上だった。
手首が手錠で繋がれていて、
上から檜垣さんが私を見下ろしている。

「……ああ、やっと気付いた」
「ひっ、檜垣さんなんですかこれ…っ」
「高瀬さんが逃げないようにだよ」

一瞬の出来事で何が起きたのか分からなかったが
気を失って家の中に連れ込まれてしまった。

服の下から檜垣さんの冷たい手が入ってくる。
「や、やだっ…やめて」

「そうやって嫌がられると、すっごい興奮する」
檜垣さんは心底嬉しそうに私の身体を弄る。
「やっと独り占めできて嬉しいよ……
 僕がどれだけ我慢してたか……分からせてあげる」


今まで憧れで、完璧で、
好きになりかけていた男が恐ろしい。

「今日は金曜日だし、土日たっぷり楽しもうね」
抵抗したら何をされるか分からない。
そんな気がした。



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