10 / 35
神の遺物
しおりを挟む
「ここが星の洞窟があるっていう…。」
夏休み後半、私達ノウムアルゴーは天空の杖を手に入れるため王国の東部にある妖精の森に来ていた。天空の杖はこの妖精の森にある星の洞窟の奥深くに眠っている。──因みに勇者の持つ聖剣は龍の森にある月の湖にある。
「妖精の森は魔物もほとんど出ないみたいだから洞窟まではすぐだと思うよ。」
「洞窟の中は出るのか?」
「うーん、出るかも。」
前の時に天空の杖を手に入れたのは勇者パーティーに加わるよう打診が来てすぐの頃だったから今と随分時期が違うが、少なくとも前はそうだった。それに前の時は魔物が活発化していた時だったから今回の方が魔物が多いだなんて事はないだろう。
予想通り森の中は野生の動物がいるくらいでほとんど戦闘もなく進め、すぐに洞窟まで辿り着いた。洞窟の中に進むと洞窟内は水晶や鍾乳石、マナが固まった魔石などが生えている。濃度の高い魔石がキラキラと光を放ち、まるで星のようなので星の洞窟と名付けられたのだ。前の時は魔王の復活目前だったためここに魔族がいて邪魔をして来たのだが、今回は何事もなく進めている。
「…あれ、伝説の杖じゃね?」
「…そうだね。着いちゃった。」
「着いたな。」
「うん、誰も出て来なかったね。」
暫く進むとついに透き通った水晶の中に閉じ込められた天空の杖を見つけた。…こんなに簡単に手に入って良いのかと逆に不安に駆られる。何かの罠なんじゃ…。
「…まぁ、とりあえず取ってみれば良いんじゃねえか?」
「何かあったらその時対処すれば良いしな。」
「ていうかあれどうやって取るの?砕く?」
「違うよ。水晶に私が触れれば…」
私がそっと手を触れさせると水晶は光を放ちながら消え、杖だけが残る。私は杖を掴んだ。
「…ね?」
「おぉー。」
「すごい、これが…。」
「…なんか、お前が持つとしっくり来るな。」
「そうかな。」
マリウスの言葉にへへ、と笑う。…すると突然、ドォン、という音と共に地面が大きく揺れた。
「「「「!!??」」」」
「なんだ⁉︎」
「なんか足音みたいなの聞こえない?」
「…あっ!奥から魔物の大群が…!!」
「逃げよう!!!」
私の号令で私達は走り出す。背後からは魔猪の大群が押し寄せて来ていた。
「やっぱ怪しいと思ったのよ!!」
「どうすんだあれ!!」
「くそ、アイスウォール!!」
マリウスが割と分厚い氷の壁を作るも魔猪の大群はあっさりそれを突破してきた。
「マジかよ!」
「ええい、これでもくらえ!!」
ヘレナは魔力弾を投げる。ダメージは受けたようだが魔猪は止まらない。
「洗礼の雨!!」
洞窟が崩れないようギリギリの出力で放つと少しは脱落したが、大群はまだ追いかけて来る。
「クソ、外で叩くしかねぇな!」
「そうだね、身体強化!」
私は全員に速度が上がる強化魔法をかけて洞窟の出口へ向かった。洞窟を抜け出すと私は出てすぐの地面をぬかるませる。
「泥沼」
魔猪はドロドロの土に足を取られ、勢いを無くす。
「アイスロンヒ」
「っしゃ、燃えろ!」
マリウスの攻撃の後すかさずアレクが炎を纏わせた剣で魔猪を斬り伏せていく。ヘレナも魔力銃でアレクの援護をしていった。
「…これでトドメだ、煉獄!」
アレクは辺りを火の海にした。これで全部の魔猪を倒せたはずだ。
「…終わったな。」
「うん。みんな、お疲れ!」
「びっくりしたぁ。」
「ま、目当ての物は手に入ったし良かったじゃねーか!」
「うん、3人ともありがとう!」
私がお礼を言うとみんなはどういたしまして、と笑った。
「じゃあ帰ろうか!」
「その前にちょっと観光して行こうよ、ここの海鮮料理有名なんだよ。」
「あぁ、美味いよな!」
「なら夕飯食って帰るか。」
「そうしよう!」
そうして私達は少し観光を楽しんでギルドへと帰った。
夏休みも、あと少し。
夏休み後半、私達ノウムアルゴーは天空の杖を手に入れるため王国の東部にある妖精の森に来ていた。天空の杖はこの妖精の森にある星の洞窟の奥深くに眠っている。──因みに勇者の持つ聖剣は龍の森にある月の湖にある。
「妖精の森は魔物もほとんど出ないみたいだから洞窟まではすぐだと思うよ。」
「洞窟の中は出るのか?」
「うーん、出るかも。」
前の時に天空の杖を手に入れたのは勇者パーティーに加わるよう打診が来てすぐの頃だったから今と随分時期が違うが、少なくとも前はそうだった。それに前の時は魔物が活発化していた時だったから今回の方が魔物が多いだなんて事はないだろう。
予想通り森の中は野生の動物がいるくらいでほとんど戦闘もなく進め、すぐに洞窟まで辿り着いた。洞窟の中に進むと洞窟内は水晶や鍾乳石、マナが固まった魔石などが生えている。濃度の高い魔石がキラキラと光を放ち、まるで星のようなので星の洞窟と名付けられたのだ。前の時は魔王の復活目前だったためここに魔族がいて邪魔をして来たのだが、今回は何事もなく進めている。
「…あれ、伝説の杖じゃね?」
「…そうだね。着いちゃった。」
「着いたな。」
「うん、誰も出て来なかったね。」
暫く進むとついに透き通った水晶の中に閉じ込められた天空の杖を見つけた。…こんなに簡単に手に入って良いのかと逆に不安に駆られる。何かの罠なんじゃ…。
「…まぁ、とりあえず取ってみれば良いんじゃねえか?」
「何かあったらその時対処すれば良いしな。」
「ていうかあれどうやって取るの?砕く?」
「違うよ。水晶に私が触れれば…」
私がそっと手を触れさせると水晶は光を放ちながら消え、杖だけが残る。私は杖を掴んだ。
「…ね?」
「おぉー。」
「すごい、これが…。」
「…なんか、お前が持つとしっくり来るな。」
「そうかな。」
マリウスの言葉にへへ、と笑う。…すると突然、ドォン、という音と共に地面が大きく揺れた。
「「「「!!??」」」」
「なんだ⁉︎」
「なんか足音みたいなの聞こえない?」
「…あっ!奥から魔物の大群が…!!」
「逃げよう!!!」
私の号令で私達は走り出す。背後からは魔猪の大群が押し寄せて来ていた。
「やっぱ怪しいと思ったのよ!!」
「どうすんだあれ!!」
「くそ、アイスウォール!!」
マリウスが割と分厚い氷の壁を作るも魔猪の大群はあっさりそれを突破してきた。
「マジかよ!」
「ええい、これでもくらえ!!」
ヘレナは魔力弾を投げる。ダメージは受けたようだが魔猪は止まらない。
「洗礼の雨!!」
洞窟が崩れないようギリギリの出力で放つと少しは脱落したが、大群はまだ追いかけて来る。
「クソ、外で叩くしかねぇな!」
「そうだね、身体強化!」
私は全員に速度が上がる強化魔法をかけて洞窟の出口へ向かった。洞窟を抜け出すと私は出てすぐの地面をぬかるませる。
「泥沼」
魔猪はドロドロの土に足を取られ、勢いを無くす。
「アイスロンヒ」
「っしゃ、燃えろ!」
マリウスの攻撃の後すかさずアレクが炎を纏わせた剣で魔猪を斬り伏せていく。ヘレナも魔力銃でアレクの援護をしていった。
「…これでトドメだ、煉獄!」
アレクは辺りを火の海にした。これで全部の魔猪を倒せたはずだ。
「…終わったな。」
「うん。みんな、お疲れ!」
「びっくりしたぁ。」
「ま、目当ての物は手に入ったし良かったじゃねーか!」
「うん、3人ともありがとう!」
私がお礼を言うとみんなはどういたしまして、と笑った。
「じゃあ帰ろうか!」
「その前にちょっと観光して行こうよ、ここの海鮮料理有名なんだよ。」
「あぁ、美味いよな!」
「なら夕飯食って帰るか。」
「そうしよう!」
そうして私達は少し観光を楽しんでギルドへと帰った。
夏休みも、あと少し。
1
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。
水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。
ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。
それからナタリーはずっと地味に生きてきた。
全てはノーランの為だった。
しかし、ある日それは突然裏切られた。
ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。
理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。
ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。
しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。
(婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?)
そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる