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神の遺物
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「ここが星の洞窟があるっていう…。」
夏休み後半、私達ノウムアルゴーは天空の杖を手に入れるため王国の東部にある妖精の森に来ていた。天空の杖はこの妖精の森にある星の洞窟の奥深くに眠っている。──因みに勇者の持つ聖剣は龍の森にある月の湖にある。
「妖精の森は魔物もほとんど出ないみたいだから洞窟まではすぐだと思うよ。」
「洞窟の中は出るのか?」
「うーん、出るかも。」
前の時に天空の杖を手に入れたのは勇者パーティーに加わるよう打診が来てすぐの頃だったから今と随分時期が違うが、少なくとも前はそうだった。それに前の時は魔物が活発化していた時だったから今回の方が魔物が多いだなんて事はないだろう。
予想通り森の中は野生の動物がいるくらいでほとんど戦闘もなく進め、すぐに洞窟まで辿り着いた。洞窟の中に進むと洞窟内は水晶や鍾乳石、マナが固まった魔石などが生えている。濃度の高い魔石がキラキラと光を放ち、まるで星のようなので星の洞窟と名付けられたのだ。前の時は魔王の復活目前だったためここに魔族がいて邪魔をして来たのだが、今回は何事もなく進めている。
「…あれ、伝説の杖じゃね?」
「…そうだね。着いちゃった。」
「着いたな。」
「うん、誰も出て来なかったね。」
暫く進むとついに透き通った水晶の中に閉じ込められた天空の杖を見つけた。…こんなに簡単に手に入って良いのかと逆に不安に駆られる。何かの罠なんじゃ…。
「…まぁ、とりあえず取ってみれば良いんじゃねえか?」
「何かあったらその時対処すれば良いしな。」
「ていうかあれどうやって取るの?砕く?」
「違うよ。水晶に私が触れれば…」
私がそっと手を触れさせると水晶は光を放ちながら消え、杖だけが残る。私は杖を掴んだ。
「…ね?」
「おぉー。」
「すごい、これが…。」
「…なんか、お前が持つとしっくり来るな。」
「そうかな。」
マリウスの言葉にへへ、と笑う。…すると突然、ドォン、という音と共に地面が大きく揺れた。
「「「「!!??」」」」
「なんだ⁉︎」
「なんか足音みたいなの聞こえない?」
「…あっ!奥から魔物の大群が…!!」
「逃げよう!!!」
私の号令で私達は走り出す。背後からは魔猪の大群が押し寄せて来ていた。
「やっぱ怪しいと思ったのよ!!」
「どうすんだあれ!!」
「くそ、アイスウォール!!」
マリウスが割と分厚い氷の壁を作るも魔猪の大群はあっさりそれを突破してきた。
「マジかよ!」
「ええい、これでもくらえ!!」
ヘレナは魔力弾を投げる。ダメージは受けたようだが魔猪は止まらない。
「洗礼の雨!!」
洞窟が崩れないようギリギリの出力で放つと少しは脱落したが、大群はまだ追いかけて来る。
「クソ、外で叩くしかねぇな!」
「そうだね、身体強化!」
私は全員に速度が上がる強化魔法をかけて洞窟の出口へ向かった。洞窟を抜け出すと私は出てすぐの地面をぬかるませる。
「泥沼」
魔猪はドロドロの土に足を取られ、勢いを無くす。
「アイスロンヒ」
「っしゃ、燃えろ!」
マリウスの攻撃の後すかさずアレクが炎を纏わせた剣で魔猪を斬り伏せていく。ヘレナも魔力銃でアレクの援護をしていった。
「…これでトドメだ、煉獄!」
アレクは辺りを火の海にした。これで全部の魔猪を倒せたはずだ。
「…終わったな。」
「うん。みんな、お疲れ!」
「びっくりしたぁ。」
「ま、目当ての物は手に入ったし良かったじゃねーか!」
「うん、3人ともありがとう!」
私がお礼を言うとみんなはどういたしまして、と笑った。
「じゃあ帰ろうか!」
「その前にちょっと観光して行こうよ、ここの海鮮料理有名なんだよ。」
「あぁ、美味いよな!」
「なら夕飯食って帰るか。」
「そうしよう!」
そうして私達は少し観光を楽しんでギルドへと帰った。
夏休みも、あと少し。
夏休み後半、私達ノウムアルゴーは天空の杖を手に入れるため王国の東部にある妖精の森に来ていた。天空の杖はこの妖精の森にある星の洞窟の奥深くに眠っている。──因みに勇者の持つ聖剣は龍の森にある月の湖にある。
「妖精の森は魔物もほとんど出ないみたいだから洞窟まではすぐだと思うよ。」
「洞窟の中は出るのか?」
「うーん、出るかも。」
前の時に天空の杖を手に入れたのは勇者パーティーに加わるよう打診が来てすぐの頃だったから今と随分時期が違うが、少なくとも前はそうだった。それに前の時は魔物が活発化していた時だったから今回の方が魔物が多いだなんて事はないだろう。
予想通り森の中は野生の動物がいるくらいでほとんど戦闘もなく進め、すぐに洞窟まで辿り着いた。洞窟の中に進むと洞窟内は水晶や鍾乳石、マナが固まった魔石などが生えている。濃度の高い魔石がキラキラと光を放ち、まるで星のようなので星の洞窟と名付けられたのだ。前の時は魔王の復活目前だったためここに魔族がいて邪魔をして来たのだが、今回は何事もなく進めている。
「…あれ、伝説の杖じゃね?」
「…そうだね。着いちゃった。」
「着いたな。」
「うん、誰も出て来なかったね。」
暫く進むとついに透き通った水晶の中に閉じ込められた天空の杖を見つけた。…こんなに簡単に手に入って良いのかと逆に不安に駆られる。何かの罠なんじゃ…。
「…まぁ、とりあえず取ってみれば良いんじゃねえか?」
「何かあったらその時対処すれば良いしな。」
「ていうかあれどうやって取るの?砕く?」
「違うよ。水晶に私が触れれば…」
私がそっと手を触れさせると水晶は光を放ちながら消え、杖だけが残る。私は杖を掴んだ。
「…ね?」
「おぉー。」
「すごい、これが…。」
「…なんか、お前が持つとしっくり来るな。」
「そうかな。」
マリウスの言葉にへへ、と笑う。…すると突然、ドォン、という音と共に地面が大きく揺れた。
「「「「!!??」」」」
「なんだ⁉︎」
「なんか足音みたいなの聞こえない?」
「…あっ!奥から魔物の大群が…!!」
「逃げよう!!!」
私の号令で私達は走り出す。背後からは魔猪の大群が押し寄せて来ていた。
「やっぱ怪しいと思ったのよ!!」
「どうすんだあれ!!」
「くそ、アイスウォール!!」
マリウスが割と分厚い氷の壁を作るも魔猪の大群はあっさりそれを突破してきた。
「マジかよ!」
「ええい、これでもくらえ!!」
ヘレナは魔力弾を投げる。ダメージは受けたようだが魔猪は止まらない。
「洗礼の雨!!」
洞窟が崩れないようギリギリの出力で放つと少しは脱落したが、大群はまだ追いかけて来る。
「クソ、外で叩くしかねぇな!」
「そうだね、身体強化!」
私は全員に速度が上がる強化魔法をかけて洞窟の出口へ向かった。洞窟を抜け出すと私は出てすぐの地面をぬかるませる。
「泥沼」
魔猪はドロドロの土に足を取られ、勢いを無くす。
「アイスロンヒ」
「っしゃ、燃えろ!」
マリウスの攻撃の後すかさずアレクが炎を纏わせた剣で魔猪を斬り伏せていく。ヘレナも魔力銃でアレクの援護をしていった。
「…これでトドメだ、煉獄!」
アレクは辺りを火の海にした。これで全部の魔猪を倒せたはずだ。
「…終わったな。」
「うん。みんな、お疲れ!」
「びっくりしたぁ。」
「ま、目当ての物は手に入ったし良かったじゃねーか!」
「うん、3人ともありがとう!」
私がお礼を言うとみんなはどういたしまして、と笑った。
「じゃあ帰ろうか!」
「その前にちょっと観光して行こうよ、ここの海鮮料理有名なんだよ。」
「あぁ、美味いよな!」
「なら夕飯食って帰るか。」
「そうしよう!」
そうして私達は少し観光を楽しんでギルドへと帰った。
夏休みも、あと少し。
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