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しおりを挟む私は目覚めて驚いた。
こんな豪華な部屋も、服も私には記憶がない。
どうしてこんな所にいるのか、私は田舎で唯一の特技の機織りで父と生計を立てていたはずだ。
確かに、婚期を逃してはいたけれどそこそこそこそこ自分の好きなことをして生活していて満足していたはずである。
なのに、なんでこんな所にいるんだろう?
綺麗に飾られた部屋に家具、美しい寝台に綺麗な敷布、ふかふかの布団。
ここは私の部屋じゃない。
「ここは、いったい……」
私の微かな呟きに、人の気配がしてビクッと寝台で縮こまると、寝台の天蓋から垂れる布がサッと広げられて、綺麗な顔の男の人が私を見つめて安堵の表情を浮かべて近づいてくる。
「春麗、やっと目覚めたか……」
綺麗な知らない男の人は私の名前を知っているみたいだけれど、私はその人を知らない。
近づかれることが、怖くて私は寝台の中で端によって逃げる。
そんな私の様子に彼は驚いた顔をして、そして問いかける。
「春麗、なぜ逃げる? どうしたのだ?」
その問いに私は、小さく返した。
「あなたは、だれ? ここはどこなの?私の家に帰して……」
そんな私の言葉に、彼はハッとした表情の後に聞いてきた。
「ここがどこか、俺が誰か分からないのか?」
その言葉に、おずおずと頷いて返事をすると
彼はとっても悲しそうな顔をした後に、周囲に声をかけた。
「鈴香、春麗が目覚めた筆頭侍医をここへ」
「かしこまりまして、陛下」
そんな女の人とのやり取りのあと部屋を出ていく音がして、目の前の人が陛下と呼ばれる地位にある高位の方だと知り私は焦った。
こんな綺麗なところにいる、高位の方に私はなにか失礼をしていないかと……。
「春麗、自身の名は覚えているか?」
その言葉にも頷く、名前は覚えてるし、歳も覚えている。
でも、なぜ自分がここにいるのかは分からない。
「ここは王都の後宮、そなたは皇帝である私の六番目の側妃で、私の一番の寵姫だ」
いきなりガツンと頭を殴られたような衝撃的な内容に私は言った。
「嘘ですよね? しがない機織りしか出来ない田舎の小娘です。 女中として奉公に上がったなら理解できますが。側妃なんてありえない……」
私の言葉に、グッと息を飲みつつ陛下は言った。
「信じられないのも分かるが、それが事実だ。もうすぐ筆頭侍医が来るから。まず、診てもらおう。そなたは至近距離で長弓で撃たれて、高熱を出し三日寝込んでいたのだから……」
その言葉に驚きつつ、自身の左肩が動かないことと痛みにようやく気づく。
これは暫く起き上がることも自力では困難そうな体の状態に、私は内心でため息をついたのだった。
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