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しおりを挟むそうして、陛下が去ると女官長の嬋娟様が工場にいらっしゃった。
「嬋娟様、なにか仕事でしょうか?」
私は機織りの手を止めて、嬋娟様に声をかける。
「春麗、ここに陛下はいらしたかしら?」
その問いに私は正直に答えた。
「はい、先程までお越しでした。 大祭の準備からお逃げだとおっしゃるので、私が生地を仕立てたことと、お針子女中を困らせないでくださいとお話したら、御準備に向かってくださいました」
そう、頭を下げて話せば嬋娟様はにこやかなお声で顔を上げるようにいう。
その声に答えて顔を上げると、清々しいお顔の嬋娟様が私に良くやったというような労いの目を向けて言った。
「春麗、助かりました。今日仮止めの調整が出来ないと、いくら精鋭のお針子たちでも大祭に間に合うか怪しかったのです。 春麗は良くやってくれて助かりますよ。 今後もお願いね」
そう言うと、嬋娟様は颯爽と工場をあとにされた。
「うーん、そこまで凄くはないと思うけど。機織り以外でもお約に立ててるなら良いか」
こうして私は深く考えずに、また手元の作業に没頭していく。
今の織物は側妃さまに献上するもの。
美しい紅の絹織物には波形を付けて光沢感を出す。
うちの村オリジナルの織りで、代々村の人々で受け継いできた。
これを所望する側妃さまは多い。
今日もせっせと私は機織りを進めるのだった。
まさか、陛下とその周辺では私の扱いについて
まことしやかに色々動きはじめていることには私はまったく気づいていなかったのだった。
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