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11.初の謁見⑥

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「さて…、では約束を果たすとしよう。」

アルはそう言って人の姿から元の姿に戻った。そしてどこからともなくバングルを出現させ、私達の目の前にそれぞれ用意した。金でできた上品なデザインで、私とジェラールとで色違いの宝石が星の模様に刻まれた土台の中央にはめ込まれていた。

「まずはそれを腕にはめてみなさい。」

私達はアルに言われた通りにする。するとバングルは自動で私達の腕に合う大きさになり、宝石がきらりと光ったような気がした。

「良いな。ではひとまずそれは外して…。」

外したバングルはオンディーヌ様が預かってくださる。

「ふむ…、服はそれで良いか…。…では2人とも、準備は良いな?行くぞ。」

アルはそう言うと大きな魔法陣を描いた。時の大精霊様もふわふわと魔法陣の周りを飛んでいるので手伝っているのだろうか。眩い光と共に温かい魔力に包まれたと思うと、一度瞬きすると急に視界が変わっていた。不思議に思いジェラールの方を見ると、そこにはもう幼い少年の顔はなかった。

「…ジェール…?」
「…シャル?」

ジェラールは18くらいの青年へと変貌しており、真横にあったはずの顔は見上げなければならないようになっていた。目の色もグリーンだったのが前世と同じアンバーになっている。…本当に、成長してる…。それに声も前世と同じ、よく聞き慣れた懐かしいものになっていた。

「あらぁ、シャーリーちゃんもジェリーくんも大きくなったわね~!」
「オンディーヌ様。」
「あらあら、様なんて付けなくて良いのよ、良い子ね。」

オンディーヌ様…いや、オンディーヌさんは私達を微笑ましげに見つめた。サラマンデル様も満足げに頷いており、時の大精霊様は…、表情が見えないのでよくわからないがなんとなく感激しているような気がした。

「…あ、制服だなこれ。」
「あぁ、本当ね。」
「ほー、これがお前達の前世での服装か。」

私達はそうです、と頷こうとしてはたと気付く。…前世?今前世って言った…⁉︎

「な、何故それを⁉︎」
「?いやいや、そうじゃなきゃ5歳児がこんなに賢いはずないだろ?」
「あぁ、大丈夫よ、2人とも。この世界では星渡りって言ってね、前世の記憶を持った人が時々いるのよ。」

オンディーヌさんの言葉に私達は納得する。なるほど、星渡りってそういう事だったのね…。

(そういう事か、どうりで建物やなんかはロココ辺りのフランスなのにドライヤーがあったり水回りの設備が整っていたりすると思ったら。)
(そうね、この辺りの時代ならドレスもコルセットギチギチでパニエふわふわでレースとリボンがたくさんのはずなのに、ジゼル様や公爵家の侍女達の服装はどう見ても前世の…、20世紀以降のものでちょっと不思議だったのよね。)

「鏡出してやるよ。ほら。」

サラマンデル様はそう言って大きな鏡を出してくれて、私達は自分の姿を確認する。髪は薬の影響で朝染めた色のままだったが、目の色は輝く金色から前世と同じ茶色になっていた。

「さて、ではさっきの腕輪をして宝石の部分に触れてみなさい。」

アルに言われて私達はオンディーヌさんに預かってもらっていたバングルをはめて宝石が煌めいている部分に触れる。すると私達の姿は子どもの姿に戻った。

「おぉ。」
「すごい、戻った!」

ベールを外して鏡を見れば目の色もちゃんと金色になっていた。再びバングルに触れると18歳くらいの姿になる。──そんな風に遊んでいると公爵家からジゼル様と共に私達のそう多くはない私物が届いた。

「お兄様から事のあらましは聞いたわ。神獣様から離れないようになさい、ここは危険だから。…とはいえきっと護衛は必要ない…というか寧ろ邪魔よね、侍女は…。」
「…それは私がやるわ。」
「!!??」
「「⁉︎」」

時の大精霊様はそう言ってカッと光ったかと思うと、メイド服に身を包んだ人間の姿になった。私達ももちろん驚いているが、ジゼル様の驚きようは私達よりもすごかった。大精霊様が侍女の真似事をしようとしていることに愕然としているのだろうか。
 ──そう思っていたのだが。


「その声…、ルイーゼ…!!??」


「「え?」」

そういえばこの世界では死後星でなく精霊になるという言い伝えがあったなと、少し焦ったような表情の時の大精霊様を見てふとそう思い出したのだった。
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