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最強タッグ①
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『皆様、大変お待たせ致しました!これより魔法ダブルス部門、決勝戦を開始致します!』
個人戦の決勝が終わった翌日、私はマリウスと共に選手控え室にいた。それぞれのチームに個室が与えられており、私達は出番が来るまで控え室内の魔導ビジョンで試合を眺めていた。
「ねぇマリウス。」
「ん?」
「私、今日は火魔法メインで行こうと思う。」
私が言うと、試合の様子を眺めていたマリウスはこちらに視線を向けた。
「いつもはアレクがいるから、アレクに火魔法任せてるみたいなところあるでしょ?」
「あぁ…、確かにな。それで練習しようってわけか。」
「そういう事。」
「なら俺はリアの援護に回る、好きに暴れろ。」
マリウスはふと笑って私の頭を撫でた。私もニッと笑う。
「まっかせて!」
「兄さん、リアちゃん。そろそろ行ける?」
「ニゲル。いつでも行けるぜ。」
コンコン、とノックと共に実行委員のニゲルが入って来てそう声をかけた。私達は席を立ち、ニゲルの後に続いて入場口まで向かう。
「それじゃ、2人とも頑張ってね!」
「ありがとうニゲル、私達が優勝するところ見ておいてね!」
「あぁ、行ってくる。」
『さぁ、続いての試合に参りましょう!あの終わりなき冒険をの最強カップル、マリウス・オルドー選手とエミリア・デーフェクト選手です!』
歓声の中、私達はリングに上がる。相手は魔法学院の5年生で、春の暁のメンバーでもあった。水魔法が得意な女子と、風魔法が得意な女子のペアだ。
『春の暁対決ですね!シロウ殿下はマリウス選手の同級生で少しの間春の暁に在籍していらっしゃったと伺いましたが、この試合如何ですか?』
『そうですね、ここまで残っている事もあって全員優秀ですよ。…でも、マリウスとエミリアちゃんは規格外なので普通に倒すのはまぁ無理でしょうから、なんとかリングの外に弾き出すしかないでしょう。…ま、そんな事みんな分かってると思うけどな!』
実況席に座るシロウ先輩はパッと笑った。私達もそう来るだろうとは予測済みだ。
『そうですね、エミリア選手の光魔法も予選では一切使われず未知数なところが多いですからね。…さて、保護結界の強化も終えたようですのでいよいよ始めて参りましょう!』
『それでは用意──』
「…よし、マリウス。今日も派手に暴れてやろうぜ!」
「応!」
『始め!』
「濁流!」
「一陣の風!」
「アイスウォール」
2人の攻撃をマリウスがすかさずアイスウォールで防いだ。
「不知火」
追撃が来る前に私は火柱をいくつも立て、水を蒸発させる。
『なっ、エミリア選手、火魔法で濁流の水を全て蒸発させました!!!なんて火力なのでしょうか!!!』
『おぉ、すごいですね。流石。…あれ理事長、どうされました?』
『いや…、…血は争えぬなと…。』
『?』
「っ、アクア───」
「火竜の顎、スパークバウ」
「閃光の弓矢」
追撃の暇も与えず、今度は私達が攻撃する。火の粉と炎のドラゴン、そして雷の弓矢が2人を襲った。火魔法は熱いが人間が燃えることはないので遠慮なく攻撃する。
「うわっ!!」
「アガタ!!滝落とし!!」
「夜に咲く花、蔓の鎖」
「かまいたち」
強めの爆発で再び水を蹴散らし、蔓で片方の体を掴みリング外へと放り投げた。マリウスもかまいたちでもう1人を吹き飛ばす。
「カハッ!」
『っ試合終了ーー!!!マリウス選手、エミリア選手の勝利です!!!』
カンカンカン!という鐘の音と共に歓声が上がった。私とマリウスはハイタッチする。
『いやぁ、まさか水魔法を火魔法で打ち消すとは。流石ですね。』
『えぇ、本当に。とんでもない火力と早技で、お2人の息もぴったりで流石の連携でした。しかもマリウス選手は一歩も動きませんでしたね、やはり幼馴染は強いですね。…ところで閣下、先程から震えていらっしゃいますが如何されましたか?寒かったですか?何か温かいものを…』
『火焔姫…、うっ…。』
『燃やされる…。』
特別席に座る両校の理事長や偉い方々はそれぞれ顔を青くしたり遠い目をしていたりしていた。確か火焔姫っておばあちゃんの二つ名だったような…、…あぁそうか、私、おばあちゃんとそっくりだもんな…。偉い人達とおばあちゃんは同年代だから丁度目の当たりにしてたのだろう。
一体昔のおばあちゃんは何をしたのだろうかと思いつつも、私は少し面白くなって2つに結っている髪を解いて特別席にニコリと笑いかけてみせた。
「燃やせば全部解決しますわ。」
『『『っ…!!!』』』
おばあちゃんの真似をしてみると偉い人達はゾッとしたような表情を見せた。周囲からは笑い声が上がる。
『はは!なるほど、エミリア選手はおばあ様にそっくりなのですね!』
『なるほど、それで。まぁ何はともあれ、どちらも素晴らしい戦いをありがとうございました!』
「まさか火で蒸発させられるとは思わなかった、完敗だよ。」
「2人と戦えて良かった、私達ももっと頑張るわ!」
「こちらこそ楽しかったよ。」
「良い経験になった。」
私達は喝采の中握手を交わし、控え室へと戻った。
「ねぇマリウス、次はもっと氷魔法使ってよ。火力調整の練習したいから。」
「お前…。…ま、2回目の俺らは余裕で当然だしそのくらいのハンデがあっても良いか…。」
マリウスは仕方なさそうに頷いた。
「分かったよ、やってみろ。俺も強めに行く。」
「うん!」
次の私達の試合の相手は王立学院魔法科6年のペアだった。確かそれぞれ土魔法と風魔法が得意だったはず…。ていうかあの人、ノニウス卿って前の時マリウスと仲良かった人だよね?
「…あいつの癖は覚えてる、あいつは任せろ。」
「了解。」
『それでは、始め!』
個人戦の決勝が終わった翌日、私はマリウスと共に選手控え室にいた。それぞれのチームに個室が与えられており、私達は出番が来るまで控え室内の魔導ビジョンで試合を眺めていた。
「ねぇマリウス。」
「ん?」
「私、今日は火魔法メインで行こうと思う。」
私が言うと、試合の様子を眺めていたマリウスはこちらに視線を向けた。
「いつもはアレクがいるから、アレクに火魔法任せてるみたいなところあるでしょ?」
「あぁ…、確かにな。それで練習しようってわけか。」
「そういう事。」
「なら俺はリアの援護に回る、好きに暴れろ。」
マリウスはふと笑って私の頭を撫でた。私もニッと笑う。
「まっかせて!」
「兄さん、リアちゃん。そろそろ行ける?」
「ニゲル。いつでも行けるぜ。」
コンコン、とノックと共に実行委員のニゲルが入って来てそう声をかけた。私達は席を立ち、ニゲルの後に続いて入場口まで向かう。
「それじゃ、2人とも頑張ってね!」
「ありがとうニゲル、私達が優勝するところ見ておいてね!」
「あぁ、行ってくる。」
『さぁ、続いての試合に参りましょう!あの終わりなき冒険をの最強カップル、マリウス・オルドー選手とエミリア・デーフェクト選手です!』
歓声の中、私達はリングに上がる。相手は魔法学院の5年生で、春の暁のメンバーでもあった。水魔法が得意な女子と、風魔法が得意な女子のペアだ。
『春の暁対決ですね!シロウ殿下はマリウス選手の同級生で少しの間春の暁に在籍していらっしゃったと伺いましたが、この試合如何ですか?』
『そうですね、ここまで残っている事もあって全員優秀ですよ。…でも、マリウスとエミリアちゃんは規格外なので普通に倒すのはまぁ無理でしょうから、なんとかリングの外に弾き出すしかないでしょう。…ま、そんな事みんな分かってると思うけどな!』
実況席に座るシロウ先輩はパッと笑った。私達もそう来るだろうとは予測済みだ。
『そうですね、エミリア選手の光魔法も予選では一切使われず未知数なところが多いですからね。…さて、保護結界の強化も終えたようですのでいよいよ始めて参りましょう!』
『それでは用意──』
「…よし、マリウス。今日も派手に暴れてやろうぜ!」
「応!」
『始め!』
「濁流!」
「一陣の風!」
「アイスウォール」
2人の攻撃をマリウスがすかさずアイスウォールで防いだ。
「不知火」
追撃が来る前に私は火柱をいくつも立て、水を蒸発させる。
『なっ、エミリア選手、火魔法で濁流の水を全て蒸発させました!!!なんて火力なのでしょうか!!!』
『おぉ、すごいですね。流石。…あれ理事長、どうされました?』
『いや…、…血は争えぬなと…。』
『?』
「っ、アクア───」
「火竜の顎、スパークバウ」
「閃光の弓矢」
追撃の暇も与えず、今度は私達が攻撃する。火の粉と炎のドラゴン、そして雷の弓矢が2人を襲った。火魔法は熱いが人間が燃えることはないので遠慮なく攻撃する。
「うわっ!!」
「アガタ!!滝落とし!!」
「夜に咲く花、蔓の鎖」
「かまいたち」
強めの爆発で再び水を蹴散らし、蔓で片方の体を掴みリング外へと放り投げた。マリウスもかまいたちでもう1人を吹き飛ばす。
「カハッ!」
『っ試合終了ーー!!!マリウス選手、エミリア選手の勝利です!!!』
カンカンカン!という鐘の音と共に歓声が上がった。私とマリウスはハイタッチする。
『いやぁ、まさか水魔法を火魔法で打ち消すとは。流石ですね。』
『えぇ、本当に。とんでもない火力と早技で、お2人の息もぴったりで流石の連携でした。しかもマリウス選手は一歩も動きませんでしたね、やはり幼馴染は強いですね。…ところで閣下、先程から震えていらっしゃいますが如何されましたか?寒かったですか?何か温かいものを…』
『火焔姫…、うっ…。』
『燃やされる…。』
特別席に座る両校の理事長や偉い方々はそれぞれ顔を青くしたり遠い目をしていたりしていた。確か火焔姫っておばあちゃんの二つ名だったような…、…あぁそうか、私、おばあちゃんとそっくりだもんな…。偉い人達とおばあちゃんは同年代だから丁度目の当たりにしてたのだろう。
一体昔のおばあちゃんは何をしたのだろうかと思いつつも、私は少し面白くなって2つに結っている髪を解いて特別席にニコリと笑いかけてみせた。
「燃やせば全部解決しますわ。」
『『『っ…!!!』』』
おばあちゃんの真似をしてみると偉い人達はゾッとしたような表情を見せた。周囲からは笑い声が上がる。
『はは!なるほど、エミリア選手はおばあ様にそっくりなのですね!』
『なるほど、それで。まぁ何はともあれ、どちらも素晴らしい戦いをありがとうございました!』
「まさか火で蒸発させられるとは思わなかった、完敗だよ。」
「2人と戦えて良かった、私達ももっと頑張るわ!」
「こちらこそ楽しかったよ。」
「良い経験になった。」
私達は喝采の中握手を交わし、控え室へと戻った。
「ねぇマリウス、次はもっと氷魔法使ってよ。火力調整の練習したいから。」
「お前…。…ま、2回目の俺らは余裕で当然だしそのくらいのハンデがあっても良いか…。」
マリウスは仕方なさそうに頷いた。
「分かったよ、やってみろ。俺も強めに行く。」
「うん!」
次の私達の試合の相手は王立学院魔法科6年のペアだった。確かそれぞれ土魔法と風魔法が得意だったはず…。ていうかあの人、ノニウス卿って前の時マリウスと仲良かった人だよね?
「…あいつの癖は覚えてる、あいつは任せろ。」
「了解。」
『それでは、始め!』
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