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友達とショッピング
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私はまずこの辺りで1番人気で高級路線のお店に入った。商業地区に住まう平民の女の子が大事なデートの服を買うとなれば絶対にここが真っ先に候補に挙がる。
「いらっしゃいませ。」
「わぁ…!」
お嬢様達は珍しい平民のファッションに目を輝かせていた。私はざっと店内を見渡す。
「…ねぇレティ、どんな服が好み?」
「えっと…、…そうね、あの店員さんが着ている服とかとっても可愛いと思うわ。」
「なるほど、上品系ね。確かに貴女にとっても似合うでしょう。…じゃあこの辺りとか?」
私はレティシア様が好きそうなブラウスをいくつか広げる。…ここは私もよく来るお店なので配置は大体把握していた。
「わぁ、可愛い!」
「レティに似合いそう!」
「ねぇ、こっちのワンピースも似合いそうじゃない?」
「あ、それも素敵ね!」
そんな風にみんなでわいわいしながらレティシア様の服を選んで、散々悩みながらも上品で可愛らしいワンピースと柔らかな薄手のカーディガンというコーデに収まった。うん、可愛い。
「ねぇ、サンダルとか持ってる?」
「あぁ…、…えぇと、持ってはいるけれど…。」
歯切れの悪い返事になんとなく察する。
「じゃあこのサンダルはどう?本当は履き慣れたのが一番なんだけど…。」
きっと殿下とのデートではそれなりに歩く事になるだろう。新しい靴は靴擦れしやすいし、履き慣れたものに越した事はないのだが。
「わっ、可愛い!」
「サイズもぴったりだし、歩きやすいわ…!」
「それなら良かった、私結構靴合わない事多いのよね。」
そんなこんなで服と靴をゲットし、私達は次のお店に向かう。ここは一軒目よりも少し安めのブランドで、ちょっとオシャレな普段着…といった所だろうか。鞄とアクセサリーをみんなで選ぶ。
「あぁそうだ、そろそろ日差しも強くなってくるわよね…。帽子もあった方が良いわ。」
「!確かにそうね…!」
こうしてフルコーデ揃え、達成感とレティシア様のかわいさに震えていると時刻は既におやつの時間を過ぎていた。日が伸びてきてまだまだ暗くなるには時間はあるが、早めに帰るに越した事はないだろう。
「みんなどうする?もう帰る?」
「あ、待って、私あのお店がどうしても気になって…。」
グラシア様が指差すのは洋菓子屋さんの中で売っている綿飴だった。あぁ、お嬢様達には珍しいのか…。
「私も気になってたの!あれ何?」
「綿飴っていう、ふわふわしてて口に入れるとシュワって溶ける飴だよ。食べた事ない?」
私が尋ねると皆様頷く。
「良かったね、あれ毎日売ってるわけじゃないのよ。買いに行こう!」
綿飴をそれぞれ買って、私達はお店の外のベンチで食べる。皆様楽しそうに食べていて、ホッと胸を撫で下ろす。
「すごい、雲みたい!」
「商業地区ってすごいのねぇ。」
「ふふ、殿下が虜になるのも納得だわ。」
「本当にね。…ねぇセシ、ものすごく今更なんだけど。」
「?」
「それ、婚約指輪?すっごく綺麗ね。リング自体も石も…サファイアかしら?かなり上等なものみたいだし…。」
グラシア様は私の左手薬指で輝く指輪を見て言った。あぁ、と私は笑う。
「そう、婚約した時にウィルがくれたの。このサファイアね、ウィルがある日突然いなくなったと思ったら良いサファイアが採れるって有名なダンジョンを1日で攻略して採って帰って来たのよ。びっくりでしょ?…けど学院ではうっかり傷つけたくなくてずっとネックレスにしてたんだ。まぁ今日みたいな式典の日とか、授業がない日はちゃんと指に付けてたんだけど…。…これ、もっとアピールしておけば何か変わってたかしらね…。」
私が言うと皆様は苦笑した。
「流石ウィルフレッド様ね…。」
「すごいわね、本当。…でも、殿下もエリアスも変わらないと思うわ。」
「あはは…。」
その後、私達は学院の正門まで転移した。それぞれの家の馬車を呼び、お貸しした上着を回収する。
「セシリアさん、今日は本当にありがとう!とっても助かったし楽しかったわ!」
「いえ、お役に立てたなら何よりです。それに久々に私も羽を伸ばせて楽しかったです。」
「ねぇ、今度また案内してくれないかしら?私、もっとスイーツを見て回りたいわ!」
「私も!」
「わたくしは服をもっと見たかったわ!」
皆様ワクワクしたようにそう仰り、どうやら楽しんでいただけたようで何よりだ。私は喜んで、と頷く。
「それでは私はこれで。…レティシア様、当日はどうぞ楽しんでくださいね。」
「!…えぇ、ありがとう。」
頬を染めはにかむレティシア様を私達は微笑ましく思いつつ、私はもう一度礼をして転移魔法でその場を後にした。友達にジャケットを返却して家に戻る。
「ただいまー。」
「お帰りなさい。」
「あ、シシー。お帰り。」
「!ウィル。今日は早いんだね。」
私の弟と今日は非番の姉、それからウィルの弟2人と共に結婚式会場の飾りを作っていたウィルはこちらに近づくとポーションを飴玉にしたものを渡して来た。私達は少し驚く。
「?ウィル兄、どうしたの?」
「今日は終業式でしょ?魔法使う事なんかないでしょ。」
「本来ならな。でもさっき使ってただろ?転移魔法の連発に認識阻害の魔法。」
「え、なんで知ってるの?」
「丁度帰る時に綿飴食べてるの見かけたからさ。」
あぁ、なるほど。確かにあのお店は帰り道だ。
「え、あのお店行ったの⁉︎良いなー!お土産は⁉︎」
「はいはい、ちゃんとありますよ。レオはマドレーヌ、兄さんと姉さんはガレットね。」
「やった、ありがとう!」
「ウィル達はいつものパイね。帰ったら食べて。」
「わーい、ありがとうシシー姉ちゃん!」
「ありがとうシシー!」
「いいえ、手伝ってくれてるお礼って事で。」
私は飴を舐めながら飾り作りに加わる。…ディエゴ殿下、上手く行くと良いなぁ。あの人は私にとってもう1人の兄のような人だから、彼にも幸せになって欲しい。
私達の結婚式まで、あと───
「いらっしゃいませ。」
「わぁ…!」
お嬢様達は珍しい平民のファッションに目を輝かせていた。私はざっと店内を見渡す。
「…ねぇレティ、どんな服が好み?」
「えっと…、…そうね、あの店員さんが着ている服とかとっても可愛いと思うわ。」
「なるほど、上品系ね。確かに貴女にとっても似合うでしょう。…じゃあこの辺りとか?」
私はレティシア様が好きそうなブラウスをいくつか広げる。…ここは私もよく来るお店なので配置は大体把握していた。
「わぁ、可愛い!」
「レティに似合いそう!」
「ねぇ、こっちのワンピースも似合いそうじゃない?」
「あ、それも素敵ね!」
そんな風にみんなでわいわいしながらレティシア様の服を選んで、散々悩みながらも上品で可愛らしいワンピースと柔らかな薄手のカーディガンというコーデに収まった。うん、可愛い。
「ねぇ、サンダルとか持ってる?」
「あぁ…、…えぇと、持ってはいるけれど…。」
歯切れの悪い返事になんとなく察する。
「じゃあこのサンダルはどう?本当は履き慣れたのが一番なんだけど…。」
きっと殿下とのデートではそれなりに歩く事になるだろう。新しい靴は靴擦れしやすいし、履き慣れたものに越した事はないのだが。
「わっ、可愛い!」
「サイズもぴったりだし、歩きやすいわ…!」
「それなら良かった、私結構靴合わない事多いのよね。」
そんなこんなで服と靴をゲットし、私達は次のお店に向かう。ここは一軒目よりも少し安めのブランドで、ちょっとオシャレな普段着…といった所だろうか。鞄とアクセサリーをみんなで選ぶ。
「あぁそうだ、そろそろ日差しも強くなってくるわよね…。帽子もあった方が良いわ。」
「!確かにそうね…!」
こうしてフルコーデ揃え、達成感とレティシア様のかわいさに震えていると時刻は既におやつの時間を過ぎていた。日が伸びてきてまだまだ暗くなるには時間はあるが、早めに帰るに越した事はないだろう。
「みんなどうする?もう帰る?」
「あ、待って、私あのお店がどうしても気になって…。」
グラシア様が指差すのは洋菓子屋さんの中で売っている綿飴だった。あぁ、お嬢様達には珍しいのか…。
「私も気になってたの!あれ何?」
「綿飴っていう、ふわふわしてて口に入れるとシュワって溶ける飴だよ。食べた事ない?」
私が尋ねると皆様頷く。
「良かったね、あれ毎日売ってるわけじゃないのよ。買いに行こう!」
綿飴をそれぞれ買って、私達はお店の外のベンチで食べる。皆様楽しそうに食べていて、ホッと胸を撫で下ろす。
「すごい、雲みたい!」
「商業地区ってすごいのねぇ。」
「ふふ、殿下が虜になるのも納得だわ。」
「本当にね。…ねぇセシ、ものすごく今更なんだけど。」
「?」
「それ、婚約指輪?すっごく綺麗ね。リング自体も石も…サファイアかしら?かなり上等なものみたいだし…。」
グラシア様は私の左手薬指で輝く指輪を見て言った。あぁ、と私は笑う。
「そう、婚約した時にウィルがくれたの。このサファイアね、ウィルがある日突然いなくなったと思ったら良いサファイアが採れるって有名なダンジョンを1日で攻略して採って帰って来たのよ。びっくりでしょ?…けど学院ではうっかり傷つけたくなくてずっとネックレスにしてたんだ。まぁ今日みたいな式典の日とか、授業がない日はちゃんと指に付けてたんだけど…。…これ、もっとアピールしておけば何か変わってたかしらね…。」
私が言うと皆様は苦笑した。
「流石ウィルフレッド様ね…。」
「すごいわね、本当。…でも、殿下もエリアスも変わらないと思うわ。」
「あはは…。」
その後、私達は学院の正門まで転移した。それぞれの家の馬車を呼び、お貸しした上着を回収する。
「セシリアさん、今日は本当にありがとう!とっても助かったし楽しかったわ!」
「いえ、お役に立てたなら何よりです。それに久々に私も羽を伸ばせて楽しかったです。」
「ねぇ、今度また案内してくれないかしら?私、もっとスイーツを見て回りたいわ!」
「私も!」
「わたくしは服をもっと見たかったわ!」
皆様ワクワクしたようにそう仰り、どうやら楽しんでいただけたようで何よりだ。私は喜んで、と頷く。
「それでは私はこれで。…レティシア様、当日はどうぞ楽しんでくださいね。」
「!…えぇ、ありがとう。」
頬を染めはにかむレティシア様を私達は微笑ましく思いつつ、私はもう一度礼をして転移魔法でその場を後にした。友達にジャケットを返却して家に戻る。
「ただいまー。」
「お帰りなさい。」
「あ、シシー。お帰り。」
「!ウィル。今日は早いんだね。」
私の弟と今日は非番の姉、それからウィルの弟2人と共に結婚式会場の飾りを作っていたウィルはこちらに近づくとポーションを飴玉にしたものを渡して来た。私達は少し驚く。
「?ウィル兄、どうしたの?」
「今日は終業式でしょ?魔法使う事なんかないでしょ。」
「本来ならな。でもさっき使ってただろ?転移魔法の連発に認識阻害の魔法。」
「え、なんで知ってるの?」
「丁度帰る時に綿飴食べてるの見かけたからさ。」
あぁ、なるほど。確かにあのお店は帰り道だ。
「え、あのお店行ったの⁉︎良いなー!お土産は⁉︎」
「はいはい、ちゃんとありますよ。レオはマドレーヌ、兄さんと姉さんはガレットね。」
「やった、ありがとう!」
「ウィル達はいつものパイね。帰ったら食べて。」
「わーい、ありがとうシシー姉ちゃん!」
「ありがとうシシー!」
「いいえ、手伝ってくれてるお礼って事で。」
私は飴を舐めながら飾り作りに加わる。…ディエゴ殿下、上手く行くと良いなぁ。あの人は私にとってもう1人の兄のような人だから、彼にも幸せになって欲しい。
私達の結婚式まで、あと───
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