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10.初の謁見⑤
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その後馬車でアンリ卿に連れられやって来たテール宮は、広大なソレーユ宮殿の敷地内にある離宮の1つだった。いつかの好色皇帝が数多いる側妃達のために建てた離宮の内の1つだそうだ。豪華絢爛なソレーユ宮殿と比べれば随分とこじんまりしているが、それでも私とジェラールの2人で暮らすには十分すぎる大きさだった。庭もよく手入れされていて広くて綺麗だし、噴水や離宮の敷地内を流れる小川の水も澄んでいて綺麗だ。それに何より広大すぎる庭園を馬車で抜けてやっと辿り着くような距離なのはありがたい、だってできるだけ皇族とは関わり合いたくないものね。
「お2人のお荷物は本日中にアケルナル公爵邸から届くそうです。」
「はい、お手数をおかけ致しまして大変申し訳ございません。」
「いえ、職務ですので。」
アンリ卿は淡々と返す。公爵はアンリ卿に私達を託し、ものすごい勢いで公爵邸へと帰って行った。あの様子だと恐らく馬車をおいて馬で王都を全力疾走しているのではないだろうか。安全運転、大事ですよ。
「それから後ほど侍女や使用人と護衛を送りますので…」
「いえ、それは要りません。」
「!」
私は食い気味に言った。皇宮の人間なんて信用できるはずがない。私だけならまだしも、ジェラールにまで危険が及ぶのは許さない。
「しかし…、」
「護衛なら我がいれば十分だろう。それに使用人は公爵邸から来るのではないか?ただでさえ不慣れな場所だ、周りの人間くらいはよく見知った者が良いだろう。」
アルがそうフォローしてくれるとアンリ卿も確かに、と納得して頷いた。
「では何かあればいつでもお申し付けください。…それでは、私はこれで。」
彼は颯爽と戻って行った。…職務に忠実な真面目な人なのだろう。
「あらあらあら、あのグリフォン様がついに契約を結んだと聞いたから見物に来てみれば…。」
突然上から綺麗な女の人の声が聞こえてきて、上を見上げる。するとそこには微笑んでいる美女がこちらにふわふわと飛んで来た。
「オンディーヌか。」
「⁉︎水の大精霊…⁉︎」
「こんなに可愛らしい子達だったなんてね。…初めまして、愛し子達。私は水の大精霊、オンディーヌ。宜しくね。」
オンディーヌ様はニコ、と笑った。この世界には精霊が存在し、それぞれ属性を持っている。そしてそれらの長のような存在が大精霊なのだ。
「ほほう、この子ども達がこれまで誰とも契約しなかったお前となぁ。星渡りか?」
「あら、サラマンドル。」
次にひらりと飛んで来たのはどうやら火の大精霊、サラマンドルのようだ。へぇ、アル、誰とも契約してなかったんだ…。…ていうかそうだ、その星渡りってなんですか?
「初めまして。シャルロット・アデルと申します。」
「初めまして、ジェラール・アラン・ド・アケルナルと申します。」
「えぇ、よろしくね。」
「あぁ、よろしく。シャルロット…長いな、シャシャと呼ぼうか、シャシャはマックスの子孫か。」
サラマンドル様は気さくな精霊のようだ。マックス…、初代皇帝だろうか。
「そうだ、初代皇帝マクシミリアンの子孫だ。」
「だよな、その目はそう言う事だよな。…だがグリフォンと契約したならこれも消えるか…?」
「?そうなのですか?」
私達が首を傾げると大精霊2人とアルは頷く。
「まぁ契約しただけならそうとも限らないんだが、2人の場合は神の寵愛を受けているからなぁ。」
「私達大精霊と神獣の立場は対等なのだけど、神獣は神により生み出された存在なのね。そして精霊は自然から生まれたもので、大精霊もそれは同じなの。神獣は神の使いとも言われていて、簡単に言えばこちらには来れない神の預言者…代理人とも言えるわ。そして私達は神に仕える存在。」
『だから、私達と神獣の立場は一応対等だけど、神獣の方が上でもある。』
新たに聞こえて来た声の音源はふわふわと浮いている光の玉みたいなものだった。…あら?この声…。
「そうね。…あぁ、この子、どうやら恥ずかしがり屋さんみたいなのよ。」
ふふ、とオンディーヌ様は笑う。
『こんにちは、かわいい子。わたくしは時の大精霊。こんな姿で申し訳ないけれど、どうぞよろしくね。』
「はい、宜しくお願いします。」
「あの、あなたはもしかして母上を…。」
『!あの時の声、届いていたのね!そうよ、ジゼル様はあなた達の事を心から思っていると伝えたかったの。』
届いて良かったわ、と彼女は心から安堵したように言った。
「…私達をずっと見守ってくださっていたのですか?」
『…えぇ。…ごめんなさい、わたくしにできる事なんてほとんどなかったのだけれど…。』
「いいえ。母上が敵ではない事を教えてくださっただけでもとてもありがたい事です。…心より感謝申し上げます。」
「本当にありがとうございます。」
私達は揃って頭を下げた。
『…いいえ。あなた達が無事で、本当に良かったわ。』
「…ともかく!俺の祝福よりも神からの影響の方が大きいから、シャシャの目の色は変わる可能性が高いって事だ。お前にとっては嬉しいかもしれんが…それはそれで皇族じゃないって貴族達が騒ぐか?」
あぁ、確かに…。その可能性はとても高いだろう。大精霊の皆様は心配そうに私達を見る。
「そこは問題ないだろう。こちらに用意がある。」
「あらぁ、流石ねぇ。」
「なら心配いらねえな!」
「さて…、では約束を果たすとしよう。」
「お2人のお荷物は本日中にアケルナル公爵邸から届くそうです。」
「はい、お手数をおかけ致しまして大変申し訳ございません。」
「いえ、職務ですので。」
アンリ卿は淡々と返す。公爵はアンリ卿に私達を託し、ものすごい勢いで公爵邸へと帰って行った。あの様子だと恐らく馬車をおいて馬で王都を全力疾走しているのではないだろうか。安全運転、大事ですよ。
「それから後ほど侍女や使用人と護衛を送りますので…」
「いえ、それは要りません。」
「!」
私は食い気味に言った。皇宮の人間なんて信用できるはずがない。私だけならまだしも、ジェラールにまで危険が及ぶのは許さない。
「しかし…、」
「護衛なら我がいれば十分だろう。それに使用人は公爵邸から来るのではないか?ただでさえ不慣れな場所だ、周りの人間くらいはよく見知った者が良いだろう。」
アルがそうフォローしてくれるとアンリ卿も確かに、と納得して頷いた。
「では何かあればいつでもお申し付けください。…それでは、私はこれで。」
彼は颯爽と戻って行った。…職務に忠実な真面目な人なのだろう。
「あらあらあら、あのグリフォン様がついに契約を結んだと聞いたから見物に来てみれば…。」
突然上から綺麗な女の人の声が聞こえてきて、上を見上げる。するとそこには微笑んでいる美女がこちらにふわふわと飛んで来た。
「オンディーヌか。」
「⁉︎水の大精霊…⁉︎」
「こんなに可愛らしい子達だったなんてね。…初めまして、愛し子達。私は水の大精霊、オンディーヌ。宜しくね。」
オンディーヌ様はニコ、と笑った。この世界には精霊が存在し、それぞれ属性を持っている。そしてそれらの長のような存在が大精霊なのだ。
「ほほう、この子ども達がこれまで誰とも契約しなかったお前となぁ。星渡りか?」
「あら、サラマンドル。」
次にひらりと飛んで来たのはどうやら火の大精霊、サラマンドルのようだ。へぇ、アル、誰とも契約してなかったんだ…。…ていうかそうだ、その星渡りってなんですか?
「初めまして。シャルロット・アデルと申します。」
「初めまして、ジェラール・アラン・ド・アケルナルと申します。」
「えぇ、よろしくね。」
「あぁ、よろしく。シャルロット…長いな、シャシャと呼ぼうか、シャシャはマックスの子孫か。」
サラマンドル様は気さくな精霊のようだ。マックス…、初代皇帝だろうか。
「そうだ、初代皇帝マクシミリアンの子孫だ。」
「だよな、その目はそう言う事だよな。…だがグリフォンと契約したならこれも消えるか…?」
「?そうなのですか?」
私達が首を傾げると大精霊2人とアルは頷く。
「まぁ契約しただけならそうとも限らないんだが、2人の場合は神の寵愛を受けているからなぁ。」
「私達大精霊と神獣の立場は対等なのだけど、神獣は神により生み出された存在なのね。そして精霊は自然から生まれたもので、大精霊もそれは同じなの。神獣は神の使いとも言われていて、簡単に言えばこちらには来れない神の預言者…代理人とも言えるわ。そして私達は神に仕える存在。」
『だから、私達と神獣の立場は一応対等だけど、神獣の方が上でもある。』
新たに聞こえて来た声の音源はふわふわと浮いている光の玉みたいなものだった。…あら?この声…。
「そうね。…あぁ、この子、どうやら恥ずかしがり屋さんみたいなのよ。」
ふふ、とオンディーヌ様は笑う。
『こんにちは、かわいい子。わたくしは時の大精霊。こんな姿で申し訳ないけれど、どうぞよろしくね。』
「はい、宜しくお願いします。」
「あの、あなたはもしかして母上を…。」
『!あの時の声、届いていたのね!そうよ、ジゼル様はあなた達の事を心から思っていると伝えたかったの。』
届いて良かったわ、と彼女は心から安堵したように言った。
「…私達をずっと見守ってくださっていたのですか?」
『…えぇ。…ごめんなさい、わたくしにできる事なんてほとんどなかったのだけれど…。』
「いいえ。母上が敵ではない事を教えてくださっただけでもとてもありがたい事です。…心より感謝申し上げます。」
「本当にありがとうございます。」
私達は揃って頭を下げた。
『…いいえ。あなた達が無事で、本当に良かったわ。』
「…ともかく!俺の祝福よりも神からの影響の方が大きいから、シャシャの目の色は変わる可能性が高いって事だ。お前にとっては嬉しいかもしれんが…それはそれで皇族じゃないって貴族達が騒ぐか?」
あぁ、確かに…。その可能性はとても高いだろう。大精霊の皆様は心配そうに私達を見る。
「そこは問題ないだろう。こちらに用意がある。」
「あらぁ、流石ねぇ。」
「なら心配いらねえな!」
「さて…、では約束を果たすとしよう。」
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