冒険がしたいので殿下とは結婚しません!

ルジェ*

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ヘレナの戦い②

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 それから試合は続いていき、ついにヘレナとアルシノエさんの試合となった。ヘレナ、頑張れ…!

『さぁ、お次はいよいよ勇者パーティと最強パーティ対決です!魔法学院4年、ヘレナ・メルクリウス選手!』
『対しますは王立学院魔法科6年、アルシノエ・アダリス選手!』
『これまたすごい戦いが見られそうですね!両者、構え!』
『──戦闘、開始!』
「アクアドロップ、スライムウォール、水風船ネロスフェラ
「!ウィンドバリア」

ヘレナは空から垂直にアクアドロップを放った。アルシノエさんは防いで反撃しようとする……が。

「…⁉︎いない…⁉︎」
『なんと!ヘレナ選手、大きな水球をたくさん浮かべて消えてしまいました…!』
『…なるほど、そう来ましたか…。』

ヘレナは光を全反射させて姿を見えなくしたのだろう。どこからかパシュ、と弾が飛んで来て、アルシノエさんはギリギリで躱す。

「っそこ!」

アルシノエさんは弾が飛んで来た方向へかまいたちヴァンメッサーを放った。水球のひとつが割れた水風船のように崩れて地面に水が落ちる。…が。

「…⁉︎」
『おぉっと!水球が1つ消されましたがヘレナ選手の姿が見当たりません!転移魔法でしょうか?』
『恐らくそうでしょうね。全反射させた上に浮かせて転移魔法まで使うとは…、上手いことやりますね…!』

ヘレナは魔法や魔道具を駆使し、色々な所から攻撃して翻弄していった。複数方向からの絶え間ない攻撃をいなしながらアルシノエさんは水球を減らして行く。

一陣の風パルイーフ!」

一気に蹴散らそうとアルシノエさんは突風を吹かせた。すると水球は弾け、雨のように水滴が降って来る。

『あれ、ヘレナ選手はどこへ───』
「っ!!!」
「喰らえ──」

いつの間にかヘレナはアルシノエさん達の真上にいて、大きな大砲を担いでいた。え、待って何それ、私も初めて見たんだけど。

「バズーカ試作品第二号!!」

ドガァン、とかなりの威力の爆発が起こった。すごい…、あんな隠し玉があったなんて…!

『ヘレナ選手、バズーカをぶっぱなしました!!アルシノエ選手は大丈夫でしょうか…⁉︎』
『──あ、アルシノエ選手のかまいたちヴァンメッサーです!大丈夫だったようですね、ヘレナ選手はスライムウォールでガード!』
『おっと、ヘレナ選手、いつの間にか鞭?を構えています!』

ヘレナは空中でバズーカと鞭を入れ替えると、水を纏った鞭を手にアルシノエさん達へと突っ込んだ。…ヘレナも普段は使わないが、騎士団長の娘でアレクと共に鍛錬していただけあって銃以外もやればそこそこ扱えるのだ。

「回避───」
「っせいやぁ!!!」

鞭がグリフォンを捉え、グリフォンは大きく体勢を崩した。ヘレナは落下しながらグリフォンに再び銃口を向ける。…換装するの、随分早くなったなぁ。

「行け!!」
「っこれは神の御業、必勝をもたらす風なり。敵対者よ、我が領域から立ち去れ。神風!!」
『うわーーー!!!!!風の最上級魔法です!!!風が強すぎて何も見えません!!!!』

アルシノエさんは不安定な体勢の中でもなんとか最上級魔法を放った。やっぱりすごい───!!
 やっと風が止んで視界も晴れると、ヘレナはリング外へと吹き飛ばされており、グリフォンは魔力切れか姿を消していた。アルシノエさんはなんとかリングに立っているが、制服は泥だらけの埃だらけだった。

『っ、試合終了ーーーー!!!勝者、アルシノエ・アダリス選手!!!!』

シリウス君のコールに会場はものすごく大きな歓声が上がった。いや、今回のヘレナの戦い方は本当に面白かった。たぶんヘレナの事だから今回は色んな戦法を試す良い機会だとでも思ったのだろう。

「流石に最上級魔法は無理だった。」
『そりゃそうだよ、最上級魔法を簡単に防げちゃったらそれはもう“最上級”じゃないよ。』
「あは、確かに!」
「ヘレナちゃん、すっごく楽しかった!ありがとう!」
「こちらこそ!」

2人は笑顔で握手した。会場の歓声と拍手は未だ鳴り止まず、勝者のアルシノエさんへの実力とアルシノエさんから最上級魔法を使わせたヘレナへの賞賛は止まないのだった。

『さて、それではこちらの試合は以上となります。お2人とも素晴らしい戦いをありがとうございました!!』
『えー、これで本日の試合も終了ですね、選手の皆さん、本当にお疲れ様でした!!』
『表彰は明日となりますので本日はこれにて終了となります。我々実況も明日は別の人と変わるので、名残惜しいですがこれで皆さんとお別れですね。』
『そうですね。エミリア嬢は明日出場されるんですよね、頑張ってください。』
『はい、ありがとうございます。皆さんお時間があれば是非見にいらしてくださいね。…それでは!』
『『ありがとうございましたー!!!』』
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