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卒業記念パーティー1

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 時が流れるのは早いもので、ついにレオナルド様のご卒業まで1日となった。あれからわたくし達は噂の制御をしつつレオナルド様達とお話をしようと試みたが結局上手く行かず、しかも何故かわたくし達がセシリアさんに卑劣ないじめをしていると思われているようだった。どうやらセシリアさんが嫌がらせに遭っているのは事実のようだが、そちらは魔法科で対処するとの事だったのでお任せしている。

「お嬢様、王宮からお手紙でございます。」
「あら、ありがとう。」

執事から手紙を受け取るとそれはレオナルド様からのもので、今までほとんど手紙など寄越さなかったのに何故、と違和感を感じつつわたくしは封を開けて目を通す。そしてわたくしは頭を抱えた。

『明日の卒業記念パーティーでは他の者をエスコートする。』

簡潔に要約すると殿下からのお手紙はつまりそういう事だった。王立学院の卒業記念パーティーは卒業生に在校生、教員、そして卒業生の保護者も参加する、社交界の予行練習のようなものだ。もうすぐ正式に社交界へと飛び立つ事になる貴族階級の卒業生にはそれなりの振る舞いも求められる。そんな場所で婚約者でない者をエスコートするだなんて…!
 しかしもうどうしようもないのでわたくしはお兄様にエスコートをお願いし、今年はレオナルド様のご卒業なので王城内の歴史あるホールで行われる事になった卒業パーティーへと向かった。レオナルド様は王族のみが使う2階から、どう見ても訳もわからないまま連れて来られたらしいセシリアさんを伴ってホールへ入場なさると踊り場から声を上げる。

「レティシア・デ・シルエラ。貴様には心底失望した。」
「…何のお話でしょうか、レオナルド様。」
「ふん、シラを切るか、太々しい。貴様はグラシア嬢、アリシア嬢、ラウラ嬢と共にセス…、セシリア・ビオレータ嬢に集団で囲い込み恐喝したり暴行を加えたりと嫌がらせを繰り返していただろう!俺はこの目で見ていたぞ!!!」

保護者や来賓の方々は唖然とし、フェリクス様方3名は階段の下へと出て来た。お兄様も慌ててわたくしの隣へやって来て、先生方や他の生徒達はそれぞれの思いを胸にレオナルド様へと視線を向ける。陛下や王妃殿下はまだいらっしゃらない。

「殿下、妹がいじめとは一体どういう事でしょうか?」
「…レオナルド様の目撃情報だけでなく、他の方々からの聞き取りもなさって確実な証拠を集めた上でのご発言ですか?」

わたくしはついため息を吐きたくなるのを堪えて尋ねる。すると殿下は「うるさい、俺が見ていたのだからそんなものは必要ないだろう!」とセシリアさんの肩を抱きながら叫んだ。2階は王族が出入りする場所で、“まだ”セシリアさんが出て来て良い場所ではない。だというのにこんなに大勢の前で出て来てしまって大丈夫かしら…。卒業までまだ1年あるのに…。

「あの、殿下…」
「数百年に一度しか現れぬという稀有な光属性を生まれ持ったセスへの嫉妬か?王族に嫁ぐ者として恥ずかしくないのか!!」

真っ青な表情のセシリアさんの言葉を遮ってレオナルド様は自信満々に言う。…流石にこれは隠し通せないんじゃないかしら…?そうなったら王都は大変な事に…⁉︎

「ですからレオナルド様、それは誤解で…」
「貴様の卑劣な行いは到底許される事ではない!!よって貴様との婚約は破棄する!!!」
「我々もセシリア嬢に危害を加えるような方とは結婚などできません。ラウラ、婚約はなかった事にしよう。」
「アリシア、婚約を破棄してくれ。」
「グラシア、俺も~。こんな事する人だったとはね。」
「「「!!??」」」

まさか、そこまでなさるとは…!!!グラシア達もわたくしのそばまで出てきて、わたくしは眩暈がしてくるのをお兄様に支えてもらいながらレオナルド様と向き合う。

「そんな簡単に婚約破棄なんてできるはずありませんでしょう?」
「レオナルド様、それは陛下の同意も得ていらっしゃるのですか?」
「殿下、レティやグラシア嬢達との婚約を破棄するのであれば正当な手続きを踏んでください。このような場で一方的に突きつけるものではございません。」
「ふん、この程度の事で父上の手を煩わせるわけに行かないだろう、どうせ同意してくださるに違いないのだから後でで構わないさ。それよりも…」

あ、まずい。この先を言わせるのは非常にまずい。なんとか止めないと、

「新たな婚約者として…」
「レオナルド様、」

止めなくては王都が、

「セシリア・ビオレータ嬢を据える事を宣言する!!!」
「「「なっ!!??」」」
「で、殿下!!??」

周囲だけでなくセシリアさん本人もご存知なかったらしく、唖然としたように目を見開いていた。レオナルド様は「驚いただろう?」とサプライズが成功したと言わんばかりに得意げにセシリアさんを見る。あぁ最悪だわ、早くなんとか有耶無耶にしなくては…!

「セス、俺は君を愛している。」
「な…、」
「レオナルド様、」
「俺と結婚してくれ!」
「レオナルド様!」

わたくしはもう仕方ないので2階へ続く階段へと足をかけた。王都のためならこの程度の不敬も仕方のない事だろう。無理矢理でも止めなければ───


「…は?ふざけんなよ誰がするかっつーのこの自己中王子が。」


 会場内の空気が凍りついた。…あぁ、セシリアさん…。

「殿下、私は何度も申し上げましたよね?レティシア様達は何もしていらっしゃらないと。」

セシリアさんの目は完全に据わっていて、わたくしが怒られているわけではないがなんだかソワソワしてしまう。

「なっ、それはセスが庇っているだけだろう!俺はズタズタに破られた教科書を手に持つレティシアをこの目で見ていたぞ!!」
「あれは破られた教科書を落としてしまったところをレティシア様が拾ってくださったのです。廊下での出来事でしたからご覧になっていた方も多いのでは?」
「なっ…、しかし、レティシアやグラシア嬢や取り巻き達に囲まれて怯えていたではないか!」
「レオナルド様、取り巻きではなく友人です。わたくしの友人への侮辱はおやめください。」

わたくしは“取り巻き”という言葉に反感を覚え反論する。レオナルド様は「ええいうるさい!」と叫んだ。お兄様は黙って見守っている。

「セス、もしかして脅されているの?大丈夫だよ、そんなの俺達が全部解決してあげるから!」
「違います、あの時は普通にご挨拶させていただいただけですし私が怖いのはあなた方の方です!!!もう本当にいい加減にしてください!!!何故こうも私の話を聞いてくださらないのですか⁉︎私が平民だからですか⁉︎平民の話など聞く価値もないという事ですか!!??」

セシリアさんがすごい剣幕で言うと、レオナルド様方は驚いていた。セシリアさんは続ける。

「レティシア様はあんなにもこの国のため努力していらっしゃるのに、なんなのですか貴方は!!レティシア様を蔑ろにした挙句濡れ衣まで着せて!!恥ずかしくないのですか!!??確かに悪質な嫌がらせはありましたがその犯人は別におります!…委員長!」
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