17 / 17
エピローグ
しおりを挟む
「それでね?酷いのよ、あの人ったら!私があんなに楽しみにしていたタルトを…!!!」
ぐぬぬ、と悔しそうにしているグラシアにセシリアはあはは!とおかしそうに笑う。
今日は久しぶりのお茶会だった。急に決まったお茶会だったので参加者はわたくしとグラシア、それからセシリアだけだったが、それでもこうして共にテーブルを囲むのはなんだかとても賑やかで懐かしい気分になる。
「ふふ、仲良くやっているようで何よりだわ。」
「どこが!!!」
「ふふっ。」
「あはは、本当、相変わらずのようで安心しました。」
「もう!…セシリアも、ウィルフレッド様と相変わらず仲良くやっているようね。お子さんは元気?」
「えぇ、元気過ぎて困っているくらいですよ。昨日もお義母様とお散歩しに行ったかと思えばずぶ濡れで慌てた様子の侍従に抱えられて戻って来て…。」
やれやれと言った様子のセシリアは、ウィルフレッド卿と盛大で当時では斬新な、今では大流行している形式の結婚式を挙げた後すぐに学生でありながら見習いとして魔法師団で働き始めた。渡り人としての知識なのかたくさんの画期的な魔道具を考案したり魔物を討伐しまくったりと初っ端から目覚ましい活躍を遂げた彼女は、卒業後新たに創設された魔法師団の特殊部隊、零番隊の副隊長に任命された。もちろん隊長はウィルフレッド卿である。ニコラス様達とも上手くやっているようだし、3歳になるお子さんもお2人の血を受け継いで莫大な魔力と天才的なセンスを既に見せているそうで逆に狙われないかと心配になってしまう。
「ふふ、可愛いじゃない。けど親は大変よね。…レティはどう?身体は平気?」
「ふふ、大丈夫よ。むしろ皆少し過保護で、する事がなくて暇すぎるくらいかしら。」
わたくしは膨らんだお腹をそっと撫でる。…あの後、少し時間がかかってしまったがわたくしはついに王太子妃となりディエゴ殿下と共にこの国を支え守る事にした。一度は第二王子と婚約していたわたくしを世間が許すかと心配だったが、殿下やお父様達が根回ししておいてくださったのか意外ととても祝福されて安堵したのがついこの前の事のようだ。
「あはは、ディエゴ殿下らしいですね。」
「平和そうで安心したわ。」
そう笑うグラシアもオルキデア伯爵家と古くから親交がある侯爵家のご長男と昨年結婚し、仲良くやっているようだ。ラウラもアリシア様もそれぞれ良い方と結婚し、アリシア様は魔法師団でも活躍している。…あのパーティーでの騒動から5年。わたくし達の立場もこの国も、随分と変わった。きっとこれからもどんどん変わっていくのだろう。
───だけど。
「レティ!」
「あら、ヤゴ。」
「殿下。ご機嫌よう。」
「殿下にご挨拶申し上げます。」
「やぁ、ご夫人方。楽にしてくれ、セシリアも辛いだろう?」
ディエゴ殿下…、ヤゴの言葉にわたくしとグラシアは首を傾げるがセシリアは少し呆れたように殿下、と言う。
「人の子はこの程度で死んでしまう程脆くはないのですよ。寧ろ、少しは運動しないと身体に良くないんですから。」
「だとしてもシシーの少しは全然少しじゃないからダメだよ。」
「うわ、ウィル。」
ヤゴの背後から現れたのはウィルフレッド卿だった。…もしかしてセシリア…、
「…おめでたなの?」
「あはは…、安定したらお伝えしようと思っていたのですが。」
「まぁ、おめでとう!…卿もおめでとう、良かったわね!」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます、レティシア殿下。」
「そうだったのね、おめでとう!じゃあまたうちのハーブティー送るわね。」
グラシアが言うとセシリアは嬉しいです!と顔を綻ばせた。オルキデア領のハーブティーはとても香りが良く大人気なのだ。
「ところでお2人は何故こちらへ?何かございまして?」
「あぁそうだ、母上が昨日のお茶会で珍しいフルーツを貰ったから3人も一緒にどうかと言っていてな。ついでにセシリアが良い食べ方も知っていればラッキー、とも。」
「俺は偶然そこで殿下と遭遇したので護衛ついでに。」
「なるほど。」
「まぁ、是非。」
「うーん、分かるとは限りませんよ?」
わたくしはヤゴの手を取り、歩き出す。セシリアを抱えて行こうとするウィルフレッド卿をセシリアが「このくらい歩いたって死にやしないわよ⁉︎」と怒っており、すかさずわたくしを抱き上げたヤゴにも「殿下!張り合わなくて良いですから!そのくらいは歩かせてください!!健康に悪い!!!」と叱った。兄妹のようなヤゴとセシリア、ウィルフレッド卿の掛け合いはいつ見ても楽しくて、実は結構好きだったりする。残念そうにしつつわたくしを降ろすヤゴにわたくしとグラシアは笑ってしまい、わたくし達は賑やかにイボンヌ様の元へと向かう。
多くの事が変わって、この先もきっとどんどん変わっていくだろうけれど。それでも、わたくし達の絆がこの先もずっと変わらずに…そして、生まれてくる子ども達が笑って過ごせると良いなと思うのだった。
ぐぬぬ、と悔しそうにしているグラシアにセシリアはあはは!とおかしそうに笑う。
今日は久しぶりのお茶会だった。急に決まったお茶会だったので参加者はわたくしとグラシア、それからセシリアだけだったが、それでもこうして共にテーブルを囲むのはなんだかとても賑やかで懐かしい気分になる。
「ふふ、仲良くやっているようで何よりだわ。」
「どこが!!!」
「ふふっ。」
「あはは、本当、相変わらずのようで安心しました。」
「もう!…セシリアも、ウィルフレッド様と相変わらず仲良くやっているようね。お子さんは元気?」
「えぇ、元気過ぎて困っているくらいですよ。昨日もお義母様とお散歩しに行ったかと思えばずぶ濡れで慌てた様子の侍従に抱えられて戻って来て…。」
やれやれと言った様子のセシリアは、ウィルフレッド卿と盛大で当時では斬新な、今では大流行している形式の結婚式を挙げた後すぐに学生でありながら見習いとして魔法師団で働き始めた。渡り人としての知識なのかたくさんの画期的な魔道具を考案したり魔物を討伐しまくったりと初っ端から目覚ましい活躍を遂げた彼女は、卒業後新たに創設された魔法師団の特殊部隊、零番隊の副隊長に任命された。もちろん隊長はウィルフレッド卿である。ニコラス様達とも上手くやっているようだし、3歳になるお子さんもお2人の血を受け継いで莫大な魔力と天才的なセンスを既に見せているそうで逆に狙われないかと心配になってしまう。
「ふふ、可愛いじゃない。けど親は大変よね。…レティはどう?身体は平気?」
「ふふ、大丈夫よ。むしろ皆少し過保護で、する事がなくて暇すぎるくらいかしら。」
わたくしは膨らんだお腹をそっと撫でる。…あの後、少し時間がかかってしまったがわたくしはついに王太子妃となりディエゴ殿下と共にこの国を支え守る事にした。一度は第二王子と婚約していたわたくしを世間が許すかと心配だったが、殿下やお父様達が根回ししておいてくださったのか意外ととても祝福されて安堵したのがついこの前の事のようだ。
「あはは、ディエゴ殿下らしいですね。」
「平和そうで安心したわ。」
そう笑うグラシアもオルキデア伯爵家と古くから親交がある侯爵家のご長男と昨年結婚し、仲良くやっているようだ。ラウラもアリシア様もそれぞれ良い方と結婚し、アリシア様は魔法師団でも活躍している。…あのパーティーでの騒動から5年。わたくし達の立場もこの国も、随分と変わった。きっとこれからもどんどん変わっていくのだろう。
───だけど。
「レティ!」
「あら、ヤゴ。」
「殿下。ご機嫌よう。」
「殿下にご挨拶申し上げます。」
「やぁ、ご夫人方。楽にしてくれ、セシリアも辛いだろう?」
ディエゴ殿下…、ヤゴの言葉にわたくしとグラシアは首を傾げるがセシリアは少し呆れたように殿下、と言う。
「人の子はこの程度で死んでしまう程脆くはないのですよ。寧ろ、少しは運動しないと身体に良くないんですから。」
「だとしてもシシーの少しは全然少しじゃないからダメだよ。」
「うわ、ウィル。」
ヤゴの背後から現れたのはウィルフレッド卿だった。…もしかしてセシリア…、
「…おめでたなの?」
「あはは…、安定したらお伝えしようと思っていたのですが。」
「まぁ、おめでとう!…卿もおめでとう、良かったわね!」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます、レティシア殿下。」
「そうだったのね、おめでとう!じゃあまたうちのハーブティー送るわね。」
グラシアが言うとセシリアは嬉しいです!と顔を綻ばせた。オルキデア領のハーブティーはとても香りが良く大人気なのだ。
「ところでお2人は何故こちらへ?何かございまして?」
「あぁそうだ、母上が昨日のお茶会で珍しいフルーツを貰ったから3人も一緒にどうかと言っていてな。ついでにセシリアが良い食べ方も知っていればラッキー、とも。」
「俺は偶然そこで殿下と遭遇したので護衛ついでに。」
「なるほど。」
「まぁ、是非。」
「うーん、分かるとは限りませんよ?」
わたくしはヤゴの手を取り、歩き出す。セシリアを抱えて行こうとするウィルフレッド卿をセシリアが「このくらい歩いたって死にやしないわよ⁉︎」と怒っており、すかさずわたくしを抱き上げたヤゴにも「殿下!張り合わなくて良いですから!そのくらいは歩かせてください!!健康に悪い!!!」と叱った。兄妹のようなヤゴとセシリア、ウィルフレッド卿の掛け合いはいつ見ても楽しくて、実は結構好きだったりする。残念そうにしつつわたくしを降ろすヤゴにわたくしとグラシアは笑ってしまい、わたくし達は賑やかにイボンヌ様の元へと向かう。
多くの事が変わって、この先もきっとどんどん変わっていくだろうけれど。それでも、わたくし達の絆がこの先もずっと変わらずに…そして、生まれてくる子ども達が笑って過ごせると良いなと思うのだった。
51
お気に入りに追加
765
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説

何故恋愛結婚だけが幸せだと思うのか理解できませんわ
章槻雅希
ファンタジー
公爵令嬢のファラーシャは男爵家庶子のラーケサに婚約者カティーブとの婚約を解消するように迫られる。
理由はカティーブとラーケサは愛し合っており、愛し合っている二人が結ばれるのは当然で、カティーブとラーケサが結婚しラーケサが侯爵夫人となるのが正しいことだからとのこと。
しかし、ファラーシャにはその主張が全く理解できなかった。ついでにカティーブもラーケサの主張が理解できなかった。
結婚とは一種の事業であると考える高位貴族と、結婚は恋愛の終着点と考える平民との認識の相違のお話。
拙作『法律の多い魔導王国』と同じカヌーン魔導王国の話。法律関係何でもアリなカヌーン王国便利で使い勝手がいい(笑)。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

婚約破棄していただきます
章槻雅希
ファンタジー
貴族たちの通う王立学院の模擬夜会(授業の一環)で第二王子ザームエルは婚約破棄を宣言する。それを婚約者であるトルデリーゼは嬉々として受け入れた。10年に及ぶ一族の計画が実を結んだのだ。
『小説家になろう』・『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

断罪茶番で命拾いした王子
章槻雅希
ファンタジー
アルファーロ公爵嫡女エルネスタは卒業記念パーティで婚約者の第三王子パスクワルから婚約破棄された。そのことにエルネスタは安堵する。これでパスクワルの命は守られたと。
5年前、有り得ないほどの非常識さと無礼さで王命による婚約が決まった。それに両親祖父母をはじめとした一族は怒り狂った。父公爵は王命を受けるにあたってとんでもない条件を突きつけていた。『第三王子は婚姻後すぐに病に倒れ、数年後に病死するかもしれないが、それでも良いのなら』と。
『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『Pixiv』・自サイトに重複投稿。

婚前交渉は命懸け
章槻雅希
ファンタジー
伯爵令嬢ロスヴィータは婚約者スヴェンに婚約破棄を突きつけられた。
よくあるパターンの義妹による略奪だ。
しかし、スヴェンの発言により、それは家庭内の問題では収まらなくなる。
よくある婚約破棄&姉妹による略奪もので「え、貴族令嬢の貞操観念とか、どうなってんの?」と思ったので、極端なパターンを書いてみました。ご都合主義なチート魔法と魔道具が出てきますし、制度も深く設定してないのでおかしな点があると思います。
ここまで厳しく取り締まるなんてことはないでしょうが、普通は姉妹の婚約者寝取ったら修道院行きか勘当だよなぁと思います。花嫁入替してそのまま貴族夫人とか有り得ない、結婚させるにしても何らかのペナルティは与えるよなぁと思ったので。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿しています。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

婚約破棄?それならこの国を返して頂きます
Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国
500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー
根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した

乙女ゲームはエンディングを迎えました。
章槻雅希
ファンタジー
卒業パーティでのジョフロワ王子の婚約破棄宣言を以って、乙女ゲームはエンディングを迎えた。
これからは王子の妻となって幸せに贅沢をして暮らすだけだと笑ったゲームヒロインのエヴリーヌ。
だが、宣言後、ゲームが終了するとなにやら可笑しい。エヴリーヌの予想とは違う展開が起こっている。
一体何がどうなっているのか、呆然とするエヴリーヌにジョフロワから衝撃的な言葉が告げられる。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様・自サイトに重複投稿。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
会話文と文章の間は一行空けていただけたほうが、読者としては読みやすいです。
ご意見ありがとうございます。確かにweb小説と書籍の小説は違いますよね…。手の空いている時に手直ししていきます!