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しおりを挟むその日、父である楊から声をかけられた。
「春麗、話がある。こっちに来てくれ」
それを聞いて機織りをしていた私はその手を止めて、父を振り仰ぎ聞いた。
「それ、ここで聞けないの?」
そんな返事に、父は真剣な表情で言った。
「あぁ。大事な話だからな。母さんにも聞いて欲しくて……」
そういう父の顔は母の祭壇に向いている。
私は大人しく、父に従いそのあとについて母屋の方に行った。
「春麗、お前には来月から奉公に出てもらおうと思う」
そんな父の言葉に私は戸惑いを隠せない。
「なんでいきなりそんな話になるの?」
私の言葉に、父は言った。
「母の柳蓮が亡くなって二年。すっかりお前に頼ってしまったがために、お前すっかりいい歳になってしまったじゃないか」
その言葉には、確かにと思う。
私は村娘ならとっくに結婚して子どもがいてもおかしくない年齢になっていた。
「だからな、父さん取引先の伝を頼って奉公先を見つけたからそこで良い出会いを探しなさい」
実に、あっさりと父はそう言った。
「いや、父さん。この工場はどうするつもり?」
そう聞けば、父はあっさり答える。
「お前の幼なじみの慈雨が昼間は手伝いに来てくれることになってる」
なんと、既にもろもろ手配済みとは。
普段の父には無い行動力に驚いていると、申し訳なさそうに父は言った。
「春麗に頼ってるうちに、村にはお前に見合う年頃の子がいなくなってしまった。父さんの失態だ。だからこれが俺にしてやれる精一杯だよ」
そう、苦笑いする父に嫌とは言えず。
私は、父が話を貰ってきた都の奉公先に行くことを決めた。
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