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ダンジョンの異常
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「号外号外!第3王子殿下達勇者パーティーがついに魔王討伐に出発したよー!」
新学期が始まって1週間ほど経ったある日、街にはそんなニュースが飛び交っていた。私はさっさと学院に向かう。
「おはようー。」
「あ、おはようリアちゃん。」
「おはよー、なぁ聞いたか?ついに勇者パーティーが出発したって!」
やはり学院でもその話題で持ちきりだ。私は自分の席に座る。
「そりゃ知らない人なんていないでしょー。」
「王都中で号外売ってるもんな。」
「そういえばマリウス先輩やエミリアはどうして勇者パーティーに入らなかったの?特にエミリアは光属性なのに。」
凛風は不思議そうに首を傾げた。みんなも頷く。
「まぁ、本当は私達にも勇者パーティーに参加しないかって話は来てたみたいなんだけど…、その時ちょうど私達ソリトスを攻略しに行ってたのね。で、既にパーティーを組んでる冒険者を引き抜くには本人の意思確認とかが必要って法律で決まってるでしょ?」
「あ、そっか。ソリトスは磁場の干渉がひどいとかで通信ができないんだったな。」
「そう、そして勇者パーティーは出発する前に一度神殿で数日間祈祷だのなんだのって色々儀式をして神のご加護を受けなきゃいけないの。だから直前に飛び入り参加とかは無理なのよ。」
「なるほど、それで勇者パーティーに参加できなかったのね…。」
みんなは納得したように頷いた。…本当、ギリギリまで粘って良かった。まぁ、まさかマリウスまで“前”の事を思い出すとは思わなかったし正直あんな記憶思い出さなくて良かったんだけど…、でも理解してくれる人がいるのもありがたい話だ。
「それに、私のパーティーはノウムアルゴーだけだしね。他の人と組むつもりはないよ。」
「ふふ、それもそうね!」
「エミリアらしいな!」
そうして私達は無事勇者パーティーから逃げ、休日に魔物討伐の依頼を受けまくる事で罪滅ぼしをしながら過ごしていた。そして夏休み。私達は王国の北部にある未だ最下層に到達した人のいないダンジョン、エスカトンに腕試しに来ていた。ここのダンジョンボスを誰も見た事がないのは単にここに出現する魔物達が強いからというだけでなく、最下層への道が見つからないからなのだ。地形や空間をスキャンしても見つからないとの事で、とても珍しいダンジョンなのである。私達は数日かけて第3層まで進む。
「…かなり敵が強くなってきたな…。」
「あぁ、それにこれは…。」
「…どこかにリーダーがいるわね…。」
魔物達の動きは明らかに普段と違って統制が取れていた。…これは、良くないな…。
「…エミリア、とりあえずお前の魔法で全部薙ぎ払え。数は多いが有象無象だ、お前なら何とかなるだろ?ポーションは死ぬほど持って来たから遠慮なくぶちかませ。後は俺が空間スキャンする。」
「簡単に言ってくれるよね、まぁできるけど!洗礼の雨、かまいたち、雷火!」
私が一匹も漏らさず一掃するとアレクは容赦ねぇな、と笑った。マリウスはすぐに魔法で空間をスキャンする。
「…これは…。…良くねぇ状況だな、この先に魔族がいる。」
「「「!!!!」」」
私達はマリウスの言葉に目を剥いた。魔族とは魔王の眷属であり、言葉を操り高い知性を持つ。そんな存在がダンジョン内に、しかもたかだか第3層程度にいるだなんて…!
「…一度ギルドに連絡しよう。」
「あぁ、魔王復活間近なのが原因なのは明白だが一応連絡しよう。ヘレナ、通信具出してくれ。」
「うん。」
ヘレナは通信具を出してギルドに繋げた。事務員のお姉さん、ミリアムさんに繋がる。
『はい、こちら春の暁です。本日のご注文は?』
「處處 啼鳥を聞く。」
『はい、みんなお疲れ様!どうしたの?』
今のは春の暁の合言葉だ。偽物防止のため、通信の時にはこの合言葉が必要なのだ。
「こんにちはミリアムさん、こちらノウムアルゴーです。急ぎマスターに繋いでください。魔族を発見しました。」
『!了解、すぐに繋ぎます。』
ミリアムさんの表情も引き締まり、通信はすぐお父さんに繋がった。お父さんもいつもの気さくな雰囲気はなりを顰め真面目な表情だ。
『魔族が出たってどう言う事だ?』
「まず、私達は今エスカトンの第3層にいる。」
「俺が空間スキャンしたところ、魔族と思しき反応があった。第3層で魔族が出るだなんて有り得ねえ。」
「だから突っ込む前にマスターに念のため連絡したんだ。まぁどうせ止められようとこの後突っ込むけどな。」
アレクの言葉に私達は少し笑いながら頷く。
『エスカトンの第3層で…。それは異常事態だな…。…お前達、やれそうか?』
「当然。」
「ま、負ける事はねぇだろ。」
私はマリウスに渡されたポーションをぐいっと飲み干して言うとマリウスも頷いた。
「もしやばそうだったら転移して逃げるしな。」
「うん、マリウスとエミリアが大丈夫って言うならきっと大丈夫。それにせっかく来たんだからやれるところまでやってみたいです。」
『…分かった、なら通信は繋げたままで進め。本気でまずそうならAランク以上のパーティーを応援に送る。いいな?』
「「「「了解。」」」」
そうして私達は魔族へと立ち向かっていった。
新学期が始まって1週間ほど経ったある日、街にはそんなニュースが飛び交っていた。私はさっさと学院に向かう。
「おはようー。」
「あ、おはようリアちゃん。」
「おはよー、なぁ聞いたか?ついに勇者パーティーが出発したって!」
やはり学院でもその話題で持ちきりだ。私は自分の席に座る。
「そりゃ知らない人なんていないでしょー。」
「王都中で号外売ってるもんな。」
「そういえばマリウス先輩やエミリアはどうして勇者パーティーに入らなかったの?特にエミリアは光属性なのに。」
凛風は不思議そうに首を傾げた。みんなも頷く。
「まぁ、本当は私達にも勇者パーティーに参加しないかって話は来てたみたいなんだけど…、その時ちょうど私達ソリトスを攻略しに行ってたのね。で、既にパーティーを組んでる冒険者を引き抜くには本人の意思確認とかが必要って法律で決まってるでしょ?」
「あ、そっか。ソリトスは磁場の干渉がひどいとかで通信ができないんだったな。」
「そう、そして勇者パーティーは出発する前に一度神殿で数日間祈祷だのなんだのって色々儀式をして神のご加護を受けなきゃいけないの。だから直前に飛び入り参加とかは無理なのよ。」
「なるほど、それで勇者パーティーに参加できなかったのね…。」
みんなは納得したように頷いた。…本当、ギリギリまで粘って良かった。まぁ、まさかマリウスまで“前”の事を思い出すとは思わなかったし正直あんな記憶思い出さなくて良かったんだけど…、でも理解してくれる人がいるのもありがたい話だ。
「それに、私のパーティーはノウムアルゴーだけだしね。他の人と組むつもりはないよ。」
「ふふ、それもそうね!」
「エミリアらしいな!」
そうして私達は無事勇者パーティーから逃げ、休日に魔物討伐の依頼を受けまくる事で罪滅ぼしをしながら過ごしていた。そして夏休み。私達は王国の北部にある未だ最下層に到達した人のいないダンジョン、エスカトンに腕試しに来ていた。ここのダンジョンボスを誰も見た事がないのは単にここに出現する魔物達が強いからというだけでなく、最下層への道が見つからないからなのだ。地形や空間をスキャンしても見つからないとの事で、とても珍しいダンジョンなのである。私達は数日かけて第3層まで進む。
「…かなり敵が強くなってきたな…。」
「あぁ、それにこれは…。」
「…どこかにリーダーがいるわね…。」
魔物達の動きは明らかに普段と違って統制が取れていた。…これは、良くないな…。
「…エミリア、とりあえずお前の魔法で全部薙ぎ払え。数は多いが有象無象だ、お前なら何とかなるだろ?ポーションは死ぬほど持って来たから遠慮なくぶちかませ。後は俺が空間スキャンする。」
「簡単に言ってくれるよね、まぁできるけど!洗礼の雨、かまいたち、雷火!」
私が一匹も漏らさず一掃するとアレクは容赦ねぇな、と笑った。マリウスはすぐに魔法で空間をスキャンする。
「…これは…。…良くねぇ状況だな、この先に魔族がいる。」
「「「!!!!」」」
私達はマリウスの言葉に目を剥いた。魔族とは魔王の眷属であり、言葉を操り高い知性を持つ。そんな存在がダンジョン内に、しかもたかだか第3層程度にいるだなんて…!
「…一度ギルドに連絡しよう。」
「あぁ、魔王復活間近なのが原因なのは明白だが一応連絡しよう。ヘレナ、通信具出してくれ。」
「うん。」
ヘレナは通信具を出してギルドに繋げた。事務員のお姉さん、ミリアムさんに繋がる。
『はい、こちら春の暁です。本日のご注文は?』
「處處 啼鳥を聞く。」
『はい、みんなお疲れ様!どうしたの?』
今のは春の暁の合言葉だ。偽物防止のため、通信の時にはこの合言葉が必要なのだ。
「こんにちはミリアムさん、こちらノウムアルゴーです。急ぎマスターに繋いでください。魔族を発見しました。」
『!了解、すぐに繋ぎます。』
ミリアムさんの表情も引き締まり、通信はすぐお父さんに繋がった。お父さんもいつもの気さくな雰囲気はなりを顰め真面目な表情だ。
『魔族が出たってどう言う事だ?』
「まず、私達は今エスカトンの第3層にいる。」
「俺が空間スキャンしたところ、魔族と思しき反応があった。第3層で魔族が出るだなんて有り得ねえ。」
「だから突っ込む前にマスターに念のため連絡したんだ。まぁどうせ止められようとこの後突っ込むけどな。」
アレクの言葉に私達は少し笑いながら頷く。
『エスカトンの第3層で…。それは異常事態だな…。…お前達、やれそうか?』
「当然。」
「ま、負ける事はねぇだろ。」
私はマリウスに渡されたポーションをぐいっと飲み干して言うとマリウスも頷いた。
「もしやばそうだったら転移して逃げるしな。」
「うん、マリウスとエミリアが大丈夫って言うならきっと大丈夫。それにせっかく来たんだからやれるところまでやってみたいです。」
『…分かった、なら通信は繋げたままで進め。本気でまずそうならAランク以上のパーティーを応援に送る。いいな?』
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そうして私達は魔族へと立ち向かっていった。
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