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秋 文化祭
しおりを挟む体育祭を無事に終了後は日常へと戻り、十月の半ばには恒例スパルタテスト期間を終えた。
現在は十月の後半。
学内はお祭りの雰囲気で明るく、元気で賑やかになっている。
現在週末の文化祭に向けて準備期間に入り、どのクラスメイトも楽しそうに準備をしている。
高校生活最後の文化祭だ。
私も楽しく参加したいと意気込んでいた。
私たちのクラスは和風喫茶としてお茶とお菓子を出すことにした。
各々浴衣を持っている事を確認したので、浴衣に長めのカフェエプロンを着ければ可愛いじゃないかという話になって。
私も引退したので、元家庭科部であるが。
現在私は切っては縫う作業を繰り返している。
女子には焦げ茶、男子には濃紺の色でカフェエプロンを作っている。
四角い布を端処理して腰紐を付けるだけの簡単作業ではあるのだが、なにせ枚数が多い。
みんな記念に持ち帰りたいからと言うので、このエプロンがクラスTシャツ変わりらしい。
そんな事を言われたら、きちんと使えるクオリティで仕上げたいのが趣味とはいえ手芸好きの本能。
現在布の塊とミシンを家庭科室から借りて、私は教室の片隅を占領していた。
とにかくまず、パーツ事に必要枚数を裁断する作業だ。
広いスペースを陣取って、ぱっぱと長さをチャコペンで線を引きカット。
カットしたものを今度はひたすら端処理にロックミシンのペダルを踏みまくり、ひたすらミシン。
その後形を作り、何もないのも悲しいのでポケットまで付けて完成させた。
更にポケットにはクラスと和風喫茶の文字を布用ペンで書き込んだ。
これでクラスTシャツにも負けない存在感を出せるだろう。
ひとり完成したのに納得していると、ヒョイっと顔を出してきた日菜子に驚く。
「日菜子。急に出てくるとビックリするよ!」
思わずキツめになる口調だが、そんな私には構わず手元の完成したエプロンを見て言った。
「さすが、有紗! これ、すごいキレイだよ!」
日菜子のその声にクラスメイト数人が手を止めてこちらに来る。
「わぁ! 汐月さんこれすごいね!」
「使いやすそう!」
「シンプルだからこそ綺麗に仕上げてくれたのがわかるね」
そんな声に、少し首をすくめて私は返した。
「その言葉でちょっと安心したよ。喜んでもらえてよかった」
ニッコリ、言うとみんなも笑って返してくれる。
「いやいや、このクオリティ売り物にできるよね!」
「これ、このまま持ち帰りOKなんだよね?」
そんな問いかけに、うなずいて答える。
「クラスの人数分作っているから持ち帰り大丈夫だよ」
私の返事に、みんな嬉しそうな笑顔で試しにつけてくれている子もいる。
賑やかな、お祭りの準備前のワクワクした感じ。
一昨年も去年も感じたけれど、やっぱり今年は一番気合が入っている気がする。
周りも、私も……。
みんなの笑顔にほっこりしながら、クラスと和風喫茶の文字を書いていく。
部屋の装飾や、メニュー表など続々と完成していく。そこに隣でお化け屋敷準備中の茜が来た。
白のワンピースに、血糊と包帯巻いた姿は明るい中で見るとシュール。
「おお、小山! いきなり背後にいると明るい中でもビビるわ!」
驚いた男子がそんな文句を言うと、茜はその血糊に似合わない明るい顔で笑いながら謝っている。
「ごめーん! 試着中だけどちょっと野暮用出来たのよ!」
そう言いながら茜が私の前にやってくる。
「おつかれ! 有紗、ちょっとお願いがあるんだけど」
茜がお願いとは珍しい。
「なに? あんまり大変そうなのはやめてよ?」
軽く笑いながら返すと、茜は手に下げていた袋から出したものを見せてきた。
「有紗、これなんとか出来ない?」
出されたのは少し汚れたぬいぐるみ。
「治すの?」
「いや、どちらかというと壊すの……」
なるほど。
お化け屋敷の装飾として使うのかな?
「それなら、壊さないように傷ついている風にしようか」
そう私が言うと、茜がパッと顔を上げて私を見て言う。
「そういうの、出来るの?」
「ちょっと刺繍を入れて、破かないで綿をくっつけて飛び出している風を装えば良いかなと思ったから」
私の言葉に茜がホッとため息をついて、返事をした。
「そんな感じでお願いしていい?」
「もちろん、大丈夫よ」
答えて私は自身の裁縫道具から、針と刺繍糸を出して準備する。
私は覚えていた。
この少し汚れてしまったクマは、茜の小さな頃の大事な相棒だった。
可愛らしい茜が抱っこして離さなかったクマ。
「これが終わったら、綺麗にしてしっかりメンテナンスしてあげるからね」
クマに語りかけるようにしつつ、茜に告げる。
茜は驚きつつも嬉しそうに笑った。
クマのお腹に縫い跡の刺繍と、その傍にフェルトニードル使い小さく切ったフェルトの上に綿で形を作ると飛び出 したと見えるように少し端を縫うことでくっ付けた。
見た目少し痛いクマさんの完成だ。
所要時間二十分の早業に、少し離れて戻って来た日菜子が驚いている。
「え? もうクマのアレンジ終わったの!?」
「うん、ほら有紗がやってくれたの! これならお化け屋敷に飾られていて問題なさそうでしょ?」
「うん! なかなかいい雰囲気出しそうだよ!」
ふたりのテンションの高さに、蒼くんと要くんも見に来てクマのアレンジに少し驚いていた。
「有紗ちゃんは本当に器用だね!」
「有紗のおかげで、カフェもいい感じになりそうだしな」
そんなふたりの言葉に私は、そうでもないと思うけどなと首をかしげてしまう。
「本人には、貢献している自覚が無いみたいだよ」
クスクスと笑う蒼くん。
要くんは少し呆れ顔。
「クラスの人数分のカフェエプロン作っているんだからダントツの貢献だろう?それに、メニュー表の案も採用されているし」
提案と言っても和風喫茶だから、メニュー表には和柄が入るように和紙を使ってみたら? くらいの提案だった。
それも貢献なの?
不思議そうな顔をしていたのだろう。
私を見て日菜子と蒼くんと要くんが仕方ないなって顔をしている。
「無自覚に、色々しちゃうのが有紗だからね」
そんな三人に、茜が言うと三人はとっても納得した顔をしてうなずいた。
「それ昔からか?」
「そう、昔からよ」
茜と要くんがそんな確認をしている。
だから、私はそんなだったかな? と自分の過去を振り返りつつ首をかしげてしまう。
「本当に、無自覚だから良いのよねぇ」
「そこがほっこりさせられちゃうところだよね」
日菜子と蒼くんまで言っている。
「有紗は無自覚の世話焼きなのよ。しかも押し付けがましくないし、ほんわかしていて無自覚に行動するから受ける相手も嫌にならないのよ」
茜に言われて、そんな自覚はなかったのでびっくりした。
「先生に頼まれた一学期の中間だけでなく、その後は期末、二学期中間と毎回テスト対策ノート作ってくれているし」
「部活で忙しいと言えば、なにかしらの差し入れ持ってきてくれて。しかもそれが大体私の好物だし!」
「俺は英語だけ苦手だけど結局全教科まとめノート作ってくれているよな?」
三人に言われると確かにそんな感じだけれど。
「お節介過ぎた?」
「いや、すごく助かっている。むしろ今後もお願いしたいくらい」
揃っての返事に聞いていた茜は、クスクス笑い出した。
「末っ子のはずなのに、この面倒みの良さはなんでだろうね?」
そんな茜の言葉に三人は顔を見合わせつつ、蒼くんが言った。
「もう、有紗ちゃんは天性の世話焼きなんだと思う」
蒼くんのこの、最後の一言にはずっと聞いていたクラスメイト達も大いにうなずいていた。
そんなことないと思うんだけれどな。
ぼんやりと思っていたのだけれど、そんな私をクラスのみんなと日菜子達はニコニコと微笑ましげに見ているのだった。
こうして、和やかに準備しつつ迎えた金曜日。
今日はプレ文化祭で、校内の生徒のみで楽しむ日だ。
私はクラスの和風喫茶と、家庭科部の両方に顔を出すから意外と忙しくバタバタしている。
「当番交代ね! なにかあったら電話して! クラスの方にいるから」
そう告げて家庭科部の販売スペースから慌ただしく移動する。
四階の家庭科室から三階の三年生の教室の並ぶフロアへ移動すべく階段を降りていた矢先、私はクラっと一瞬歪んだ視界から足を踏み外して階段の真ん中辺りから落ちていく。
まずいと思って腕を手すりに伸ばすも届かない。
身体が反転して背中から落ちていく。
「有紗!!」
私を呼ぶ声がして、ドン! とぶつかった先は床ではなかった。
「っって、大丈夫か! どっか打ってないか?!」
私がぶつかった先、それは要くんだった。
なんでここに居るの? そう思いつつも、ビックリして固まってしまう。
「有紗! 有紗! どっか痛いのか?! 保健室か!」
そう言うなり今度は抱きかかえられそうになり、慌てて声を出した。
「ごめん、大丈夫! ビックリしすぎていただけで、痛い所はないよ。それより、私がぶつかっちゃった要くんは大丈夫?」
勢い込んで聞いてきた私に、大きく息を吐いて要くんがギューって抱きしめてくる。
「もうすぐ喫茶店の方の当番だから、迎えに行こうと向かっていたら階段から有紗が落ちてくるところで。本当にび っくりした……」
私を抱きしめるその手は、微かに震えていた。
「間に合ってよかった。有紗、今日これからは一緒に行動するから!」
その言葉には強い意志と力があって、私はうなずいて答えるしかなかった。
クラスに着くと、休憩に入る子達と店番を交代する。
着替えるのも面倒で今日は既に浴衣を着ていて、その姿で家庭科部の店番もしていた。
なので、ここに来て身につけるのは自分で作ったカフェエプロンだけ。
それを身につけると、私は控えのスペースから店のスペースへと移動して接客を始めた。
「いらっしゃいませ。和風喫茶へようこそ。お客様は二名様でよろしいですか?」
「はい、ふたりです」
「ただいまご案内します」
空いている席へと案内して、メニューを置いてご案内。
「こちらが当店のメニューになります。お好きなお菓子と飲み物をお選びください。決まりましたらお声をかけてくだい」
席を離れて、オーダーの準備スペースへ。
仕入れた和菓子と飲み物をカップに入れて、準備ができると和柄のマットと共に持っていきそのマットの上に注文の品を乗せて提供する。
そのマットも和柄の布を四角に縫うだけなので、エプロンの後に私が縫った。
飾りとしてあると、やっぱり雰囲気が良いので作って良かったと提供の様子を見つつニコニコしていた。
そんな私に日菜子が近づいてきて、聞いてくる。
「有紗! 階段から落ちたって聞いたけど大丈夫なの?! 店番なんかなんとでもなるから無理せず休みなさいよ!」
強めの剣幕に一歩後ろに下がりつつ、日菜子に返事をする。
「要くんが迎えに来てくれていたところで、運良く受け止めてもらったから怪我もないし大丈夫なの。そんな心配しなくて平気だよ」
私がしっかりと受け答えするから、心配そうな顔は変わらないけれど仕方なさそうに一息つくと、日菜子は言った。
「大丈夫なのね? でも無理しないでダメだったら保健室に行くのよ!」
「うん、無理はしないから。大丈夫だからとりあえずこの、オーダーの品届けてくるね」
当番の時間は二時間。
大盛況で常に席が埋まる人気ぶりに驚きつつ、店番をこなした。
そうして、店番の交代の時間になりエプロンを外すと同じくエプロンを外した日菜子と蒼くん、要くんが声を掛けてきた。
「有紗! もう家庭科部の店番も無いんでしょう? 一緒に校内回ろう!」
明るく元気いっぱいな日菜子に笑いながら返事を返す。
「うん、一緒に回ろう! まずどこ行くの?」
聞いてみれば、日菜子はニヤっと笑って言った。
「もちろん、茜のクラスのお化け屋敷でしょ!」
そんな訳で、私達はまず隣のクラスの茜が居るお化け屋敷へと行くことにした。
たまに悲鳴が聞こえてきていて、どうなっているのか気にはなっていたんだよね。
怖いもの見たさ的な?
すれ違うお化け屋敷から出てきた下級生たちの声が聞こえてくる。
「ヤバイ、なんなの。なんでこんなに怖いの!」
と言い合っていて、私達は顔を見合わせつつお化け屋敷に辿り着いて中に入ったのだった。
茜のクラスのお化け屋敷……。
誰だ、高校の文化祭にあんな高クオリティにしちゃった輩は!!
とだけ言っておこう……。
終始私は要くんの腕にしがみつき、キャーどころかギャーギャー言って叫び続けた。
ホラーが苦手な人が入っちゃダメなやつだった……。
高校生の文化祭のお化け屋敷でしょ? なんて思っていたのは間違っていた。
出てきた時には私も日菜子も叫び疲れていた。
それをなんと出口で待ち構えていた茜に再び叫ばされた。
「わー! ちょっとビックリさせないで!!」
そんなビクビクの私を見て茜はクスクス笑っている。
この友人は楽しいことに目がないのだ。
「あー、かー、ねー!!」
「ふふふ、よくホラー嫌いな有紗が入ったね! はい、これ割引券! 美味しかったから食べに行っておいで」
茜がくれたのは二年生がやっているクレープ屋さんの割引券。
「いいの?」
「私もう終わりまで当番で抜けられないからね! 行ってきなよ」
怖い思いをしたけれど、いい事もあるものだ。
「わ! クレープ屋さんのとこか! このあと行こうと思っていたからラッキー」
私の手元を見て日菜子も喜ぶ声を上げる。
「じゃあ、クレープ屋さんに行きますか!」
お化け屋敷を無事切り抜けた私達は、次は食事系の出し物が並ぶ中庭を目指して校舎を出るべく一階へと移動して行った。
もちろん、落ちた前科のある私はしっかり要くんと手を繋いでいた。
今回は手を引かれて無事に階段を降りた。
歩いている間、いろんな人に見られたけれど。
今日は馬の被り物とか、着ぐるみとか演劇をするクラスもあるから普段と違って様々な服装で入り乱れているので浴衣が目立つわけでは無い。
つまり、この手を繋いで歩いている相手が目立つわけだ。
要くんは、引退したけれどサッカー部のエースストライカー。
しかも、見た目も涼やかなタイプのイケメン。
そんな彼が浴衣で女子と手を繋いで歩けば……。
それは目立つよね! 注目浴びるよね!
なんでこんな簡単なことに気づけなかったの私!!
無事に階段も降りたので私は手を抜こうと動かそうとしたら、要くんが私を見つめて聞いてきた。
「どうした? 手を繋ぐのは嫌?」
その視線は、真っ直ぐでなにかあるわけではなさそうだけれど……。
色々言われている私は、最近なにかあるとすぐにドキドキしちゃうし、それが顔に出やしないかとヒヤヒヤもする。
「なんか、手を繋いでいると周りの視線が……」
徐々に小さくなる声、それでも要くんはしっかり聞いてくれたみたいで返事がくる。
「目立つ訳でもないだろ? 俺たちの前のリア充ふたりの方が目立っているからな」
その言葉に顔を上げて前を見れば、日菜子と蒼くんがいつも通り仲良くしている。
その二人を見て、周りの声を聞いてみる。
「水木先輩と瀬名先輩は相変わらず仲良しで羨ましいね!」
そんな声だ。
その声にホッと一息つくと、そんな私を見て要くんが柔らかく笑う。
「そんなに周りを気にするなよ。俺たちも多少は言われるだろうけど。有紗にとっては、逆に他の男に寄られなくなるからいいんじゃないか?」
そんな言葉を聞いて、確かにと思う。
毎年この時期は手紙やら呼び出しやらでそんな告白を受けたりしていて。
毎回断るのが大変だった。
気持ちはありがたいけれど、私は恋をしたくなかった。
だって、私には無理だもの……。
気持ちが少し沈んだのを見てとったのか、要くんが繋いでいた手を優しく引く。
「これだけ仲良くしていたら、今年は大丈夫だろ。ほら、クレープ食べるんだろ?」
会話していた私達は足を止めていたので、先にクレープ屋に着いていた日菜子と蒼くんにも呼ばれてしまった。
「有紗! 要! 早く、頼んで食べよう!!」
「はーい、今行く!」
そうして、私達はクレープ屋さんで、チョコバナナ生クリームとカスタードイチゴ生クリームを頼んだ。
「すごく甘い!」
日菜子のチョコバナナ生クリームを食べた蒼くんは、そんな感想を言う。
私もカスタードイチゴ生クリームというのを要くんに一口あげる。
「甘いな」
どうやら男子ふたりには甘過ぎたらしい。
美味しいけどな。
「蒼、フランクと焼きそば食べないか?」
「いいね! 俺もそれ食べたい」
そんな会話をしてふたりは食べ物系の出店へと買いに行った。
ふたりが買いに行っている間、私と日菜子は中庭の片隅に移動して買ったクレープを食べながら待っていたら、下級生の集団に声をかけられた。
「瀬名先輩、汐月先輩! おふたり良かったら俺らと回りませんか?」
そんな誘いを掛けてくる、下級生たちはなんだか軽そうな感じの子達。
私と日菜子は目を合わせてうなずくと、日菜子が口を開いた。
「いや、連れがいるし。君らとは回らないよ。今、私ら食べているからここから動かないし、連れ待ちだよ?」
サラッと誘いを断る日菜子に、下級生達はそれでもにこやかに食いつてくる。
「え? だって先輩方今ふたりでしょ? いいじゃないですか!俺らと遊びましょうよ」
なかなか諦めの悪い子達だ。
どうしたものかと思いつつ私からも断ろうと口を開きかけた時、下級生達の後ろに蒼くんと要くんが見えた。
ホッと息を吐き出した時、蒼くんが彼らのうちのひとりの肩に手を置いて口を開いた。
「悪いね。そこの子達俺らの彼女なのよ? だから、おとといきやがれ?」
口調も去ることながら、その笑顔で冷気を漂わせているのがすごくて。
男の子達は一歩引きつつ、返事をした。
「あ、先輩方……。すんませんでした!!」
蒼くんと要くんが来たらあっさり去っていったのでホッとした。
「全く。油断も隙もないな」
その声は少し呆れている。
「有紗、大丈夫だったか?」
さっきまでは睨むような視線を向けていた要くんも、今は気遣うように優しい顔をしている。
「日菜子が断ってくれていたんだけど、引いてくれなくて困っていたの。ふたりが戻ってきてくれて良かったよ」
私がニッコリ笑って言えば、ふたりも笑ってホッとしたような顔をした。
「まったく、私が蒼と付き合っているのはかなり有名だと思うのに」
ため息つきつつ、日菜子が言うのを蒼くんと要くんも聞いて苦笑いだ。
「それに、有紗はいま要がアプローチ中で離さないってのも噂になっているのにね。チャレンジャーな下級生達だったわ」
実にサラッと言われたが、私はとある所を聞いて目を丸くしてしまう。
なにか今すごいこと言っていたような……。
「要くんが誰にアプローチ中なのが噂になっているの?」
私の問いに、日菜子と蒼くんがいい笑顔で答えてくれた。
「もちろん。要が、有紗に、アプローチ中なのは三年生の間では共通認識よ」
「下級生にもだいぶ噂はまわっているはずなんだけどな」
ねー! なんて顔を見合わせつつ仲良く言うカップルのふたりに、私は口ポカーンの間抜けな顔になってしまう。
そんな私にトドメのように要くんは言った。
「まぁ、俺も好意は隠してないし。アプローチしているし、外野から狙ってくる奴には牽制もしている」
そんなの、気づいてなかったよ!?
驚く私の顔を見て、三人はそれぞれに笑いながらも日菜子が一言で締めくくった。
「有紗はその辺鈍いから、気づかなくても仕方ないね! でもそろそろ要が不憫だから気にかけてやってよ」
こうして、少しの波乱を起こしつつプレ文化祭を過ごしたのだった。
翌日、土曜日。
今日が文化祭本番。一般公開日だ。
近隣の他校の生徒や受験を控えた中学生、さらにはご近所の方々に保護者など様々な人が来る我が校の文化祭。
十五時で一般公開が終わると軽く片付けたあとに生徒達の後夜祭だ。
大きなベニヤ板やら紙くずらやでキャンプファイヤー状態になる。
その周りでミス、ミスターコンテストの結果発表がある。
ちなみに登録は自選、他薦問わず。
エントリーは三年生のみ。
投票は全学年の生徒となっており、紙が配られ投票は各学年の廊下やメインステージたる、体育館などに箱が置かれている。
私は関係ないと思っていたら、気づけば他薦でエントリーされていて唖然とした。
辞退を申し入れたがコンテスト運営の二年生以下の下級生たちに他薦多数なので、お願いします!! とかなりの 勢いで頭を下げられてしまい諦めた。
日菜子もエントリーしているし、蒼くん、要くんもエントリーしている。
他には男子なら軽音楽部のボーカルの男子。
女子だと前生徒会副会長さんなどがエントリーされている。
どの人達も目立つ人気者なイケメン、美人達なので私は大丈夫だろうとこっそり胸をなでおろしていた。
私は目立つタイプではないし、問題ないよねと今日は一般公開もあり忙しく立ち回っていた。
そして、自分の票は日菜子と蒼くんでこっそり投票しておいたのでそれで満足していたのがいけなかった。
お昼すぎ、休憩の為に控え室でお昼を食べていた私たち四人の元へ茜が駆け込んできた!
「みんな! 見た?!」
その問いがなんなのか分からず首をかしげる私たちに、茜がニッコリ笑って爆弾投下してくれた。
「ミス、ミスターコンテストの中間結果! ダントツで有紗と要くんが首位独走だよ!」
その言葉に食べていたご飯でむせて咳き込む私の背中を、隣にいた要くんが撫でてくれる。
「はぁ!? なんで私と要くん? 知名度的には日菜子と蒼くんだと思っていたのに!!」
私の叫びに、日菜子、茜、蒼くんがニヤニヤとした顔をしているので私はジトっと目で睨んで返せば蒼くんが言った。
「俺、サッカー部の面々に要が頑張っているから、有紗ちゃんとの後押しよろしく! て頼んでいたんだよな」
ドヤと胸を張って言う蒼くん、私の顔はピキピキと音を立てるごとく険しくなっていく。
「あ、私もね。テニス部の面々にうちの有紗と要をよろしくしておいたのよね」
「もちろん、家庭科部も」
日菜子と茜もサラリと言う。
まさか、身内が部活権力を駆使して票集めしているなんて……。予想外にも程がある。
私はブチッと何かのキレる音とともに、静かに一言口を開いた。
「日菜子、茜、蒼くん? ふ、ざ、け、る、な?」
その時私の顔を見た四人は、いつにない私の本気の怒りに顔色を一気に悪くした。
「私が目立つのが嫌いなのは知っているはずよね? 嫌がるのを分かっているのに。むしろ辞退する気だったのを断念したのも知っているくせに、どうしてそんなことをしたの?」
私の静かなままの一言一言に、四人は顔を見合わせてから要くんが口を開く。
「有紗、ごめん。俺知っていたけど止めなかった。ちょっと憧れていたんだよ。好きな子とこういうイベントで並べたら、良い思い出になると思っていたから……」
反省と、気恥しさがあるのだろう。
要くんは視線を下向きにしつつ言った。
「こんなこと言うと普段の俺とはかけ離れているだろ? だから都合良く周りに流されていた。有紗に嫌な思いさせるってところに考えが至らなかった。本当にごめん……」
普段はしっかり者で落ち着いている要くんも、年相応の男の子だったんだとこんな状況でやっと気づいた。
私との思い出だと思ってくれたこと。
じわりと怒りが溶けて胸が温かくなってくる。
「これ以上は広めないで。とりあえず参加しちゃっているものは仕方ないから、出た結果はちゃんと受け止めるから」
ため息混じりに返事をすれば、四人はホッと一息ついて肩の力を抜いた。
「普段怒らない有紗を怒らせちゃったね。本当にごめんなさい」
日菜子と蒼くん、茜も謝ってくれて。
とりあえずこの件はもう言わないことにした。
楽しいはずの文化祭、嫌な気持ちで過ごしたくないからね。
私は少し家庭科部を覗いたあとは、午後は自由時間になっていたのでいつものメンバー四人で校内を回っていた。
午後はメインステージの体育館で軽音楽部のライブがある。
今年はミスターコンテスト出場者がボーカルのバンドがあるので、体育館は人がいっぱいだった。
「ハルト!!」
ワーッと歓声があがり、バンドが登場した。
制服を着崩し、ちょっと軽い感じのメンバーが並ぶとボーカルとギターの子が掛け合いながらバンド紹介を始めた。
体育館の中のテンションがどんどん上がっていく。
そうして演奏が始まれば会場の空気が一気に湧いた。
コピーしている演奏だけれど、どのメンバーの演奏も上手く、ボーカルの声は力強くよく伸びる、耳に心地よい歌声。
聴かせてくる、バラードから一気にアップテンポのノリのいいナンバー。
どれも演奏して歌っているメンバーが楽しそうで、惹き込まれた。
「実は最後の曲はある人とセッションしたいんだ。人気の曲だからいきなり振っても受けてさえくれれば大丈夫だと思うんだよね」
そんな言葉を発した後、チラリと目線がこちらに向いて目が合うとニコッと笑って言った。
「ね、学園のマドンナ! 汐月有紗さん! ぜひ、ステージに上がってよ!」
なんで?!
驚いていると、このグループの前に演奏していた子が私を迎えに来る。
「先輩、お願いします。俺らは放課後の歌姫のファンなんですよ」
そんな、意味深なことを言う。
「放課後の歌姫?」
私の疑問に、彼は笑いながら言った。
「ごく稀に、放課後の音楽室でピアノに合わせて歌っている人の歌声を、近い視聴覚室で活動している僕らは聴いていたんですよ」
その言葉に驚いた。
私は彼の顔をマジマジと見返す。
「ある日、どうしても気になって音楽室を覗いたらピアノを弾いているのは保健室の田中先生で、歌っているのは先輩でした」
そう、私のたまのストレス発散。
実は中学までは合唱部だった私は、歌うことが好きだった。
しかし、入学した高校には合唱部が無かった。
なので、ピアノが弾ける叔母が空いている時にたまに弾いてもらい、思いっきりのびのびと歌うのが私のストレス発散だった。
まさか、聞かれているとは知らなかったので驚いたのだ。
それを近くで聞いていた三人は、驚いた顔をしてこちらを見る。
「あの、時々聞こえる噂の放課後の歌姫って有紗だったの!」
その日菜子の声に私もびっくりする。
「え? なに? 日菜子も知っているの?」
すると、興奮した日菜子がまくし立てるように答える。
「私らが入学した年からたまに部活中に聞こえてくる歌声が、とても綺麗でいつからか不定期に聞こえてくる歌声に放課後の歌姫ってあだ名が付けられたの!」
私の肩を掴んで、前後に振りつつ日菜子はさらに続ける。
「その、正体はなかなか知られないし。歌うのも一~二曲だから誰もわからなくて。しかも不定期! まさか有紗だったとは!」
「外で活動している運動部の人間はみんな聞いたことがあるよ! 有紗ちゃんだったんだね!」
蒼くんの言葉に要くんもうなずく。
まさか、校庭まで聞こえているとは思わなかった。
そこに校内巡回中らしい、叔母が顔を出す。
「あらあら、とうとうバレちゃったのね。まぁ、有紗の声量はオペラ歌手並みだもの。校内どこでも届くわよ」
どうやら事の次第を聞いていたらしい叔母は、クスクス笑いながら言う。
「田中先生! あれ? いつもは汐月さんって言ってなかった?」
叔母の声掛けに不思議そうに聞いたのは蒼くん。
よく知っているなとちょっとその場は口をつぐんでいると、叔母が答えた。
「ふふ。身内贔屓とかにはならないだろうとは思うけど一応養護教諭だからね。先生達以外には黙っていたんだけど、私はこの子の叔母なのよ。この子のお母さんが私の姉」
その言葉にへぇーって周りは関心の声。
「ま、これは逃げられないから歌ってらっしゃいな」
そんな叔母に私は言った。
「ピアノ伴奏で歌う曲とバンドじゃ全然違うじゃない」
ため息混じりに呟けば、叔母は背中をポンポンと叩くと言った。
「カラオケも大好きなんだから大丈夫でしょ! いい思い出になるわよ、行ってらっしゃい」
そうして身内にまで行けと言われて逃げられる訳もなく、私は軽音楽部のバンドに飛び入り参加する事になった。
あぁ、目立ちたくないのに。
最後の文化祭、目立ちまくりだよ……。
「はい、いらっしゃい! 名前をどうぞ」
ボーカルのハルトくんがマイクをむけるので、しぶしぶ答える。
「三年二組、汐月有紗です」
「彼女がみんなも一度は聞いたことのある放課後の歌姫だよ!彼女とコラボするのは、この曲」
そうして、鳴り出したのは今年ヒットしているJPOP。
しかも、女性ボーカルの曲。
たしかにこれなら歌える。
遠慮しなくていいわよね? 無理やりステージに上げられたんだし。
開き直った私は演奏に合わせて歌い出す。
ハルトくんが、上手く音を合わせてきて声が綺麗に重なる。
会場のテンションもサビに来る頃には高くなり、跳ねたり飛んだりしている子達が見える。
日菜子や蒼くんに要くんも見ていてくれるし、この騒ぎからか体育館の入口にはお化けのままの茜が見えた。
どんどん私も楽しくなってきてテンションが上がる。
サビで目線を合わせて更にギターの子も飛び出してきて、合わせて歌う。
あっという間に一曲が終わる。
こんな歌い方は初めてしたけど、なんだろう。
かなりの高揚感で気持ちよかった。
ニコッと笑って、一言。
「飛び入りだから、これでおしまい!」
一言言うと、近くまで来てくれていた要くんに向かってステージから飛び降りる。
上手くキャッチして下ろしてもらうと、そのまま通路になっている壁際を走り抜けて体育館を飛び出した。
体育館は、わーっと再び騒がしいほどの声が上がったけれど、その声を背受けつつ私と要くんは校舎へと戻って行った。
校舎の中も人が多いので、私と要くんは少し静かになれる場所へと行くべく立ち入り禁止の屋上へと続く階段へと向かった。
「ここに居れば、しばらくは静かに居られるかな?」
「今日みたいな日は、早々ここに人は来ないだろ」
ふたりで、そこの階段に座ると笑い合った。
「まさか、飛び入りさせられるとは思わなかったよ」
「そうだな。俺は放課後の歌姫の正体にびっくりしたけどな」
その言葉に肩を竦めてチラッと顔を見れば、要くんは怒っている訳ではなく優しい顔をしていた。
「手先も器用で、勉強も出来て、歌も上手くて可愛らしい。死角なしだなぁ、俺の好きな人は」
柔らかい顔で紡がれた言葉は優しさと気持ちが溢れている。
私は、胸がキュッとなってドキドキして少し苦しい。
「有紗。俺は有紗が好きだよ。優しくて、大切な事はしっかりしていて。たくさん出来ることがあって、でも時々遠くを見ている。そんな有紗に惹かれたんだよ。放課後の歌姫の歌も好きだ」
そんな重ねてくる言葉は、真っ直ぐで嘘がないのは声にも顔にも出ていてわかる。
嬉しいのに、私は私の事情で要くんの優しさに飛び込むことに二の足を踏んでいる。
「なぁ、もし今日お互いにミスとミスターに選ばれたなら。俺と付き合ってくれないか?」
私が要くんを見上げると、要くんは私を真っ直ぐに見つめていた。
だから、私はここで伝えることにした。
「要くん、私がもしも今出来ることが出来なくなったとして。そんな私でもそばにいてくれるの?」
私の問いは、声は自信がなくて震えている。
要くんは私の問いかけが予想外だったのか、少し目を見開いたあとにしっかりと答えてくれた。
「人は出来ていたことが出来なくなったり、出来なかったことが出来るようになったりするものだろう? そんな事で離れるほど俺の気持ちは軽くないよ」
その言葉は私の心に真っ直ぐに届いた。
そうだね、出来ることが出来なくなったり、出来なかったことが出来たりするのは人が生きていく上ではきっとたくさんあるだろう。
私は近く出来ないことが増えてしまうけれど、それはまた努力すれば出来るようになることがあるという事でもある。
ずっと失う事ばかりに目がいっていた私には、要くんの言葉がストンと胸に落ちてきてハマったのだ。
「要くん、結果発表があったあとで返事してもいい?」
「うん、いいよ」
「ありがとう」
そのあとは、たわいのない話を少ししているうちに一般公開の終了案内が流れたので私達は自分のクラスに戻ることにした。
その手をしっかりと繋いで歩く。
この時、すでに結果がどうであれ私はしっかり心の答えを決めていた。
後夜祭の準備兼片付けが済む頃には、周りはすっかり暗くなっていた。
十七時半、後夜祭がスタートする。
校庭にはキャンプファイヤーもどきの焚き火。
その奥には、ミス&ミスターコンテストの結果発表が行われる朝礼台が置かれる。
そして、文化祭実行委員による結果発表が始まった。
「みなさん、文化祭お疲れ様でした! そしてこれから毎年恒例! ミス&ミスターコンテストの結果発表だよ!」
キャーキャーと元気な声が上がってきて、校庭はいまだに元気いっぱいな学生ばかりで、活気に溢れている。
「それでは、まずミスターコンテストの結果発表です! エントリーした方々は前の方へお願いします」
その声に要くん、蒼くん、ハルトくんが進んでいく。
並んだ三人は学内でも人気のイケメン達なので、女子の声がそこかしこから聞こえる。
「はー、イケメン最高!」
「目の保養だよね!」
そんな女子達の会話がそこかしこから聞こえてくる。ミスターコンテストに出るだけあって、そこに並んだ男子は みんなカッコイイ。しかも爽やか系、クール系、元気なやんちゃ系とくれば見に来ている女子達はキャーキャー言うよね……。
私ってばそんな注目浴びちゃうような要くんに、なんだかんだと言われてきていたわけで……。
今さらだけど、なんか自覚したというか。
じわじわと実感してきて、私の胸がドキドキとしてキュンとする。
三人が並んで周りが落ち着いた頃、司会役の実行委員が話し始めた。
「それでは、今年のミスターの結果を発表します。今回、ほぼ全ての生徒が投票しており有効票となっています。それでは、本年度のミスターは!」
私は聞きながらも無意識のうちに胸の前でキュッと手を握りしめた。
「松島要くんです!」
ワーッと、周りから声が上がる。
「おぉ! 要、やるじゃん」
隣にいた日菜子はそんな感じで感想を漏らす。
「ま、組織票もあるよね。日菜子と水木くんでテニス部とサッカー部はみんな松島くんに入れていたし。三年生も、みんな松島くんだからね」
そんな茜の言葉にビックリして目を向ければ、ニヤニヤとした顔をして言う。
「三年生の我々はね、松島くんと汐月さんの関係を見守り隊!! が結成されていて。頑張れ松島くん! が合言葉で、ふたりがミスとミスターで並ぶの見たいってそんな組織票がだね!」
「ねー! みんな頑張ったよ」
茜の言葉にドヤ顔の日菜子。
君たち二人して、どれだけ団結しているの。
私は聞いて呆気に取られてしまった。
ミスターに選ばれた要くんは、数年前の家庭科部の先輩が作った赤のベルベットのマントを付けられている。
うん、なんでも様になるのはイケメンだからか!
ただしイケメンに限るってのは、あるんだなとこの時ヒシヒシと感じた。
そして、茜や日菜子、蒼くんの組織票の結果ミスは私になってしまった。
軽音部に飛び入り参加したのも、票に大きく影響したらしい。
そして、周りからは私と要くんが並ぶとスマホ撮影のフラッシュの嵐だった。
そして、結果発表後、私は要くんにお付き合いの返事をした。
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