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9.初の謁見④
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『うむ。2人はこれが3度目であるな?』
「「!」」
まさかそこまで知っているなんて…。アルはエスパーだった…?
『2度目の人生を迎えた時に仁平とりんが再び出会えたのは、2人の互いを想う気持ちが強かったからだ。想いの強さが2人を引きつけた。…それを、我らの神は大層お気に召したようでな。神はうぬらをずっと見守り応援していたのだ。』
「「…。」」
私と仁平さんは予想外の展開に開いた口が塞がらなかった。神が、私達を見守っていた…?
『しかし、不運なことに神がほんの少し目を離した隙に事故に遭ってしまい、汝等は命を落とした。…神は大層悲しまれた。そして2人を不憫がった。あの時代なら幸せになれるであろうと誰もが思っていたのにそのような不運な目に遭ってしまったからな。…そこで神はもう一度、今度こそは2人が幸せになれるようにと同じポイントに2人を転生させた。それがここである。…しかし、我らが神はどうにも抜けている部分があってな…。2人をとんでもない環境に押し込めてしまった。』
アルはやれやれ、と言ったようにため息をついた。…なるほど、つまり神様は天然ドジっ子…?
『我は別に神が何をしようといつもの事だから気に止めないのだが…。…神がここまで構う汝等に少し興味を持ったのでこうして会いに来たという訳だ。…うむ、神が気に入るだけあり質のよい魔力を持っているな。心の清らかな者の証だ。』
アルはニコッと笑った。
『2人とも、左手の甲を見てみなさい。』
私達は言われた通りにすると、そこには今までは無かった紋章のようなものが浮かび上がっていた。…こういうのって大体あれよね。ゲームとかでよくあるやつ。
「これは…、もしかして契約の証とかですか?」
『その通りだ。我はいつでも汝等に力を貸そう。まぁ、そのかわり汝等からは少し魔力をもらう事になるが…主は2人おるから1人1人の負担は軽くなるし、それだけの魔力を持っていれば気にする必要はないだろう。』
「…はい。ありがとうございます。」
『礼を言う必要はない。汝等の魔力は心地よい。』
アルはふっと微笑んだ。…外に出てこんな風に微笑みかけてくれるのは、アルが初めてだった。
『それから…、汝等はこの先どう生きて行きたい?理不尽を押し付けて来た貴族共に復讐するか?それとも逃げるか?汝等の実力をここで証明して見返してやるか?』
アルはそう尋ねて来た。…恐らく、この契約の事を皇帝達に教えるか否か、という話だろう。私とジェラールは目を見合わせ頷く。
「…実は、ある程度体力や力が着いたら国を出て冒険者をしながら自由に生きようと思っています。」
『うむ、それは良いな。では我との契約の事は他言せぬように。ただ…そうさな、側にいる必要はある故、汝等の魂が不安定だから我が側で見守るという事にしよう。』
「分かりました。」
私達が頷くとアルも頷いた。
『…さて、そろそろアンセルムの奴がイライラし出したから結界を解くとしよう。』
「結界?ですか?」
『あぁ、音を遮断する結界を張っておいたので我々の会話は向こうからは聞こえんし、逆もまた然りだ。』
なるほど…、やたら静かだと思ったらそういう事だったのね…。
フワッとそよ風が頬を撫でたと思うと、急に公爵の声が聞こえてきた。
「一体彼らは何をして…」
「む、戻ったか。」
皇帝は私達を見てそう言った。…へぇ、結界が解けたの分かるんだ。魔法の訓練をしたら私も分かるようになるのかな。
「ジェラール、シャルロット!無事か?」
「たわけ、我が幼子に何かするはずなかろう。」
「は、これは失礼を。」
背後でアルがそう言うが、何か気配が変わったような気がしたので振り返るとそこには美しい金髪の青年が呆れたような表情で佇んでいた。
「「⁉︎」」
「まぁ良い、子を心配するのも親の道理か。…あぁ驚かせたか、この姿に変化すれば人間と会話することができるのだ。…汝等のように変化しておらぬ我の言葉を理解できる者はとても貴重なのだぞ。」
「そ、そう…なのですか…?」
アルはこそっと私達に耳打ちした。…まぁ確かに、ファンタジーの世界ではよくある設定だけど。これも神の寵愛の影響…?
「アンセルム。この子ども達は星渡りだ。」
「「「!」」」
「だが魂が不安定でな。少し危険な状況故、我が暫く側で魂を安定させる。」
アルが告げると陛下は大層驚かれたようで玉座から腰を浮かした。公爵や推定貴族の人、騎士様方も目を大きく見開いている。
「そんな事があるのか…。…危険の程度は?お前だけでなんとかなるのか?」
「そこは心配無用だ、我に任せよ。」
皇帝は何か考えるような、迷うような表情で再びそっと玉座に腰を下ろした。
「…そうか…。…分かった、ならば2人共、神獣と共に南のテール宮で過ごすと良いだろう。良いな、公爵。」
「…御意。」
公爵は頷いた…というか、頷くしかなかった。…私達が皇宮で暮らす…?冗談でしょ?私は、この国の皇妃を殺そうとした女の娘なのに?生まれてきてはいけなかった存在なのに?憎くて仕方ないはずなのに、どうして側においておくの?アルに公爵邸に来てもらうのはダメなの?
(…アルにいてもらわなくてはならない理由でもあるのか、それともアケルナル公爵家を警戒しての事か、力を持たせすぎないためなのか…。)
ジェラールも不思議そうにしていた。が、私達にはもうどうにもできないので今は大人しく従うしかないだろう。…事件の被害者とその家族である皇族がいるここは私にとってあの離れ以上に居心地の悪い場所なのは明白だが、ジェラールと一緒にいられるのなら良しとしよう。アルがいて私達も大人の姿になれるのならある程度自分の身は守れるし、ここにはジェラールを蔑ろにするような人間はいないはずだ。
「「!」」
まさかそこまで知っているなんて…。アルはエスパーだった…?
『2度目の人生を迎えた時に仁平とりんが再び出会えたのは、2人の互いを想う気持ちが強かったからだ。想いの強さが2人を引きつけた。…それを、我らの神は大層お気に召したようでな。神はうぬらをずっと見守り応援していたのだ。』
「「…。」」
私と仁平さんは予想外の展開に開いた口が塞がらなかった。神が、私達を見守っていた…?
『しかし、不運なことに神がほんの少し目を離した隙に事故に遭ってしまい、汝等は命を落とした。…神は大層悲しまれた。そして2人を不憫がった。あの時代なら幸せになれるであろうと誰もが思っていたのにそのような不運な目に遭ってしまったからな。…そこで神はもう一度、今度こそは2人が幸せになれるようにと同じポイントに2人を転生させた。それがここである。…しかし、我らが神はどうにも抜けている部分があってな…。2人をとんでもない環境に押し込めてしまった。』
アルはやれやれ、と言ったようにため息をついた。…なるほど、つまり神様は天然ドジっ子…?
『我は別に神が何をしようといつもの事だから気に止めないのだが…。…神がここまで構う汝等に少し興味を持ったのでこうして会いに来たという訳だ。…うむ、神が気に入るだけあり質のよい魔力を持っているな。心の清らかな者の証だ。』
アルはニコッと笑った。
『2人とも、左手の甲を見てみなさい。』
私達は言われた通りにすると、そこには今までは無かった紋章のようなものが浮かび上がっていた。…こういうのって大体あれよね。ゲームとかでよくあるやつ。
「これは…、もしかして契約の証とかですか?」
『その通りだ。我はいつでも汝等に力を貸そう。まぁ、そのかわり汝等からは少し魔力をもらう事になるが…主は2人おるから1人1人の負担は軽くなるし、それだけの魔力を持っていれば気にする必要はないだろう。』
「…はい。ありがとうございます。」
『礼を言う必要はない。汝等の魔力は心地よい。』
アルはふっと微笑んだ。…外に出てこんな風に微笑みかけてくれるのは、アルが初めてだった。
『それから…、汝等はこの先どう生きて行きたい?理不尽を押し付けて来た貴族共に復讐するか?それとも逃げるか?汝等の実力をここで証明して見返してやるか?』
アルはそう尋ねて来た。…恐らく、この契約の事を皇帝達に教えるか否か、という話だろう。私とジェラールは目を見合わせ頷く。
「…実は、ある程度体力や力が着いたら国を出て冒険者をしながら自由に生きようと思っています。」
『うむ、それは良いな。では我との契約の事は他言せぬように。ただ…そうさな、側にいる必要はある故、汝等の魂が不安定だから我が側で見守るという事にしよう。』
「分かりました。」
私達が頷くとアルも頷いた。
『…さて、そろそろアンセルムの奴がイライラし出したから結界を解くとしよう。』
「結界?ですか?」
『あぁ、音を遮断する結界を張っておいたので我々の会話は向こうからは聞こえんし、逆もまた然りだ。』
なるほど…、やたら静かだと思ったらそういう事だったのね…。
フワッとそよ風が頬を撫でたと思うと、急に公爵の声が聞こえてきた。
「一体彼らは何をして…」
「む、戻ったか。」
皇帝は私達を見てそう言った。…へぇ、結界が解けたの分かるんだ。魔法の訓練をしたら私も分かるようになるのかな。
「ジェラール、シャルロット!無事か?」
「たわけ、我が幼子に何かするはずなかろう。」
「は、これは失礼を。」
背後でアルがそう言うが、何か気配が変わったような気がしたので振り返るとそこには美しい金髪の青年が呆れたような表情で佇んでいた。
「「⁉︎」」
「まぁ良い、子を心配するのも親の道理か。…あぁ驚かせたか、この姿に変化すれば人間と会話することができるのだ。…汝等のように変化しておらぬ我の言葉を理解できる者はとても貴重なのだぞ。」
「そ、そう…なのですか…?」
アルはこそっと私達に耳打ちした。…まぁ確かに、ファンタジーの世界ではよくある設定だけど。これも神の寵愛の影響…?
「アンセルム。この子ども達は星渡りだ。」
「「「!」」」
「だが魂が不安定でな。少し危険な状況故、我が暫く側で魂を安定させる。」
アルが告げると陛下は大層驚かれたようで玉座から腰を浮かした。公爵や推定貴族の人、騎士様方も目を大きく見開いている。
「そんな事があるのか…。…危険の程度は?お前だけでなんとかなるのか?」
「そこは心配無用だ、我に任せよ。」
皇帝は何か考えるような、迷うような表情で再びそっと玉座に腰を下ろした。
「…そうか…。…分かった、ならば2人共、神獣と共に南のテール宮で過ごすと良いだろう。良いな、公爵。」
「…御意。」
公爵は頷いた…というか、頷くしかなかった。…私達が皇宮で暮らす…?冗談でしょ?私は、この国の皇妃を殺そうとした女の娘なのに?生まれてきてはいけなかった存在なのに?憎くて仕方ないはずなのに、どうして側においておくの?アルに公爵邸に来てもらうのはダメなの?
(…アルにいてもらわなくてはならない理由でもあるのか、それともアケルナル公爵家を警戒しての事か、力を持たせすぎないためなのか…。)
ジェラールも不思議そうにしていた。が、私達にはもうどうにもできないので今は大人しく従うしかないだろう。…事件の被害者とその家族である皇族がいるここは私にとってあの離れ以上に居心地の悪い場所なのは明白だが、ジェラールと一緒にいられるのなら良しとしよう。アルがいて私達も大人の姿になれるのならある程度自分の身は守れるし、ここにはジェラールを蔑ろにするような人間はいないはずだ。
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