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未踏の地へ
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「なんじゃ、光の気配がしたから勇者パーティーかと期待しておったのに…。」
奥へ進んでいくと背中に翼を生やした美女はむぅ、と残念そうな表情で言った。…あぁ、この人か…。
「…あの、ここは勇者パーティーの通り道ではありませんよ?」
「な⁉︎」
私が言うと彼女はガーン、とショックを受けていた。彼女は魔王の眷属で強いのだが、どこか抜けているのだ。…まぁ強いと言っても、魔族の中ではそうでもないのだが。
「勇者パーティーは恐らく東の方から魔の森へ向かって行くだろうな。」
「少なくともダンジョンで待ってても絶対来ねえぜ?」
「そ、そんなぁ…。」
「…とは言え私達も魔族をスルーして下に進む訳にも行きませんし、勇者パーティーへのスカウトを無視してしまった負い目もあるので。貴女を倒して先に進みます。」
私達が武器を構えると、彼女はそれまでの雰囲気を一転させて空気がピンと張り詰めた。彼女の魔力が増大し、空気がピリピリする。
「ほう、妾を倒すと申すか人間。…ふ、面白い。やってみるが良い。妾はディア。無謀な貴様らに甘美な悪夢を魅せてやろう!」
ディアは早速私達に水魔法を放って来た。私達は避けて、アレクがまず斬り込む。
「ヘレナ、電気!」
「!オッケー、アレク!」
私が叫ぶとヘレナは魔力銃をテーザーモードに切り替えた。アレクはヘレナの撃った弾が当たらないよう避ける。
「っ!ふっ、中々やるではないか。アクアドロップ」
アクアドロップは割と初級の魔法だが、魔族ともなると弾丸のような速さで飛んで来て当たったら死ぬほど痛そうだ。
「洗礼の雨」
「はっ!」
「濁流」
「サンドウォール!」
攻防を繰り返すと私達もいつのまにかずぶ濡れになっていた。ディアは基本水魔法しか使って来ないから当然といえば当然なのだが。…そろそろ終わらせないと。
「…エミリア。」
「うん。ヘレナ!」
返事の代わりにパン!と乾いた音が響く。
「っ!」
「水風船、結界」
私は感電して一瞬動きを止めたディアを水球の中に閉じこめ、私達にはそれぞれ結界を張る。マリウスとアレクはすかさず魔法陣を展開させる。
「「迅雷」」
「がぁぁあっ!!!!」
「かまいたち!」
ヘレナが最後の止めを刺し、ディアは倒れた。私は魔法でみんなを乾かす。
「よっしゃ、勝利だぜ!!」
「やったぁ!」
『良くやったな、みんな。』
「よし、じゃあ下降りるか。」
「「「おー!」」」
その後は魔族が現れる事はなく、私達はどんどん進んで行き約1週間後。私達は第6層にいた。ここがエスカトンで確認されている最下層(仮)だ。
「…やっぱ下に降りる道が見当たらねえな…。」
マリウスは空間スキャンをするとそう呟いた。昨日から探索しているがそれらしい場所は見当たらず、私達は今日もうろうろと探索をしていた。うーん、なんでだろう。絶対どこかにあるはずなんだけど…。…ん?
「…?」
「エミリア?」
「どうした?」
急に足を止めた私をみんなは振り返る。…なんだろう、この魔力。知ってるような…?
「…何か、感じない?」
「いや、俺は特に何も…。」
「私も。」
「俺も特には。…けど、エミリアが何かを感知してるならとりあえず行ってみるか?」
「そうだな、他に手がかりもねぇし。」
「うん、行ってみよう!」
「分かった、じゃあこっち。」
そうして私は微かに感じる魔力を辿って歩き出した。
「…エミリア、ほんとにここなの?」
「うーん…。」
たどり着いたのは周囲に何もない開けた場所で、みんなが疑うのも無理はなかった。
「なんも見当たらねえな。」
「この周辺っていうか、地面なんだよねぇ。」
私はそう言って地面に触れてみる。すると突然地面がピカッと光った。同時に辺りも大きく揺れ出す。
「「「「!!??」」」」
「なんだよこれ⁉︎」
「魔法陣…⁉︎」
「リア、手離せ!」
「ちょ、む、無理…、うわ⁉︎」
急に謎の浮遊感に襲われたかと思うと私達は自由落下を始めた。どうやらさっきの地面に穴が空いたらしい。
「おわぁぁぁぁああ!!??」
「どういう事!!??」
「みんな落ち着いて!春の息吹!」
私は風魔法で速度を調節し、みんな無事に着地する。…まさか、こんな事になるとは…。
「助かった、エミリア。」
「ありがと…。」
「死ぬかと思ったぜ…。」
「うん。…それより、ここは…。」
辺りを見渡すとそこはまるでお城の廊下のようだった。廊下はずっと奥まで続いている。
「…さっきの魔法陣はお前の魔力に反応したっぽかったな。」
「あぁ、あれは恐らく光か闇属性の魔力にしか反応しない。」
「うん、あんまりじっくりは見れなかったけどそうっぽかったね。」
「だから今まで誰も見つけられなかったんだ…。」
「…とりあえずまたマスターに報告するか。」
私達は再びギルドへ連絡し、お父さんに第7層を見つけたと報告した。するとまぁこれはものすごい大発見なので、魔法協会や魔法省にも同時に繋がる事となった。
「じゃあ私達はこのまま先に進みます。調査隊の皆さんを待っていられないので。そこだけは絶対に譲りませんが良いですよね、マスター?」
『む…、…まぁ、未踏の地の探索は冒険者の浪漫だしなぁ…。…私は許可したいのですが如何でしょう?』
『彼らであれば実力もありますし、良い経験となるでしょう。あまりにも無謀な事はしないと約束できるなら良いかと。』
『そうですな、許可しましょう。』
「「「「ありがとうございます!!」」」」
そうして私達は未だ誰も到達した事のない場所へと足を踏み出した。
奥へ進んでいくと背中に翼を生やした美女はむぅ、と残念そうな表情で言った。…あぁ、この人か…。
「…あの、ここは勇者パーティーの通り道ではありませんよ?」
「な⁉︎」
私が言うと彼女はガーン、とショックを受けていた。彼女は魔王の眷属で強いのだが、どこか抜けているのだ。…まぁ強いと言っても、魔族の中ではそうでもないのだが。
「勇者パーティーは恐らく東の方から魔の森へ向かって行くだろうな。」
「少なくともダンジョンで待ってても絶対来ねえぜ?」
「そ、そんなぁ…。」
「…とは言え私達も魔族をスルーして下に進む訳にも行きませんし、勇者パーティーへのスカウトを無視してしまった負い目もあるので。貴女を倒して先に進みます。」
私達が武器を構えると、彼女はそれまでの雰囲気を一転させて空気がピンと張り詰めた。彼女の魔力が増大し、空気がピリピリする。
「ほう、妾を倒すと申すか人間。…ふ、面白い。やってみるが良い。妾はディア。無謀な貴様らに甘美な悪夢を魅せてやろう!」
ディアは早速私達に水魔法を放って来た。私達は避けて、アレクがまず斬り込む。
「ヘレナ、電気!」
「!オッケー、アレク!」
私が叫ぶとヘレナは魔力銃をテーザーモードに切り替えた。アレクはヘレナの撃った弾が当たらないよう避ける。
「っ!ふっ、中々やるではないか。アクアドロップ」
アクアドロップは割と初級の魔法だが、魔族ともなると弾丸のような速さで飛んで来て当たったら死ぬほど痛そうだ。
「洗礼の雨」
「はっ!」
「濁流」
「サンドウォール!」
攻防を繰り返すと私達もいつのまにかずぶ濡れになっていた。ディアは基本水魔法しか使って来ないから当然といえば当然なのだが。…そろそろ終わらせないと。
「…エミリア。」
「うん。ヘレナ!」
返事の代わりにパン!と乾いた音が響く。
「っ!」
「水風船、結界」
私は感電して一瞬動きを止めたディアを水球の中に閉じこめ、私達にはそれぞれ結界を張る。マリウスとアレクはすかさず魔法陣を展開させる。
「「迅雷」」
「がぁぁあっ!!!!」
「かまいたち!」
ヘレナが最後の止めを刺し、ディアは倒れた。私は魔法でみんなを乾かす。
「よっしゃ、勝利だぜ!!」
「やったぁ!」
『良くやったな、みんな。』
「よし、じゃあ下降りるか。」
「「「おー!」」」
その後は魔族が現れる事はなく、私達はどんどん進んで行き約1週間後。私達は第6層にいた。ここがエスカトンで確認されている最下層(仮)だ。
「…やっぱ下に降りる道が見当たらねえな…。」
マリウスは空間スキャンをするとそう呟いた。昨日から探索しているがそれらしい場所は見当たらず、私達は今日もうろうろと探索をしていた。うーん、なんでだろう。絶対どこかにあるはずなんだけど…。…ん?
「…?」
「エミリア?」
「どうした?」
急に足を止めた私をみんなは振り返る。…なんだろう、この魔力。知ってるような…?
「…何か、感じない?」
「いや、俺は特に何も…。」
「私も。」
「俺も特には。…けど、エミリアが何かを感知してるならとりあえず行ってみるか?」
「そうだな、他に手がかりもねぇし。」
「うん、行ってみよう!」
「分かった、じゃあこっち。」
そうして私は微かに感じる魔力を辿って歩き出した。
「…エミリア、ほんとにここなの?」
「うーん…。」
たどり着いたのは周囲に何もない開けた場所で、みんなが疑うのも無理はなかった。
「なんも見当たらねえな。」
「この周辺っていうか、地面なんだよねぇ。」
私はそう言って地面に触れてみる。すると突然地面がピカッと光った。同時に辺りも大きく揺れ出す。
「「「「!!??」」」」
「なんだよこれ⁉︎」
「魔法陣…⁉︎」
「リア、手離せ!」
「ちょ、む、無理…、うわ⁉︎」
急に謎の浮遊感に襲われたかと思うと私達は自由落下を始めた。どうやらさっきの地面に穴が空いたらしい。
「おわぁぁぁぁああ!!??」
「どういう事!!??」
「みんな落ち着いて!春の息吹!」
私は風魔法で速度を調節し、みんな無事に着地する。…まさか、こんな事になるとは…。
「助かった、エミリア。」
「ありがと…。」
「死ぬかと思ったぜ…。」
「うん。…それより、ここは…。」
辺りを見渡すとそこはまるでお城の廊下のようだった。廊下はずっと奥まで続いている。
「…さっきの魔法陣はお前の魔力に反応したっぽかったな。」
「あぁ、あれは恐らく光か闇属性の魔力にしか反応しない。」
「うん、あんまりじっくりは見れなかったけどそうっぽかったね。」
「だから今まで誰も見つけられなかったんだ…。」
「…とりあえずまたマスターに報告するか。」
私達は再びギルドへ連絡し、お父さんに第7層を見つけたと報告した。するとまぁこれはものすごい大発見なので、魔法協会や魔法省にも同時に繋がる事となった。
「じゃあ私達はこのまま先に進みます。調査隊の皆さんを待っていられないので。そこだけは絶対に譲りませんが良いですよね、マスター?」
『む…、…まぁ、未踏の地の探索は冒険者の浪漫だしなぁ…。…私は許可したいのですが如何でしょう?』
『彼らであれば実力もありますし、良い経験となるでしょう。あまりにも無謀な事はしないと約束できるなら良いかと。』
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