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8.初の謁見③
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「へ、陛下⁉︎」
頭を抱えていた陛下は突然とんでもない事を言った。公爵は驚いていて、推定貴族の人はため息を吐く。
「え?え??あの、」
「アンリ。」
「は。皇女殿下、こちらへ。」
私は先程ものすごい殺気を出していた黒髪で無表情の騎士様にひょいと抱き上げられた。
「え?待って、ジェラールは?嫌、離して、ジェール!!!」
「シャル、」
「姫様危ないですので…!」
「お願いだから離してください!!ジェラールがいなきゃ嫌!!」
「陛下、シャルロットを皇宮に1人になどできません!公爵家が信用ならないならせめてジゼルに相談を…!」
私がいなくなったら彼は1人になってしまう。私達はお互いがいたからこれまでの仕打ちにも耐えられたのであって、いくら三度目の人生で中身は通算40歳を超えているとはいえ1人じゃ絶対に無理だ。今彼を1人にしたら彼は…、……いや、違った。ジゼル様は敵じゃなかったから、ジェラールはもう大丈夫だ。
───あぁ、そっか。もう彼は、大丈夫なんだ。
「…憎まれて嫌われて恨まれているのは、私だけね…。」
「「「……!」」」
私はぽつりと呟く。…そう、ジェラールにはもう守ってくれる親がいる。ならみんなから嫌われている私は離れた方が良いだろう。私といてはジェラールまで命を狙われてしまうかもしれない。…久々に胸がズキズキと痛むが、彼が傷つけられるよりは…。
「…取り乱してしまい申し訳ございませんでした、やはり私1人で…」
「シャルロット。」
ジェラールはコツコツとこちらに近付いてきた。騎士様…、アンリ卿はそっと私を床に下ろす。
「…ジェール、」
「大丈夫だ。俺はここにいる。」
ジェラールはギュッと私を抱きしめ優しく背中をさすった。じわ、と涙が出てくる。
「…すまない。俺がもっと強ければ…。こんな栄養も足りてない子どもの身体じゃなければ、お前を守れたのに。」
違う、貴方は悪くない、という意味を込めて私は首を横に振った。それに貴方がいてくれて私がどれだけ助かっている事か。
「…早く丈夫な男にならなければこの先お前を守ることも叶わん。…早く、大人になれれば良いのにな。」
「…じ、」
『ふむ。その願い、叶えてやろうか。』
「「⁉︎」」
突如響いた重くて威厳のある声に私達は顔を上げた。するとなんと、空中には大きくて神々しい姿のグリフォンが私達を見下ろしていた。
「こ、これは…!」
「神獣…⁉︎」
「ほう、神獣を知っているか。」
陛下は少し意外そうに呟いた。
「はい、本で読みました…。まさか神獣に会えるだなんて…。」
『さて、どうする?我ならその程度容易いことであるが。』
ふわりと神獣は床に着地し私達を見据えた。視界の隅では公爵が口をパクパクさせているがどうやら声が出ないらしい。神獣様が何か魔法を使ったのだろう。
「…はい。可能なのであればお願いしたく存じます。」
「わたくしも同じくお願いしとうございます。対価は何でございましょうか?」
『対価など求めておらぬ。我の気まぐれと取るが良い。…いや、そうさな、1つこちらからの頼みを聞いてもらおうか。』
「…何でしょう?」
『我に名前をつけてはもらえぬか?』
「「…。」」
私達は豆鉄砲を食らった鳩のように神獣様を見つめた。な、名前?そんな事でいいの?
(どうする?何かの罠だったりとかするのかしら?)
(いや、そんな雰囲気はしないが…。むしろ俺達に好意的な印象だ。)
(そうよね…。…じゃあ名前…考える?)
(そう、だな…。)
「そうですね…。鷲とライオンだから…レオ、とか…?いや、鷲…、…アルの方が良いでしょうか?」
『ふむ、悪くない。それでは汝等の名は?』
「ジェラール・アラン・ド・アケルナルと申します。」
「わたくしはシャルロット・アデルと。」
『そうではない。…汝等の真の名は?』
「?真の…?……まさかそれって、」
私が問うと彼は柔らかく微笑みながら頷いた。そんな、まさか。神獣様は分かっている…?
「…仁平と申します。」
「私はりんと申します。」
『よろしい。…我、アルはその名を以ていつ如何なる時も神に愛されし子・仁平及びりんに応えん。我が力は汝の下に。汝の力は我が下に。』
アル様がそう言うと、私達はふわりと温かい魔力に包まれた。そしてまるで雪が溶けていくようにふっと消えていった。
「これは…。」
『汝等と契約を結んだ。これから我の主は汝等2人だ。』
「「⁉︎」」
契約…⁉︎神の使いである神獣様がどうしてこんな子どもと契約を…⁉︎っていうか神に愛されし子ってどう言う事なのかしら。ただの常套句?それとも何か意味がある?
「アル様。」
『様は要らぬ。』
「では、アル。神に愛されし子、というのはどういう事ですか?」
『うむ。2人はこれが3度目であるな?』
「「!」」
頭を抱えていた陛下は突然とんでもない事を言った。公爵は驚いていて、推定貴族の人はため息を吐く。
「え?え??あの、」
「アンリ。」
「は。皇女殿下、こちらへ。」
私は先程ものすごい殺気を出していた黒髪で無表情の騎士様にひょいと抱き上げられた。
「え?待って、ジェラールは?嫌、離して、ジェール!!!」
「シャル、」
「姫様危ないですので…!」
「お願いだから離してください!!ジェラールがいなきゃ嫌!!」
「陛下、シャルロットを皇宮に1人になどできません!公爵家が信用ならないならせめてジゼルに相談を…!」
私がいなくなったら彼は1人になってしまう。私達はお互いがいたからこれまでの仕打ちにも耐えられたのであって、いくら三度目の人生で中身は通算40歳を超えているとはいえ1人じゃ絶対に無理だ。今彼を1人にしたら彼は…、……いや、違った。ジゼル様は敵じゃなかったから、ジェラールはもう大丈夫だ。
───あぁ、そっか。もう彼は、大丈夫なんだ。
「…憎まれて嫌われて恨まれているのは、私だけね…。」
「「「……!」」」
私はぽつりと呟く。…そう、ジェラールにはもう守ってくれる親がいる。ならみんなから嫌われている私は離れた方が良いだろう。私といてはジェラールまで命を狙われてしまうかもしれない。…久々に胸がズキズキと痛むが、彼が傷つけられるよりは…。
「…取り乱してしまい申し訳ございませんでした、やはり私1人で…」
「シャルロット。」
ジェラールはコツコツとこちらに近付いてきた。騎士様…、アンリ卿はそっと私を床に下ろす。
「…ジェール、」
「大丈夫だ。俺はここにいる。」
ジェラールはギュッと私を抱きしめ優しく背中をさすった。じわ、と涙が出てくる。
「…すまない。俺がもっと強ければ…。こんな栄養も足りてない子どもの身体じゃなければ、お前を守れたのに。」
違う、貴方は悪くない、という意味を込めて私は首を横に振った。それに貴方がいてくれて私がどれだけ助かっている事か。
「…早く丈夫な男にならなければこの先お前を守ることも叶わん。…早く、大人になれれば良いのにな。」
「…じ、」
『ふむ。その願い、叶えてやろうか。』
「「⁉︎」」
突如響いた重くて威厳のある声に私達は顔を上げた。するとなんと、空中には大きくて神々しい姿のグリフォンが私達を見下ろしていた。
「こ、これは…!」
「神獣…⁉︎」
「ほう、神獣を知っているか。」
陛下は少し意外そうに呟いた。
「はい、本で読みました…。まさか神獣に会えるだなんて…。」
『さて、どうする?我ならその程度容易いことであるが。』
ふわりと神獣は床に着地し私達を見据えた。視界の隅では公爵が口をパクパクさせているがどうやら声が出ないらしい。神獣様が何か魔法を使ったのだろう。
「…はい。可能なのであればお願いしたく存じます。」
「わたくしも同じくお願いしとうございます。対価は何でございましょうか?」
『対価など求めておらぬ。我の気まぐれと取るが良い。…いや、そうさな、1つこちらからの頼みを聞いてもらおうか。』
「…何でしょう?」
『我に名前をつけてはもらえぬか?』
「「…。」」
私達は豆鉄砲を食らった鳩のように神獣様を見つめた。な、名前?そんな事でいいの?
(どうする?何かの罠だったりとかするのかしら?)
(いや、そんな雰囲気はしないが…。むしろ俺達に好意的な印象だ。)
(そうよね…。…じゃあ名前…考える?)
(そう、だな…。)
「そうですね…。鷲とライオンだから…レオ、とか…?いや、鷲…、…アルの方が良いでしょうか?」
『ふむ、悪くない。それでは汝等の名は?』
「ジェラール・アラン・ド・アケルナルと申します。」
「わたくしはシャルロット・アデルと。」
『そうではない。…汝等の真の名は?』
「?真の…?……まさかそれって、」
私が問うと彼は柔らかく微笑みながら頷いた。そんな、まさか。神獣様は分かっている…?
「…仁平と申します。」
「私はりんと申します。」
『よろしい。…我、アルはその名を以ていつ如何なる時も神に愛されし子・仁平及びりんに応えん。我が力は汝の下に。汝の力は我が下に。』
アル様がそう言うと、私達はふわりと温かい魔力に包まれた。そしてまるで雪が溶けていくようにふっと消えていった。
「これは…。」
『汝等と契約を結んだ。これから我の主は汝等2人だ。』
「「⁉︎」」
契約…⁉︎神の使いである神獣様がどうしてこんな子どもと契約を…⁉︎っていうか神に愛されし子ってどう言う事なのかしら。ただの常套句?それとも何か意味がある?
「アル様。」
『様は要らぬ。』
「では、アル。神に愛されし子、というのはどういう事ですか?」
『うむ。2人はこれが3度目であるな?』
「「!」」
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