冒険がしたいので殿下とは結婚しません!

ルジェ*

文字の大きさ
上 下
12 / 35

学院祭②

しおりを挟む
 今日から決勝戦が始まる。本戦まではトーナメント形式で行われるが、本戦を終えると残りはだいたい6名もしくはチームくらいになるので総当たり戦となり、それで順位が決まる。今日は個人戦の決勝戦、明日はダブルスの決勝で、どちらも何名かうちのギルドのメンバーが出場する事になっている。ルス兄や殿下は個人戦に出場しているので今日が出番だ。

「ルス兄ーー!!頑張れーー!!」
「ルス負けるなーー!!!」

今日は春の暁のみんなで応援に来ていた。私はお姉ちゃんと弟2人の間に座り、目の前にはマリウスとニゲルが座っている。総当たり戦も半分が終わり、今のところルス兄は全勝している。次はルス兄と王立学院の6年生の対決だ。…あの人、確か…。

『それでは、始め!』
凍える大地ゲローソルム

ルス兄はマリウスと同じく氷属性を強く持っている。リングの床は凍りつき、リングの周囲だけ吹雪いていた。魔法を使うには魔法陣が必要なのだが、こういう氷などで凸凹した地面では魔法陣が歪んで上手く魔法を発動できないため足で魔法陣を描いたり地面に設置するのが難しくなるのだ。更に寒さのおかげで少しずつ体力が削られていく。相手はどうやら火属性ではないようなのでこの状況を打破するのはルス兄を倒す他ないだろう。両者はそれぞれ魔法を撃ち合っている。

一陣の風パルイーフ!」
花氷フロルセリオン

暫くの攻防の後、相手の巻き起こした突風の威力も相当なものだったが、ルス兄の全方向から出現させた鋭い氷柱に相手はついに倒れた。会場にわっと歓声があがる。

『お~っと、ついにアウルス選手膝をつきました!!勝者、セウェルス!』
『いやぁ、リングは寒そうですが熱い戦いでしたねー。』
『そうですね、うちのセウェルスは魔法学院の中でも特に氷属性の強い生徒の1人ですからねぇ。セウェルスー、アウルス卿ー、かっこよかったぞー!』
『両者とも素晴らしい試合をありがとうございました!アウルスはこちらで最終戦でしたね、お疲れ様でした!』

そんな実況の言葉に2人はお互い握手をしてそれぞれ観客達に礼をし、リングを後にした。

「ねぇ見た⁉︎ルスまた勝ったよ!!」
「うん、見てた見てた。すごいねぇ、ルス兄。」
「落ち着きなよクララ姉ちゃん、みんなちゃんと見てたって。」
「ルス兄、このまま優勝しそうだな!」

私達…、特にお姉ちゃんもはしゃいでいる。

「ねえ、来年はマリウスも出るでしょ?」
「そうだな…、アレクとダブルスに出ようぜって話はこの前したな。」

私が尋ねるとマリウスはそう答えた。

「わぁ、それは良いね!」
「楽しそう!」

ニゲルと私が言うとマリウスは頷いた。良いなー、私が出れるのは3年後だからなぁ。前はリウィアと一緒に出たり1人で出たりしたけど楽しかったな。

 ルス兄はその後も勝ち星をあげ、結局全戦全勝で今年の魔法個人戦部門を終えた。全ての戦いが終わると表彰式が始まる。

『続いて魔法個人戦部門です。第3位、魔法学院5年、アナスタシア・カエルム!』

リングの表彰台に上がったアナスタシアは学院長からトロフィーを受け取り握手をしていた。

『第2位、王立学院6年、アウルス・カンケル!』

彼は次期カンケル侯爵、つまりリウィアのお兄さんだ。前の時に何度かお会いした事がある。

『そして栄えある第1位は魔法学院6年、セウェルス・ドラコ!』

ワッと歓声が上がる中ルス兄は壇上で優勝者に渡される冠を被せてもらった。優勝者だけはトロフィーでなくオリーブの葉を模った冠が贈呈されるのだ。

『剣術個人戦部門第2位、王立学院4年、フレデリクス・カエサル・アーエール!』

殿下も前と同じで4年生ながらに入賞していて、トロフィーをもらっていた。…前は魔法を封じられただけで何も反撃できなかったから、今度はちゃんと物理でも強くならないと…。

「クララ。」

表彰式が終わるとルス兄はすぐにこちらに転移してきた。ルス兄はもらった冠をお姉ちゃんの頭に乗せる。

「約束通り、プレゼントするよ。気に入った?」
「ルス…!もちろんよ!最っ高にかっこよかった!」
「はは!それは良かった!」

お姉ちゃんがルス兄に抱きつくと、ルス兄はそのままお姉ちゃんを抱き上げて楽しそうにクルクルと回った。観客席から再び歓声があがる。…前もルス兄達のこれの後、優勝者が意中の人に冠をプレゼントするのが流行ったんだよなぁ。

「いいなー、僕もやって!」
「あとでお姉ちゃんがやってあげるからゴミここに入れて、フェル。」

1番下の弟、フェリクスを宥めて私達は帰る準備をする。…冠、ね。私はお母さんとルカスとフェルにそれぞれプレゼントしたけど…。そう言えばマリウスは誰にあげてたかな。ニゲル?おばさん?それとも、別の誰か?…いや、マリウスの事だし放置してたかもなぁ。

「ん、リアちゃん?どうしたの?そんな考え込んで。」
「あぁ、いや、全然大した事じゃないの。私が優勝したら誰にあげようかなって思ってただけ。」

私が笑うとルキウス兄は「優勝する前提か!」と笑う。

「当然、負けないよ。」
「まぁリアちゃんなら毎年優勝しちゃいそうだよね!」
「そうだな、エミリアならやれそうだ。けど俺らも負けねーぜ?な、マリウス!」
「当たり前だ。」

アレクの言葉にマリウスは頷いた。

「兄ちゃんがあげるとしたら誰にする?リアちゃん?」
「…、欲しいのか?」

マリウスは私を見て首を傾げた。うーん、難しいな…。

「うーん、私が4年になったら優勝は譲らないし自分の手で冠取りに行くけど、マリウスがくれるのもそれはそれで欲しい、かな?」
「…そうか。」
「良かったねリアちゃん、くれるって!」
「は?んな事言ってねぇ…」
「やったー、マリウス結婚しよう!」
「だからそういうのやめろバカ!」
「ふふ、君達は相変わらずね!」
「みんなー、帰って入賞者達のお祝いしようぜ!」
「それはするけど明日もまだ残ってるの忘れてない?俺達の応援もしてよね?俺泣いちゃうよ???」
「リア姉ちゃん、抱っこー。」
「はいはい。ねぇアレク、マリウス、この後付き合ってくれない?」
「良いぜ、俺も丁度体を動かしたいと思ってたんだ!」

私達春の暁ウェールアウローラは騒ぎながら帰路に着く。
 建国祭も無事終わりそうだし、この調子で殿下と関わらず生きていくぞ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...