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学院祭②
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今日から決勝戦が始まる。本戦まではトーナメント形式で行われるが、本戦を終えると残りはだいたい6名もしくはチームくらいになるので総当たり戦となり、それで順位が決まる。今日は個人戦の決勝戦、明日はダブルスの決勝で、どちらも何名かうちのギルドのメンバーが出場する事になっている。ルス兄や殿下は個人戦に出場しているので今日が出番だ。
「ルス兄ーー!!頑張れーー!!」
「ルス負けるなーー!!!」
今日は春の暁のみんなで応援に来ていた。私はお姉ちゃんと弟2人の間に座り、目の前にはマリウスとニゲルが座っている。総当たり戦も半分が終わり、今のところルス兄は全勝している。次はルス兄と王立学院の6年生の対決だ。…あの人、確か…。
『それでは、始め!』
「凍える大地」
ルス兄はマリウスと同じく氷属性を強く持っている。リングの床は凍りつき、リングの周囲だけ吹雪いていた。魔法を使うには魔法陣が必要なのだが、こういう氷などで凸凹した地面では魔法陣が歪んで上手く魔法を発動できないため足で魔法陣を描いたり地面に設置するのが難しくなるのだ。更に寒さのおかげで少しずつ体力が削られていく。相手はどうやら火属性ではないようなのでこの状況を打破するのはルス兄を倒す他ないだろう。両者はそれぞれ魔法を撃ち合っている。
「一陣の風!」
「花氷」
暫くの攻防の後、相手の巻き起こした突風の威力も相当なものだったが、ルス兄の全方向から出現させた鋭い氷柱に相手はついに倒れた。会場にわっと歓声があがる。
『お~っと、ついにアウルス選手膝をつきました!!勝者、セウェルス!』
『いやぁ、リングは寒そうですが熱い戦いでしたねー。』
『そうですね、うちのセウェルスは魔法学院の中でも特に氷属性の強い生徒の1人ですからねぇ。セウェルスー、アウルス卿ー、かっこよかったぞー!』
『両者とも素晴らしい試合をありがとうございました!アウルスはこちらで最終戦でしたね、お疲れ様でした!』
そんな実況の言葉に2人はお互い握手をしてそれぞれ観客達に礼をし、リングを後にした。
「ねぇ見た⁉︎ルスまた勝ったよ!!」
「うん、見てた見てた。すごいねぇ、ルス兄。」
「落ち着きなよクララ姉ちゃん、みんなちゃんと見てたって。」
「ルス兄、このまま優勝しそうだな!」
私達…、特にお姉ちゃんもはしゃいでいる。
「ねえ、来年はマリウスも出るでしょ?」
「そうだな…、アレクとダブルスに出ようぜって話はこの前したな。」
私が尋ねるとマリウスはそう答えた。
「わぁ、それは良いね!」
「楽しそう!」
ニゲルと私が言うとマリウスは頷いた。良いなー、私が出れるのは3年後だからなぁ。前はリウィアと一緒に出たり1人で出たりしたけど楽しかったな。
ルス兄はその後も勝ち星をあげ、結局全戦全勝で今年の魔法個人戦部門を終えた。全ての戦いが終わると表彰式が始まる。
『続いて魔法個人戦部門です。第3位、魔法学院5年、アナスタシア・カエルム!』
リングの表彰台に上がったアナスタシアは学院長からトロフィーを受け取り握手をしていた。
『第2位、王立学院6年、アウルス・カンケル!』
彼は次期カンケル侯爵、つまりリウィアのお兄さんだ。前の時に何度かお会いした事がある。
『そして栄えある第1位は魔法学院6年、セウェルス・ドラコ!』
ワッと歓声が上がる中ルス兄は壇上で優勝者に渡される冠を被せてもらった。優勝者だけはトロフィーでなくオリーブの葉を模った冠が贈呈されるのだ。
『剣術個人戦部門第2位、王立学院4年、フレデリクス・カエサル・アーエール!』
殿下も前と同じで4年生ながらに入賞していて、トロフィーをもらっていた。…前は魔法を封じられただけで何も反撃できなかったから、今度はちゃんと物理でも強くならないと…。
「クララ。」
表彰式が終わるとルス兄はすぐにこちらに転移してきた。ルス兄はもらった冠をお姉ちゃんの頭に乗せる。
「約束通り、プレゼントするよ。気に入った?」
「ルス…!もちろんよ!最っ高にかっこよかった!」
「はは!それは良かった!」
お姉ちゃんがルス兄に抱きつくと、ルス兄はそのままお姉ちゃんを抱き上げて楽しそうにクルクルと回った。観客席から再び歓声があがる。…前もルス兄達のこれの後、優勝者が意中の人に冠をプレゼントするのが流行ったんだよなぁ。
「いいなー、僕もやって!」
「あとでお姉ちゃんがやってあげるからゴミここに入れて、フェル。」
1番下の弟、フェリクスを宥めて私達は帰る準備をする。…冠、ね。私はお母さんとルカスとフェルにそれぞれプレゼントしたけど…。そう言えばマリウスは誰にあげてたかな。ニゲル?おばさん?それとも、別の誰か?…いや、マリウスの事だし放置してたかもなぁ。
「ん、リアちゃん?どうしたの?そんな考え込んで。」
「あぁ、いや、全然大した事じゃないの。私が優勝したら誰にあげようかなって思ってただけ。」
私が笑うとルキウス兄は「優勝する前提か!」と笑う。
「当然、負けないよ。」
「まぁリアちゃんなら毎年優勝しちゃいそうだよね!」
「そうだな、エミリアならやれそうだ。けど俺らも負けねーぜ?な、マリウス!」
「当たり前だ。」
アレクの言葉にマリウスは頷いた。
「兄ちゃんがあげるとしたら誰にする?リアちゃん?」
「…、欲しいのか?」
マリウスは私を見て首を傾げた。うーん、難しいな…。
「うーん、私が4年になったら優勝は譲らないし自分の手で冠取りに行くけど、マリウスがくれるのもそれはそれで欲しい、かな?」
「…そうか。」
「良かったねリアちゃん、くれるって!」
「は?んな事言ってねぇ…」
「やったー、マリウス結婚しよう!」
「だからそういうのやめろバカ!」
「ふふ、君達は相変わらずね!」
「みんなー、帰って入賞者達のお祝いしようぜ!」
「それはするけど明日もまだ残ってるの忘れてない?俺達の応援もしてよね?俺泣いちゃうよ???」
「リア姉ちゃん、抱っこー。」
「はいはい。ねぇアレク、マリウス、この後付き合ってくれない?」
「良いぜ、俺も丁度体を動かしたいと思ってたんだ!」
私達春の暁は騒ぎながら帰路に着く。
建国祭も無事終わりそうだし、この調子で殿下と関わらず生きていくぞ!
「ルス兄ーー!!頑張れーー!!」
「ルス負けるなーー!!!」
今日は春の暁のみんなで応援に来ていた。私はお姉ちゃんと弟2人の間に座り、目の前にはマリウスとニゲルが座っている。総当たり戦も半分が終わり、今のところルス兄は全勝している。次はルス兄と王立学院の6年生の対決だ。…あの人、確か…。
『それでは、始め!』
「凍える大地」
ルス兄はマリウスと同じく氷属性を強く持っている。リングの床は凍りつき、リングの周囲だけ吹雪いていた。魔法を使うには魔法陣が必要なのだが、こういう氷などで凸凹した地面では魔法陣が歪んで上手く魔法を発動できないため足で魔法陣を描いたり地面に設置するのが難しくなるのだ。更に寒さのおかげで少しずつ体力が削られていく。相手はどうやら火属性ではないようなのでこの状況を打破するのはルス兄を倒す他ないだろう。両者はそれぞれ魔法を撃ち合っている。
「一陣の風!」
「花氷」
暫くの攻防の後、相手の巻き起こした突風の威力も相当なものだったが、ルス兄の全方向から出現させた鋭い氷柱に相手はついに倒れた。会場にわっと歓声があがる。
『お~っと、ついにアウルス選手膝をつきました!!勝者、セウェルス!』
『いやぁ、リングは寒そうですが熱い戦いでしたねー。』
『そうですね、うちのセウェルスは魔法学院の中でも特に氷属性の強い生徒の1人ですからねぇ。セウェルスー、アウルス卿ー、かっこよかったぞー!』
『両者とも素晴らしい試合をありがとうございました!アウルスはこちらで最終戦でしたね、お疲れ様でした!』
そんな実況の言葉に2人はお互い握手をしてそれぞれ観客達に礼をし、リングを後にした。
「ねぇ見た⁉︎ルスまた勝ったよ!!」
「うん、見てた見てた。すごいねぇ、ルス兄。」
「落ち着きなよクララ姉ちゃん、みんなちゃんと見てたって。」
「ルス兄、このまま優勝しそうだな!」
私達…、特にお姉ちゃんもはしゃいでいる。
「ねえ、来年はマリウスも出るでしょ?」
「そうだな…、アレクとダブルスに出ようぜって話はこの前したな。」
私が尋ねるとマリウスはそう答えた。
「わぁ、それは良いね!」
「楽しそう!」
ニゲルと私が言うとマリウスは頷いた。良いなー、私が出れるのは3年後だからなぁ。前はリウィアと一緒に出たり1人で出たりしたけど楽しかったな。
ルス兄はその後も勝ち星をあげ、結局全戦全勝で今年の魔法個人戦部門を終えた。全ての戦いが終わると表彰式が始まる。
『続いて魔法個人戦部門です。第3位、魔法学院5年、アナスタシア・カエルム!』
リングの表彰台に上がったアナスタシアは学院長からトロフィーを受け取り握手をしていた。
『第2位、王立学院6年、アウルス・カンケル!』
彼は次期カンケル侯爵、つまりリウィアのお兄さんだ。前の時に何度かお会いした事がある。
『そして栄えある第1位は魔法学院6年、セウェルス・ドラコ!』
ワッと歓声が上がる中ルス兄は壇上で優勝者に渡される冠を被せてもらった。優勝者だけはトロフィーでなくオリーブの葉を模った冠が贈呈されるのだ。
『剣術個人戦部門第2位、王立学院4年、フレデリクス・カエサル・アーエール!』
殿下も前と同じで4年生ながらに入賞していて、トロフィーをもらっていた。…前は魔法を封じられただけで何も反撃できなかったから、今度はちゃんと物理でも強くならないと…。
「クララ。」
表彰式が終わるとルス兄はすぐにこちらに転移してきた。ルス兄はもらった冠をお姉ちゃんの頭に乗せる。
「約束通り、プレゼントするよ。気に入った?」
「ルス…!もちろんよ!最っ高にかっこよかった!」
「はは!それは良かった!」
お姉ちゃんがルス兄に抱きつくと、ルス兄はそのままお姉ちゃんを抱き上げて楽しそうにクルクルと回った。観客席から再び歓声があがる。…前もルス兄達のこれの後、優勝者が意中の人に冠をプレゼントするのが流行ったんだよなぁ。
「いいなー、僕もやって!」
「あとでお姉ちゃんがやってあげるからゴミここに入れて、フェル。」
1番下の弟、フェリクスを宥めて私達は帰る準備をする。…冠、ね。私はお母さんとルカスとフェルにそれぞれプレゼントしたけど…。そう言えばマリウスは誰にあげてたかな。ニゲル?おばさん?それとも、別の誰か?…いや、マリウスの事だし放置してたかもなぁ。
「ん、リアちゃん?どうしたの?そんな考え込んで。」
「あぁ、いや、全然大した事じゃないの。私が優勝したら誰にあげようかなって思ってただけ。」
私が笑うとルキウス兄は「優勝する前提か!」と笑う。
「当然、負けないよ。」
「まぁリアちゃんなら毎年優勝しちゃいそうだよね!」
「そうだな、エミリアならやれそうだ。けど俺らも負けねーぜ?な、マリウス!」
「当たり前だ。」
アレクの言葉にマリウスは頷いた。
「兄ちゃんがあげるとしたら誰にする?リアちゃん?」
「…、欲しいのか?」
マリウスは私を見て首を傾げた。うーん、難しいな…。
「うーん、私が4年になったら優勝は譲らないし自分の手で冠取りに行くけど、マリウスがくれるのもそれはそれで欲しい、かな?」
「…そうか。」
「良かったねリアちゃん、くれるって!」
「は?んな事言ってねぇ…」
「やったー、マリウス結婚しよう!」
「だからそういうのやめろバカ!」
「ふふ、君達は相変わらずね!」
「みんなー、帰って入賞者達のお祝いしようぜ!」
「それはするけど明日もまだ残ってるの忘れてない?俺達の応援もしてよね?俺泣いちゃうよ???」
「リア姉ちゃん、抱っこー。」
「はいはい。ねぇアレク、マリウス、この後付き合ってくれない?」
「良いぜ、俺も丁度体を動かしたいと思ってたんだ!」
私達春の暁は騒ぎながら帰路に着く。
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